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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

とりは ねている あいだ、どうして えだから おちないの?

眠る鳥が枝から落ちないのは、腱が勝手に握るから? ── ムクドリの実験が問い直した定番の説明

止まり木で眠る鳥の足 ── 腱の「自動ロック」説と、ムクドリの観察・力学モデルによる見直し

分野:生きもの

ねている ムクドリの あしを しらべたら、ゆびの さきは、えだを にぎって いなかった、という じっけんが あります[4]。

えっ、にぎって いないのに、どうして おちないのでしょう。この メモでは、よく きく せつめいと、その みなおしが わかります。

眠っている鳥の足を調べたら、指の先は枝を握っていなかった。ヨーロッパムクドリを調べた2012年の実験は、そう報告しています[4]。

鳥は「腱が引かれて、指が勝手に閉じる」から落ちない、とよく説明されます。では、その説明はどこまで本当なのでしょうか。このメモでは、定番の説明と、実験や力学モデルによる見直しが分かります。

止まり木で眠る鳥の足は、定番の説明どおりに指を握りこんでいるのか。ヨーロッパムクドリの実験では、眠る個体の膝と足首は少ししか曲がらず、指の先側の約3分の2は止まり木を握る形になっていなかったと報告された[4]。

ここから、「腱が自動で閉じる」説は、どこまで眠りの説明になるのかという問いが出てくる。このメモでは、腱の仕組みの一次資料と、ムクドリの観察、力学モデルの結果を読み比べ、何が言えて何が言えないかが分かる。

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1. ひとは ねると ものを おとすのに、とりは?

1. 人は眠ると物を落とすのに、鳥はなぜ平気なのか

1. 眠りと筋緊張 ── 力がぬけても落ちないという前提

ひとは ねむく なると、手の ちからが ぬけます。もって いた ほんを、ぱたんと おとした ことは ありませんか。

ところが 鳥は、木の えだに とまった まま ねむっても、ふつう おちません。ねむって いるのに、どうして えだを はなさないのでしょう。

ある 本には、「鳥の あしは、ちからを ぬいても えだを つかむように できている」と 書かれて います[7]。では、その しくみは なんでしょう。

本を読みながらうとうとして、手から本が落ちた経験はありませんか。眠ると体の力はぬけて、握っていたものは手からすべります。

鳥は、枝にとまったまま眠っても、ふつうは落ちません。野鳥の解説サイトには、鳥の足は力をぬいても止まり木をつかむようにできている、という説明があります[7]。

力をぬいているのに、つかんでいる。この矛盾のような話を解く鍵が、足にある「腱」です。

ヒトは眠ると筋の緊張がゆるみ、握っていた物を落とす。鳥が止まり木で眠って落ちないのは、握る力が起きている間の筋力だけに頼っていないからではないか、という疑問が出る。

一般向けの解説では、鳥の足は力をぬいても止まり木をつかむ構造になっている、と述べられる[7]。この「力をぬいても握れる」仕組みの候補としてまず挙げられるのが、足を通る腱である。

2. しゃがむと、ゆびが じぶんで とじる?

2. 定番の説明 ── しゃがむと腱が引かれて指が閉じる

2. 屈筋腱の経路 ── 足首の屈曲が指の屈曲を引き起こすという説明

よく きく せつめいは、こうです。鳥の あしには、ふくらはぎの あたりから ゆびの うらまで のびる、ながい「けん」が あります。けんは、ほねと きんにくを つなぐ、じょうぶな ひもの ような ものです。

鳥が しゃがむと、あしくびが まがり、この ひもが ぴんと ひっぱられます。すると、ゆびが ぎゅっと とじます[1]。

たとえば、あやとりの ひもを ひくと、ゆびが まがる ような ものです。ただし ほんとうの あしは、ひもを 1本 ひくだけの かんたんな しくみでは ありません。

体の おもさも、てつだいます。かかとに おもさが かかると けんが はり、ゆびが えだに つよく とじる、と せつめいする 番組も あります[2]。

これなら、ねむって ちからが ぬけても、体の おもさで しぜんに にぎれそうです。

ふくらはぎから指の裏までのびる腱

解説によると、止まり木にとまる鳥には、ふくらはぎの筋肉から足首の裏を回り、各指の内側まで伸びる長い腱があります。鳥がしゃがんで足首などが曲がると、この腱が引っ張られて指が閉じる、という説明です[1]。

鳥のラジオ番組BirdNoteも、鳥の体重がかかとにかかると、かかとの腱が張って指が小枝を強く握る、と紹介しています。眠るときは、片足をおなかの羽毛に引き上げ、頭を背中にのせる姿も紹介されています[2]。

あやとりのひもに似ている

腱は、筋肉と骨をつなぐ、じょうぶなひものようなものです。足首を曲げると、そのひもが引かれて指が曲がる。あやとりで、ひもを引くと指が曲がるのに似ています。ただし本物の足は、ひも1本で動く単純な作りではありません。

この説明なら、眠って力がぬけても、体の重みが握る力に変わります。ところが、研究者はもっと細かい仕組みも調べていました。

解説書でよく紹介される筋書きは、こうである。止まり木にとまる鳥には、下腿の筋から足首の後ろを回り、各指の内側へ達する長い腱がある。しゃがんで足首などが曲がると腱が引かれ、指が閉じる[1]。BirdNoteは、体重がかかとにかかって腱が張り、指が小枝を強く握ると述べる[2]。

この筋書きの強みは、眠って筋の随意的な収縮が止まっても、体重と姿勢だけで握りが保たれるという点にある。ただし、これらは一般向けの解説で、実際に眠る鳥の指がどれだけ曲がっているかを測った結果ではない。

では、腱には握りを「固定」する仕掛けまであるのか。その研究を見る。

3. けんには、ゆびを とめる「かぎ」が ある?

3. 腱の表面にある「ロック機構」とは何か

3. 腱ロック機構(TLM)── 猛禽・フクロウでの研究と、その限界

けんの ひょうめんには、ちいさな でこぼこが ある ことが あります。さやの ひだと かみあうと、ゆびを まげた かたちで とまります。これを「けんロックきこう」と よびます[3]。

ドアの かぎの ように、ゆびを かたちのまま とめる ものです。ただし ほんとうの しくみは、もっと こまかく できて います。

この しくみは、フクロウなどの、えものを つかむ 鳥で しらべられて きました。えものを しっかり つかむ ための ものと 考えられて います。

ですから、すべての 鳥が ねむる ときに つかうと まで は いえません。

腱の突起とさやのひだがかみ合う

鳥の指を曲げる腱は、表面の一部が、小さな突起のように変形していることがあります。この突起が、腱を包むさやのひだとかみ合うと、指を曲げた形で止められます。この仕組みは「腱ロック機構」と呼ばれ、フクロウなどで調べられています[3]。

ドアのかぎのように、一度かかると指の形が保たれるイメージです。ただし実際には、もっと細かい構造が関わっています。

主に、獲物をつかむ鳥で研究された

この研究は、主に猛禽類の獲物の保持を調べたものです。すべての鳥が、眠るときにこのロックを使っているとは書かれていません[3]。

では、本当に眠る鳥の足を調べると、何が見えるのでしょうか。

腱ロック機構(digital tendon locking mechanism)は、指を曲げる屈筋腱の表面が部分的に変形し、それが腱鞘のひだとかみ合って、指を屈曲位に保持する仕組みを指す[3]。フクロウでこの機構を調べたEinoder & Richardson(2007)が、その構造を報告している。

ただし、この機構は主に猛禽類が獲物を保持する場面で研究されてきた。そこから「すべての鳥が眠りのたびに腱ロックで止まっている」と読むことはできない。眠る鳥でそれが働いているのかは、別の観察で確かめる必要がある。

その観察のひとつが、ヨーロッパムクドリを使った実験である。

4. ねている ムクドリの ゆびは、にぎって いなかった

4. 眠るムクドリの指は、枝を握っていなかった

4. Galton & Shepherd(2012)── 眠るムクドリで「握り」を直接見る

2012年、ムクドリを つかった じっけんが 発表されました[4]。

ねむって いる ムクドリの ひざと あしくびは、すこししか まがって いませんでした。しかも、ゆびの さきの ほうの 3ぶんの 2は、えだを にぎる かたちに なって いませんでした[4]。

「しゃがんで けんが ひっぱられ、ゆびが ぎゅっと とじる」という せつめいとは、ちがう すがたです。

では、にぎって いないなら、どうして おちないのでしょう。

けんを きったり、けんの かぎを とりのぞいたり した ムクドリも、ゆびを まげられないまま、えだで ねむれた、と のって います。

ムクドリを使った2012年の実験

2012年、GaltonとShepherdは、ヨーロッパムクドリが止まり木にとまる様子を実験で分析しました。眠っているムクドリの膝と足首は、少ししか曲がっておらず、指の先側の約3分の2は、止まり木を握る形に曲がっていなかった、と報告されています[4]。

「しゃがんで腱が引かれ、指がぎゅっと閉じる」という説明からは、予想しにくい姿です。論文は、従来の説明に疑問を示しています[4]。

腱を切っても、ムクドリは眠れた

この実験では、腱を切ったムクドリや、ロック機構を取りのぞいたムクドリも、指を曲げられないまま止まり木で眠った、と要旨に書かれています。ここで紹介するのは論文の要旨にもとづく内容です。

握っていないなら、どうして落ちないのか。次の章で、その候補を見ます。

Galton & Shepherd(2012)は、ヨーロッパムクドリの止まり方を実験的に解析し、眠る個体の膝と足首は少ししか屈曲しておらず、趾の遠位3分の2は止まり木を握る形に屈曲していないと報告した[4]。

これは、「しゃがむと腱が引かれて自動的に握る」という従来の説明に疑問を投げかける観察である。また、腱を切断した個体やロック機構を除去した個体も、趾を曲げられないまま止まり木で眠ったとされる。ただし、ここで紹介するのは論文の要旨にもとづく内容である。

観察は、ひとつの種についての結果でもある。同じ結果がほかの鳥にも当てはまるかは、このメモの資料では分からない。では、握りに頼らない説明はあるのか。

5. にぎらずに、どうやって おちないの?

5. 握らずに落ちないための、バランスと足の裏

5. 近位屈筋の要否とバランス ── 力学モデルと先行観察

BirdNoteは、ムクドリの けんきゅうを しょうかい して います。けんを とりのぞいても、止まって ねむれた れいが あり、うまれつきの バランスと、ゆびの まきつけ方で、たりて いたそうです[5]。

また、ねむる ムクドリは、あしの うらの まんなかの ふくらみに 体の おもさを のせ、えだに じかに あてて いた、という かんさつも あります[6]。

ゆびで ぎゅっと にぎると いうより、あしの うらで、えだの うえに そっと のって いるような すがたです。

ただし、これらは ほんの 一部の はなしです。ねむる とりが おちない おもな りゆうを、この しりょうだけで ひとつに きめる ことは できません。

腱をのぞいても眠れた例

BirdNoteは、ムクドリの研究を紹介する中で、腱を取りのぞいても止まって眠れた例があり、生まれつきのバランスと、指の巻きつけ方で足りていた、と伝えています[5]。どの腱を、どのように取りのぞいたのかなどの詳しい条件は、この紹介記事からは分かりません。

足の裏の中央で、止まり木に乗る

Yale大学のBackusらの論文には、先行研究の観察として、止まって眠るムクドリが、体重を足の裏の中央のパッドに乗せ、止まり木に直接当てていた、と書かれています[6]。

指で強く握るというより、足の裏全体で、枝の上にそっと腰かけているような姿です。

力学モデルが示した、近位の屈筋

同じ論文は、鳥の足を力学モデルで解析し、物をつかんで運ぶだけなら、指先に付く腱だけで足りるが、止まり木では、指の関節の手前に付く屈筋も必要になる場合が多い、と述べます。猛禽と止まり木タイプの鳥で筋の発達が違うことと合う、とも指摘しています[6]。これはシミュレーションで、眠りの実験ではありません。

つまり、「腱の自動握り」か「バランスと足裏」か、落ちない主な理由をひとつに決めることは、ここで読んだ資料だけではできません。

握りに頼らない説明の手がかりは、ふたつある。ひとつはBirdNoteの紹介で、ムクドリの研究では腱を取りのぞいても止まって眠れた例があり、生得的なバランスと趾の巻きつけ方で足りていたという[5]。ただし、どの腱を取ったのか等は紹介記事からは分からず、元の研究との対応も紹介記事だけでは分からない。

もうひとつは、Backusら(2015)が引用する先行観察である。止まって眠るムクドリは、体重を足底中央のパッドに乗せ、そのパッドが止まり木に直接当たっていたという[6]。これは同論文自身の実験ではなく、引用された観察である。

Backusらは、鳥の足を力学モデルで解析した。物を把持して運ぶ場面では、指の遠位に付着する屈筋だけで足りる。ところが止まり木では、近位に付着する屈筋も必要になる場合が多い。この結果は、猛禽(把持)と止まり木タイプの鳥で筋の発達が異なることと整合する[6]。モデルによる解析で、眠りの実験ではない。

以上から、眠る鳥が落ちない主因を「腱の自動握り」とするか、「バランス・足裏の接触・指の巻きつけ」とするかかを、ここで読んだ資料だけで一つに決めることはできない。Galton & Shepherdの要旨は、眠るムクドリに自動で止める仕組みは見られないと結論づけており、Backusらの結果もそれと対立するものではない。

6. こんどは、そとで とりの あしを 見て みよう

6. 外で、とまっている鳥の足を見てみる

6. 出口 ── 日中の観察と、資料の読みどころ

ひるまに、こうえんや でんせんで、とまって いる 鳥を さがして みましょう。とおくから、そっと 見るだけです。ちかづいたり、おどろかせたり しては いけません。

とまって いる ときの ゆびは、えだや せんを どうやって つかんで いますか。ゆびの まき方、あしの うらの あて方を、ことばや 絵で メモして みましょう。

そして 夜は、鳥を さがしに いきません。ねむって いる 鳥は、そっと しておきましょう。

ところで、鳥は のうの 半分ずつ ねむれるし、かた目を あけて ねむる 鳥も います[7]。この ふしぎは、また べつの メモで 見て みたいです。

昼間に、公園の木や電線にとまっている鳥を、遠くからそっと観察してみましょう。近づいたり、驚かせたりはしません。双眼鏡があれば便利ですが、なくても構いません。

とまっているとき、指は枝や電線をどのように巻いているでしょうか。足の裏のどこが当たっているでしょうか。見えたことを、言葉や簡単な絵でメモしてみます。ここで見えるのは眠っているときの姿ではなく、起きているときの姿です。それでも、どんなふうに「落ちない」を作っているかのヒントになります。

夜に鳥を探しに行くのは、安全のためにも、鳥を休ませるためにも、おすすめしません。

なお、鳥には脳の半分ずつ眠れるもの、片目を開けたまま眠るものもいる、と紹介されています[7]。ただし、すべての鳥が毎晩そうするわけではなく、落ちない理由の主役とは言えません。

もっと読みたくなったら、Galton & Shepherd(2012)[4]や、Backusらの論文[6]を開いてみてください。英語ですが、図や見出しだけでも、足の形が見えてきます。

日中の観察は、屋外で、止まっている鳥を遠くから見る方法がある。近づいたり驚かせたりせず、夜に探しには行かない。見えるのは起きている鳥の止まり方で、眠っている足の姿とは限らない。それでも、指の巻きつけ方、足底の当たり方を比べる練習になる。

鳥には脳の半分ずつ眠る一半球徐波睡眠ができ、片目を開けたまま眠る種もある、と紹介される[7]。ただし、すべての鳥が毎晩そうするわけではなく、落ちない理由の主役ではない。

資料を読むなら、腱ロック機構の構造はEinoder & Richardson(2007)[3]、眠るムクドリの観察はGalton & Shepherd(2012)[4]、力学モデルはBackusら(2015)[6]が一次資料にあたる。いずれも英語で書かれている。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

出典について:一般向けの解説と、学術論文を読み比べた。何に使ったかは、それぞれの項目の最後に書いている。

  1. Kate St. John, BirdsOutsideMyWindow「How Do They Sleep Without Slipping?」(2010年12月3日)。https://www.birdsoutsidemywindow.org/2010/12/03/how-do-they-sleep-without-slipping/ (腱が引かれて指が閉じるという定番の説明について。一般向け)
  2. Audubon(BirdNote 2013年11月13日を引用)「Birds roosting on one leg」。https://audubon.org/news/how-can-birds-roost-one-leg (体重がかかとにかかって指が閉じる説明と、片足で眠る姿について。一般向け)
  3. Einoder & Richardson 2007, Emu 107(3):223-230。https://connectsci.au/MU/article-lookup/doi/10.1071/MU06019 (腱ロック機構の構造について。フクロウでの研究)
  4. Galton & Shepherd 2012, Experimental analysis of perching in the European starling, J Exp Zool 317:205-215。https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1002/jez.1714 (眠るムクドリの指の曲がり方について。要旨の趣旨のみ)
  5. BirdNote「How Birds Stay Perched」(2021年8月18日)。https://birdnote.org/node/16863 (腱をのぞいても眠れた例の紹介について。一般向け)
  6. Backus et al. 2015, Mechanical analysis of avian feet, R Soc Open Sci 2:140350。https://www.eng.yale.edu/grablab/pubs/Backus_RSOS2015.pdf (力学モデルの結果と、先行観察の引用について)
  7. Discover Wildlife「How do birds sleep?」。https://www.discoverwildlife.com/animal-facts/birds/how-do-birds-sleep (足が力をぬいても握ること、半球ずつ眠ることについて。一般向け)

なおした ところ

更新履歴

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