1. キツツキは 世界に 何種 いるの?
1. 世界のキツツキは、何種いるといわれているのか
1. 世界のキツツキは何種か:資料ごとに答えが割れる
答えは、1つに 決まって いません。一例では、名簿の ひとつ「Clements(クレメンツ)」は 235しゅ、べつの 「HBW/BirdLife(ビーエイチダブリュー・バードライフ)」は 254しゅと しています。これは、Wikipediaの「List of woodpeckers」が引用している 名簿の 数です[1]。
日本の 百科事典も そうです。「日本大百科全書」は 約210しゅ、「ブリタニカ国際大百科事典」は 約230しゅと 書いて います[7]。
数が 1つに ならない のは、なぜでしょう。
世界のキツツキ(キツツキ科)は何種か。答えは1つに決まっていません。一例として、Clements(クレメンツ)の名簿の2023年版は235種、HBW/BirdLife(ハンドブック・オブ・ザ・バーズ・オブ・ザ・ワールド/バードライフ)の名簿のv8(2023年)は254種としています。これらは、Wikipediaの「List of woodpeckers」が引用している各名簿の数です[1]。254から235を引くと19。小さいほうに対して約8%、つまりおよそ12種に1種ぶんの開きです。
名簿というのは、世界の鳥の名前と種数を学会などがまとめた表のことです。同じ年の名簿どうしでも、数がずれます。日本の百科事典でも、日本大百科全書は約210種、ブリタニカ国際大百科事典は約230種と書いていて、数がそろいません[7]。
ただし、古い資料ほど少ないとは決められません。では、同じキツツキを数えているのに、なぜ数が変わるのでしょうか。
世界のキツツキ科は何種か。この問いに、名簿共通の答えはない。Wikipediaの「List of woodpeckers」が引用する各名簿によれば、Clementsの名簿(eBird、2023年版)が235種、HBW/BirdLifeの名簿(v8、2023年)が254種で、差は19種である[1]。254÷235は約1.08なので、小さいほうに対して約8%の開きになる。名簿の原本ではなく引用経由の数字なので、「一例」として読んでほしい。
名簿とは、世界の鳥の学名と種数を、学会や団体が定期的に更新しながらまとめた一覧である。IOC世界鳥類リストも別の名簿の一つで、2024年8月のv14.2ではキツツキ科を241種・36属としている[1]。つまり同じ時期に、235、241、254という三つの数が並んでいたことになる。
日本の百科事典も割れている。日本大百科全書は約210種、ブリタニカ国際大百科事典は約230種で、世界大百科事典は日本に10種が留鳥か漂鳥として生息すると記す[7]。ただし版の古さが影響している可能性が高く、「古いほど少ない」とまでは言えない。では、同じ鳥を数えて、なぜ数が変わるのか。
2. 「1しゅ」の 線は、だれが 引くの?
2. 数がずれるのは、「1種」の線の引き方が違うから
2. 数がずれる理由:「何をもって1種とするか」の基準の違い
切手を あつめる 人が、色が すこし ちがう 切手を 「べつの 1まい」と 数えるか、「同じ 切手」と 数えるかで、全部の 数が かわるのと にています。ただし 鳥の しゅは、切手のように きっぱり 決まっては いません。
名簿の ちがいは、「どこから べつの しゅと するか」の 判断の ちがいから 生まれます。HBW/BirdLifeは、羽の 色や 鳴き声を 重く 見る 独自の 基準を 使い、IOCは 遺伝子の ちがいを より 重く 見る、と 鳥の 旅行会社の 解説に あります[2]。ほんとうの 分類は、いくつもの 証拠と 基準で 決められます。
考え方が ちがえば、同じ 鳥でも 「1しゅ」か「2しゅ」か、変わるのです。
本当に そんな ことが あるのでしょうか。ある キツツキで 見て みましょう。
名簿の数がずれる大きな理由は、「何をもって1種とするか」の判断が名簿ごとに違うことです。たとえるなら、切手を集める人が、色が少し違う切手を「別の1枚」と数えるか「同じ切手」と数えるかで、全体の数が変わるようなものです。ただし鳥の種は、切手のようにきっぱり決まったものではなく、実際の分類は複数の証拠と基準にもとづきます。
ある鳥の旅行会社の解説では、HBW/BirdLifeは羽の色や鳴き声など遺伝以外の特徴を重く見る独自の基準(Tobias基準)を使い、IOCは遺伝の情報をより重く見る、とされています[2]。
種の考え方そのものにも複数あります。交配できるかどうか(相手選び)に注目する生物学的種概念と、特徴の違いのパターンに注目する系統学的種概念です。後者で鳥全体を数え直した研究では、伝統的な約9,100種に対して約18,000種という見積もりが出ています。これは鳥全体の話で、キツツキだけの数字ではありません[4]。
では、名簿の線引きが変わると、実際にどんな鳥が「1種」から「2種」になるのでしょうか。
数がずれる主な理由は、種の線引きの基準が名簿ごとに異なることである。旅行会社の解説によれば、HBW/BirdLifeは羽色・鳴き声など遺伝以外の特徴を重く見る独自の基準(Tobias基準)を使い、IOCは遺伝情報をより重く見るとされている[2]。ただしこれは旅行会社の解説による説明で、実際の分類は複数の証拠と基準にもとづく。
背景には、種という概念自体が一つでないことがある。生物学的種概念は交配(相手選び)の可否に注目し、系統学的種概念は特徴の違いのパターンに注目する。後者の立場で形態データから鳥全体を数え直した2016年の研究は、伝統的リストの約9,100種に対し約18,000種と見積もった[4]。これは鳥全体の数字で、キツツキに当てはめた数ではない。ここから言えるのは、「正しい種数」が一つあって名簿の一部がそれを外している、という構図ではない、ということだ。
ただし、235〜254種の19種の差が、どの種のどの判断から生じているのかは、今回の資料では内訳までは示されていない。「差のほとんどは分割と統合だ」とも断定できない。では、線引きの違いが実際に1種を2種に変えた例を見よう。
3. 見た目が 同じなのに、2しゅに 分けられた キツツキは?
3. 見た目がそっくりなのに、2種に分けられたミユビゲラ
3. 1種が2種になった例:ミユビゲラの分割(2003年)
ミユビゲラと いう キツツキが います。むかしは 1しゅと されて いましたが、2003年に 「アメリカミユビゲラ」と 「ヨーロッパ・アジアの ミユビゲラ」の 2しゅに 分けられました[3]。
見た目は ほとんど 同じです。けれど、体の 細かい つくりを 決める 遺伝子の 並びと、鳴き声が ちがって いました[3]。
遺伝子の 並びや 声の ちがいは、ほかの 見た目の ちがいが 少なくても 見つかる ことが あります。
こうして 名簿が 見なおされると、数が 1つ ふえる ことが あります。では、見なおしは 1回で おわるのでしょうか。
ミユビゲラというキツツキは、昔は世界で1種とされていました。それが2003年、アメリカミユビゲラと、ヨーロッパ・アジアのミユビゲラの2種に分けられました。アメリカの国立公園局の解説によると、2種は見た目がほぼ同じですが、ミトコンドリアDNAの配列と鳴き声が違います[3]。
もし、羽の色や形だけで分けるなら、1種のままでよかったはずです。それなのに2種になったのは、見た目に出ない違いも判断に使ったからです。DNAの配列や声の違いは、見た目が同じでも知られている違いです。
こうした分割や統合が、名簿ごとにいくつも積み重なって、種数の違いにつながっているのだと考えられます。ただし19種の内訳がどの鳥なのかまでは、この記事の資料では示されていません。
では、名簿の数はいったん決まれば動かないのでしょうか。
ミユビゲラは、2003年にアメリカミユビゲラとユーラシアのミユビゲラの2種に分けられた。アメリカの国立公園局の解説では、2種は見た目がほぼ同一だが、ミトコンドリアDNAの塩基配列と鳴き声が異なる[3]。
この例が示すのは、同じ鳥を見ていても、何を決め手にするかで数が変わるということだ。羽の模様や体の大きさだけなら1種のままだが、遺伝情報や鳴き声まで含めると2種に分かれる。IOCが遺伝情報を重く見るといわれる点とも矛盾しない。
当然、こうした判断は一度で終わらない。研究が進めば、分けたものが戻ることもあれば、さらに分かれることもある。実際に、名簿の数は版ごとに動いている。
4. 名簿の 数は、あとから かわる ことも あるの?
4. 名簿の数は、版が変わると動くのか
4. 同じ名簿の中でも数は動く:IOCのキツツキ科の例
あります。IOCの 名簿では、2024年8月の 版で キツツキの なかまは 241しゅでした[1]。ところが、2025年12月の 版では 240しゅと 書かれて います[8]。
約16か月で 1しゅ ちがいます。同じ 名簿でも、版が ちがうと 数が かわる 例です。どの 鳥の あつかいが かわったかは、ここで 使った 資料からは わかりません。
IOCは 鳥ぜんたいの 数も、2026年4月の 版(v15.2)で 11227しゅと して います。そのうち 164しゅは、もう いなく なった 鳥です[6]。
名簿が いくつも あって、それぞれ 動く。ならば 1つに そろえたい、と 考える 人が でて きます。
動きます。IOC世界鳥類リストでは、2024年8月のv14.2でキツツキ科は241種・36属でした[1]。ところが2025年12月のv15.1では240種・36属と紹介されています[8]。同じ名簿でも、版どうしで種数が1種違います(約16か月の間)。どの鳥の扱いが変わったかは、この記事の資料からは分かりません。
IOCは、2026年4月の版(v15.2)で、鳥全体を11,227種と数えています。そのうち164種は、すでに絶滅した種です[6]。数は、名簿が更新されるたびに動いてきました。
つまり「世界のキツツキは○種」という数は、どの名簿の何年の版かをセットにしないと意味が決まりません。本や図鑑に書かれた数が違っていても、版や名簿が違うだけのことが多いと考えられます。
名簿がばらばらでは、研究者も、鳥を観察する人も困ります。そこで動き出したのが、名簿を1つにする計画でした。
名簿は同じものでも版ごとに動く。IOCのキツツキ科は、2024年8月のv14.2で241種・36属[1]、2025年12月のv15.1では240種・36属と紹介されている[8]。名簿の版によって数が変わる例で、約16か月で1種違うが、どの種の扱いが変わったかは今回の資料からは分からない。
鳥全体でも、IOCは2026年4月の版(v15.2)で11,227種(絶滅した164種を含む)としている[6]。ここで注意したいのは、数の中に絶滅種を含むかどうかなど、数え方の条件も名簿ごとに違いうる点である。数字を比べるときは、名簿名・版・年を一緒に見ないと、意味がずれる。
だからこそ、複数の名簿を使う側は困る。研究者が論文で使う種名や種数がそろわないと、データをつなぎにくい。そこで動き出したのが、名簿そのものを一つにまとめる試みだった。
5. 名簿は 1つに まとまるの?
5. 2025年、名簿を1つにするAviListが公開された
5. 名簿の統一:AviList(2025年6月公開)は数を一つにするのか
2025年6月、IOC、Clements、BirdLifeの 名簿を まとめた 新しい 名簿「AviList(エイビリスト)」が 公開されました。鳥ぜんたいで 11131しゅ、252の 科が のって います。1年に 1回、見なおす 予定です[5]。
名簿が ひとつに なれば、「どの 名簿を 見たかで 数が ちがう」問題は へる はずです。ただ、キツツキの なかま だけの 数は、この 記事を 書くときに 公式ページで 見つけられませんでした。
見なおしは 毎年 つづくので、数は これからも 動くでしょう。
2025年6月、AviList(エイビリスト)という統一名簿が公開されました。IOC、Clements、BirdLifeの名簿をまとめたもので、鳥全体で11,131種・252科・2,376属。年に1回の改訂が予定されています[5]。
名簿が1つになれば、どの名簿を見たかで数が違う問題は、少なくなるはずです。これはこの記事の予想で、公式ページにはキツツキ科の種数が出ていなかったため、AviListでのキツツキの数は示せません。
ここで大切なのは、1つになっても「数が決まって動かなくなる」わけではないことです。年に1回見直される名簿では、これからもどこかの種が分けられたり、まとめられたりするでしょう。種数は、完成した答えではなく、そのときの研究の到達点です。
数がずれることを知ったうえで、身のまわりのキツツキをもう一度見ると、どう見えるでしょうか。
2025年6月に公開されたAviListは、IOC・Clements・BirdLifeの名簿を統合した統一名簿で、鳥全体で11,131種・252科・2,376属を収める。改訂は年1回の予定である[5]。複数の名簿で割れていた種レベルの扱いを調整する試みだが、AviList公式ページにはキツツキ科だけの種数が載っておらず、本稿ではその数を示さない。
統一により、どの名簿を引用するかで数が変わる問題は和らぐ可能性がある。ただし、これは本稿の見通しで、資料が述べていることではない。さらに、年1回改訂される以上、種数が固定されるわけではない。IOCも2026年4月にv15.2を公開している[6]。
結局、種数とは「そのときの研究と合意の到達点」であり、不変の自然の数ではない。線引きの考え方が複数ある以上、数が動くこと自体は、研究が進んでいるしるしでもある。
6. 図かんの 数字を 見くらべて みよう
6. 図鑑の数字は、どの名簿の何年の数か
6. 数字を読むとき:名簿・版・年を一緒に見る
日本には 10しゅほどの キツツキが すんで いると、百科事典に あります[7]。アカゲラ、アオゲラ、クマゲラ、ノグチゲラなどが その なかまです。
図書館で、図鑑を 2さつ ひらいて みましょう。世界の キツツキの 数が のって いる 本が あれば、2さつを 見くらべます。数が ちがったら、どちらが まちがいと 考える前に、「いつの 本で、どの 名簿を つかって いるかな」と、本の さいごの ページ(おくづけ)を 見て みます。
数が ちがう わけが、見えて くるかもしれません。
日本には10種のキツツキが留鳥か漂鳥として生息しているとされます[7]。アカゲラ、アオゲラ、クマゲラ、ノグチゲラなどがその仲間です。
図書館で、キツツキが載っている図鑑や百科事典を2冊、借りてみてください。世界の種数が書かれていたら、数を並べて見比べます。違っていたら、どちらが間違いと考える前に、本の最後の奥付で発行年を見て、巻末や解説に「どの名簿によるか」が書いてあるかを探します。
書かれていなければ、手がかりは発行年だけです。それでも、「この数は何年の考え方なのか」と考える視点が持てます。
図鑑や百科事典の種数を読むときは、数字だけでなく、どの名簿の何年の版に基づくかを一緒に見たい。日本大百科全書の約210種とブリタニカ国際大百科事典の約230種が違っても、どちらかが誤りとは限らず、基準や時期の違いで説明できる余地がある[7]。
日本のキツツキは世界大百科事典によれば10種で、アカゲラ、アオゲラ、クマゲラ、ノグチゲラなどがいる[7]。身近な鳥の分類も、名簿が改訂されるたびに、属や種の扱いが動く可能性がある。
原典に当たるなら、IOC世界鳥類リスト[6]とAviList[5]の公式サイトが入口になる。いずれも英語だが、キツツキ科(Picidae)の欄に並ぶ学名と、各版の更新記録を見れば、種数が動く様子を自分の目で追える。図書館の図鑑2冊の数字を見比べて、その差が名簿の違いで説明できるかを考えるのも、手軽な練習になる。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
名簿の原本(Clements、HBW/BirdLife)は直接開けなかったため、百科事典サイト経由の数字は「一例」として使っています。キツツキ科の種数はIOCの版でも変わるため、どの版かを書いています。
- Wikipedia「List of woodpeckers」(IOC v14.2、Clements 2023、HBW/BirdLife v8 の種数の引用元)。 https://en.wikipedia.org/wiki/List_of_woodpeckers (名簿ごとの種数)
- Birding Ecotours「Which world bird list to use」。 https://www.birdingecotours.com/bird-listing (名簿ごとの基準の違い。旅行会社の解説で、個人の見解を含む)
- US National Park Service「Three-toed Woodpecker」。 https://www.nps.gov/romo/learn/nature/three_toed_woodpecker.htm (ミユビゲラの分割)
- Barrowclough et al. 2016, PLOS ONE。 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5120813/ (種の考え方と鳥全体の種数の見積もり)
- AviList 公式サイト。 https://www.avilist.org/ (統一名簿の概要)
- IOC World Bird List。 https://www.worldbirdnames.org/new/ (IOC v15.2 の鳥全体の種数)
- コトバンク「キツツキ」(日本大百科全書、ブリタニカ国際大百科事典、世界大百科事典)。 https://kotobank.jp/word/%E3%82%AD%E3%83%84%E3%83%84%E3%82%AD-51091 (日本の百科事典の種数、日本の種数)
- oiseaux.net(フランスの鳥類サイト)のキツツキ科のページ(IOC v15.1、2025年12月、240種・36属)。 https://www.oiseaux.net/birds/picidae.html (IOCの版による種数の違い)
なおした ところ
更新履歴
更新履歴(改版の記録)
- 初版を公開。
このサイトでは、公開した記事の本文は原則として書き直しません。誤りが見つかったときや、内容が古くなったときだけ手を入れ、その理由をこの欄に残します。