どうぶつに きかいを つけて、海を しらべる ほうほう

バイオロギング ── 動物に機械をつけて、海を見る方法

バイオロギング ── 動物自身に測ってもらう海洋観測

分野:生きもの

1963年、アメリカの 研究者 クーイマンさんは、なんきょくの アザラシが どのくらい ふかく もぐるのか、しりたいと おもいました。

そこで、だいどころの タイマーを かいぞうして、アザラシの せなかに つけたのです。これが、動物に きかいを つけて 海を しらべる「バイオロギング」の、はじまりでした。いっしょに しらべて いきましょう。

1963年、アメリカの研究者クーイマンさんは、南極のアザラシがどのくらい深く潜るのか、知りたいと思いました。

そこで、台所用のキッチンタイマーを改造して、アザラシの背中につけたのです。これが、動物に機械をつけて海を調べる「バイオロギング」の、始まりでした。この方法がどう広がり、何を明らかにしてきたのかを、国立極地研究所や研究者の資料でたどります。

1963年、アメリカの生物学者クーイマンは、南極に生息するアザラシがどれほど深く潜るのかを知りたいと考えた。

そこで、キッチンタイマーを改造した装置をアザラシに装着した。これが、動物に記録計を取り付けて海洋を調べる「バイオロギング」の起点となった。この手法がどのように発展し、何を明らかにしてきたのかを、国立極地研究所や研究者の資料でたどる。

読み方を切り替えられます。画面の上にある「よみかた」のボタンで、小学校低学年むけ小学校高学年むけ中学生むけの3つの書き方に切り替わります。むずかしいと思ったら、いつでもやさしい方に戻ってください。選んだ読み方はブラウザが覚えているので、次に別の記事を開いたときも同じ読み方で始まります。

1. クーイマンさんの、てづくりの きかい

1. クーイマンさんが作った、手作りの記録計

1. クーイマンの手作り記録計と、始まりの1台

アメリカの 研究者 クーイマンさんが、なんきょくに いる アザラシの もぐる ふかさを しらべたいと おもいました。

そこで、だいどころで つかう タイマーを かいぞうして、ふかさを きろくする そうちを つくりました。この そうちを、1960年代に アザラシの せなかに つけて、もぐる ようすを しらべたのです[3]

この、てづくりの きかいが、いまの「バイオロギング」と よばれる ほうほうの、さいしょの 1台でした。

この きかいには、いったい どんな しくみが 入って いたのでしょう。

アメリカの研究者クーイマンさんが、南極にいるウェッデルアザラシの潜る深さを調べたいと考えました。

そこで、台所で使うキッチンタイマーを改造して、深さを記録する装置をつくりました。この装置を1960年代にアザラシの背中につけて、潜る様子を調べたのです[3]

この、手作りの機械が、いまの「バイオロギング」と呼ばれる方法の、最初の1台でした。

この装置には、いったいどんなしくみが入っていたのでしょうか。

アメリカの生物学者G.L.クーイマンは、南極に生息するウェッデルアザラシの潜水行動(深さ・時間)を調べようと考えた。

そこで、キッチンタイマーを改造した時間深度記録計(TDR)を開発し、1960年代にアザラシへ装着した。これにより、潜水中の深さの変化を、時間を追って連続的に把握することが初めて可能になった[3]

この手作りの装置が、「バイオロギング」と呼ばれる研究手法の出発点となった。

この装置には、どのような技術が用いられていたのか。

2. どうして、そんな ことが わかるの?

2. バイオロギングって、どんなしくみ?

2. データロガーには、さまざまなセンサーが積まれている

バイオロギングでは、小さな きろくそうちを、動物の からだに つけます。

この そうちには、はやさや、ふかさ、水おん、いちなどを はかる、いろいろな センサーが 入って います[2]。おとなが つける「スマートウォッチ」が、うんどうりょうや しんぱくすうを はかって くれるのと、すこし にて います(ただし 本当は、水の 中でも つかえる ように、もっと じょうぶに 作られて います)。

動物が およいだり、もぐったり する あいだ、そうちが ずっと データを きろくし つづけます。

あとで そうちを かいしゅうすれば、その 動物が どこで、どんな ふうに くらして いたかが わかります。

この ほうほうは、どうやって 日本にも 広がって いったのでしょう。

バイオロギングでは、小さな記録装置(データロガー)を、動物の体につけます。

この装置には、速さ・深さ・水温・位置などを測る、いろいろなセンサーが入っています[2]。大人がつける「スマートウォッチ」が、運動量や心拍数を測ってくれるのと、少し似ています(ただし実際は、水の中でも使えるように、もっと頑丈に作られています)。

動物が泳いだり、潜ったりするあいだ、装置がずっとデータを記録しつづけます。

あとで装置を回収すれば、その動物がどこで、どんなふうに暮らしていたかが分かります。

この方法は、どうやって日本にも広がっていったのでしょうか。

バイオロギングでは、超小型のデータロガーを野生動物の体に装着する。

データロガーには、加速度センサー・深度(圧力)センサー・温度センサー・GPSなどの衛星測位システム・光量センサーなど、複数のセンサーが搭載されている[2]

動物が遊泳・潜水する間、装置はデータを連続的に記録しつづける。

後日、装置を回収してデータを解析することで、動物がどこで、どのように行動していたかが明らかになる。

この手法は、どのように日本へも広がっていったのか。

3. 「バイオロギング」と いう 名前は、日本から

3. 「バイオロギング」という名前は、日本から生まれた

3. 内藤靖彦らが育て、東京で世界に広まった名前

クーイマンさんの はっぴょうから 20ねんほど たった 1980年代、日本の 国立きょくちけんきゅうしょの 内藤靖彦ないとうやすひこさんたちの グループが、なんきょくの アザラシや ペンギンを つかった けんきゅうを すすめました[4]

そして 2003年、東京で ひらかれた かいぎを きっかけに、「バイオロギング」と いう 名前が、せかいじゅうに ひろがって いきました[3][6]

いまでは、あたりまえに つかわれて いる この 名前、じつは 日本で うまれた ことばです。

こうして 広がった バイオロギングで、いったい どんな ことが わかったのでしょう。

クーイマンさんの発表から20年ほどたった1980年代、日本の国立極地研究所の内藤靖彦さんたちのグループが、南極のアザラシやペンギンを使った研究を進めました[4]

そして2003年、東京で開かれた国際会議をきっかけに、「バイオロギング」という名前が、世界中に広まっていきました[3][6]

いまでは当たり前に使われているこの名前、実は日本で生まれた言葉です。

こうして広がったバイオロギングで、いったいどんなことが分かったのでしょうか。

クーイマンの発表から20年ほどが経過した1980年代、国立極地研究所の内藤靖彦を中心とするグループが、南極のアザラシ・ペンギンを対象とした小型データロガー装着研究を、世界でも早い時期から発展させた[4]

2003年、東京で開催された第1回国際シンポジウムをきっかけに、「バイオロギング(Bio-logging)」という用語が国際的に広まっていった[3][6]

こうして広まったバイオロギングによって、どのようなことが明らかになったのか。

4. 海の中でしか わからない こと

4. 海の中でしか分からないこと

4. アザラシの潜水記録と、海鳥の意外な狩り

なんきょくの 海に すむ ウェッデルアザラシは、いちばん ふかい ときで 904メートルも もぐり、96分間も 水の 中に いた ことが あります[4]

こんなに ふかく、ながく もぐる ようすは、人間が じかに 見に 行く ことが できません。バイオロギングだからこそ、わかった ことです。

ほかにも、ある 海鳥が、クラゲの まわりに あつまる 小さな 魚を、クラゲを りようして つかまえて いる ことも わかりました[5]

こうした 発見は、大きな 動物だけでは ありません。もっと みぢかな 魚でも、おどろく ことが わかりました。

南極の海にすむウェッデルアザラシは、いちばん深いときで904メートルも潜り、96分間も水の中にいたことがあります[4]

こんなに深く、長く潜るようすは、人間が直接見に行くことができません。バイオロギングだからこそ、分かったことです。

ほかにも、ある海鳥が、クラゲのまわりに集まる小さな魚を、クラゲを利用してつかまえていることも分かりました[5]

こうした発見は、大きな動物だけではありません。もっと身近な魚でも、驚くことが分かりました。

南極沿岸に生息するウェッデルアザラシは、最大で深さ904メートル、96分間という長時間の潜水記録を持つ[4]

これほど深く長い潜水行動は、人間が直接観察することはほぼ不可能であり、バイオロギングによって初めて明らかになった。

ほかにも、ある海鳥(ハシブトウミガラス)が、クラゲに集まる小魚を捕食対象として利用していることが、バイオロギングによる追跡調査で判明している[5]

こうした発見は大型動物に限らない。より身近な魚でも、驚くべき事実が明らかになっている。

5. マグロは、時そく80キロでは およいで いなかった

5. マグロは、時速80キロでは泳いでいなかった

5. バイオロギングが崩した、マグロ「時速80キロ」神話

むかしから、「マグロは 時そく80キロで およぐ」と いわれて きました。

でも、マグロの からだに きろくそうちを つけて、じっさいに はかった 研究者が います。ふだんの およぎかたでは、時そく 3キロくらいだったと いいます(全力で およぐ ときは、これより はやく なります)[1]

80キロと いう すう字は、つりを して いた ときに、マグロが かかって いとが 出て いく はやさを、マグロの およぐ はやさだと おもいこんで けいさんした ものでした[1]

大きな 船を つかっても わからなかった ことが、なぜ 小さな きかいを 動物に つけるだけで わかるのでしょう。

昔から、「マグロは時速80キロで泳ぐ」といわれてきました。図鑑にもそう書かれています。

でも、マグロの体に記録計という機械をつけて、実際に泳ぐ速さを測った研究者がいます。ふだんの巡航速度は、時速3キロくらいだといいます(全力で泳ぐときは、これより速くなります)[1]

80キロという数字は、釣りをしていたときに、マグロが針にかかって糸が出ていく速さを、マグロの泳ぐ速さだと思いこんで計算したものでした[1]

大きな船を使っても分からなかったことが、なぜ小さな機械を動物につけるだけで分かるのでしょうか。

「マグロは時速80キロで泳ぐ」という説は、長く図鑑や俗説として流通してきた。

しかし、マグロに記録計を取り付けて実際の遊泳速度を測定した研究者によれば、通常時の巡航速度は時速3キロ程度にすぎない(全力で泳ぐ際の瞬発的な速度は、これより速くなる)[1]

「時速80キロ」という数値は、釣り針にかかったマグロが引く際に糸が繰り出される速度を、対水速度(水に対する実際の遊泳速度)と混同して算出されたものだった[1]

大型船を用いた従来の観測では分からなかったことが、なぜ小型の記録計を動物に取り付けるだけで明らかになるのか。

6. なぜ、動物に はかって もらうのか

6. なぜ、動物に測ってもらうのか

6. 動物を「観測プラットフォーム」として使う理由

なんきょくの 海のように、人間の ふねが 入りにくい ばしょが あります。マグロの ように、ずっと およぎつづける 魚に、船で ぴったり ついて いく ことも かんたんでは ありません。

でも、アザラシや マグロは、じぶんの ちからで、その ばしょまで 行く ことが できます。

動物に きかいを つけて おけば、動物が いった さきの 水おんや ふかさの データを、いっしょに あつめて きて くれます[6]。人間が 行けない ところへの「おつかい」を、動物に たのむような ものです(ただし 本当は、動物は おつかいを たのまれた つもりは ありません)。

つまり、動物 じしんが、海を しらべる どうぐに なって くれます。

南極の海のように、人間の船が入りにくい場所があります。マグロのように、ずっと泳ぎつづける魚に、船でぴったりついていくことも簡単ではありません。

でも、アザラシやマグロは、自分の力で、その場所まで行くことができます。

動物に機械をつけておけば、動物が行った先の水温や深さのデータを、いっしょに集めてきてくれます[6]。人間が行けないところへの「おつかい」を、動物に頼むようなものです(ただし実際には、動物はおつかいを頼まれたつもりはありません)。

つまり、動物自身が、海を調べる道具になってくれます。

南極の氷に閉ざされた海域のように、船舶による観測が困難な場所がある。マグロのように広範囲を高速で回遊する魚に、船で追随しつづけることも容易ではない。

しかし、アザラシやマグロなどの海洋動物は、そうした場所にも自力で到達できる。

動物に記録装置を装着しておけば、動物が訪れた先の水温・塩分・深度といった海洋環境データを、行動データとあわせて収集できる[6]

動物自身を、海洋観測のプラットフォームとして活用しているのである。

じぶんでも やって みる

自分でも調べてみたくなったら

自分でも調べてみたくなったら

じぶんでも、かんがえたり、たしかめたり して みましょう。

やって みる

  • じぶんの うでどけいや、おうちの 人の スマートウォッチを 見て みる。もし これを 動物に つけるなら、どこを くふうしたら いいか かんがえて みる(水に つよく する、外れにくく する、など)。
  • 水ぞくかんに 行く きかいが あったら、ペンギンや ウミガメが もぐる ようすを 見て みる。どのくらいの 時間、水の 中に いるか、はかって みる。
あんぜんの ために

水ぞくかんでは、ガラスや さくに おしつけたり しないで、みんなが 見やすい ように 気を つけましょう。

自分でも、考えたり確かめたりしてみましょう。

やってみる

  • 自分の腕時計や、家の人のスマートウォッチを見てみる。もしこれを動物につけるなら、どこを工夫したらいいか考えてみる(水に強くする、外れにくくする、など)。
  • 水族館に行く機会があったら、ペンギンやウミガメが潜る様子を見てみる。どのくらいの時間、水の中にいるか、時計で測ってみる。
安全のために

水族館では、ガラスや柵に押しつけたりしないで、みんなが見やすいように気をつけましょう。

自分の手で確かめる

  • ニュースや天気予報で海の水温のデータを見かけたら、それが船で測られたものか、動物が集めたものか、考えてみる。
  • 水族館で、ペンギンやウミガメの潜水時間を実際に計測してみる。

原典で確かめる

  • 国立極地研究所のバイオロギングに関する解説をもっと詳しく読む。[4]
  • バイオロギングの歴史と技術について、専門企業の解説記事を読む。[3]
安全のために

水族館では、ガラスや柵に押しつけたりしないで、みんなが見やすいように気をつけましょう。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

この記事は、下にあげた公開情報をもとに書いています。文章や図を無断で転載してはいません。もっと正確に知りたいときは、必ず下の出典にあたってください。リンク先の内容や、リンク先で起きたことについて、当サイトは責任を負いません。

出典について:ナショナルジオグラフィック日本版、NTT研究所のメディア、Biologging Solutions(専門企業)、国立極地研究所、サイエンスポータル、笹川平和財団の公開情報を使いました。このメモは、これらの機関・企業のものではなく、個人のまとめです。

  1. ナショナルジオグラフィック日本版「マグロは時速80キロで泳がない!?」。 https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/20110615/274130/?P=3 (バイオロギングで実測したマグロの遊泳速度〔時速約3キロ〕、時速80キロ説の由来〔釣り糸の速度との混同〕)
  2. NTT研究所メディア「Beyond Our Planet」「バイオロギングとは何か?基礎技術の解説から応用まで」。 https://www.rd.ntt/se/media/article/0041.html (データロガーに搭載されるセンサーの種類)
  3. Biologging Solutions「バイオロギングとは|原理・歴史・応用」。 https://www.biologging-solutions.com/ja/biologging (クーイマンによるキッチンタイマー式記録計〔1963年開発〕、2003年東京シンポジウムでの用語の広まり。バイオロギング関連企業の解説記事)
  4. 国立極地研究所「極」特集「潜る動物を使って海洋環境を調べる」。 https://kyoku.nipr.ac.jp/special/2156 (内藤靖彦らによる南極でのバイオロギング研究、ウェッデルアザラシの潜水記録〔904メートル・96分間〕)
  5. サイエンスポータル「バイオロギングで追跡。海鳥がクラゲで魚獲り」。 https://scienceportal.jst.go.jp/gateway/clip/20151030_01/index.html (海鳥がクラゲを利用して小魚を捕食する行動の発見)
  6. 笹川平和財団 海洋政策研究所「日本のバイオロギング研究」。 https://www.spf.org/global-data/opri/perspectives/prsp_017_2021_iwata.pdf (動物を活用した海洋環境データの収集という意義。2003年東京の第1回国際バイオロギングシンポジウムで用語が広まったこと)

なおした ところ

更新履歴

更新履歴(改版の記録)

  •  初版を公開。

このサイトでは、公開した記事の本文は原則として書き直しません。誤りが見つかったときや、内容が古くなったときだけ手を入れ、その理由をこの欄に残します。

このサイトは、ほんの入り口です

メモできる量や正確性には、限界があります。もし、少しでも気になったことがあったら、ぜひ、専門の書籍・動画・施設・人に手を伸ばしてみてください。もっともっとワクワクすることに出会えると思います。