1. 卵の おおきさは、どれくらい ちがうの?
1. コーヒー豆ほどの卵から、8リットル以上入る卵まで
1. 卵の大きさは、どこまで幅があるのか:コーヒー豆から8.5リットルまで
いま いきて いる とりで いちばん おおきい 卵は、ダチョウの 卵です。ながさは 15センチほど。おもさは、1キロを こえます。ずかんでは、1.3キロから 1.9キロまで、はばが あります。
いっぽう、キューバに すむ マメハチドリの 卵は、コーヒー豆ぐらいの おおきさです。
むかし マダガスカルに いた、エピオルニスと いう とりは、もっと おおきな 卵を うみました。ながさは 33センチまで、はいる みずは 8.5リットル。ダチョウの 卵の 7こぶんと いわれます。
おおきさは こんなに ちがいます。では、かたちは どうでしょう。
現在いる鳥でいちばん大きい卵は、ダチョウの卵です。百科事典には、長径約15cm、短径約13cm、重さ約1.6kgとあります。図鑑では1.3〜1.9kgと幅があり、資料によって数字が動くようです[7]。1kgの砂糖袋より重い卵を想像すると、手に持つのも大変そうです。
反対の端にいるのが、キューバだけにすむマメハチドリです。世界最小クラスの鳥で、その卵はコーヒー豆ほどの大きさだと紹介されています[9]。
大きいほうの記録は、すでに絶滅した鳥にあります。ギネス世界記録は、マダガスカルにいたエピオルニスの卵を最大とし、長さ最大33cm、容量8.5リットル、ダチョウ卵の約7個ぶんとしています[8]。1リットルの牛乳パックなら8本分以上です。これは推定幅が大きい中の最大値であり、どの卵もこの大きさだったわけではありません。
大きさだけでも、これだけ差があります。ところが鳥の卵は、形もそろっていません。
現生の鳥で最大の卵はダチョウのものである。百科事典は長径約15cm・短径約13cm・重さ約1.6kgとし、図鑑は1つ1.3〜1.9kgと書く。資料によって幅があるので、重さを1つの数字で言い切れない[7]。
小さい側では、キューバにだけすむマメハチドリの卵が、コーヒー豆ほどの大きさとされる[9]。
絶滅鳥まで含めると、記録はさらに大きくなる。ギネス世界記録は、マダガスカルのエピオルニス(ゾウチョウ)の卵を最大とし、長さは最大33cm、容量は8.5リットル、ダチョウ卵の約7個ぶんという[8]。8.5リットルは、1リットルの牛乳パックで8本と半分に当たる。ただし推定幅が大きく、この数字は上限として読む必要がある。
では、こうした大きさの幅の中で、形は何が決めているのか。次の章で、形をどう数字にしたのかを見る。
2. 卵の かたちは、とりの なにと むすびついて いたの?
2. 5万個の卵を測ると、形は「飛ぶ力」と結びついていた
2. 形を2つの量で表すと、食性や巣より飛翔能力と対応した
2017ねんに、1400しゅるいの とり、ほぼ 5まんこの 卵を しらべた 研究が ありました。かたちを、2つの ものさしで あらわしました。かたほうの はしが とがって いる ぐあいと、ほそながい ぐあいです。
とりの たべものや、すを つくる ばしょと くらべても、はっきり むすびつきませんでした。むすびついたのは、「とぶ ちから」でした。とぶのが とくいな とりほど、ほそながい 卵か、かたほうが とがった 卵を うむ ことが おおい、という けっかです[2]。
にほんの ほうどうでは、フクロウのように すーっと とぶ とりは、まるい 卵を うむ ことが おおいと しょうかいされて います。
この研究では、卵の形を2つの量で表しました。片方の端がもう片方よりとがっている度合い(非対称さ)と、どれだけ細長いか(楕円さ)です。こうすれば、丸い卵からとがった卵まで、1つの物差しの上に並べられます[1]。
その形を、鳥の食べ物や巣の場所と比べてみました。広い範囲の鳥で対応が見えたのは、飛ぶ力の強さでした。飛ぶのが得意な鳥ほど、非対称な卵か細長い卵を産む傾向があるという結果です[2]。
日本語の報道では、卵の形が4つに分けて紹介されています。ニワトリの卵形、海鳥の洋梨形、フクロウの円形、ダチョウの楕円形です。翼の先がとがって飛ぶ力の高い鳥ほど、細長くてとがった卵を産みやすく、フクロウのように滑空する鳥は丸い卵を産みやすいと説明されています[3]。ただしこの4分類は報道の分け方で、研究そのものは、2つの量で連続的に形を表しています。
ここで引っかかることがあります。卵の形が、飛ぶことと、どうつながるのでしょうか。
Stoddardらは、約1400種・ほぼ5万個の卵の形を、2つの変数で表した。卵の非対称さ(ひたいしょうさ。片方の端がもう一方よりとがる度合い)と、細長さ(楕円さ)である。形の分類ではなく連続量で扱うので、丸い卵からとがった卵まで同じ尺度に載る[1]。
この形のちがいを、食べ物や巣の場所といった生態の要因と比べたところ、広い分類群にわたって対応したのは飛翔能力だった。飛ぶのが得意な鳥ほど、非対称か細長い卵を産む傾向がある。論文は、飛ぶための適応が卵の形のばらつきを生む大きな要因だった可能性を指摘している[2]。相関であって、因果が証明されたわけではない。
日本語の報道では、形を4つに分けて紹介する例がある。卵形(ニワトリ)、洋梨形(ようなしがた。海鳥)、円形(フクロウ)、楕円形(ダチョウ)で、翼の先がとがる飛翔能力の高い鳥ほど細長くとがった卵、滑空する鳥は丸い卵を産みやすいとされる[3]。この4分類は報道の整理であり、論文は先の2変数の連続量を使う。
残る疑問は、相関の理由である。飛ぶことは、なぜ卵の形に響くのか。
3. とぶ ことと 卵の かたちは、どう つながるの?
3. 飛ぶことと卵の形は、どうつながると考えられているか
3. 流線形の体に大きな卵を収める:飛翔と卵形をつなぐ説明
そらを とぶ とりは、からだを ほそく ととのえて います。からだが ずんぐり していると、かぜの ていこうが おおきく なるからです。
ところが、おおきな 卵は、からだの なかで ばしょを とります。ここで、ほそながくて とがった 卵が いいのでは、という かんがえが でて きました。いちばん ふとい ところを ふやさずに、卵の 体積を ふやせるからです。
ただし、これは「そう かんがえられる」と いう せつめいです。しょうめい された ことでは ありません。
理由として示された説明はこうです。飛ぶ鳥は、空気の抵抗を減らすために、体を流線形に保つ必要があります。体の幅を広げにくいなかで大きな卵を産むには、とがって細長い卵のほうが都合がよいと考えられています。いちばん太い部分の幅を増やさずに、卵の体積を増やせるからです[1]。
たとえば、体の中に通せる最大の幅が決まっているとします。横幅を広げることはできないので、中身を増やすには、長くのばすしかありません。細長くとがった卵は、そのやり方にあたります。
ただし、これはあくまで研究者が示した説明の1つです[1]。飛ぶ鳥が体の中でどう卵を収めているかを確かめた結果ではありません。研究が示したのは、飛ぶ力と卵の形が広く対応するところまでです[2]。
では、とがった卵の代表として知られるウミガラスでは、どんな理由が語られてきたのでしょうか。
この対応に対して示された説明は、体の形の制約である。飛翔する鳥は、体を流線形に保たねばならない。胴の最大幅が限られているなかで大きな卵を収めるには、細長くとがった卵のほうが、最大幅を増やさずに体積を増やせて有利だと考えられる[1]。
簡単な見積もりで考えるとわかりやすい。胴の通り道の幅が固定されているなら、卵の体積を増やす方法は、長さを伸ばすことしか残らない。細長くとがった卵は、この方向の解にあたる。もちろんこれは筆者の単純化であって、実際の産卵の仕組みを示したものではない。
ここで強調すべきは、これが「説明が示された」段階だということである。論文が示したのは、広い分類群で飛翔能力と形が対応するという相関までで、飛ぶことが形を決めたという因果の証明ではない[2]。
では、洋梨形にとがる卵で知られるウミガラスでは、どんな理由が語られてきたのか。
4. ウミガラスの とがった 卵は、ころがらない ための かたち?
4. ウミガラスのとがった卵は、崖で転がり落ちないための形だったのか
4. 洋梨形の卵は転がりにくいのか:ウミガラスで見直された2つの説
ウミガラスは、がけの せまい たなに 卵を うみます。卵は ようなしの ように、かたほうが とがって います。
むかしから、こう いわれて きました。「ころがっても、まるく まわるだけで、がけから おちにくい」「こまの ように くるくる まわる」。
ところが、しらべて みると、卵は こまの ようには まわりませんでした。まるく えんを かいて ころがる ことは ありますが、その ころがりかたは、たなから おちるかどうかに あまり えいきょうしませんでした。
ウミガラスの 2しゅるいで 卵の 体積と とがりかたの かんけいも しらべました。かんけいは よわく、とがりかたの ちがいの 3パーセントほどしか、体積では せつめい できませんでした。
「ころがらない ための かたち」と いう ながい かんがえは、そのまま では つかえなく なって きたのです。
ウミガラスは崖の棚で繁殖し、卵は洋梨形にとがっています。昔から、こう説明されてきました。転がっても円を描くだけで崖から落ちにくい。あるいは、独楽のように回って止まる。
2017年、バークヘッドらのグループが実際に調べました。卵は独楽のようには回りませんでした。円弧を描いて転がることは確かめられましたが、棚から落ちるかどうかへの影響は小さいことが分かりました[4]。
同じ年、同じグループはウミガラス2種で、卵の体積ととがり方の関係も調べました。関係は弱く、形のちがいのうち体積で説明できるのは約3%だけでした。「転がり防止が形を決めた主な理由」という長年の考えに、疑問を投げかける結果です[5]。
日本語の報道には「転がりにくいように尖る」と紹介するものもありますが、論文の結論は、この説が見直された、というものです。この記事では論文の言い方に従います。
転がり防止ではないとすると、ウミガラスの卵はなぜとがっているのでしょうか。
ウミガラスは崖の狭い棚に営巣し、卵は洋梨形にとがる。長く、この形は転がり落ちにくさに結びつけられてきた。転がっても円を描き崖から落ちにくい、あるいは独楽のように回って転がるのを避ける、という2つの考えである。
Birkheadらは2017年にIbis誌で、実際に卵の動きを調べた。卵は独楽のようには回らず、円弧を描いて転がることは確かめられたが、棚から落ちるかどうかへの影響は小さかった。つまり、2つの考えはどちらもそのままでは支えられなかった[4]。
同年のJournal of Ornithologyの論文は、別の角度から検討した。ウミガラス2種で、卵の体積ととがり方の関連は弱い正の関係にとどまり、形のばらつきの約3%しか体積で説明できなかった。転がり防止が形を決めた主因だという長年の考えに疑問を投げかける[5]。
日本語の報道には「転がりにくいように尖る」と紹介する例があるが、論文側の結論は、説は見直されたというものなので、ここでは論文の言い方を採る。なお約3%は、2種のウミガラスの計測にもとづく値で、他の鳥に当てはまる数字ではない。
転がり防止が主因でないなら、洋梨形には別の利点があるはずだ。その候補を次に見る。
5. ころがる せつが みなおされた あと、なにが のこったの?
5. 転がり説が見直されたあと、有力になった考え
5. 衝撃と汚れへの強さ:決着していない候補
つぎに あがった かんがえは、ウミガラスが とても ぎゅうぎゅうの ばしょで 卵を うむ ことと かんけい します。
まわりの とりに ぶつかられたり、ふんや つちで よごれたり します。そんな なかでも、ようなしの かたちの 卵が じょうぶで いられるのでは、という かんがえに あう 証拠が しめされました[6]。
でも、これで けっちゃく したわけでは ありません。「ころがらない ため」と いう せつが みなおされた あと、ありそうな りゆうが ひとつ ふえた、という ところです。
転がり説に代わって出てきたのは、ウミガラスの繁殖地の混み具合に注目した考えです。ウミガラスはとても密集した群れで繁殖します。そのため、洋梨形の卵は、ほかの個体からぶつかられる衝撃に強い、あるいは、フンや土などの汚れから守られるのではないか、という考えに合う証拠が示されました[6]。
ここで大切なのは、「その考えに合う証拠が示された」という段階だということです。決着したわけではありません。研究が示したのは、いちばん広く知られた説明が当てはまりにくいこと、そして別の説明がありうることです。
こうして見ると、卵の形には、飛ぶ力という広い傾向と、種ごとの暮らしに合った事情が重なっているのかもしれません。広い傾向を調べた研究と、1つの鳥を細かく調べた研究は、別々の問いに答えています。
転がり防止説が弱まったあと、有力な候補として示されたのは、繁殖地の密集に関わる説明である。ウミガラスは非常に密集した群れで繁殖する。洋梨形の卵は、他個体からの衝撃に対する抵抗や、糞などの汚染からの保護に有利だという考えに合う証拠がある[6]。
ただし、これは「証拠と合う」という段階で、決着ではない。形の理由は、現時点で「転がり説は見直され、衝撃や汚れへの強さが有力な候補」と整理するのが妥当である。
この例は、冒頭の広い傾向と対になる。1400種を比べた研究は、飛翔能力という全体の対応を見つけ、2種のウミガラスを調べた研究は、1つの種での説明の当たりはずれを検討した。前者は相関を示す研究であり、後者は個別の仮説を検証する研究である。広く見る目と細かく見る目は、別の問いに答えている。
台所の 卵で、ほそながさを はかって みよう
台所の卵で、細長さを自分で測ってみる
台所の卵で、形の数値化を試し、原典で確かめる
うちに ある 卵を 3つ ならべて みましょう。とがって いる はしと、まるい はしを みくらべます。
ものさしで、ながさと いちばん ふとい ところを はかります。ながさを ふとさで わると、ほそながさの めやすに なります。すうじが おおきいほど、ほそながい 卵です。
ゆで卵なら、たいらな ところで かるく ころがして みても いいです。まっすぐ すすむか、まるく まわるか、みて みましょう。ウミガラスと おなじに なるとは かぎりません。おちない ように、おとなと いっしょに やりましょう。
家にある卵を3個、机に並べてみます。とがった端と丸い端を見比べ、定規で長さと、いちばん太いところの幅を測ります。長さを幅で割った数字が、細長さの目安です。これは研究で使われた物差しとは別の、この記事用の簡単な目安で、数字が大きいほど細長い卵です。同じパックの卵でも少しずつちがうか、見てください。
ゆで卵なら、平らな場所で軽く転がしてみるのもよいでしょう。まっすぐ進むか、円を描くか。ウミガラスの卵と同じ結果になるとは限りませんが、転がり方の見方がつかめます。床に落ちないよう、大人と一緒に、低いところでやります。
もっと知りたくなったら、2017年の論文があります。Stoddardらの卵の形の研究はScience誌に、ウミガラスの転がり説を調べた研究はBirkheadらの論文として、Ibis誌とJournal of Ornithology誌に載っています。要旨は大学や研究機関のサイトで公開されています。
家庭でも、形の数値化の一部は試せる。卵を3個、定規で測り、長さを最大幅で割って細長さの目安を作る。これは論文の2変数とは別の簡易指標で、数値が大きいほど細長い。同じパックの卵でも値がばらつくか、確かめてみるとよい。
転がり方は、ゆで卵を平らな場所で軽く転がせば観察できる。円弧を描くかどうか見るのが目的で、ウミガラスの結果が他の卵で再現される保証はない。落下しない高さで、大人と一緒に行う。
原典は、Stoddardら(2017)のScience論文(要旨は大学リポジトリで読める)と、Birkheadら(2017)のIbis 159巻、Journal of Ornithology 158巻の論文である。要旨を読むと、本記事が相関と因果を分け、ウミガラスの説を「見直された」と書いた理由が確かめられる。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
要旨・大学ニュース・報道・公式サイトを突き合わせて使いました。数字は上限値や資料間の幅を本文に書いています。
- University of Bristol「Avian egg shape」ニュース(2017年) https://bristol.ac.uk/news/2017/june/avian-egg-shape-.html (1400種・5万個、2つの量、体の形の説明)
- Stoddard et al. 2017 Science(要旨・Harvard DASH) https://dash.harvard.edu/entities/publication/23631a5a-3513-4e58-9da9-840c7b26cf6c (飛ぶ力と卵の形の対応)
- GIZMODO JAPAN「鳥の卵の形の違い」 https://www.gizmodo.jp/article/reason-difference-shape-bird-egg/ (4つの形の紹介。報道の分け方)
- Birkhead et al. 2017 Ibis 159:255(要旨・White Rose) https://eprints.whiterose.ac.uk/113128 (転がり説の検証)
- Birkhead et al. 2017 Journal of Ornithology 158:679(White Rose) https://eprints.whiterose.ac.uk/id/eprint/112880/ (体積と形のとがり方の関係)
- Wiley プレスリリース(2017年2月23日) https://investors.wiley.com/news/news-details/2017/Researchers-Ponder-the-Shape-of-Birds-Eggs-2017-2-23/default.aspx (衝撃・汚れへの強さの証拠)
- コトバンク「ダチョウ」(世界大百科事典ほか) https://kotobank.jp/word/%E3%83%80%E3%83%81%E3%83%A7%E3%82%A6 (ダチョウ卵の大きさ)
- Guinness World Records「Largest egg from a bird」 https://www.guinnessworldrecords.com/world-records/70945-largest-egg-from-a-bird (エピオルニスの卵)
- Audubon「Get to Know the Bee Hummingbird」 https://www.audubon.org/magazine/get-know-bee-hummingbird-worlds-smallest-bird (マメハチドリの卵の大きさ)
なおした ところ
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