1. なつ用と ふゆ用の クレパスが あったの?
1. 夏用と冬用に分けた棒は、なぜうまくいかなかったのか
1. 夏用と冬用の2種類は、なぜ通年品に置きかわったのか
クレパスが うまれたのは、1925ねん(大正14ねん)ごろです。つくったのは、日本クレイヨン商会(いまの サクラクレパス)です[4]。
この 会社は、さいしょ、おなじ 色の 棒を ふた とおり つくりました。ふゆ用は やわらかい 棒、なつ用は かたい 棒です[5]。
ところが、おみせに おくる ときに とりちがえるなどして、「つかいにくい」という 声が つぎつぎに よせられたと いいます。3ねん あとの 1928ねんに、つくり方を かえて、1ねん じゅう つかえる 棒に なりました[5][6]。
クレパスの 棒は、気温で かたさが かわりやすい ものだったのです。では、棒の 中には、なにが はいって いるのでしょう。
クレパスが世に出たのは、1925年(大正14年)のことで、日本クレイヨン商会(現サクラクレパス)が生み出しました[4]。この会社は、売り出しの当初、同じ色の棒をやわらかい冬用とかたい夏用の2種類にして出しました[5]。サクラの公式記事も、最初の製品は気候で硬さが大きく変わったため、夏用の硬いものと冬用の軟らかいものを作った、と述べています[6]。
ところが、この分け方は使う側に不評でした。出荷のときの取りちがいなどもあって、苦情が相次いだとされます[5]。3年後の1928年に製法を改良し、年じゅう使える棒に変わりました[5][6]。油が多く、気温で品質が左右されやすかったことが背景だと説明されています[5]。
それにしても、画材の棒が暑さ寒さで別の道具のようになるのは、不思議な話です。棒の中身を、順に見てみましょう。
クレパスは1925年(大正14年)に、日本クレイヨン商会(現サクラクレパス)が売り出したとされる[4]。英語版Wikipediaは開発を1924年とし、年が1年ずれる[2]。ここでは国内の資料に合わせ、メーカー側の年として1925年を使う。
この最初の製品は、同じ色の棒を冬用の「やわらかい」ものと夏用の「かたい」ものの2種類で出荷した[5]。サクラの公式記事(英語)も、最初の製品は気候で硬さが大きく変わったため夏用の硬いものと冬用の軟らかいものを出し、1928年に通年用の開発に成功したと述べており、2つの資料の内容は合う[6]。
ところが、この2本立てはうまくいかなかった。出荷時の取りちがいなどもあって苦情が相次ぎ、3年後の1928年に製法を改良して通年品になったという[5]。背景として、油が多く気温で品質が左右されやすかった点が挙げられている[5]。売り方だけでなく、棒の性質そのものも気温に敏感だった。では、棒の中身の何が、硬さを決めているのか。
2. ロウと 油は、棒の 中で どんな やくわりなの?
2. 顔料・ロウ・油は、棒の中でそれぞれ何をしているのか
2. 顔料・ロウ・油の分担と、資料の説明が割れる点
クレパスや クレヨンの 棒は、3つの ざいりょうで できて います。顔料、ロウ、油です[1]。
顔料は、色の もとです。ロウは、棒の かたちを たもつ やくめです。油は、色を 紙に つきやすく する やくめです[1]。
ろうそくの ロウは、かたくて、手で にぎっても かたちが かわりません。サラダ油は、とろとろ して います。この ふたつを まぜると、かたい ものと とろとろの ものの あいだの かたさに なる、と 考えると わかりやすいです。ただし ほんとうは、クレパスの 油は サラダ油では ありません。さいしょの クレパスには、ココナッツの 油が つかわれたと いわれます[2]。
ロウが おおいと、クレヨンのように すこし かたい 棒に なります。油が おおいと、クレパスのように やわらかい 棒に なります[1]。
ロウと 油が どんな わりあいで はいって いるかは、わかる しりょうが ありません。
クレヨンもクレパスも、材料は同じ3つです。顔料(色のもと)、ロウ(棒の形を保つ)、油(顔料を紙に定着させる)です[1]。このうちロウが多いのがクレヨンで、やや硬い棒になります。油が多いのがクレパスで、軟らかい棒になります[1]。
たとえば、ろうそくのロウは硬く、手に握っても形が変わりません。サラダ油はさらさらです。この2つを混ぜると、中間の硬さのものができると考えれば、ロウが形を、油が軟らかさを受け持つという分担がつかみやすくなります。ただしこれはたとえで、クレパスの油がサラダ油というわけではありません。初期のサクラの製品では、パラフィンワックス、ステアリン酸、ココナッツ油を混ぜたものが結合剤だったとされます[2]。
日本の辞典はクレヨンを、パラフィンや脂肪酸、木ろうなどのロウ類を溶かして顔料を混ぜ、棒状に固めたものと説明します。「クレヨン」の語源は、鉛筆を意味するフランス語の crayon です[3]。
ここで、資料どうしの説明が割れます。英語版Wikipediaは、油を使わないワックスクレヨンと、乾かない油とワックスを結合剤にしたオイルパステルを区別しています[2]。日本の解説は、クレヨンにも油が入るとするものがあります[1]。ロウと油の具体的な割合の数字は、手元の資料には出てきません。「ロウが多いほど硬く、油が多いほど軟らかい」という傾向までが、いま言えることです。
では、軟らかくすると、描く側にどんな良いことがあるのでしょうか。
棒の中身は、顔料(色のもと)、ロウ(棒の形を保つ)、油(色を定着させる)の3つである[1]。クレヨンはロウが多くやや硬く、クレパスは油が多く軟らかい[1]。ロウが骨組み、油が軟らかさと紙へのつきやすさを受け持つ、と整理できる。
日本の辞典はクレヨンを、パラフィンや脂肪酸、木ろう(もくろう)などのロウ類を溶かして顔料を混ぜ、棒状に固めたものと説明する。語源は、鉛筆を意味するフランス語 crayon である[3]。
ただし、ここには資料間の食いちがいがある。英語版Wikipediaは、オイルパステルを「乾かない油」とワックスを結合剤にした顔料の棒とし、油を使わないワックスクレヨンとは油の有無で区別している[2]。他方、日本の解説にはクレヨンにも油が入るとするものがあり[1]、この点は区別の仕方が資料で一致しない。ロウ・油・顔料の具体的な配合比は、公開資料からは確認できなかった。したがって、「油の割合が多いほど軟らかい」は、傾向として扱うにとどめる。
では、油を増やして軟らかくすると、描く側には何が得られるのか。そして、その代わりに何を手放したのか。
3. やわらかいと、なにが うれしいの?
3. 軟らかい棒の使いやすさと、気温への弱さ
3. 軟らかさの利点と、気温への弱さ:用途と温度感受性
クレパスが うまれた ころの クレヨンは、かたい ものでした。線を かくのは とくいですが、広い ところを ぬるのは にがてでした[5]。
クレパスは、やわらかくて、のびが よい 棒です。線も、広い 面も かけます。こなの パステルのように、色を まぜる ことも できます。色を かさねたり、油絵のように あつく もりあげたり する ことも できると いわれます[5]。
そのころの 日本では、学校の 図画は、安い ざいりょうで おてほんを うつす ことが 中心で、子どもが 自由に かきにくかった、と サクラの 会社は 書いて います[6]。
その かわり、油を おおく して やわらかく したぶん、気温で かたさが かわりやすく なりました。なつ用と ふゆ用に わけた 話は、この ことが もとに なって います。
当時のクレヨンは硬く、線は引きやすい一方で、広い面を塗るのは苦手でした。クレパスは軟らかくてのびがよく、線も面も描けます。粉のパステルのように色を混ぜることができ、重ね塗りや、油絵のように厚く盛ることもできたと紹介されています[5]。
サクラの公式記事は、背景として、1920年代初めの日本の図画が、安価な材料での模写が中心で、子どもが自由に表現しにくかったことにも触れています[6]。軟らかくてのびる棒は、その状況に合った道具だったのでしょう。ただしこれは記事の筆者の解釈で、資料がそう明言しているわけではありません。
その代わり、軟らかいクレパスは、気温の影響を受けやすい性質もありました。夏用と冬用に分けたのは、1本の棒でどちらの季節にも使える硬さにできなかったからだと考えられます。通年品になった1928年に、製法がどう変わったかの詳しい内容は、手元の資料にはありません。
ところで、油を含む棒には、もう1つの見分け方があります。水です。
当時のクレヨンは硬く、線は描きやすいが面は塗りにくかった。クレパスは軟らかくのびがよく、線も面も描け、粉のパステルのような混色も可能で、色を重ねたり油絵のように厚く盛ったりできたとされる[5]。ロウが多ければ形が保たれて線向きになり、油が多ければ軟らかくなって面や混色向きになる、というトレードオフが読み取れる。
サクラの公式記事は、背景として、1920年代初めの日本の図画が安価な材料での模写中心で、子どもが自由に表現しにくかった点にも触れている[6]。軟らかくのびる棒がこの状況に合ったという見方はできるが、資料が因果としてそう述べているわけではなく、ここでは解釈にとどめる。
軟らかいクレパスには、気温の影響を受けやすい性質もあった。冬用と夏用に分けた事情について、資料は、油が多く気温で品質が左右されやすかったためと説明している[5]。ただし、棒のどの成分が、何度のあたりでどう変化したのかという仕組みは、手元の資料では示されていない。1928年の改良内容も同様である。分かるのは、「油が多く軟らかい棒は、気温の影響を受けやすく、通年品になるまでに3年かかった」という順序までだ。
100年前の改良の中身は不明でも、油を含むことの別の効果なら、手元で確かめられる。水との関係である。
4. クレパスの 上に 水の 絵の具を ぬると、どうなるの?
4. 油を含む棒の上に水彩絵の具を塗ると、はじかれる
4. 油を含む棒が水彩絵の具をはじく:はじき絵の条件と限界
白い 紙に クレパスで 絵を かいて、その 上から 水を おおく ふくんだ 絵の具を ぬって みます。すると、かいた ところだけ、絵の具が はじかれて、色が のりません[7]。「はじき絵」と よばれる あそびです。
油の はいった クレヨンで かいた ところは、水の 絵の具を はじく からです。水と 油は まざりにくい、と 考えると わかりやすいです。
ただし、どんな 絵の具でも はじくわけでは ありません。ある けんさでは、アクリルガッシュという 絵の具は、はじかれずに クレヨンの 上にも ぬれました[7]。
さいきんは、水で おとせる クレパスも でました。2025ねんの 1月に うり出された ものは、ミツバチの すから とれる みつろうを つかい、手や 体に ついても 水で あらいながせると いいます[8]。なぜ おちるのかは、公開されている せつめいからは わかりません。
白い紙にクレヨンやクレパスで絵を描き、その上から水彩絵の具を塗ると、描いた部分だけ絵の具をはじきます。いわゆる「はじき絵」です。油を含むクレヨンは、水彩絵の具をはじきます[7]。分子の話にまでは立ち入りませんが、「水と油は混ざりにくい」という身近な性質が、紙の上で目に見える形で出るわけです。
はじかれるかどうかは、絵の具の種類で変わります。同じ検証では、アクリルガッシュは、はじかれずにクレヨンの上へ塗れました[7]。「水の絵の具」と大ざっぱにまとめず、種類ごとに見る必要があります。
もう1つ、オイルパステルの作品は、油絵の具のようには乾ききりません。英語版Wikipediaは、使う油が乾いて固まらないためだと説明しています[2]。油絵の具が乾いて固まるのとは別の性質です。
はじく性質のおかげで、水彩との合わせ技ができますが、洗濯や掃除では扱いにくい面にもなります。そこで2025年1月に発売された「水でおとせる はじめてのふとふとクレパス6色」は、ミツバチの巣から採れるみつろうを原材料に使い、手足や体についても水で洗い流せ、つるっとした机や床はぬれ布巾で拭けると紹介されています[8]。ただし、みつろうだから落ちる、という説明は資料にありません。落ちやすさの理由は分かっていません。
白い紙にクレヨンやクレパスで描き、その上から水彩絵の具を塗ると、描いた部分だけ絵の具をはじく。油の成分を含むクレヨンは、水彩絵の具をはじくと報告されている[7]。結合剤の油が撥水性をもたらしている、という見立ては自然だが、分子レベルの理由はこの資料には書かれておらず、ここでは「水と油は混ざりにくい」という程度の説明にとどめる。
この性質には条件がある。同じ検証では、アクリルガッシュは、はじかれずにクレヨンの上へ塗れた[7]。したがって、「水系の絵の具ならはじく」と一般化はできない。なお、この検証は個人の解説記事に近く、紙の種類や塗る量まで統制した実験ではない点に注意が要る。
英語版Wikipediaは、オイルパステルの油は乾いて固まらず(non-drying oil)、作品は完全には乾ききらないと述べる[2]。水をはじく性質との関係は、資料には説明されていない。
関連して、2025年1月に発売された「水でおとせる はじめてのふとふとクレパス6色」は、みつろうを原材料に使い、手足や体は水で洗い流せ、つるっとした机や床はぬれ布巾で拭け、衣類も洗濯で落としやすい(一部材質を除く)と紹介されている[8]。クレパスの誕生(1925年)から、ちょうど100年後の製品にあたる。ただし、みつろうを使うから落ちるという因果は資料にない。成分の配合も公開資料では見つからず、落ちやすさの理由は不明のままである。
5. はじき絵で、ロウと 油の はたらきを 見て みよう
5. はじき絵で、棒の中の油のはたらきを見る
5. はじき絵で確かめ、原典に当たる
きょう できる こと
白い 紙に、クレヨンか クレパスで、すこし つよく 線や 丸を かきます。その 上から、水を おおく ふくませた 水の 絵の具を、ふでで うすく ぬって みましょう。かいた ところだけ 色が のらずに、絵が うかびあがります。つくえの 上には、しんぶん紙を しいて おきます。
クレヨンと クレパスの りょうほうが あれば、同じ ように かいて くらべて みましょう。どちらが はじくか、ゆびで 少し こすって、のび方も くらべます。
しらべる とき
家に 古い クレヨンが あったら、手で もって みて、かたさを かんじて みましょう。ただし、あつい 日に くるまの 中などに おくのは やめて ください。
紙の上でためす
白い紙に、クレヨンかクレパスで、やや強めに線や丸を描きます。その上から、水をたっぷり含ませた水彩絵の具を筆で薄く塗ります。描いた部分が色を受けつけず、絵が浮かびあがります。机には新聞紙を敷きましょう。
両方持っているなら、同じ強さで線を引いて、指で軽くこすってみます。のび方のちがいを比べてみましょう。感触だけでは、ロウと油の割合までは分かりません。
資料を読むなら
クレヨンとクレパスのちがいは[1]、100年の歩みは[4]、夏用・冬用の話は[5]にあります。ロウと油の割合が公開されているのか、メーカーの公式情報で調べてみるのも手です。
手で確かめる
白い紙にクレヨンかクレパスで描き、水を十分に含ませた水彩絵の具を重ねる。描いた部分が絵の具をはじくか、はじく程度が棒によって変わるかを見る。クレヨンとクレパスの両方があれば、同じ筆圧で線を引き、指でこすって、のび方の差も比べるとよい。第3章の説明を思い出しながら、棒ごとののび方や感触を比べる。
資料を読むなら
クレヨンとクレパスの材料の分担は[1]、英語版Wikipediaの定義は[2]、辞典の定義と語源は[3]にある。夏用・冬用の経緯は日本語の[5]と、サクラ公式の英語記事[6]を読み比べられる。はじき絵の検証は[7]、水で落とせる製品は[8]にある。ロウ・油・顔料の配合比と、1928年の製法改良の中身は、今回の資料では見つかっていない。メーカーの公式情報や、画材を扱う研究機関の資料に当たる余地がある。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
本文で使った資料です。
- HugKum クレヨンとクレパスの違い. https://hugkum.sho.jp/377669 (顔料・ロウ・油の分担)
- Wikipedia: Oil pastel. https://en.wikipedia.org/wiki/Oil_pastel (乾かない油の定義/初期の組成)
- コトバンク クレヨン. https://kotobank.jp/word/クレヨン (辞典の定義と語源)
- HugKum 100周年クレパス. https://hugkum.sho.jp/679566 (1925年の発売と名前の由来)
- 神戸新聞 ブンコレ クレパス. https://www.kobe-np.co.jp/rentoku/bizplus/buncolle/202002/0013154592.shtml (軟らかさの利点/夏用・冬用の経緯)
- Sakura Cray-Pas 100周年(公式・英語). https://sakuracraypas.com/inspiration/cray-pas-turns-100-how-one-art-tool-changed-creative-expression (夏用・冬用/1928年の通年品/当時の図画の背景)
- HugKum クレヨンの上に塗る絵の具. https://hugkum.sho.jp/379194 (水彩絵の具をはじく/アクリルガッシュの場合)
- リセマム キッズデザイン賞受賞リリース. https://resemom.jp/release/prtimes/20250820/154417.html (水でおとせるクレパス)
なおした ところ
更新履歴
更新履歴(改版の記録)
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