1. じょしゅせきの 画面は、だれも いない とき 何を して いるの?
1. 助手席の画面は、だれもいないとき何をしているのか
1. 空いた助手席で、画面は何を映すのか:複数の画面を1枚に見せる設計
メルセデス・ベンツの 「MBUX Hyperscreen」は、たくさんの 画面が ガラスの 下で とけあって、一まいの 大きな まがった 画面の おびに 見えます。ほんとうは 小さな 画面が いくつか あるのに、つなぎめが 目立たない ように しているのです。
いちばん おどろくのは、じょしゅせきの 画面です。人が すわって いない ときは、アニメーションの ほしが うかぶ かざりに なります。
いまの 車では、車によっては、ピラーから ピラーまで ひろがる 画面が、さいだい 50インチ(画面の ななめの 長さで 127センチくらい)に なると いわれます。どうして、小さな 画面を ならべずに、一まいに 見せるのでしょう。
わけは、一つに きまっては いません。調べると、三つの ことが 見えて きます。一つ目は、画面の つなぎめを けして、車の 中を すっきり つつまれた ように 見せる こと。二つ目は、大きな 画面の 下に、ほかの ものを かくして なじませる こと。三つ目は、たくさんの はたらきを 一つの 面で 出し分ける こと。そして もう 一つ、うんてん中に 目と 手が だいじょうぶか、という 問いが 生まれて います。
MBUX Hyperscreenは、複数のディスプレイがガラスの下で溶け合うように見え、フロントガラスの片側の柱(Aピラー)から反対側の柱まで続く、曲面の画面の帯になっています[1]。実際には画面がいくつかあるのに、境目が目に入らないように作られているのです。
助手席側の画面は、座る人がいないときには星のアニメーションを映し、デジタルの飾りになります[1]。大きな面を、使わないときも「部屋の壁」のように見せる発想です。
こうした柱から柱への画面は、ディスプレイの学会の資料でも、今の車では最大50インチ(対角で約127センチ)に達し、運転席を包みこむ環境を作ると説明されています[2]。
なぜ小さな画面を並べずに、1枚に見せるのでしょうか。資料から読み取れる理由は、三つあります。つなぎ目を消して車内を一続きの空間に見せること、大きな面の下にエアコンやカメラを溶けこませること、そして多くの機能を一つの面で出し分けることです。ただし、費用や修理のしやすさで本当に得なのかは、資料からは言えません。
では、「溶けこませる」とは、具体的に何を画面の下に隠しているのでしょうか。
MBUX Hyperscreenは、複数のディスプレイがガラスの下で融合して見え、Aピラー(フロントガラス両端の柱)から反対側のAピラーまで続く曲面のスクリーンバンドになっている[1]。物理的には画面が複数あっても、境目が見えないように仕上げた点が特徴である。助手席側は、乗員がいないとアニメーションの星を表示し、デジタルの装飾部品として振る舞う[1]。
ディスプレイ学会(SID)の資料は、ピラーからピラーに広がる今日の解決策が最大50インチ(対角で約127センチ)に達し、コックピットを没入型の環境に変えていると述べる[2]。大きさそのものが目的ではなく、車内を一続きの面で包むことが狙いの一つだと読める。
では、なぜ複数の小さな画面を並べず、あえて1枚に見せるのか。資料から拾える理由は三つで、①つなぎ目を消した連続感、②大きな面の下にエアコンの吹き出し口やカメラなどを隠して溶けこませること、③多くの機能を一つの面で状況に応じて出し分けることである。製造コストや修理のしやすさでどちらが得かは、これらの資料からは判断できない。
では、「溶けこませる」とは具体的に何をすることか。次の章では、画面の下と中に隠されたものを見る。
2. 大きな 画面の 下には、何が かくれて いるの?
2. つなぎ目を消すために、車は何を画面になじませたのか
2. 吹き出し口・装飾パネル・カメラ:画面になじませる三つの工夫
一つ目は、エアコンの 風が 出る 口です。MBUX Hyperscreenでは、この 口を 大きな デジタルの 面の 中に くみこんで います。メルセデスは、デジタルと 本物の ものを つなぐ ため、と せつめい して います。
二つ目は、木目の ような かざりの 板です。ある 研究では、木目や カーボンの もように 見える 板の 下に 画面を 入れて、いる ときだけ 文字を 出す、という 考え方が のって います。黒くて 大きな 画面が 目立つのを さける ためです。
三つ目は、うんてんする 人を 見まもる カメラです。画面の 下に 赤外線カメラを おくと、カメラが 見えなく なります。
画面は 大きく なるだけでは なく、目立たなく なる 方向にも すすんで いるのです。
最初に目につくのは、エアコンの吹き出し口です。Hyperscreenでは、アナログの吹き出し口を、大きなデジタルの面の中に組みこんでいます。メルセデスは、デジタルと物理の世界をつなぐためと説明しています[1]。画面と風の口が、同じ一続きの面に並ぶわけです。
次に、黒い画面そのものを隠す発想があります。ディスプレイ学会の資料では、In2Visible Displayのように、木目やカーボン調の装飾パネルの下に液晶を置き、必要なときに、必要な場所にだけ情報を出す方式が紹介されています。分厚く目立つ黒い画面を避けるためです[2]。
さらに、運転する人の様子を見るドライバーモニタリング用の赤外線カメラを、画面の下に置く技術があります。こうするとカメラは見えなくなり、メーターの画面の中央が最も良い置き場所だと、同じ資料は述べています[2]。
画面は大きくなるだけでなく、目立たなくもなっているわけです。では、そうして広がった1枚の面には、何がのるのでしょうか。
つなぎ目を消すには、画面だけでなく、画面の周りの「余計な存在感」も消す必要がある。その工夫が、資料から三つ読み取れる。
一つ目は、物理部品を面に溶かすことだ。MBUX Hyperscreenでは、アナログの吹き出し口を大きなデジタル面に統合し、デジタルと物理の世界をつなぐ表現にしている[1]。二つ目は、画面そのものを隠すことだ。SIDの資料が紹介するIn2Visible Displayは、木目やカーボン調の装飾パネルの下に液晶を置き、必要なときだけ必要な場所に情報を出す。かさばって目立つ黒い表示領域を意図して避けた設計だとされる[2]。
三つ目は、カメラを隠すことである。ドライバーモニタリング用の赤外線カメラを画面の下に置くと、カメラが見えなくなり、メーター表示の中央が最適な場所だと同資料は述べる[2]。ただし、カメラを見えなくできる一方で、画質や寿命などの性能には課題が残る。
曲面へのタッチ式の接続も、早くから考えられていた。2010年のSAE論文は、曲がったパネルの裏側にタッチセンサーを直接つけることで、平らな顔板より自由なデザインが可能になる、と示した[3]。つまり、1枚の曲面にまとめる発想は、タッチ式の画面が車に入りはじめたころから技術的な土台があった。
面になじませる工夫を見たところで、次は、その面に何をのせるのかを見る。
3. 大きな 一まいに、何を のせるの?
3. 大きな1枚には、何をのせ、どう出し分けるのか
3. 大きな面の使い道:状況に応じた出し分けと、フロントガラスへの広がり
画面が 大きいと、のせられる ものが ふえます。ナビ、ラジオ、音楽…。でも、ぜんぶが いつも 目に 入ったら、こまります。
メルセデスの せつめいでは、いちばん たいせつな はたらきが、その ときの ようすに 合わせて、いつも いちばん 上に 出る ように なって います。使う人の くせを AIが おぼえる しくみだと、書かれて います。
画面は、もっと ひろがって います。フロントガラスの ふちの 黒い ぶぶんに 絵を うつして、うんてんする 人と となりの 人の 両方が 見られる しくみも 考えられて います。
大きな 面は、見せる ものを えらぶ 道具にも なりつつ あるのです。
画面が大きくなるほど、のせられる機能は増えます。しかし全部を同時に出すと、かえって探しにくくなります。
メルセデスは、Hyperscreenでは最も大切なアプリが、状況に応じて、いつも最上位の層に出るようにしていると説明しています。使い手の行動をAIが学んで、ナビやラジオなどを前に出す、という仕組みです[1]。大きな面は、情報を並べるより、出し分けるために使われているわけです。
面はフロントガラスにも広がっています。ディスプレイ学会の資料が紹介するScenic View Displayは、フロントガラスの黒く印刷された部分に画像を映し、運転する人と助手席の人の両方が、景色に重なる映像を見られます[2]。ふつうのヘッドアップディスプレイ(フロントガラスに情報を重ねる装置)が、運転する人向けなのとは、ちがう使い方です。
では、これだけ大きく、いろいろな機能が1枚にのると、運転する人の目と手は、だいじょうぶなのでしょうか。
画面が大きくなるほど、のせられる機能は増える。しかし全部を同時に見せれば、探す手間が増え、運転中の注意は削られる。そこで状況に応じた出し分けが問題になる。
メルセデスの説明では、Hyperscreenは最も重要なアプリケーションを、状況や文脈に応じて、常に最上位の層(ゼロレイヤー)に提示する。ユーザーの行動をAIが学習して、ナビやラジオなどを前に出すという[1]。大きな画面には、情報を並べるだけでなく、状況に応じて選んで見せる役割もある。
表示する場所はフロントガラスにも広がる。Scenic View Displayは、従来のヘッドアップディスプレイと異なり、フロントガラスの黒印刷部分に映像を投影し、運転者と助手席の人の両方が景色に重なる像を見られる[2]。ディスプレイ産業賞でも、BMWのPanoramic Visionがフロントガラスをディスプレイとして使う例として取り上げられている。視線を道路から離さないための設計思想とされるが、この点は産業賞のページの紹介にもとづくものである[4]。
ただし、情報を出し分けても、運転する人が触って操作する場面はなくならない。大きな面の使い道が広がるほど、問いは「見やすさ」から「運転の邪魔にならないか」へ移る。
4. 大きな 画面は、うんてん中の 目と 手を うばわない?
4. 大きな画面は、運転中の目と手をうばわないのか
4. 大きな面は運転中の注意をどう左右するか:調査と評価の結果
アメリカの AAAざいだんが 2017ねんの 車 30だいを しらべた ところ、23だいで、音楽や ナビを そうさする とき、うんてんする 人の たいへんさが「高い」か「とても 高い」と 出ました。およそ 4だいの うち 3だい です。
これは ふつうの 大きさの 画面も ふくむ しらべで、いまの 一まいの 大きな 画面だけを しらべた ものでは ありません。
ヨーロッパでは、車の 安全を くらべる テストを する 「Euro NCAP」が、2026ねんの テストで、うんてんの だいじな そうさを タッチの 画面に たよりすぎた 車に、ひくい 点を つけました。発表の だいは 「だいじな はたらきには、ボタンが もどって きた」でした。
画面が 大きく なる いっぽうで、ボタンの よさが 見なおされて います。
運転中に画面を触ると、目も手も運転から離れます。アメリカのAAA交通安全財団は、2017年モデルの車30台を調べました。その結果、30台のうち23台で、情報システムの操作が、運転する人に「高い」か「非常に高い」負担をかけていました[5]。23÷30は約0.77なので、およそ4台に3台です。ただし、これは2017年モデルの調査であり、今の1枚の大きな画面に限った結果ではありません。
基準づくりも進んでいます。アメリカの道路交通安全局(NHTSA)のガイドラインは、運転中に目と手の両方を使う作業が注意を奪いすぎる場合、運転中はその作業をできないようにすることを勧めています[6]。
ヨーロッパの安全評価団体Euro NCAPは、2026年のテストで、運転の基本操作を中央のタッチ画面に頼りすぎた車に、気をそらしかねないとして、基本操作の項目で20%という低い点を出しました。発表の題は「基本の機能には、ボタンが戻ってきた」でした[7]。
大きな画面は、デザインとして魅力があります。そのいっぽうで、運転に直接かかわる操作は、手で探せるボタンのほうが向くという見方が、評価の場で強まっています。
面が大きくなり、機能が集まるほど、問いは安全に移る。運転中に画面を操作すれば、視線も手も運転から離れるからだ。
AAA交通安全財団は、2017年モデルの車30台を調べ、23台でインフォテインメントの操作が運転者に「高い」または「非常に高い」全体的な負荷を生じさせたと報告した[5]。23÷30は約0.77、およそ4台に3台である。ただしこれは2017年モデルの調査で、今日の1枚型の大型画面に限った結果ではない。
規制側の考え方は、アメリカ運輸省道路交通安全局(NHTSA)のガイドラインに現れる。運転中に視覚と手動操作の両方を使う二次的な作業が、運転者の注意を過度に奪う場合には、運転中はその作業を行えないようにすることを推奨している[6]。操作を「ひかえめにする」だけでなく、場合によっては「できなくする」という強い方向である。
評価の側からも動きがある。Euro NCAPは2026年のテスト結果として、基本的な運転操作を中央のタッチ画面に頼りすぎて気が散りやすい車に対し、主要な運転操作の項目で20%という低い点を出した。発表の題は「基本の機能には、ボタンが戻ってきた」である[7]。画面の大きさや見た目の連続感と、手探りで操作できる物理ボタンの利点は、両立の方法が探られている段階といえる。
大きな画面を使いながら、見えない安全機能とどう両立させるのか。基本操作のボタンをどこまで残すのか。両立の方法はまだ探られている。
5. 車の 中で、画面と ボタンを くらべて みよう
5. 身近な車で、画面とボタンの分担を観察する
5. 画面とボタンの分担を観察し、原典に当たる
きょう できる こと
車が 止まって いるとき、おうちの 人に たのんで、車の 中を 見せて もらいましょう。ハンドルの まわりには ボタンが どれくらい ありますか。エアコンや 音の 大きさは、ボタンで かえますか。それとも 画面ですか。かぞえて みましょう。
うんてん中の 人には、はなしかけたり、画面を さわらせたり しては いけません。
しらべる とき
あたらしい 車と ふるい 車を くらべると、画面の 大きさや ボタンの 数に ちがいが あるか、見えて きます。
停まっている車で数える
家族の車を見せてもらえるとき、ハンドルまわりとダッシュボードのボタンの数を数えます。エアコンの温度や音量を変えるのは、ボタンか、画面か。吹き出し口は画面の外にあるか、画面の中にあるか。必ず車が停まっているときに、運転する人ではなく同乗者として調べます。
新しい車と古い車を比べる
展示された車や家族の車、写真の車で、画面の大きさと、基本操作が画面にあるかボタンにあるかを比べます。どの機能が画面に移ったか、移っていないかを表にすると、傾向が見えてきます。
資料を読むなら
メルセデス・ベンツの紹介ページ[1]で、Hyperscreenの見た目と考え方が分かります。Euro NCAPの発表[7]は英語ですが、車ごとの点の話が具体的です。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
本文で使った資料です。
- Mercedes-Benz Group, MBUX Hyperscreen. https://group.mercedes-benz.com/technology/digitalisation/connectivity/mbux-hyperscreen.html (曲面の画面帯、吹き出し口の統合、重要な機能の出し分け、助手席の画面)
- SID Digest, Novel Automotive Display Experiences beyond Large Display Areas. https://sid.org/Portals/sid/Files/SID-Digest/docs/50-1.pdf (最大50インチ、見えない画面とカメラ、Scenic View Display)
- SAE Technical Paper 2010-01-0714, Instrument Panel and Cockpit Designers Gain Freedom of Styling with Unique Capacitive Touch Screens. https://saemobilus.sae.org/papers/instrument-panel-cockpit-designers-gain-freedom-styling-unique-capacitive-touch-screens-2010-01-0714 (曲面タッチパネルの自由なデザイン)
- SID Display Industry Awards. https://www.sid.org/Awards/Display-Industry-Awards (BMW Panoramic Visionの紹介)
- AAA Foundation for Traffic Safety, Visual and Cognitive Demands of Using In-Vehicle Information Systems. https://aaafoundation.org/research/visual-cognitive-demands-using-vehicle-information-systems/ (2017年モデル30台の調査)
- NHTSA, Visual-Manual NHTSA Driver Distraction Guidelines for In-Vehicle Electronic Devices (Federal Register). https://www.transportation.gov/regulations/federal-register-documents/2013-09883 (運転中の二次作業の制限の考え方)
- Euro NCAP, Buttons are back for basic functions: Euro NCAP confirms in testing. https://www.euroncap.com/press-media/buttons-are-back-for-basic-functions-euro-ncap-confirms-in-testing/ (基本操作とタッチ画面の評価)
- SID Vehicle Displays and Interfaces, Keynotes, Panels, and Tutorials. https://vdi.sid.org/Conference/Keynotes-and-Panels (見えない安全機能と広いディスプレイの両立)
なおした ところ
更新履歴
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