1. どうして 冬に 雷が おきるの?
1. 雷は夏のもの、のはずなのに
1. 日本海側で冬に雷が多い理由と、秋田のデータ
雷と 聞くと、なつの ゆうだちを おもい うかべます。でも 日本海がわの ほくりくでは、なつよりも 冬に おおくの 雷が おきると されて います[1]。
空の 上に つよい さむい 空気が 入ると、空気が ふあんていに なり、大きな 雲が できます。それが 雷の もとです[1]。
あきたでは、11がつは 7がつの 3ばい いじょう、雷の ある 日が あります[2]。この ころ、ハタハタと いう さかなが たまごを うみに きます。ハタハタは、さかなへんに 雷と かいて よむ ことが あります[2]。
では、冬の 雷は、なつの 雷と おなじ ものなの でしょうか。
2. 冬の 雷は、なにが ちがうの?
2. 数は少ないのに「一発」が強い冬の雷
2. 一発雷:放電回数が少ない冬季雷と、低い雲
日本海がわの 冬の 雷は、「いっぱつらい」と よばれる ことが あります。名まえの とおり、ピカッと 光る 回数が すくなく、ながくても 1じかん いかと いわれます[3]。
もう ひとつの ちがいは、雲の ひくさです。冬の 雷雲では、電気の たまる ばしょが 夏より ひくい ことが あります。雲の そこも、1キロメートルより ひくいと 書いた 研究が あります[6]。
ひくい ところで 雷が おきると、地めんに とても ちかく なります。この ちかさが、つぎの はなしに つながります。
日本海沿岸の冬の雷は、おもに11月〜3月ごろに起きます[3]。「一発雷」という名前のとおり、放電の回数が少なく、続く時間は1時間以下で、電気の活動は比較的弱いことが知られています[3]。冬の雷の本格的な研究は、1997年の時点で20数年ほどと、歴史が浅い分野でした[3]。
もう一つの特徴は、雲の低さです。冬の雷雲では、雲の中の電気(電荷)のたまっている位置が夏より暖かい、つまり低い所にあるとされ、たとえば負の電荷は0℃の高さか、それより低い所にあると報告されています[4]。雲の底の高さは1km以下で、夏より低いという記述もあります[6]。
雲が低いと、雲と地上の物のあいだの距離が短くなります。これが、雷の向きにどう影響するのでしょうか。
日本海沿岸の冬の雷は11月〜3月ごろに起き、「一発雷」の名のとおり放電回数が少なく、継続は1時間以下で、電気的活動は比較的弱いとされてきた[3]。ただし、この論文が書かれた1997年の時点で、冬季雷の本格的な研究は20数年ほどにすぎない[3]。
ところが、夏の雷雲との構造のちがいが、冬ならではの現象を生む。冬の雷雲では降水粒子の電荷の位置が夏より暖かい(低い)所にあり、たとえば負電荷は0℃高度か、それより低い所にある(Magonoほか、1980年の報告を引いた竹内・仲野による)[4]。また、冬の雷雲の底の高度は1km以下で夏より低いと、ICRC2019の論文は記している[6]。
雲が低いと、地上の高い物との距離が短い。その結果、何が起きるのか。
3. 雷は、した から うえへも のびるの?
3. 高い鉄塔の先から、雲へ向かう雷
3. 上向きリーダーとトリガード落雷:スカイツリーの観測例
雷は、雲から 地めんへ おちる もの、と おもいがちです。でも、たかい とうなどの さきから、雲へ むかって のびる 雷も あります[4]。
たかい ものの さきでは、電気の ちからが つよく なり、そこから 光の すじが のびる のです。「うえむきの 雷」と よばれます。
とうきょうスカイツリーでは、できてから 6ねんの あいだに 雷が 62かい きろくされました。うえむきが 37かい、したむきが 25かいでした[5]。これは 冬だけの かずでは ありません。
この うえむきの 雷は、ほかの たてものに とって、どんな ことが あるの でしょう。
雷には、雲から下へ伸びる自然落雷のほかに、地上の高い建造物の先から雲へ向かって伸びるものがあります。高い物の先端では電界が強まり、そこで空気が電気を通すようになって、上向きの放電の筋(上向きリーダー)が出ます[4]。これを「トリガード落雷」と呼び、自然落雷と区別します[4]。
東京スカイツリーでは、完成後の6年間に62回の雷が記録され、上向きが37回、下向きが25回でした。高さ497mの地点に電流のセンサーを付けて、電力中央研究所が観測した結果です[5]。この数字は冬限定のものではないので、冬の雷の数とは別に読む必要があります。計算すると、上向きは全体の約6割です。
日本海沿岸の冬、高い構造物に落ちる雷は、ほとんどが上向き雷だと報告されています[7]。この雷は、建物にとってどんな問題になるのでしょうか。
雷の多くは雲から地上へ向かう下向き雷(自然落雷)だが、高い建造物の先端では電界が強まり、そこで絶縁破壊(空気が電気を通すようになること)が起きて、上向きリーダー(雷の先ぶれの放電の筋)が雲へ伸びることがある[4]。これがトリガード落雷で、自然落雷とは発生のしくみが異なる[4]。
では、実際の割合はどうか。東京スカイツリーでは、完成後6年間に62回の雷が記録され、内訳は上向き37回、下向き25回だった。497m地点のロゴスキーコイル(電流センサー)で電力中央研究所が観測した[5]。37÷62で約6割が上向きになるが、通年の数字なので、冬季雷だけの割合として読んではいけない。同じ記事は、カナダのCNタワー(553m)で観測された雷は上向きだけだったとも伝えている[5]。
日本海沿岸の冬に高い構造物へ落ちる雷は、ほとんどが上向き雷とされる[7]。それでは、この雷は風車にどう影響するのか。
4. 風車は、どうして 雷を うけやすいの?
4. 日本の風車と上向き雷
4. 風車の被害と日本型ガイドライン
うみの ちかくの 風車は、たかい ところに はねが あります。冬に、うえむきの 雷が くる ことが あります。
雷が ながく 電気を ながす ことが あると、ふつうの 雷より 電気の りょうが 大きい ことも ある と、ほうこくされて います[7]。
だから、風車に 雷が あたったら、風車を とめて しらべます。はねの ながさが 40メートル いじょうの ものも あり、こわれた まま まわすと あぶないからです[8]。
日本の風車では、冬の雷による被害が多く、冬の雷は世界的にもまれな、エネルギーの大きい雷だと説明されています[9]。冬の日本海沿岸では上向き雷が多く観測され、電流が長く続き、大きな電気が動く例も報告されています[7]。
風車が雷を受けたあとに運転を続けると、長さ40m以上の羽根が壊れて飛ぶ危険があります。そのため、落雷のあとは風車を止めて点検します。風車の塔に流れる電流が作る磁界から、雷を検出する装置もあります[8]。
三菱重工の2007年の報告は、2003年以降の実測を踏まえ、国際規格(IEC-61400-24)だけでは日本には不十分で、日本向けの指針が必要だと結論しました[9]。日本では、国際規格だけでは不十分だと報告されています。
冬季の風車雷撃では上向き雷が多く観測され、継続電流が長く大きな電荷移動を伴う事例も報告されている[7]。
風車では、落雷後に運転を続けると、40m以上の羽根が破損して飛散する危険があり、落雷時は止めて点検する[8]。塔に流れる電流が作る磁界で落雷を検出する装置もある[8]。
では、国際的な設計の基準で足りるのか。三菱重工技報(2007年)は、2003年以降の実測から、国際規格IEC-61400-24だけでは日本には不十分で、日本型の指針が必要だと結論し、冬季雷を世界的にもまれな高エネルギーの雷と位置づけた[9]。なお、「通常の100倍のエネルギー」という説明が企業ニュースなどに見られるが、何を比べた値かは出典に示されていない。この記事では数値として使わない。
こうした雷の中で、何が起きているのか。雲の中を直接見られないため、地上に届く放射線を手がかりに観測する。
5. 雲の なかを、どうやって しらべるの?
5. 地上に降る放射線で、雷雲を調べる
5. 日本海沿岸のガンマ線観測:グローと陽電子
雲の なかは、のぼって いって しらべる わけには いきません。そこで、地めんに ふってくる 「ほうしゃせん」を はかる ひとたちが います。
京都大学などの けんきゅうの なかまは、2006ねんから 10ねん いじょう、日本海がわの にいがたや 石川で、冬の 雷雲の ほうしゃせんを はかって きました[6]。冬は 雲が ひくいので、ほうしゃせんが 地めんまで とどきやすいのです。
この けんきゅうでは、ながく つづく ものと、雷に ともなう みじかい ものの 2しゅるいが 見つかって います[6]。
冬の雷雲は低く、そこで出た放射線が地上まで届きやすいことを利用して、京都大学などのGROWTH共同研究は、2006年から10年以上、新潟県や石川県で冬の雷雲の放射線を測ってきました[6]。
その結果、冬の雷雲から降るガンマ線には、数十秒〜数分続く「ガンマ線グロー」と、雷に伴う短い「ショートバースト」の2種類があることが分かりました[6]。
2017年2月には、新潟県柏崎市で起きた冬の雷の直後に、電子の反物質である陽電子に特有のガンマ線が記録され、雷雲の中で陽電子ができていることが分かったと、京都大学の研究として報じられました[10]。
こうした観測を、研究者だけでなく、地域の人たちと広げる試みも始まっています。
冬の雷雲は低く、地上に放射線が届きやすい。この条件を生かして、京都大学などのGROWTH共同研究は、2006年から10年以上、新潟・石川の日本海沿岸で放射線の測定システムを運用してきた[6]。
観測では、数十秒〜数分続く「ガンマ線グロー」と、雷に伴う短い「ショートバースト」の2種類が見つかった[6]。さらに、2017年2月に新潟県柏崎市で起きた冬の雷の直後に0.511MeVのガンマ線が記録され、雷雲の中で陽電子(ようでんし)ができていることが示された。ガンマ線が窒素の原子核を変える光核反応が関わるとされる[10]。なお、この陽電子の件は、記事の要約ページに基づく記述である。
観測点が少なければ、広い雷雲のごく一部しか見えない。この問題に、どう答えるのか。
6. おうちの そばに、雷雲の けんさきを おく?
6. 家に置く小さな検出器で作る観測網
6. 雷雲プロジェクト:市民サポーターの検出器網とその成果
「雷雲プロジェクト」では、しみんサポーターの おうちに、ちいさな ほうしゃせんの はかり 「コガモ」を おきます。たくさんの いえで、雷雲から ふる ほうしゃせんを はかる のです[11]。
2021ねん 12がつ 30にちには、かなざわの 5か所で、雷雲の ほうしゃせんが はかれました。つよい でんきの ばしょの ちかくで、雷が はじまる ようすが かんそくされました[11]。
ふつうの いえが、雷雲の けんきゅうの なかまに なれる のです。
「雷雲プロジェクト」は、市民サポーターの自宅に小型の放射線モニタ「コガモ」を置いて観測網を作る、市民科学の取り組みです[11]。多くの地点で測ることで、広い雷雲のようすを捉えられるようになります。
2021年12月30日には、金沢市の5地点で雷雲のガンマ線を検出し、強い電場の領域の近くで、雷の放電が始まるようすが観測されました。この成果は2023年7月に、学術誌Geophysical Research Lettersで発表されています[11]。
雲の中を直接は見られなくても、地上の多くの家に置いた小さな検出器の記録から、雷の始まりが見えてきた、という例です。
観測点の少なさに、市民参加で答えたのが「雷雲プロジェクト」である。市民サポーターの自宅に小型放射線モニタ「コガモ」(Compact Gamma-ray Monitor)を置き、雷雲から降る雷雲ガンマ線を多地点で測る観測網を作った[11]。
2021年12月30日には、金沢市の5地点で雷雲のガンマ線を検出し、強い電場の領域の近くで、雷放電が始まるようすが観測された(2023年7月、Geophysical Research Letters)[11]。
雲が低い冬の雷だからこそ、放射線が地上まで届き、家庭に置いた検出器でも雷雲の手がかりが得られる。出典欄の報道発表や論文には、観測の方法やデータの読み方が詳しく書かれているので、原文にあたってほしい。
自分でも しらべて みたく なったら
自分でも調べてみたくなったら
自分でも調べてみたくなったら
今日できること
お天気の ニュースで、あなたの すむ まちの 雷の きろくを 聞いて みましょう。冬の ニュースで 雷の はなしが あるか、気を つけて 見て みます。
出かけてできること
高い とうや 風車の 近くを 通る ときは、遠くから 見て みましょう。雷の 日は 近づきません。
こうしきの 情報
京都大学や かなざわ大学の ホームページに、「雷雲プロジェクト」の おしらせが 出て います。
今日できること
気象庁の過去の気象データで、住んでいる地域の月別の雷日数を調べましょう。夏と冬のどちらに多いかが分かります。
出かけてできること
海沿いの風車や高い鉄塔を、遠くから観察してみましょう。雷が予想される日は、近づかないでください。
公式情報
気象庁のこども向けQ&Aに冬の雷の説明があります。京都大学・金沢大学の報道発表には、雷雲プロジェクトの観測成果が載っています。
今日できること
気象庁の過去の気象データで、地点ごとの雷日数を月別に比べ、冬に多い地域と夏に多い地域の分布を調べる。
出かけてできること
風車や高い鉄塔を、安全な距離から観察する。雷の予報が出ている日は近づかない。
資料を読むなら
気象庁のQ&A、京都大学・金沢大学の報道発表(2023年7月6日)、ICRC2019のTsuchiyaらの論文が、この記事の中心になる資料である。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
冬の雷の基本は気象庁と気象学会誌に、観測と市民参加の研究は大学の報道発表と国際会議論文に、風車の話は企業の技報や発表に依拠した。上向き雷と風車の被害の一部は、論文や技報の要旨で確かめた範囲にとどめた。
- 気象庁「こども向けQ&A(冬の雷)」 https://www.jma.go.jp/jma/kids/kids/faq/a3_33.html (冬の日本海側で雷が多いこと・発生条件)
- 秋田労災病院通信 No.238(2024年1月) https://akitah.johas.go.jp/magazine/2024/1.pdf (秋田の月別雷日数・ハタハタ)
- 李ほか「発雷から見た北陸沿岸の冬季雷雲の特徴」天気44(11), 1997 https://www.metsoc.jp/tenki/pdf/1997/1997_11_0809.pdf (一発雷・研究の歴史)
- 竹内・仲野「北陸における冬の雷の研究」天気(1983) https://www.metsoc.jp/tenki/pdf/1983/1983_01_0013.pdf (電荷の位置・トリガード落雷)
- ニュースイッチ(日刊工業新聞)スカイツリーの落雷観測 https://newswitch.jp/p/10127 (スカイツリーの上向き・下向きの回数)
- Tsuchiya ほか "Gamma-ray observations at the coastal area of Japan Sea in winter seasons" ICRC2019 https://pos.sissa.it/358/1163/pdf (雲の低さ・GROWTH観測・2種類のガンマ線)
- Saito and Ishii(東京大学)ほか、上向き雷に関する論文 https://www.vaisala.com/sites/default/files/documents/Relationship%20between%20aerological%20stability%20and%20charge%20amount%20of%20upward%20lightning_M.%20Saito%20and%20M.%20Ishii.pdf (上向き雷の被害・要旨で確認)
- りそな財団掲載の企業ニュース(風車直撃雷検出装置) https://www.resona-fdn.or.jp/data_files/view/1181/mode:inline (落雷後に風車を止めて点検)
- 三菱重工技報 44(4) 2007 要旨 https://www.mhi.com/jp/technology/review/abstract-44-4-17 (風車の冬季雷・日本型指針)
- 科学技術振興機構 サイエンスポータル(2017-12-01) https://scienceportal.jst.go.jp/newsflash/20171201_01/ (雷雲での陽電子)
- 京都大学・金沢大学ほか 報道発表(2023-07-06) https://www.kanazawa-u.ac.jp/wp/wp-content/uploads/2023/07/230706.pdf (雷雲プロジェクト・コガモ)
なおした ところ
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