1. おふろの あと、どうして おおきな タオルを つかうの?
1. 浴室の外に置くバスタオルは、何のためにあるのか
1. 大きなタオルは、湯上がりの体の熱が逃げるのをどう防ぐか
バスタオルは、おふろの あとに からだを ふく ための、おおきな タオルです[1]。ふろばには ちいさい タオルを もって はいり、バスタオルは そとに おいて、あがった あとに つかう おうちも あります[1]。
では、なんのために ふくのでしょう。わけは、ぬれた まま さむい へやに でると、からだが ひえて しまうからです[5]。
おふろから あがった からだには、みずが いっぱい ついて います。その みずが かわく とき、まわりから ねつを うばいます。だから、ぬれた まま いると、からだの ねつも うばわれて、ぞくっと します。
おおきな バスタオルなら、からだの ひろい ところを いちどに ふけます。からだを ぐるっと つつめるので、さむい ところでも、すぐに ふけるのです。
バスタオルは、入浴のあとで体をふくための大型のタオルと説明されます[1]。浴室に小さな手ぬぐいやフェイスタオルを持ちこんで体を洗い、バスタオルは浴室の外に置いて、入浴後に体を乾かすのに使う家庭もあります[1]。
この使い分けの理由は、湯上がりの体の状態にあります。皮膚についた水は、蒸発するときに気化熱として体の熱を奪います。濡れたまま寒い部屋に出ると、体温が一気に奪われるため、拭いてから出ることが勧められています[5]。赤ちゃんが生まれた直後に体温が下がる一因も、皮膚の水分の気化熱だと医療の現場では説明されています[5]。
つまり、バスタオルの仕事は、体をきれいにすることではありません。濡れた体から水を素早く取り、熱が逃げるのを止めることです。大人の胴を包める大きさがあるので[2]、一度に広い面から水を取れます。
では、「水を取る」ことは、体の温度にどれくらい効くのでしょうか。
バスタオルは入浴後に体をふくための大型のタオルで、浴室には小さなタオルを持ち込み、バスタオルは外に置いて後で体を乾かす家庭もある[1]。体を洗う道具と体を乾かす道具が別々に用意されるのは、役目が違うからだと考えられる。
その役目とは、体表の水を取って熱の損失を抑えることだ。皮膚に付いた水が蒸発するとき、気化熱として体の熱が奪われる。濡れたまま寒い部屋に出ると体温が一気に奪われるため、拭いてから出ることが勧められている。新生児医療でも、出生直後の体温低下の一因として皮膚の水分の気化熱が挙げられている[5]。
体の前後や背中まで一度に覆える大きさがあれば、拭く回数と時間が減り、水が皮膚に残る時間も短くなる。ただし、バスタオルに公的な標準寸法はなく、大きさは商品ごとに違うため、「何cm以上でなければバスタオルではない」とは言えない。では、水の取り方の差は、実際に体の温度に表れるのだろうか。
2. タオルで、はだの おんどが ちがうの?
2. 水を取る力が違うと、拭いた直後の皮膚の温度は変わるのか
2. 吸水性の差は、拭いた直後の皮膚温にどう表れるか
おおさかふの けんきゅうじょで、こんな じっけんが ありました[6]。おとなの おとこの 人 9人が きょうりょくして、あたたかい おゆに 5ふん はいりました。
そのあと、みずを よく すう タオルと、あまり すわない タオルで、からだを ふいて もらいました。へやは、ふゆの だつい所を おもわせる、とても さむい へやです。
ふいた すぐ あとの はだの おんどを はかると、よく すう タオルの ほうが、およそ 0.5ど たかく なりました[6]。みずを あまり すわない タオルでは、はだに みずが のこり、その みずが かわく ときに ねつが うばわれたと せつめいされて います。
0.5どは、ほんの すこしに みえます。でも、タオルの すいやすさだけで、からだの ひえかたが かわる、と いう ことです。ただし、これは この じっけんの けっかで、おうちでの ふゆの おんどでは ありません。
大阪府立産業技術総合研究所の実験では、成人男性9名が、25℃の部屋で42℃の湯に5分間入りました。そのあと、水の吸いやすさが高いタオルと低いタオルで体をふき、冬の脱衣室を想定した5℃の部屋で、体幹の皮膚温をサーモグラフィーで測っています[6]。
2つのタオルは、仕上げの工程の程度だけを変えて作られました。拭いた直後の皮膚温は、吸水性が高いタオルのほうが、低いタオルより約0.5℃高かったと報告されています。吸水性が低いと皮膚に水分が残り、その水が蒸発するときに熱が奪われて、皮膚温が下がったと説明されています[6]。
注意したいのは、これが条件をそろえた1つの実験で、約0.5℃は拭き取り直後の差だということです。その後もずっと差が続く、とは書かれていません。ふだんの家の脱衣室で同じだけ変わる、とも言えません。
それでも、タオルの「水の取りやすさ」が、体の冷え方に関わる可能性を、数字で見せてくれる実験です。では、水を取りやすいタオルの表面は、どうなっているのでしょうか。
大阪府立産業技術総合研究所の実験は、条件が細かく決められている。成人男性9名が25℃の部屋で42℃の湯に5分入り、吸水性の高いタオルと低いタオルで体を拭いたあと、冬の脱衣室を想定した5℃の部屋で体幹の皮膚温をサーモグラフィーで測った[6]。
2つのタオルは、仕上げ工程である精練の程度だけを変えて吸水性に差をつけたもので、吸水指数は高いほうが851、低いほうが119だった。拭いた直後の皮膚温は、高吸水のタオルのほうが約0.5℃高い。低吸水では皮膚に水分が残り、その蒸発に熱が使われて皮膚温が下がった、と説明されている[6]。
この差を一般化するには限界がある。0.5℃は拭き取り直後の値で、その後も続く差ではない。被験者は9名で、部屋も湯の温度も実験用の設定であり、家庭の入浴の数値ではない。それでも、「同じ綿のタオルでも、仕上げだけで拭いた後の皮膚温が変わりうる」という点は、タオルの役目が体温に関わることを示す具体例といえる。
吸水性の差は、織りの構造だけでなく糸の状態にも左右される。次に、タオルの表面そのものを見てみる。
3. タオルの ふわふわは、みずを どう すうの?
3. タオルのふわふわしたループは、水をどう吸うのか
3. 輪奈(パイル)のループが水を受け止めるしくみ
タオルを ちかくで みて みましょう。ふわふわの ところは、ほそい いとが、わっかの かたちに なって たくさん でて います。この わっかを、わなと よびます[2]。
バスタオルは、この わっかが ながくて やわらかい ものが おおい と いわれます[2]。
わっかが ながいと、みずに ふれる ところが ふえます。ぬれた ゆかに、ぞうきんを べたっと おくより、ふさふさの モップを おいた ほうが、たくさん みずに ふれる のと にて います。ただし、これは しくみの はなしで、なんばい すう、と いう かずでは ありません。
タオルは、たて糸と、よこ糸が 3かい まじわる たびに、たて糸で わっかを つくりながら、ぬのを おって います[3]。
タオル地の表面には、輪奈(わな)と呼ばれる、ループ状の細い糸が出ています。バスタオルは、このループが長く柔らかいものが多いとされます[2]。
ループは、織りの途中で作られます。今治のタオルメーカーを紹介した記事では、たて糸とよこ糸が3回交差するごとに、たて糸でパイルを作って織る、と説明されています[3]。ふつうの布は平らに織りますが、タオルは、そのたて糸を一定の間隔で持ち上げて輪にして残しているわけです。
テリー織と呼ばれるこの布では、突き出た多数のループが、たくさんの水を吸います。ループが長いほど、水に触れる表面積が増えて、吸える量も増えると説明されています[4]。平らな布より、水に触れる糸の表面が増えるわけです。ただし、この説明は仕組みの話で、「何倍吸う」という実測の数字ではありません。
では、同じ綿から作っても、吸い方が大きく違うことがあるのはなぜでしょうか。
タオル地の表面には、輪奈(わな)と呼ばれるループ状の細い糸が並ぶ。バスタオルはこのパイルが長く柔らかいものが多い[2]。
ループは織りの工程で作られる。今治のタオルメーカーを紹介した中小機構の記事によれば、タオルはたて糸とよこ糸が3回交差するごとに、たて糸でパイルを作って織る[3]。平織りのようにたて糸をよこ糸の上下に通すだけでなく、一部のたて糸を輪の形で浮かせて残す、と読める。
この構造が吸水に効く理由として、英語版のテリー織の解説は、突き出した多数のループが水に触れる表面積を増やし、ループが長いほど接触面積が大きくなって吸える量が増える、と説明している[4]。これはあくまで構造上の説明で、吸水量を実測して比べた数字ではないため、本稿では「長いほど何倍」とは書かない。
同じ構造でも吸水に差が出る、という点は残る。次の章で、糸そのものの状態に目を向ける。
4. おなじ わたでも、すいかたが ちがうのは なぜ?
4. 同じ綿でも、吸い方が違うのは糸の仕上げが関わるから
4. 仕上げの精練が吸水性を左右する理由
タオルの ざいりょうは、わたです。わたの おもな せいぶんは セルロースで、みずを ひきよせます。でも、とった ばかりの わたには、ろうや しぼうなどが ふくまれて います[7]。
この あぶらっぽい ものが のこって いると、みずを はじいて しまいます。そこで、しあげの こうていで あらって、とりのぞきます[7]。
さきの じっけんで、2まいの タオルが ちがったのも、この しあげの ていどの ちがいでした[6]。
ふわふわだけでなく、しあげの くふうも、みずを すう タオルには たいせつなのです。
5. ループの ぬのは、どこで つくられて きたの?
5. ループの布は、どこで工業製品になったのか
5. テリー織の工業化と、日本のタオル産地の成り立ち
わっかの ある ぬのは、トルコで、てで おられて いた ものが もとに なった、と いわれます[4]。
イギリスの クリスティしゃは、それを みて、1850ねんに こうじょうで つくり はじめたと いわれます。ただし、ねんは しりょうに よって 1848〜1850ねんと ゆれて います[4]。
にほんでは、1887ねんに、せんしゅう(いまの おおさかふの みなみ)の さといえんじろうが、タオルを おる きかいを かんがえたと いわれます[2]。いまばり(えひめけん)では、1894ねんに あべへいすけが、わたネルの きかいを つくりかえて、タオルを つくり はじめました[2]。
そして、いまの タオルの ふるさとの ひとつが、いまばりです。いまばりは、1960ねんだいに、にほんで いちばん おおきな タオルの さんちに なりました[8]。
ループと糸の仕上げで水を吸うこの布は、どんな産地の歴史の中で、いまの家のタオルになったのでしょう。ループで水を吸う布は、トルコで手織りされていたものを見たイギリスのクリスティ社が、1850年に工業生産を始めたとされます。機械は社員のサミュエル・ホルトの設計です[4]。ただし、年は資料により1848〜1850年とゆれ、テリー織の起源そのものも、トルコ説や古代説など、資料によって説明が分かれます。
日本のタオル産業は、1887年(明治20年)に、泉州(今の大阪府南部)の里井圓治郎がパイル織の機械を考案して始まった、とされます。愛媛県の今治では、1894年(明治27年)に阿部平助が、綿ネルの機械を改造してタオルを作り始めました[2]。どこが「日本で最初」かは、泉州説と今治の話があるため、ここでは断定しません。
今治は1960年代に日本最大のタオル産地になりました。その後は安価な輸入品に押されましたが、2006年に経済産業省の「JAPANブランド育成支援事業」をきっかけに、高品質路線の「今治タオルプロジェクト」を進めています[8]。
バスタオルのふわふわは、こうした産地の工夫の積み重ねでもあります。
ここまで見た構造と仕上げをもつタオル地は、どんな産地の歴史の中で現在の形になったのか。ループで水を吸う布の工業化は、英国のクリスティ社が、トルコで手織りされていたループ織りの布の観察をもとに、1850年に工業生産を始めたとされる。機械は社員のサミュエル・ホルト(Samuel Holt)の設計だった。ただし、時期は資料により1848〜1850年とゆれ、起源についてもトルコ説や古代説があり、1つに決められない[4]。
日本では、1887年(明治20年)に泉州(現在の大阪府南部)の里井圓治郎がパイル織の機械を考案して産業が始まったとされ、愛媛県今治では1894年(明治27年)に阿部平助が綿ネルの機械を改造してタオルを作り始めた[2]。この2つは別の地域の話で、どちらが「最初」かを決める資料は、本稿では使っていない。
今治は1960年代に日本最大のタオル産地になり、その後は安価な輸入品に押された。2006年の経済産業省「JAPANブランド育成支援事業」を機に、高品質路線の「今治タオルプロジェクト」を進めた[8]。
吸水性という機能を売りにする背景には、前の章で見た「構造と精練」が品質の差になる、という事情がある。では、読者は家のタオルで、何を確かめられるだろうか。
6. おうちの バスタオルを ちかくで みよう
6. 家のバスタオルで、ループと水の残り方を見てみる
6. 家のタオルで確かめられること
おうちの 人に いって、バスタオルを 1まい かりて みましょう。まず、ひょうめんを ちかくで みます。ちいさな わっかが たくさん ならんで いるでしょうか。おなじ へやに ある、ちいさい タオルとも くらべて みます。
つぎに、てのひらを すこし ぬらして、バスタオルで ふいて みます。ふいた あと、てのひらに みずが どれくらい のこるか、さわって たしかめます。ふるい タオルと あたらしい タオルが あれば、くらべて みるのも おもしろいです。
てのひらを ふくだけで じゅうぶんです。おふろあがりの からだで ためすときは、さむい へやに ながく いないように します。
家のバスタオルと小さなタオルを、1枚ずつ借りて並べます。表面を近くで見て、ループの長さを比べます。ループが長く、ふわふわしているのはどちらでしょうか。
次に、手のひらを少しぬらして、それぞれで拭いてみます。拭いたあとに手に水がどれくらい残るかを、さわって確かめます。古いタオルと新しいタオルがあれば、同じように比べられます。
今日の記事の実験は、冬の脱衣室を想定した5℃の部屋でした。家での確かめは、手のひらだけで十分です。
家のタオルのタグには、産地や素材が書いてあるかもしれません。日本のどこで織られたものか、探してみるのも次の問いになります。
家庭では、ループを見たり、濡れた手を拭いたあとの水の残り方を比べたりできる。バスタオルと小さなタオルの表面を拡大して見る(スマートフォンのカメラで寄れば足りる)。ループの長さ、密度、柔らかさを比べる。
次に、濡らした手を同じ手順で拭き、水の残り方をさわって比べる。新品と洗濯を重ねたタオルがあれば、その差も見える。今回の実験の数値(吸水指数851と119、約0.5℃)は、特定の試料・特定の設定でのものなので、家庭の測定と同じ数字になるとは考えない。
一次資料に当たるなら、大阪府立産業技術総合研究所の技術シート「タオルの水分拭取り評価法」を読んで、湯の温度や室温、タオルの仕上げの条件を、この記事の実験と一つずつ見比べてみてほしい[6]。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
バスタオルの使い方、タオル地の構造と織り方、吸水の仕組み、皮膚温の実験、産地の流れは、以下の資料による。
- 小学館 日本語大辞典(TKGJE)「バスタオル」 https://www.tkgje.jp/entries/04500/04511_basutaoru.html (バスタオルの意味と使い分け)
- Wikipedia日本語版「タオル」 https://ja.wikipedia.org/wiki/タオル (輪奈の構造、日本のタオル産業の始まり)
- J-Net21(中小機構)今治タオルメーカー記事 https://j-net21.smrj.go.jp/special/news/ffsr280000006k0a.html (ループの織り方)
- Wikipedia English "Terrycloth" https://en.wikipedia.org/wiki/Terrycloth (ループと表面積、工業生産の始まり。英語の資料)
- 日本大学 広報資料(2018年10月) https://www.brs.nihon-u.ac.jp/wp-content/uploads/2018_10month.pdf (濡れた体と体温の低下)
- 大阪府立産業技術総合研究所 技術シート No.04015「タオルの水分拭取り評価法」 https://www.orist.jp/technicalsheet/04015.pdf (拭いた直後の皮膚温の実験)
- 大阪府立産業技術総合研究所 TRI14(2000)51 https://www.orist.jp/dl/izumi/archive/shohou14/TRI14(2000)51.pdf (綿の精練と吸水性)
- 新遊社 360LiFE バスタオルの基本 https://360life.shinyusha.co.jp/articles/-/4119 (今治の産地の流れ)
なおした ところ
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