このサイトは、ほんの入り口です

ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

あぶらあげは、とうふを あげるだけなのに、なぜ ふくらむの?

平たく切った豆腐が、油の中でふくらんで油揚げになるのはなぜ?

厚さ3cmの油揚げは、どうやってふくらむのか

分野:技術

あぶらあげは、うすく きった とうふを あぶらに いれて つくります。あぶらの なかで ふくらんで、ある こうじょうの ひとの はなしでは、もとの 1.5ばいほどに なるそうです。

ひらたい とうふが、どうして ふくらむのでしょう。この ページを よむと、2かいに わけて あげる わけと、なかが スポンジの ように なる ようすが わかります。

平たく切った豆腐を油に入れると、自然に浮かび上がりながらふくらみ、油揚げになると元の生地の約1.5倍になる。ある生協向けの工場の担当者は、そう話しています[4]。ただしこれは一つの工場の一つの製品の話で、すべての油揚げの倍率ではありません。

水をたっぷり含んだ豆腐が、なぜ揚げるとふくらむのでしょうか。この記事を読むと、低い温度と高い温度で二度揚げする意味、中にできる小さな空洞の大きさ、ふくらむ仕組みがまだ研究の途中であることが分かります。

平たい豆腐の生地は、油の中で低温帯を出るころに自然に浮き上がり、油揚げになると元の約1.5倍にふくらむ。ある生協向けの工場の担当者の説明である[4]。この倍率は一社の一製品の話で、油揚げ全般の数値ではない。

水分の多い豆腐が、なぜ揚げるとふくらむのか。このメモを読むと、低温から高温へ移す二度揚げの意味、X線CTで見えた0.3〜0.5mmほどの空洞、膨化の機構がまだ十分に分かっていないことが分かる。新潟・栃尾のあぶらげは、調査された製品の約4.6〜6倍の厚さがある。

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1. あぶらに いれた とうふは、どう なるの?

1. 油に入れた豆腐は、自然に浮かび上がる

1. 浮かし揚げ:低温帯を出るころに生地が浮く

ある こうじょうでは、とうふの きじを、ひくい おんどの あぶらから、たかい おんどの あぶらへ すこしずつ うつして いきます[4]。

ひくい おんどの ところを でる ころには、きじは しぜんに うかんで きます。そのまま あぶらの うえで あがって いく やりかたを、「うかし あげ」と いうそうです。

この こうじょうの ひとは、ふちが でこぼこして いるのは うかし あげの しるしだと いいます。わくに はめて あげると、きれいな かたちに なりますが、かたい あぶらあげに なりやすいそうです。

では、あげる まえの きじは、なにから できているのでしょう。

生協向けの手揚げ風油揚げをつくる工場では、豆腐の生地を低い温度から高い温度へ、少しずつ温めながら揚げています。生地は油の中で浮いた状態のまま進み、低温の区間を出るころには自然に浮き上がってくる、と担当者は話します[4]。この揚げ方は「浮かし揚げ」の技法を応用したものだそうです。

この工場の担当者は、仕上がりの縁がでこぼこしているのは浮かし揚げの証だといいます。枠型にはめて均一に揚げる方法は見た目がきれいな反面、固い油揚げになりやすいという見方です[4]。これは一社の見解なので、業界の定説とまでは言えません。

この工場は菜種油を使い、低温の区間3か所と高温の区間2か所、合わせて5か所で温度を調整しています[4]。買ってきた油揚げの縁が少しでこぼこしていたら、浮かして揚げた手がかりかもしれません。

では、浮かんでふくらむ前の生地は、そもそも何からできているのでしょうか。

生協向けの手揚げ風油揚げの工場では、生地を低温から高温へ徐々に加熱し、油の中で浮かせたまま揚げる。「浮かし揚げ」の応用で、低温帯を出るころには生地が自然に浮き上がり、油揚げになると元の約1.5倍にふくらむと担当者は述べている[4]。

同じ担当者は、枠型にはめて均一に揚げる製法は見た目こそよいが固くなりやすく、縁がでこぼこしているのは浮かし揚げの証だとする[4]。これは一社の見解であり、枠型で揚げたものが必ず固くなるという話ではない。この工場は菜種油を使い、低温帯3か所・高温帯2か所の計5か所で温度を調整している。

ここで引っかかるのは、「浮く」ことの意味である。生地が浮く理由は、この資料には説明されていない。内部で何が起きているのかは、あとの章で別の資料を読んで考える。まずは、生地の正体から押さえる。

2. あげる まえの きじは、なにから できているの?

2. 揚げる前の生地は、水きりした木綿豆腐

2. 生地の正体:豆乳を凝固剤で固め、水をきった豆腐

あぶらあげの もとは、もめんとうふです。とうふは、だいずから つくります[1]。

だいずを みずに つけて、すりつぶして、あたためます。それを しぼると、とうにゅうと おからに わかれます。とうにゅうに、にがりなどの かためる ざいりょうを いれると、かたまって とうふに なります。

この とうふの みずを きって、うすく きった ものが、あげる まえの きじです[2]。

とうふを あぶらで あげるだけなのに、なぜ 2かいも あげるのでしょう。

栃木県の認証基準は、油揚げを「豆乳に凝固剤を加えて固め、水きりした生地を、油で揚げて膨張させたもの」と定めています[2]。つまり揚げる前の生地は、水きりした豆腐です。

石川県の基準にある工程図では、大豆を洗って水に浸し、すりつぶして加熱し、しぼって豆乳とおからに分けます。そこへ凝固剤を加えて固め、圧搾して形をととのえると木綿豆腐になり、これを揚げます[1]。凝固剤には、にがりの主成分である塩化マグネシウムや塩化カルシウムが挙げられています。栃木県の基準では硫酸カルシウムなども例に出ており、メーカーによって使うものはちがいます。

この工程図は一つの県の基準なので、すべてのメーカーがこの通りに作っているわけではありません。ただ、「豆乳を固めた豆腐を、水をきって揚げる」という骨組みは、2つの県の基準で共通しています。

揚げ油に入れるだけでよさそうなものを、なぜ多くの作り方は、温度を変えながら揚げるのでしょうか。

栃木県の認証基準は、油揚げを、豆乳に凝固剤を加えて固め水きりした生地を、油で揚げて膨張させたものと定義する[2]。石川県の基準の工程図では、大豆の水洗・浸漬、磨砕、加熱、圧搾による豆乳とおからの分離、凝固、圧搾・成型を経て木綿豆腐となり、そのあとで加熱(揚げ)が行われる[1]。

凝固剤は、石川県の基準では塩化カルシウムや塩化マグネシウム(にがりの主成分)が挙がり、栃木県の基準では硫酸カルシウムなども例示される。つまり、凝固剤の選び方は一つに決まっておらず、メーカーごとの差が出る余地がある。さらに石川県の基準は、消泡剤以外の食品添加物を使わないことを条件にしている。

注意したいのは、この工程図が一県の認証基準のものだという点で、全メーカー共通の工程と言い切ることはできない。それでも、豆乳を固めて水をきった豆腐が揚げ油に入るという骨組みは、2県の基準で一致している。木綿豆腐は水きりを経て比較的しっかり固まった豆腐で、これが生地になる。問題は、この生地をどう揚げるかである。

3. なぜ、ひくい あぶらと たかい あぶらで 2かい あげるの?

3. 低い温度の油と高い温度の油で、二度揚げする理由

3. 二度揚げ:低温で内側を作り、高温で外側を仕上げる

いしかわけんの きまりでは、あぶらあげは、「ひくい おんどと たかい おんどの 2だんかいの あぶらで あげた もの」と されて います[1]。

たかい おんどの あぶらだけで あげると、なまあげ(あつあげ)に なります。なまあげの なかは とうふのままで、あぶらあげの なかは スポンジの ような かたちを して います。

ふくいの あぶらあげは、ひくい あぶらに とうふを いれて、じっくり あげます。なんども ひっくりかえしながら、すこしずつ おんどを あげて いくそうです[3]。

にいがたの とちおでは、さいしょに 110ど くらいで 15〜20ぷん あげて、そのあとで 175ど くらいで すうふん あげる おみせが あります[6]。

ひくい あぶらの あいだに、おおきく なって、なかが スポンジの ように なります。たかい あぶらでは、そとが パリッと します。

では、なかは ほんとうに スポンジなのでしょうか。

石川県の基準は、油揚げを「木綿豆腐を、低温と高温の2段階の油で揚げたもの」と書いています。高温の油だけで揚げる生揚げ(厚揚げ)とは区別され、油揚げの内部はスポンジ状の組織、生揚げの内部は豆腐の組織だとされています[1]。

農林水産省の郷土料理の紹介では、福井の油揚げの作り方を、木綿豆腐を低温の油に入れて時間をかけてじっくり揚げ、何度もひっくり返しながら徐々に高温にしていく、と説明しています[3]。

温度が具体的に分かる例が、新潟の栃尾の店です。国土交通省の観光向け資料によると、まず約110℃で15〜20分揚げ、大きくなって内側がスポンジ状になったところで、約175℃で数分揚げて外側をパリッとさせます[6]。低い温度で長く、高い温度で短く揚げる順番です。温度や時間は栃尾の店の一例で、店ごとに揚げ方は異なります。

では、「スポンジ状」の中身は、どれくらいの大きさの空洞でできているのでしょうか。

石川県の認証基準は、油揚げを木綿豆腐を低温と高温の2段階の油で揚げたものとし、高温の油だけで揚げる生揚げ(厚揚げ)と分ける。違いは内部組織で、油揚げはスポンジ状、生揚げは豆腐組織であることが基準に書かれている[1]。

では、段階を分ける理由は何か。農林水産省が紹介する福井の製法は、低温の油でじっくり揚げ、何度もひっくり返しながら徐々に高温にする[3]。国土交通省の多言語観光資料が紹介する栃尾の店では、約110℃で15〜20分揚げて大きくなりスポンジ状の内側ができ、続いて約175℃で数分揚げて外側をパリッとさせる[6]。新潟県観光協会も、低温と高温で二度揚げすることで外はパリッと中はふっくらすると紹介する[7]。

資料の書き方を合わせて読むと、低温の段階が内側を作る役、高温の段階が外側を仕上げる役という分担になる。時間配分を見ても、栃尾の例では低温が15〜20分、高温が数分で、内側を作る段階のほうが長い。ただし温度・時間は一店の例であり、福井の説明も温度を数値では示していない。「なぜ低温だと内側がふくらむのか」という理由までは、これらの資料は述べていない。そこは、次の章の観察と、その次の章の研究報告から考える。

4. あぶらあげの なかを みると、どう なって いるの?

4. X線で見ると、中は小さな空洞でいっぱいだった

4. X線CTの観察:膨化後の0.3〜0.5mmのセルと、作り分けの数値

みやぎけんの けんきゅうで、あぶらあげの なかを、X線で しらべました。X線は、びょういんで ほねを うつす ときの、ものの なかを とおす ひかりです[5]。

あげる まえの きじでは、ちいさな あなは みえませんでした。あげた あとには、0.3ミリや 0.5ミリくらいの、ちいさな あなが たくさん ならんで いました。

0.5ミリは、シャープペンの しんの、ふとさと おなじくらいです。

おなじ げんりょうでも、あげかたで ちがう あぶらあげに なります。そとがわが あつい ものは じょうぶで、しるを よく すいこみます。そとがわが うすくて、とうふの ぶぶんが おおい ものは、にものに あうそうです[5]。

では、とうふの なかに、どうして あなが できるのでしょう。

宮城県の放射光利用の研修で、ある食品会社が油揚げの内部をX線CTで調べた報告があります。X線CTは、ものを壊さずに輪切りの像をとる方法です。報告によると、揚げる前の生地には空隙が見えず、膨化したあとでは0.3mmほどのセルと0.5mmほどのセルが見えました[5]。セルとは、小さな空洞のことです。0.5mmは、シャープペンシルの芯の太さ(0.5mmのもの)と同じくらいです。

なお、揚げる前に空隙が「見えなかった」ということは、空洞がゼロだったとまでは言えません。3つの製品を測った例であることにも注意が必要です。

同じ報告では、原料は水・大豆・にがり・油だけでも、揚げ方の作り分けで外側のフライ層と内側の豆腐質の割合が変わることも示されています。厚さ5mmで6対4のものは丈夫で汁を含みやすく、4対6のものはなめらか、厚さ6.5mmで2対8のものは豆腐の感じが残って煮物に向く、という説明です。フライ層の空隙率は製品によって84%、66%、41%とばらつきました[5]。

同じ豆腐から、これだけ性格の違う油揚げができるのは、揚げる過程のどこかで空洞のでき方が変わるからでしょう。では、その空洞はどうやってできるのでしょうか。

宮城県の放射光利用実地研修の成果報告(太子食品工業)は、油揚の網目構造の形成をX線CTなどで調べている。揚げ油に入れる前の生地では空隙が見えず、膨化後には0.3mm程度と0.5mm程度のセルが確認された[5]。0.5mmはシャープペンシルの芯の太さに近い。ただし「見えず」は検出できなかったという意味で、空隙が存在しないことの証明ではなく、測定も3製品に基づく。

この報告は、原料が水・大豆・にがり・油だけでも、揚げ方によって外側のフライ層と内側の豆腐質の比率が変わることを示す。厚み5mmでフライ層と豆腐質が6対4の製品は丈夫で汁含みがよく、同じ5mmで4対6のものはなめらか、厚み6.5mmで2対8のものは豆腐感が残り煮物向きとされる。さらにフライ層の空隙率は84%、66%、41%と製品ごとに違った[5]。数値は3製品の例であり、油揚げ全般の値ではない。

空隙率は製品によって異なり、フライ層の内部構造に差があることが示されている。同じ原料でも揚げ方しだいで、汁をよく含む丈夫なものも、煮ても豆腐の感じが残るものもできる、と報告は述べる。では、そもそも空洞はどういう過程でできるのか。

5. なぜ ふくらむのかは、まだ わかって いないの?

5. ふくらむ仕組みは、まだ研究の途中

5. 油揚げがふくらむ仕組みは、まだ十分に分かっていない

さきほどの みやぎけんの ほうこくでは、あぶらあげが ふくらむ ようすを、3つの ことに わけて かいて います[5]。

ひとつめは、きじの ひょうめんに まくが できる こと。ふたつめは、おだやかな あわが でる こと。みっつめは、みずが すいじょうきに なって、あわを おおきく ふくらませる ことです。

ただ、この ほうこくは、あぶらあげの つくりかたは むかしからの やりかたを きかいに した ものだと かいて います。ふくらむ りゆうを かがくで しっかり たしかめた ものは、まだ すくないそうです。

だから、「みずが すいじょうきに なって ふくらむ」は、「そう かんがえられて いる」くらいの はなしです。

先ほどの宮城県の報告は、油揚げがふくらむときの内部の変化を、3つの現象で図に整理しています。生地の表面に膜ができること、穏やかな沸騰の泡が出ること、そして水蒸気によって気泡が大きくなることです[5]。

一方でこの報告は、油揚げの製造が「伝統的製法の機械化」であり、ふくらむ仕組みには科学的な根拠が乏しいとも述べています。つまり、これは一企業の研修報告の整理であって、「これが定説」と決まった話ではありません。

報告の書き方を見ると、昔から続く作り方を、あとから科学で確かめようとしている段階のようです。豆腐の水分が、表面の膜のある油の中で水蒸気になり、内側に泡を広げる。そう考えると、生地が浮くことも、低温から高温へ段階を踏むことも、つじつまが合いそうです。ただ、これは私たちが資料から想像した筋道で、実験で確かめられたと書かれているわけではありません。

この「ふくらむ力」を、いちばん大きく使った例が、新潟にあります。

宮城県の報告が図示するのは、表面膜の形成、穏やかな沸騰気泡、水蒸気による気泡の膨張という過程である[5]。同時にこの報告は、油揚の製造が伝統的製法の機械化であると述べ、膨化の仕組みを説明する科学的根拠は乏しいとしている。

「水蒸気で膨らむ」は、一企業の報告の図示であり、定説とは言えない。表面膜がなぜできるのか、低温でゆっくり温めることが膨張の大きさにどう効くのかは、まだ説明されていない。

筆者の読みとして、豆腐中の水分が水蒸気に変わることと、表面膜が泡を逃がしにくくすることが両方そろえば、スポンジ状の構造と段階的な加熱が説明できそうだが、これは推測である。製法が経験で磨かれ、理論が後から追う関係にあることが、この分野の面白さと言える。その「ふくらむ力」が大きく表れている例が、新潟にある。

6. にいがたの とちおの あぶらあげは、どれくらい おおきいの?

6. 新潟・栃尾のあぶらげは、厚さ約3cm

6. 栃尾のあぶらげは大きい:サイズと、誕生にまつわる2つの説

にいがた県の ながおか市の とちおには、とても おおきい あぶらあげが あります。ながさは 20センチくらい、あつさは 3センチくらいです[6]。

さきほどの けんきゅうで しらべた あぶらあげは、あつさが 5〜6.5ミリでした。それと くらべると、3センチは、5ばいから 6ばいぐらいの あつさです。とちおの あぶらあげは、「あぶらげ」と よばれて います。

この あぶらげが、いつ、どうして うまれたのかは、はっきりしません。えどじだいに とちおで うまれたと かんがえられて います。

ちかくの じんじゃの かんぬしさんが、おまいりの ひとの ために とうふやさんに たのんで つくらせた、という はなしが あります。うまいちに あつまる ひとの おつまみに つくった、という はなしも あります[6]。

新潟県長岡市の栃尾のあぶらげは、1枚が長さ約20cm、幅約10cm、厚さ約3cmと、ふつうの油揚げよりずっと大きなものです[6]。新潟県観光協会は長さ22cm・幅7cm・厚さ3cmと紹介しており、資料でサイズの数字が少し異なるため、この記事では「長さ約20cm、厚さ約3cm」と書いておきます[7]。

前の章の宮城県の報告で測っていた製品は、厚さ5〜6.5mmでした。そこで割り算をすると、栃尾の3cm(30mm)は、その約4.6〜6倍です。製品がちがうので厳密な比較ではありませんが、低温の油で長く揚げて内側をふくらませる力が、いちばん大きく出た例と考えることができます。

栃尾のあぶらげは、江戸時代に栃尾で生まれたと考えられていますが、どう生まれたかは分かっていません。2つの説が紹介されています。近くの神社の神官が豆腐屋に頼み、参拝に来る大勢の人のために作らせたという説と、越後の三大馬市場の一つだった栃尾で、取引に集まる人々の酒のつまみとして開発されたという説です[6]。どちらも「説」であり、栃尾が日本の油揚げの起源だとは言えません。

ここまでの話は、油揚げを手に取れば、少し確かめられます。

国土交通省の多言語観光資料が紹介する栃尾のあぶらげは、1枚が長さ約20cm、幅約10cm、厚さ約3cmである[6]。新潟県観光協会は長さ22cm・幅7cm・厚さ3cmとしており[7]、2資料でサイズの数字が少し食い違うため、ここでは「長さ約20cm、厚さ約3cm」程度にとどめる。

前章の宮城県の報告の記載では製品の厚みは5〜6.5mmで、30mm÷6.5mm≒4.6、30mm÷5mm=6から、栃尾の厚みは約4.6〜6倍となる。ただし比べているのは別々の製品で、仕上がりの用途も違うため、厳密な比較ではなく、スケール感をつかむための計算である。国土交通省の資料は、約110℃で揚げるとサイズが大きくなり、内側がスポンジ状になると紹介している[6]。

栃尾のあぶらげの由来は不明だが、江戸時代に栃尾で生まれたと考えられており、2説が伝わる。近くの神社の神官が豆腐屋に依頼し、大勢の参拝客のために作らせたという説と、越後の三大馬市場の一つである栃尾に集まる人々の酒のつまみとして開発されたという説である[6]。いずれも「説」で、これらの資料から油揚げ一般の起源は特定できない。起源を探すよりも、同じ「揚げた豆腐」が、土地の事情で大きさも使われ方も変わったことのほうが、確かな読みどころである。

7. おうちの あぶらあげを、じっくり みて みよう

7. 油揚げの縁と断面を、手に取って見比べる

7. 家の油揚げで確かめられること、原典の読み方

おうちに あぶらあげが あれば、おとなに ことわって、1まい かして もらいましょう。

まず、ふちを みます。でこぼこして いますか。まっすぐで きれいですか。

つぎに、てで うすく ひらくか、ちぎって、きりくちを みます。ちいさな あなが ならんで いるか、みて みましょう。あつあげ(なまあげ)が あれば、おなじ ように ちぎって、きりくちを くらべます。

ものさしで あつさを はかると、きょうの はなしの 5〜6ミリ、3センチと くらべられます。

縁と断面を見る

家に油揚げがあれば、1枚、手で縁を見てみましょう。でこぼこしているか、まっすぐ整っているかで、浮かし揚げと枠型のどちらに近いか、想像の手がかりになります(工場によって呼び方や作り方は違うので、決めつけはできません)。

次に、手で薄く開くか、ちぎって切り口を見ます。小さな穴が並んでいるかを見てみます。厚揚げ(生揚げ)があれば、同じようにちぎって切り口を比べます。石川県の基準では、油揚げの内部はスポンジ状、生揚げの内部は豆腐組織とされています[1]。ものさしで厚さを測ると、5〜6.5mmや3cmとも比べられます。

原典を読む

栃木県と石川県の認証基準は、県のサイトの資料として読めます。宮城県の報告のX線CTの画像も、出典欄から探せます。

家にある油揚げで確かめられることは3つある。縁の形(本文の工場はでこぼこの縁を浮かし揚げの特徴とするが、縁だけで製法は決められない)、切り口の空洞の並び方、そして厚さである。厚さをものさしで測れば、本文の5〜6.5mmや約3cmと比べられる。厚揚げと切り口を比べると、石川県の基準が述べる「スポンジ状組織」と「豆腐組織」の違いを、自分の目で見ることになる[1]。

原典は、栃木県と石川県の油揚げの認証基準(定義と品質の条件)、農林水産省の郷土料理の資料(福井の製法)、宮城県の放射光利用実地研修の成果報告(X線CTの画像と数値)である。出典欄から読める。特に宮城県の報告の図は、本文の「3つの現象」が実際にどう図示されているかを、自分で確認するのによい。栃木県の基準は、組織が柔らかく適度に膨張していること、固形分50%以上であることを品質の条件に挙げる[2]が、これは県の認証基準であり、全国一律の規格ではない。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

本文は、ここにある資料の内容を、自分の言葉で言いかえたものです。県の基準は県ごとに異なり、メーカーや店ごとに製法の細部も異なります。

  1. 石川県「油揚げの認証基準」 https://www.pref.ishikawa.lg.jp/nousei/brand/furusato/documents/1-05aburaage.pdf (二度揚げ・生揚げとのちがい・豆腐づくりの工程)
  2. 栃木県「油揚げの認証基準」 https://www.pref.tochigi.lg.jp/g03/work/nougyou/seisan-ryuutsuu/documents/09aburaage.pdf (油揚げの定義・品質の条件)
  3. 農林水産省「うちの郷土料理(油揚げ・福井)」 https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/traditional-foods/menu/aburage.html (福井の揚げ方の説明)
  4. コープ『コーポロ』2019年1月号 商品ものがたり https://www.kyoto.coop/copolo/data/copolo_1901/1901_copolo_6_7.pdf (浮かし揚げ・1.5倍・工場の温度管理)
  5. 宮城県 放射光利用実地研修 成果報告「油揚の網目構造形成過程の解析」 https://www.pref.miyagi.jp/documents/44673/838868.pdf (X線CTの観察・作り分け・膨化の整理)
  6. 国土交通省 多言語解説文データベース『栃尾のあぶらげ』 https://www.mlit.go.jp/tagengo-db/common/001781072.pdf (栃尾のサイズ・温度・生まれの2説)
  7. 新潟県観光協会「栃尾あぶらげ」 https://niigata-kankou.or.jp/feature/aburage (栃尾のサイズの照らし合わせ・二度揚げ)

なおした ところ

更新履歴

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