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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

くちばしが おおきい とり、ねじれている とり。なんの ため?

オオハシのくちばしは、体の熱をにがす?鳥のくちばしが多様なわけ

オオハシの嘴は体の熱を逃がすのか:嘴の形が種ごとに違う理由

分野:生きもの

オオハシの くちばしは、からだの 大きさに くらべて、とても 大きいです。じつは、からだを ひやす やくめも あると 言われています。

くちばしの かたちは、どうして とりごとに ちがうのでしょう。オオハシ、イスカ、ガラパゴスの とりの はなしで、いくつかの わけを みて いきます。

オオハシの大きなくちばしには、血の流れを調節して体の熱をにがす働きがあると報告されています。食べるためだけの道具ではないかもしれません。

では、鳥のくちばしの形は、どうして種ごとにこれほどちがうのでしょうか。オオハシ、イスカ、ガラパゴスのフィンチの研究から、いくつかのわけを見ていきます。

オオハシの嘴は、血流を調節して体の熱を逃がす働きをもつことが、2009年に報告された。嘴は食べるための道具であるだけでなく、体温調節にも関わるらしい。

では、嘴の形は種ごとになぜこれほど違うのか。オオハシ、イスカ、ダーウィンフィンチ、そして約2000種を比べた系統解析の研究から、いくつかの理由を順に見ていく。

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1. オオハシの おおきな くちばしは、なんの ため?

1. オオハシの大きなくちばしは、食べる以外にも役に立つの?

1. オオハシの大きな嘴は、体の熱を逃がす役目をもつのか

ジャングルに すむ オオハシは、からだの わりに 大きな くちばしを もっています。くだものを つかまえるには べんりそうです。

でも、けんきゅうで 分かったことが あります。この くちばしには、血が たくさん ながれます。あつい ときは 血の りょうを ふやして、からだの ねつを そとへ にがします。

たとえば、ストーブの ちかくで うちわを あおぐと すずしく なりますね。それに ちかい 力が くちばしに あると 考えられています。ただし、ほんとうの うちわでは ありません。

さむい ときは、くちばしを つばさの 下に しまいます。

オオハシのくちばしは、体の表面積の3割から半分ほどを占めるといわれます[2]。これほど大きいと、重そうで、食べるときの道具としてだけ見ていては、ふしぎに思えてきます。

2009年の研究では、オオハシのくちばしが血の流れを調節して体の熱をにがす、「熱の窓」の働きをもつと報告されました[1]。

この研究を紹介した雑誌の解説(National Geographic)によると、サーモカメラで6羽を撮影した小さな観察で、気温がおよそ16℃を超えるとくちばしからの放熱が始まり、寒いときはくちばしを翼の下にしまう様子が見られたそうです[2]。数字は6羽の観察にもとづく目安です。くちばしは、暑さ寒さに合わせて使い分けられる、体温調節の器官でもあるようです。

では、食べ物にいちばん関わるはずの形は、どう決まるのでしょうか。つぎに、くちばしの形がそのまま食べ方になった鳥を見ます。

オオハシ(Ramphastos toco)の嘴は、血流を調節することで体の熱を逃がす「熱の窓」として働くと、2009年に報告された[1]。

嘴が体表面積の3割から半分ほどを占める[2]ため、血流量を変えれば、嘴から逃げる熱の量を調節できると考えられる。二次資料である雑誌解説(National Geographic)によると、サーモカメラによる6羽の観察で、気温がおよそ16℃を超えると放熱が始まり、寒いときは嘴を翼の下にしまった[2]。数字は6羽の小規模な観察に基づく。

嘴が体温調節に使えるなら、嘴の形は「食べやすさ」だけでは決まらないことになる。では、食べ方に合わせた形とはどんなものか。

2. イスカの くちばしは、なぜ ねじれて いるの?

2. イスカのくちばしは、なぜ上下がくいちがっているの?

2. イスカの嘴は、なぜ上下が交差しているのか

イスカという とりは、くちばしの さきが、うえと したで くいちがって います。あやとりの ひもが すこし ずれたような かたちです。

この くちばしを つかって、まつぼっくりの うろこを ねじって こじあけます。なかの たねは、したで とりだして たべます。

まっすぐな くちばしでは むずかしそうな しごとを、ずれた くちばしが できるのです。

イスカは、上下のくちばしの先が左右にくいちがっています[3]。この形で、松ぼっくりのようなかたい実をねじって、うろこの間をこじあけ、中の種を舌で取り出して食べます[3]。まっすぐな先では、できにくそうな作業です。

しかも、食べ物のほうも変わります。イスパニョーラ島のマツ(P. occidentalis)は、キューバのマツ(P. cubensis)よりうろこが53%厚く、同じ島のイスカはナキイスカ(white-winged crossbill)よりくちばしが25%深いという報告があります[4]。比べた相手はそれぞれちがい、約60万年という長い時間の話です。

くちばしの形は、食べ物との間で、たがいに変わりあってきた可能性があります。では、こうした差は、実際にどれくらい早く広がるのでしょうか。

イスカ類は上下の嘴の先が左右に交差し、球果(松ぼっくりなど)を縦にねじって鱗片をこじ開け、中の種子を舌で取り出して食べる[3]。

さらに、嘴と餌の側にも相互の変化が見られる。イスパニョーラ島のマツ(P. occidentalis)はP. cubensisに比べて鱗片が53%厚く、同島のイスカはナキイスカ(white-winged crossbill)に比べて嘴が25%深いと報告されている[4]。比較相手はそれぞれ異なり、この数字は約60万年という時間幅での差である。球果を守る側(厚い鱗片)と、割る側(深い嘴)が、共進化の例として挙げられる。

では、嘴の差が自然選択によって実際に変わる速さは、どれくらいなのか。

3. かんそうした 年に、くちばしの 大きい とりが いきのこった

3. 干ばつの年、くちばしの大きな鳥が生き残ったのはなぜ?

3. 1977年の干ばつで、嘴の大きな個体が生き残りやすかった理由

ガラパゴスの ダフネとうでは、1977ねんに、雨が ほとんど ふりませんでした。たべものが へって、たくさんの とりが くるしくなりました。

そのなかで、からだが 大きな とりが、いきのこりやすかったと ほうこくされています。なかでも、くちばしの 大きい おすが いきのこりました。かたくて 大きな たねが のこって いて、それを われたからです。

からだの 大きさと くちばしの 大きさは いっしょに ふえやすく、この けんきゅうでは、くちばしの 大きい おすが とくに いきのこりやすかったのです。

ガラパゴス諸島のダフネ島では、1977年に雨がほとんど降らない干ばつが起きました。食べ物の種が減るなかで、大きなかたい種だけが残りました。

1981年の研究は、体の大きな鳥が生き残りやすく、なかでもくちばしの大きいオスが有利だったと報告しています[5]。体の大きさとくちばしの大きさは重なりやすい特徴で、かたい種を割れたことが有利に働きました。このときの選択の強さは、当時、脊椎動物の集団で最も高いと報告されました[5]。

つまり、くちばしの大きさの差は、食べ物が変わった年に、生き残りの差として現れうるのです。では、その形は体のなかでどうやってつくられるのでしょうか。

ダフネ島の干ばつで何が起きたのか。1977年、島では干ばつが起き、大きく硬い種子が多く残る状態になった。

Boag と Grant(1981)によると、体の大きな個体が生き残りやすく、なかでも嘴の大きい雄が最もよく生き残った。体の大きさと嘴の大きさは相関しやすい形質で、硬い種子を割れたことが有利に働いたとされる[5]。同論文は、この選択の強さが当時の脊椎動物の個体群で最高と報告している[5]。

嘴の大きさが生存に直結する条件があると、自然選択は短い期間でも作用しうる。では、その形は発生のなかでどのように決まるのか。

4. くちばしの かたちは、からだの なかで どう きまるの?

4. くちばしの形は、からだの中でどう決まるの?

4. 嘴の形を決める発生の仕組み:Bmp4とカルモジュリン

がいこくの けんきゅうでは、くちばしの ふとさや 長さに かかわる ものが 見つかって います。

ふとい くちばしの とりでは、「Bmp4」という たんぱくしつが、ひなの うちに たくさん はたらいて いました。ほそ長い くちばしの とりでは、ちがう しくみが はたらいて いました。

ただし、これだけで すべてが きまる わけでは ありません。

ダーウィンフィンチは、くちばしの形がさまざまで、それぞれ別の食べ物に合っています[6]。2004年の研究では、上のくちばしの中で、Bmp4というたんぱく質を強くつくる種ほど、深く幅の広いくちばしをもっていました[6]。

2006年には、サボテンフィンチで、カルモジュリンとよばれる仕組みがよく働いていると、細長いくちばしになる関係が見つかりました[7]。ニワトリの卵で同じことをすると、くちばしが伸びたそうです。Bmp4は幅や深さ、カルモジュリンは長さに関わるとされます[7]。

ただし、遺伝子だけで形が決まるとは言えません。それでも、形のちがいを生む仕組みの手がかりが見えてきました。では、鳥全体では、くちばしの形はいつ、どう広がったのでしょうか。

嘴の形の違いは、発生時に働く遺伝子の発現量で説明できる部分がある。Abzhanov ら(2004)は、ダーウィンフィンチの上嘴の間充織でBmp4が強く発現する種ほど、深く幅広い嘴をもつことを示した[6]。

2006年には、サボテンフィンチでカルモジュリン経路の発現の高さが細長い嘴と対応し、ニワトリ胚に同じ操作をすると嘴が伸びることが報告された[7]。Bmp4は幅・深さ、カルモジュリンは長さに関わるとされる。ただし、遺伝子だけで形が決まるとは言えず、この結果は一部の種についての知見である。

こうした発生の仕組みがあるなら、嘴の多様化は、鳥の進化の歴史のどこで起きたのか。

5. 2000しゅるい いじょうを くらべると 何が 分かった?

5. 2000種以上の鳥を比べると、くちばしの形はいつ広がった?

5. 約2000種の嘴形状の比較:多様化は早期に起き、その後は形の空間が詰まった

2000しゅるい いじょうの とりの くちばしの かたちを くらべた けんきゅうが あります。

くちばしの かたちは、とりの しんかの はじめの ころに、ひろがったそうです。そのあとは、のこりの すきまを うめるように ふえました。

ときどき、きゅうに 大きく かわって、とおい かたちに とぶことも あります。

2017年の研究は、2000種以上の鳥のくちばしの形を比べました[8]。くちばしの多様性は、鳥の進化の早い時期に大きく広がり、そのあとは、あいている形のすきまを詰める段階に移ったと報告されています[8]。

ときどき、急な変化が起きて、離れた形の型に跳ぶこともあるそうです。

オオハシの熱の窓も、イスカのねじれも、フィンチの深さも、この広い地図の上にあるのです。

鳥の嘴の形はいつ多様化したのか。Cooney ら(2017)は2000種以上の嘴形状を比べ、嘴の多様性は現生鳥類の進化史の早い時期に広がり、その後は形態空間を埋める段階が支配的になったと報告した[8]。まれに急な変化が起き、離れた型へ跳ぶこともある。

これまでの例は、この大きな流れの中に置くと位置づけが分かる。オオハシの放熱、イスカの交差嘴、ダーウィンフィンチの深さと長さは、その地図の中の別々の場所にある。

つぎは 自分で しらべて みよう

自分でも調べてみたくなったら

自分でも調べてみたくなったら

テレビや としょかんの 本で、いろいろな とりの くちばしを 見くらべて みましょう。ふとい、ほそい、長い、ずれている。どんな たべものが すきか、そうぞうして みます。

ただし、こうえんの とりに えさを あげるのは やめましょう。見るだけで たのしめます。

動物園や図鑑で、鳥のくちばしを1種ずつ見比べてみましょう。ふとい、細い、長い、ずれている。その鳥が何を食べるか、かんたんに調べて、形と合っているか考えます。

身近な場所では、鳥にえさをやらず、遠くから観察するのが基本です。

図鑑や動物園で嘴の形と食性を対応させて比べれば、嘴の大きさ・交差・深さ・長さの違いは自分の目で比べられる。一方、放熱の働きや発生の仕組みは見ただけでは分からないので、出典欄の原典で調べる。2009年の放熱の研究、2004年と2006年の発生の研究、1981年の干ばつの研究は、要旨だけでも読める。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

公開されている論文の要旨・解説・辞書の項目を突き合わせて書いた。

  1. Tattersall et al. (2009) Heat exchange from the toucan bill reveals a controllable vascular thermal radiator. Science. Europe PMC (オオハシの放熱)
  2. National Geographic (Phenomena) Toucan play at reducing the heating bill. https://www.nationalgeographic.com/science/article/toucan-play-at-reducing-the-heating-bill (表面積の割合・サーモカメラの観察)
  3. コトバンク「イスカ」 https://kotobank.jp/word/イスカ (イスカの嘴と食べ方)
  4. Parchman, Benkman & Mezquida (2007) Coevolution between Hispaniolan crossbills and pine. Europe PMC (マツとイスカの比較)
  5. Boag & Grant (1981) Intense natural selection in a population of Darwin's finches. Science. https://doi.org/10.1126/science.214.4516.82 (1977年の干ばつ)
  6. Abzhanov et al. (2004) Bmp4 and morphological variation of beaks in Darwin's finches. Science. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15353802/ (Bmp4と嘴の深さ)
  7. Abzhanov et al. (2006) The calmodulin pathway and evolution of elongated beak morphology in Darwin's finches. Nature. Europe PMC (カルモジュリンと嘴の長さ)
  8. Cooney et al. (2017) Mega-evolutionary dynamics of the adaptive radiation of birds. Nature. https://doi.org/10.1038/nature21074 (約2000種の嘴の比較)

なおした ところ

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