1. ごせんふは たてと よこ。てんじは どうして よこだけ?
1. 五線譜は縦にも横にも広がるのに、点字はどうして一列なのか
1. 二次元の五線譜を、一次元の点字へどう直すか
ごせんふでは、おとの たかさを たての いちで あらわします。じかんの ながれは、よこに すすみます[1]。
ところが、てんじは ゆびで なぞって よむので、よこに すすむ ことしか できません。
そこで、たての ことも よこの ことも、ぜんぶ よこに ならべて かきます。つよく ひく、はやく ひく、という しるしも、おなじ れつに はいります[1]。
ひとつの しょうせつが、なんぎょうにも なる ことが あります。では、ひとつの ますで、たかさと ながさを どう かくのでしょうか。
五線譜は、縦の位置で音の高さを、横の並びで時間の流れを表す二次元の楽譜です。ところが点字は、指で横になぞって読むしかありません。そこで点字楽譜では、縦の情報も横の情報も、すべて横一列に並べます[1]。
基本の考え方は、五線譜にある音符と記号をすべて、曲が進む順に一列に並べて点字に訳すことです[2]。強弱や速さの記号も同じ列に入るので、1小節が何行にもなることがあります[1]。
記号には置き場所の決まりがあります。ウィキペディアによると、強弱や速度の記号、音列記号は音符の前に、付点やスラーは音符の後に置かれます[2]。読む人は、先頭から順に指を進めるだけで、必要な情報に出会えるわけです。次は、1マスの中の書き方を見ます。
五線譜は、縦軸が音高、横軸が時間という二次元の記譜である。これに対して点字は、指で横方向に読み進めるため、一次元でしか情報を並べられない。そのため点字楽譜は、縦方向の情報も横方向の情報も、すべて横一列に直して書く[1]。
記譜法の基本は、五線譜上の音符と各種記号の全部を、曲の進行に沿って一列に並べ、点字に訳すことである[2]。強弱や速度の記号も同じ列に入るため、1小節が複数行にわたる場合もある[1]。
記号の位置は定められている。ウィキペディアの説明では、強弱・速度・音列記号は音符の前に置き、付点やスラーなどは後に置く[2]。読み手は、指を左から右へ動かす順序のまま、音の情報を過不足なく受け取れる。この一列の中で、1マス6点がどう割り振られているのかが次の問題になる。
2. ひとつの ますで、たかさと ながさを どう かきわけるの?
2. 6つの点を「上の4つ」と「下の2つ」に分ける
2. 上4点で音高、下2点で音価:1マスに2つの情報を載せる
てんじの ひとます には、6つの てんが あります。うえの 4つで、ドレミファソラシの たかさを あらわします[2]。
したの 2つで、おとの ながさを あらわします。したの 2つの てんを、つけるか つけないかで、ながさが かわります[1]。
てんが ない ときが はちぶおんぷ、みぎの てんだけが しぶおんぷ、ひだりの てんだけが にぶおんぷ、りょうほうで ぜんおんぷです[1]。
ながさを あらわす かたちは、4つしか ありません。そのため、さいごの かたちは、ふたつの ながさを かねます。
点字楽譜では、1マス6点のうち、上の4点(1・2・4・5の点)でドレミファソラシの高さと休符を、下の2点(3・6の点)で音の長さを表します[2]。同じ1マスの中に、高さと長さの2つの情報が入っているのです。
長さは、下の2点をつけるかどうかで決まります。どちらもつけないと8分音符、6の点だけで4分音符、3の点だけで2分音符、3と6の両方で全音符です[1]。
ここで気づくことがあります。長さを決める点の組み合わせは4通りしかありません。そのため、3と6の両方をつけた形は、全音符のほかに16分音符も表します[1]。長さが16倍ちがう音符が、同じ形になるのです。読む人は、どうやって見分けるのでしょうか。
点字楽譜の1マスは6点でできている。上の4点(1・2・4・5の点)が音高と休符の区別を、下の2点(3・6の点)が音の長さを表す[2]。英語圏の説明も同じ構造で、ドからシまでが、アルファベットのdからjと同じ点の形で書かれる[5]。
長さは、3と6の点の有無で決まる。どちらもなければ8分音符、6の点のみで4分音符、3の点のみで2分音符、両方で全音符または16分音符となる[1]。
下の2点は「ある・なし」の組み合わせなので、長さの形は2×2=4通りしかない。一方、音符の長さは8分、4分、2分、全、16分と、それ以上にある。したがって、どこかの形が2つの長さを兼ねることになる。全音符は4分音符4つ分で、16分音符のちょうど16倍にあたるが、その2つが同じ形を共有する[1]。ではこの重なりは、読み手の誤読を招かないのか。
3. ながさが 16ばい ちがうのに、どうやって みわけるの?
3. 同じ形の全音符と16分音符を、小節のあきで見分ける
3. 小節線を「ひとマスのあき」にして、兼用を解消する
てんじの がくふでは、しょうせつの くぎりを、ひとます あけて あらわします[1]。これが みわける ための やくそくです。
「あき」は、しょうせつと しょうせつの あいだの、なにも かいていない ひとますです。ひとつの おとの りょうがわに この あきが あれば、その しょうせつには おとが ひとつだけ です。だから ぜんおんぷ だと かんがえられます。
ひとつの しょうせつに、おなじ かたちが いくつも ならんで いれば、16ぶおんぷ だと わかる ことが おおいそうです[1]。
もともと きょくの なかで、とても ながい おとと とても みじかい おとが、とつぜん ならぶ ことは すくないそうです[2]。
ただし、これは きほんの かんがえかたです。ほんとうに よむ ときは、ほかの しるしも つかいます。
見分ける手がかりは、小節線です。点字楽譜では、小節線をひとマスのあきで表します。小節線のあき(小節と小節の間の、何も書かない1マス)が両側にあって、その間に同じ形が1つだけなら全音符、小節の中に同じ形が複数並んでいれば16分音符だと見分けられる、と説明されています[1]。実際には、小節の長さや曲の流れも合わせて判断します。
つまり、点そのものでは区別せず、まわりとの関係で決めているのです。点字は64通りしかありませんから、1つの形にいくつもの意味を持たせて、置かれた場所で役割を変えるやり方になります[4]。
実際には、このあいまいさはあまり問題にならないとも説明されています。曲の中で極端に長い音符と短い音符が隣り合うことは少なく、曲調や小節の長さから簡単に見当がつくからです[2]。
長さの形が4つしかないのに対して、音の高さを書く上の4点も、表せるのは1オクターブ分だけです。
兼用を解消する手がかりは小節線である。点字楽譜では、小節線を「ひとマスのあき」で表す。そのため、小節線のあき(小節間の空白1マス)が両側にあって、間に同じ形が1つだけなら全音符、小節内に同じ形が複数並んでいれば16分音符と判断できると説明される[1]。実際には、小節の長さや曲の流れなど、ほかの手がかりも合わせて読むことになる。
この設計は、点の形そのものを増やさず、記号が置かれる文脈で意味を決めている。点字の6点は、空白を含めても64通りしかない[4]。区別のために新しい形を足せば、読む人が覚える数が増える。限られた形を使い回すこの兼用は、楽譜に限らず点字全体に通じる設計でもある[4]。
別の説明もある。曲の中で極端に長い音符と短い音符が隣り合うことは少なく、曲調や小節の長さから容易に推測できるため、実際にはあまり問題にならないという[2]。ただし、これはあくまで二次資料の説明で、全体の誤読率を示した数字があるわけではない。
では、高さのほうはどうか。上の4点で書けるのは、ドからシまでの7音と休符だけである。
4. うえの 4つの てんだけで、たかい おとも ひくい おとも かけるの?
4. 上の4点だけでは1オクターブ。高さはどう決めるのか
4. 音列記号(オクターブ記号)で音の高さを示す
うえの 4つの てんで かける おとは、1オクターブ ぶんだけです。ほかの たかさは、おなじ かたちでは かけません。
そこで、おとの すぐ まえに、「ここは この たかさ」という しるしを おきます[3]。これを おんれつきごうと いいます[2]。
ごせんふでは、ト音きごうなどで たかさを きめますが、てんじでは ふつう つかいません[2]。
おとが ちかくに うつる ときは、しるしを はぶく こともあります[2]。
ゆびを すすめるだけで、たかさと ながさが わかる しくみです。では、この しくみを つくった 人は、だれでしょう。
上の4点が表せるのは、ドからシまでの1オクターブ分だけです。そこで点字楽譜では、音符の直前に音列記号(オクターブ記号)を置き、どの高さの音なのかを決めます[2][3]。
高さがこの記号で決まるため、点字楽譜では普通、五線譜のト音記号などの音部記号は使いません[2]。ただし、ピアノの右手と左手を区別する目的では、音部記号が使われることもあるそうです[2]。
曲の流れから上下が明らかなとき、たとえば隣り近くの音へ動くときは、この記号を省くことがあります[2]。読む人は音を一つずつ覚えながら、高さの基準を手がかりに指を進めるわけです。
こうして、高さ、長さ、小節の区切りまで、6つの点と空白だけで書き表せました。この仕組みの土台を作った人が、ブライユです。
上の4点が書き分けられるのは、ドからシまでの1オクターブ(と休符)にすぎない。そのため、音符の直前に音列記号(オクターブ記号)を置いて高さを決める[2][3]。
音高がこの記号で決まるので、点字楽譜では、通常はト音記号などの音部記号を使わない。ただし、ピアノの右手と左手を区別する目的では使われることがある[2]。「一切使わない」わけではない。
曲の流れから上下が明らかな場合は、音列記号を省略する。たとえば、隣り近くの音へ動く場合である[2]。記号を毎回置かなくてよいぶん、列は短くなる。
以上の設計は、すべて「1マスに入る情報を最小にし、足りない分は位置と文脈で補う」という方針でそろっている。この方針を持ち込んだ人物は、どんな経歴だったのか。
5. てんじの がくふを かんがえたのは、おんがくを する 人だった?
5. 点字楽譜を考えたブライユは、オルガンを弾く人でもあった
5. 点字楽譜の考案者ブライユは、オルガン奏者でもあった
てんじの がくふを かんがえたのは、ルイ・ブライユさんです[3]。
ブライユさんは、オルガンを ひく 人でもありました[1]。そして、てんじで がくふを かく ほうほうを あんだしました。
てんじで がくふが かければ、めの みえない 人の おんがくの せかいは ひろがる、と かんがえたのです[3]。
ドレミの てんじは、いまも せかいじゅうで つかわれています[3]。
めの みえない ヴァイオリンの えんそうかの あなざわさんは、てんじの ごじゅうおんと ドレミの しくみが にていると はなしています[1]。
点字楽譜を考えたのは、ルイ・ブライユです[3]。1829年に出した本には、言葉、楽譜、簡単な歌を点で書く方法が示されていました[1]。
ブライユ本人も、オルガンを弾く人でした[1]。楽譜を指で読める形にする仕組みと、本人が演奏する人だったことは、別々の事実として並べて紹介されています。
点字で楽譜が書ければ、視覚障害者の音楽の世界は大きく広がる。そう考えたのがブライユでした[3]。ドレミの点字は、今も世界共通で使われています[3]。
ONTOMOの取材に答えた全盲のヴァイオリニスト、穴澤雄介さんは、点字の五十音とドレミの仕組みが似ていると話しています。五十音は、1・2・4の点が母音、3・5・6の点が子音で、組み立てられているからです[1]。
点字楽譜を考えたのは、ルイ・ブライユである[3]。1829年に出した本では、言葉・楽譜・簡単な歌を点で書く方法を示した[1]。本人はオルガン奏者でもあった[1]。
楽譜の完成年は、資料によって言い方が異なる。ウィキペディア日本語版は、文字としての点字より先の1834年に楽譜の体系を完成させたと書き、文字の点字は1837年とする[2]。一方、1829年の本にすでに楽譜が含まれていた、とする説明もある[1]。両者は別の事実を指しているとも読めるため、完成の年を1つに決めることはせず、ここでは1829年の本に楽譜が入っていたという点だけを書いておく。
視覚障害者の音楽の世界を大きく広げたのがブライユだとされ、ドレミの点字は今も世界共通で使われている[3]。ただし、和音の書き方は日本の「音符法」と世界の「音程法」で異なる。1996年に国際統一マニュアルが発行されたが、日本は従来の方式も残している[3]。基本は共通でも、細部は国ごとに違う。
点字楽譜の構造は、五十音とも似ている。全盲のヴァイオリニスト、穴澤雄介さんは、五十音のほとんどが、1・2・4の点で母音、3・5・6の点で子音を表す組み合わせだと説明し、ドレミが上4点を使う点字楽譜との類似を指摘している[1]。限られた64通りの点を、文字、数字、楽譜、記号に使い回す点字全体の設計が、楽譜にも通っている[4]。
6. かていで できる、よこ いちれつの がくふ あそび
6. 楽譜の1小節を、点字のように一列で読み上げてみる
6. 一列に直す練習と、さらに調べるための資料
おんがくの きょうかしょから、しょうせつを ひとつ えらびます。
そこに ある おとと しるしを、ひだりから じゅんに、かみに かいて みましょう。たとえば「ド・4ぶ、ド・4ぶ、ソ・4ぶ」というように、おとの なまえと ながさを よこ いちれつに ならべます。
つよく ひくと いう しるしも、じゅんばんに いれて みます。たての ことも よこの ことも、ぜんぶ ひとつの れつに する むずかしさが わかります。
家にある音楽の教科書や楽譜から、1小節を選びます。その小節にある音と記号を、左から順に、紙に一行で書き出してみましょう。たとえば「ド・4分、ド・4分、ソ・4分」のように、音名と長さを並べます。
強弱の記号がある場合は、点字楽譜のルールに合わせて音符の前に入れてみてください。縦に並んでいたものを横一列に直す、点字楽譜の読み手がしていることの一部を体験できます。
もっと知りたくなったら、点字楽譜利用連絡会の「点字楽譜とは」を読むと、日本の点字楽譜の様子が分かります[3]。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
点字楽譜の仕組みは、複数の資料を読み比べて書きました。
- ONTOMO「はじめての点字と点字楽譜」 https://ontomo-mag.com/article/column/tenjigakufu/ (五線譜から一列への直し方、音の長さの形、小節線の約束、ブライユの紹介)
- ウィキペディア「点字楽譜」 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%82%B9%E5%AD%97%E6%A5%BD%E8%AD%9C (上4点と下2点の役割、音列記号、記号の置き場所)
- 点字楽譜利用連絡会「点字楽譜とは」 https://www.tenpuren.jp/gakufutoha (ブライユの考え、世界共通の部分と和音の書き方のちがい)
- 文部科学省『点字学習指導の手引』第6章 https://www.mext.go.jp/content/20231116-mxt_tokubetu01-000032539_23.pdf (6点の組み合わせが64通りであること)
- Wikipedia "Braille music" https://en.wikipedia.org/wiki/Braille_music (英語圏でも同じ構造であること)
なおした ところ
更新履歴
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