1. あたらしい タオルが すわない のは、どうして?
1. 新品のタオルは、なぜ水を吸いにくいのか
1. 新品が最も吸わなかった ── 綿の不純物と仕上げ
この 子の じっけんは、いろみずに タオルを つけて、すいあがった ながさを くらべる ものでした。あたらしい タオルは、いちばん ひくい ところまでしか あがりません。7かい あらった タオルは、いちばん たかく あがりました。7かいと 9かいでは、あまり ちがいませんでした[3]。
ただし、これは 1にんの 子が 1しゅるいの タオルで しらべた けっかです。かならず 7かいが いい、とは いえません。
では、あたらしい タオルには、なにが ついて いるのでしょう。まず、タオルの もとに なる めんを みて みます。
実験は、新品と、3・5・7・9回洗ったタオルを色水に浸し、吸い上げた長さを比べるものでした。新品がもっとも低く、7回洗ったものがもっとも高くなりました。7回と9回では、あまり差が見られませんでした[3]。ただし、児童1人が1種類のタオルで調べた結果なので、「必ず7回」とは言えません。
新品が吸わない理由として、オーストラリアのRMIT大学の繊維の専門家は、台所で使うティータオルについて、こう説明しています。新品の布は柔らかさやしわ防止のために、シリコーン系の仕上げ剤で覆われていることが多く、その仕上げは水をはじきやすい。洗濯と乾燥をくりかえすと表面に細かい傷みができ、表面の凹凸が増えて吸水がよくなる、というものです[4]。これはティータオルの話なので、日本のタオルにそのまま当てはまるとは言えません。
では、タオルの材料である綿そのものには、水をはじく性質があるのでしょうか。
この自由研究は、色水に浸して吸い上げた高さで比べたもので、新品が最低、7回洗いが最高、7回と9回はほぼ同じだった[3]。児童1人・タオル1種の結果であり、「7回」は一般的な回数ではない。
新品が吸わない原因の一つとして、RMIT大学の専門家は、新品の布が柔らかさやしわ防止のためのシリコーン系仕上げで覆われがちで、それが撥水的に働くと述べる。洗濯・乾燥の反復で表面に微細な損傷が生じ、凹凸が増えて吸水が改善するという説明である[4]。ただしこれは台所用のティータオルについてのコメントで、国内のタオルの仕上げについて同じことが言える根拠は、ここでは得ていない。
国内の公的資料で確かめられるのは、綿そのものの側の事情である。次の章で見る。
2. めんの なかには、みずを はじく ものが あるの?
2. 綿には、水をはじく成分がまじっている
2. 綿の不純物と精練 ── 吸水性を上げると柔らかさが下がる傾向
タオルは めんから できて います。しぜんの めんには、すいやすい せんいの ほかに、ろうや あぶらの ような ものも まじって います[1]。
タオルを つくる とき、これらを とりのぞく しごとを します。これを せいれんと よびます。とりのぞくと、みずを すいやすく なります[1]。
ところが、ここに むずかしさが あります。とりのぞいた あぶらの ようなものは、せんいを すべりやすく して いた ものでも ありました。なくなると、せんいは かたく なりやすく なります[1][2]。
みずを すう ことと、やわらかい ことは、いっしょに しにくいのです。では、タオルを やわらかく する じゅうなんざいは、どうでしょうか。
大阪府立産業技術総合研究所の報告によると、綿は自然の状態では、主成分のセルロースのほかに、ペクチン、蝋、脂肪などを含んでいます。吸水性を出すには、このセルロース以外の不純物を取りのぞく必要があり、その作業を精練といいます。タオルの後晒し加工では、一般にアルカリ処理で行われます[1]。
つまり、綿の布が水を吸うようになるには、水をはじく成分を落とす作業が欠かせません。新品の段階では、その落とし方が十分でないタオルもあり得ます。一方で、同じ研究所の報告は、不純物を除くと吸水性はよくなる反面、繊維が「かたく」なる傾向があるとも述べます[1][2]。取りのぞかれる成分には、繊維どうしをすべりやすくする役目もあったからです。
この報告の条件では、吸水性を高めると柔らかさが下がる傾向がありました。吸水とやわらかさは、両立しにくいことがあるのです。「柔らかいタオルは水をよく吸う」とは限りません。では、肌ざわりをよくするために使う柔軟剤は、吸水にどう影響するのでしょうか。
綿は天然の状態で、主成分のセルロースのほかにペクチン・蝋・脂肪などを含む。吸水性を発現させるにはこれらセルロース以外の不純物を除く精練が必要で、タオルの後晒し加工では一般にアルカリ処理で行う[1]。したがって、精練が不十分な状態で仕上がったタオルは、吸水性が低くなりうる。
ところが、不純物を除去すれば吸水性は向上する反面、潤滑の役目も果たしていた成分が失われ、繊維は「かたく」なる傾向がある[1]。後年の同研究所の報告の英文要旨も、織りタオルの脱脂は通常、吸水性を高めるが柔らかさを下げると述べる[2]。これらの報告の条件では、吸水性を高めると柔らかさが下がる傾向があり、「柔らかい=吸う」とは限らない。
では、柔らかさを足すために使う柔軟剤は、吸水性にどう関わるのか。次の章で、報告の条件を区別して見る。
3. じゅうなんざいを つかうと、すわなく なるの?
3. 柔軟剤を使いすぎると、本当に吸わなくなるのか
3. 柔軟剤と吸水性 ── 継続使用の説明と、1回処理の試験
かおうの Q&Aには、じゅうなんざいを つかいすぎると、ふくに せいぶんが たまって、みずを はじく ように なる ことが あると かいて あります。タオルや したぎは、すいやすさが さがる ことが あるそうです。そう なったら、いったん つかうのを やめて、せんざいで あらうと、たまった ぶんは おとせると いいます[5]。
ふくいけんの せいかつ センターは、ちがう ことを しらべました。あたらしい タオルを、きまった りょうの じゅうなんざいで しょりして、みずに うかべ、しずむまでの じかんを はかったのです。9しゅるいの うち 6しゅるいでは、ひょうじどおりの りょうと 3ばいの りょうで、ほとんど ちがいが ありませんでした[6]。
この しけんは 1かいだけの けっかです。つかいつづけた ときは はかって いません。しらべた じょうけんが ちがいます。
おもしろいのは、しゅるいによる ちがいでした。つぎの ところで みます。
花王のQ&Aは、柔軟仕上げ剤を使いすぎると、成分が衣類にたまって水をはじくようになったり、風合いが変わったりして、タオルや下着の吸収性が下がることがある、と説明しています。そうなったら一時的に使うのをやめ、洗剤で洗えば、たまった分は落とせるとしています[5]。条件は「使いすぎ」「続けて使う」ことです。
いっぽう福井県消費生活センターの試験は、別の問いに答えています。新品のフェイスタオルを洗剤なしで水洗いし、9銘柄の柔軟剤を表示の目安量と3倍量で1回処理して、水に浮かべて沈むまでの時間を測りました。9銘柄中6銘柄では、2つの量の差はわずかで、使用量による明確な変化は見られませんでした[6]。
この試験は1回の処理の結果で、使い続けてたまる影響を測ったものではありません。花王の説明と矛盾するものではなく、測っていることがちがいます。
この報告書の表には、使う量よりも大きなちがいが並んでいました。
花王のQ&Aは、柔軟仕上げ剤の使いすぎで成分が衣類に蓄積し、水をはじくようになる、風合いが変わる、タオルや下着の吸収性が下がることがあると述べる。対処は、使用を一時やめて洗剤で洗うこと、とされる[5]。福井県消費生活センターの報告書も、主成分の界面活性剤の分子構造により多量使用を続けると吸水性が低下する旨を、業界団体や事業者のサイトが示している、と参考情報として紹介する[6]。どちらも条件は、多量の使用が続くことである。
では、この報告書自身の試験は何を示したか。新品のフェイスタオル(綿100%、約75g)を洗剤なしで水洗いし、9銘柄を表示の適量と3倍量で処理して、水に浮かべて沈むまでの時間を測った。9銘柄中6銘柄で、適量と3倍量の差は僅かで、使用量による明確な変化は見られなかった[6]。ただし、これは1回処理の結果で、継続使用による蓄積は測っていない。蓄積の説明と、この試験とは、見ている条件が異なる。
むしろ目を引くのは、同じ適量でも銘柄で大きく違うことである。
4. おなじ りょうでも、しゅるいで ぜんぜん ちがう?
4. 同じ量でも、銘柄によって沈むまでの時間が大きく違った
4. 銘柄間のばらつき ── 約7秒で沈む銘柄と、10分でも浮いたままの銘柄
ふくいけんの ひょうには、おなじ ひょうじどおりの りょうでも、しずむまでの じかんが ぜんぜん ちがう ことが のって います。ある しゅるいは、7びょうほどで しずみました。べつの しゅるいは、10ぷんたっても、タオルの はんぶんいじょうが うかんだままでした[6]。
ぎもんが のこります。みずで あらっただけの タオルも、10ぷんたっても しずみませんでした[6]。ですから、うかんだままの わけを ぜんぶ じゅうなんざいの せいには できません。
どんな タオルが、どれくらい すうのか。かんじだけでは きめられません。はかる ほうほうが あります。
同じ報告書の別の表では、表示の適量で処理しても、銘柄によって沈むまでの時間が大きく違いました。ある銘柄は約7秒で沈みましたが、別の銘柄は10分たっても、タオルの半分以上が浮いたままでした[6]。10分は600秒なので、7秒の80倍以上になります。
ここで気をつけたいことがあります。水洗いだけのタオルも、10分たって沈みませんでした[6]。浮いたままだった理由を、柔軟剤だけのせいにはできません。1回の試験で、銘柄名も伏せられています。
この試験では、銘柄によって沈むまでの時間に大きな差がありました。ただし水洗いだけでも沈まなかったので、差を柔軟剤だけの影響とは言えません。では、「よく吸う・あまり吸わない」を、感覚ではなく数字で表すには、どうすればよいのでしょうか。
5. すう ちからは、どうやって はかるの?
5. 吸う力は、数字でどう測るのか
5. 吸水指数と拭取り率 ── 低吸水のタオルは皮膚に水を残す
おおさかの けんきゅうじょは、タオルの すう ちからを はかる ほうほうを しらべて います。タオルを まるく きりとって、みずを したから すわせ、すう はやさと りょうを はかります[7]。
この 2つの かずから、「きゅうすいしすう」という かずを だします。かみを ふく タオルでは、800が めやすとされて います[7]。じっけんで つくった、よく すう タオルは 851、あまり すわない タオルは 119でした[7]。
この じっけんでは、おなじ もめんの いとと おりかたで、せいれんの ていどだけを かえた タオルを くらべました。すわない ほうの タオルは、ふいた あとの はだに みずが のこりました。5ど の へやで、ふいた ちょくごの はだの おんどは、すう タオルより 0.5ど ひくく なりました[7]。
1ミリリットルの みずの つぶを ふいたとき、よく すう タオルは ぜんぶ ふきとり、すわない タオルは はんぶんくらいしか ふきとれませんでした[7]。
大阪府立産業技術総合研究所は、タオルの吸水性の測り方を紹介しています。JIS L 1907の表面吸水法(改良ラローズ法)は、直径60mmの円形のタオル片に水を下から吸わせ、吸う速さと量を測ります。この2つの数値から計算するのが「吸水指数」で、髪を拭くタオルの基準が800とされています。実験で使った高吸水タオルは851、低吸水タオルは119でした[7]。
この研究では、同じ綿糸、同じ織りの密度と組織で、後晒しの精練の程度だけを変えて、高吸水と低吸水のタオルを作りました。1mlの水滴を拭き取ると、高吸水は100%、低吸水は50〜60%の拭き取り率でした。5℃の脱衣室を想定し、成人男性9名で調べると、拭いた直後の皮膚温は、低吸水のほうが高吸水より約0.5℃低くなりました[7]。
この0.5℃は、この実験の条件での差です。風邪の原因などと結びつけることはできません。
タオルが水を吸わない理由は、新品の仕上げ、綿の成分、柔軟剤のたまり方など、いくつかが重なっていそうです。
JIS L 1907の表面吸水法(改良ラローズ法)では、直径60mmの試料に水を下から吸わせ、吸水速度Vと吸水量Wを測る。吸水指数は 2545V+1411W+79 で表され、「髪を拭くタオル」の高吸水性の基準は800とされる。実験の高吸水タオルは851、低吸水タオルは119だった[7]。
この研究が示唆的なのは、糸・織密度・織組織を同一にして、後晒しの精練の程度だけを変えた点である。そのため、吸水性の差を精練の差によるものとして比べられる。1mlの水滴の拭取り率は、高吸水が100%、低吸水が50〜60%だった。5℃の脱衣室を想定して成人男性9名で測ると、拭取り直後の皮膚温は低吸水のほうが約0.5℃低かった[7]。0.5℃は、この実験条件での差であり、風邪などとの関係は示されていない。
吸水性は、綿の精練[1]、新品の仕上げ[4]、柔軟剤の使い方[5][6]など、複数の条件で動く。どれが効くかは、タオルによって変わると考えるほうが自然である。
自分でも しらべて みたく なったら
自分でも調べてみたくなったら
自分でも調べてみたくなったら
今日できること
あたらしい タオルと、なんども つかった タオルの すみに、みずを 1てき ずつ おとして みましょう。しみこむ までの じかんを、とけいで くらべます。みずの りょうは、おなじに します。
おうちの ひとと
タオルの ラベルに、あらいかたの ちゅういが かいて あります。じゅうなんざいの つかいかたの せつめいと あわせて よんで みましょう。
こうしきの じょうほう
おおさか ふりつ さんぎょう ぎじゅつ そうごう けんきゅうじょの ホームページに、タオルの けんきゅうが のって います。
今日できること
新品のタオルと、何度も洗って使ったタオルの隅に、同じ量の水を1滴ずつ落として、しみこむまでの時間を時計で比べてみましょう。水は、スポイトかスプーンで同じ量にそろえます。
家の人といっしょに
タオルのラベルにある洗い方の注意と、柔軟剤の使用量の目安を読み比べてみましょう。
公式情報
大阪府立産業技術総合研究所の報告や技術シートに、タオルの精練と吸水性の評価法があります。福井県消費生活センターの試買テスト結果報告書には、柔軟仕上げ剤の吸水試験の表があります。
今日できること
新品のタオルと使い込んだタオルの同じ場所に、同じ量の水滴を落とし、しみこむまでの時間を測って比べる。滴下量・高さ・タオルを置く面をそろえ、同じ条件で何回かくり返すと、偶然の差と見分けやすい。
資料を読むなら
大阪府立産業技術総合研究所の報告No.16(後晒し加工と吸水性評価)とNo.22(タオル製品の快適性)、技術シートNo.04015(水分拭取り評価法)、福井県消費生活センターの令和4年度試買テスト報告書「柔軟仕上げ剤」の別表。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
本文の参照番号は、次の資料に対応します。
- 大阪府立産業技術総合研究所報告 No.16「タオル製品における後晒し加工と吸水性評価」(2002) https://www.orist.jp/dl/izumi/archive/shohou16/h2_shoho16.pdf (綿の不純物、精練、かたくなる傾向)
- 大阪府立産業技術総合研究所報告 No.22「タオル製品の快適性」(2008) https://orist.jp/dl/izumi/archive/shohou22/TRI22(2008)73.pdf (吸水性とやわらかさの関係、英文要旨)
- 熊本県立教育センター「吸収力・乾燥力のNo1は誰だ!」(五福小4年) https://www.higo.ed.jp/center2019/wysiwyg/file/download/1/1222 (洗濯回数と吸い上げた長さの自由研究)
- RMIT University 専門家コメント (2026-02-09) https://www.rmit.edu.au/news/media-releases-and-expert-comments/2026/feb/tea-towels (新品の仕上げ。ティータオルについての説明)
- 花王 お客様相談室Q&A「柔軟剤の使いすぎ」 https://www.kao.com/jp/qa/detail/18485/ (使いすぎによる吸収性の低下と対処)
- 福井県消費生活センター 令和4年度試買テスト結果報告書「柔軟仕上げ剤」 https://www2.pref.fukui.lg.jp/press/atfiles/paec1685605921ba.pdf (適量と3倍量の吸水試験、銘柄ごとの差)
- 大阪府立産業技術総合研究所 技術シート No.04015「タオルの水分拭取り評価法」(2004) https://www.orist.jp/technicalsheet/04015.pdf (吸水指数、拭取り率、皮膚温の比較)
なおした ところ
更新履歴
更新履歴(改版の記録)
- 初版を公開。
このサイトでは、公開した記事の本文は原則として書き直しません。誤りが見つかったときや、内容が古くなったときだけ手を入れ、その理由をこの欄に残します。