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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

パンの カビは、どうして いろが かわるの?

パンのカビは、白から青緑や黒へどう変わるのか

パンのカビの色の変化 ── 菌糸の白から胞子の色へ、クロパンカビと色素のはたらき

分野:生きもの

ふくろの すみに、白い ふわふわが できて いました。ところが 二、三日 たつと、まんなかが みどりや 黒に かわって いたのです。

カビの いろは、なにを あらわして いるのでしょう。いっしょに たどって みましょう。

パンの端に白い綿のようなものができていたのに、数日たつと中心が青緑や黒に変わっていた。そんな経験がある人もいるかもしれません。

この色の変化は、カビが育っていく途中の姿と関係があるようです。色の正体と、色が果たしているかもしれない役割、そして見えるところを取ればよいわけではない理由を、資料をもとに見ていきます。

パンに生えるカビは、はじめ白い綿状で、やがて青緑や黒などの色を帯びることが多い[2]。この色は菌糸ではなく、多くの場合、胞子の色だとされる[3]。

このメモでは、クロパンカビの胞子のうが白から黒へ変わる過程[5]、種類ごとの胞子の色[4]、色素が胞子を紫外線から守るという研究[6]、そして見える部分を除いても食べない理由[7]を、複数の資料を突き合わせてたどる。

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1. さいしょは、どうして 白いの?

1. 最初の白い綿は、カビの「体」の部分

1. 菌糸の成長 ── 発芽後、数日で白い綿状になる

カビの 体は、ほそい いとのような きんしと、ふえる ための ほうしで できて います[1]。ほうしは、くさや 木の 「タネ」に あたります。

ほうしが パンに おちて めが でると、きんしが どんどん のびます。めに 見えない ほどの カビが、はやければ 数日で 白い わたのように なる と いわれます[2]。

きんしは、すきとおって いたり 白かったり する ことが 多い そうです[3]。だから、はじめは 白く 見えます。

体と「タネ」でできている

カビは、糸のように細い菌糸と、増えるための胞子でできています[1]。胞子は植物でいえばタネのような役目で、条件がそろうと発芽して菌糸を伸ばします。

数日で白い綿になる

発芽した胞子は、菌糸を先へ先へと伸ばします。目に見えなかったカビが、早ければ数日で白い綿のようになり、そのあと少しずつ色を出して大きくなっていく、と説明されています[2]。

菌糸そのものは、透明か白であることが多いそうです[3]。最初の白い綿は、この菌糸が集まった姿と考えられます。

カビは、糸状の菌糸と、増殖のための胞子から成る。胞子が発芽すると、菌糸は先端へ伸びていく[1]。目に見えない状態のカビが、早くて数日で白い綿状になり、次第に色を出して大きくなるという[2]。

菌糸は透明ないし白色のことが多い[3]。したがって、初期の白い綿は主に菌糸の集まりと考えられる。

2. いろは、なにの いろ?

2. 色の正体は、多くの場合「胞子」の色

2. 胞子の色が、カビを色づかせる

パンで 見る 黒や あおの いろは、多くの ばあい、ほうしの いろだと いわれます[3]。とうきょうとの せつめいでも、カビの いろは ほとんど ほうしの いろで きまる と あります[1]。

ほうしが たくさん できて くると、カビが いろづいて 見える のです。パンの 上で 「タネ」が できた しるし、と 考えると わかりやすいかも しれません。

ただし、ぜんぶが ほうしの いろとは かぎらない ようです。

白から色づくのは、胞子ができるから

黒や青といったカビの色は、多くの場合、菌糸ではなく胞子の色だと説明されています[3]。東京都の解説にも、カビの色はほぼ胞子の色で決まる、という趣旨の記述があります[1]。

胞子が増えるにつれて、白い菌糸の上に色のついた胞子が重なり、全体の色が変わって見える。そう考えると、白から色づく変化を説明しやすくなります。

金沢医科大学の解説は、菌糸の色は透明か白であることが多く、黒や青などのカビの色は多くの場合、胞子の色だとする[3]。東京都の食品衛生の資料も、カビの色はほぼ胞子の色によって決まるとする[1]。

以上を組み合わせると、パンの上で白から色づく変化は、胞子の形成が進んで胞子の色が表に出てくる過程として説明できる。

3. 白い たまが、黒く なる

3. クロパンカビの、白から黒への変身

3. クロパンカビの胞子のうは、育つと黒くなる

パンに よく 生える カビの ひとつに、クロパンカビが あります[5]。白い きんしを よこに ひろげ、その さきに ちいさな たまを つけます。

この たまは、ほうしの ふくろです。まだ わかい うちは 白く すきとおって います。そだつと、黒い たまに なる と いわれます[5]。

たとえば、あおい バナナが きいろく なるように、色の へんかは そだった しるしです。ただし バナナと カビは べつの いきもので、しくみも おなじでは ありません。

パンに出やすいカビ

パンによく生えるカビの一つに、クロパンカビ(学名 Rhizopus stolonifer)があります。古くなったパンに、最初のほうで現れるカビの一つとされています[5]。

白い透明な球が、黒い球へ

このカビは、白い菌糸を横に伸ばし、その先に胞子を入れる袋(胞子のう)をつくります。胞子のうが未熟なうちは白く透明で、成熟すると黒い球になると説明されています[5]。

つまり、同じ一つの球が、育つにつれて白から黒へと色を変えることになります。パンの上の色の変化を、目に見える形でたどれる例です。

パンに多いクロパンカビ(Rhizopus stolonifer)は、古くなったパンに最初期に現れるカビの一つとされる[5]。白い菌糸(ほふく枝)を広げ、その先端に胞子のうをつける。

胞子のうは、未熟なうちは白く透明で、成熟すると黒い球体になる[5]。黒く見える点は、成熟した胞子のうの色である。つまり色の変化は、生育段階の進行を反映している。

4. カビの しゅるいで、いろは ちがう?

4. 種類でちがう色 ── 色だけでは決めつけられない

4. 種類ごとの胞子の色と、外見による同定の限界

カビの しゅるいに よって、ほうしの いろは ちがいます。アオカビは 青から きみどり、クロコウジカビは 黒、コウジカビは きいろから ちゃいろ、などと せつめい されて います[4]。

はじめは 白くて、だんだん 黒く なる カビも あります[4]。

そのため、見た 色だけで しゅるいを いいあてるのは むずかしい ようです。せんもんかでも、見た目だけでは はんだんしにくい ことが ある そうです[4]。

胞子の色の例

東京都ペストコントロール協会の解説では、アオカビは黄緑色、コウジカビは黄色から黄褐色、または灰褐色から黒褐色などの胞子をつくると紹介されています[4]。クロコウジカビは黒です。

色だけでは決められない

発生初期は白く、次第に黒くなるカビもあります[4]。同じ種類でも育ち方で見た目が変わり、種類がちがっても似た色になることがあります。

同じ解説では、生活の中のカビは、見た目だけでは専門家でも完全に判別するのが難しいことがある、とされています[4]。パンの色から種類を言い当てるのは、思うほど簡単ではないようです。

種類ごとの胞子の色の例として、アオカビ類は黄緑色、コウジカビ類は黄〜黄褐色または灰褐色〜黒褐色、クロコウジカビ類は黒色が挙げられている[4]。発生初期は白く、次第に黒くなるカビもあるとされる[4]。

同じ資料は、生活環境のカビは外見だけでは専門家でも完全に判別することが難しい場合があると述べる[4]。色は手がかりの一つで、外見だけでは種を特定しにくい。

5. いろは、ほうしを まもる?

5. 色素は、胞子を紫外線から守るらしい

5. 色素は胞子を紫外線から守る働きがある

ほうしの いろは、「いろそ」という 色の もとから できます。黒い カビでは、メラニンという なかまの いろそが かかわる と いわれます[3]。

この いろそには、ほうしを 日ざしの 中の 紫外線しがいせんなどから まもる はたらきが ある、という けんきゅうが あります[6]。

ただし、この けんきゅうは 一しゅるいの カビを しらべた もので、パンの カビ ぜんぶに あてはまる かどうかは わかって いません。

黒は、メラニン系の色素

クロコウジカビなど、黒いカビの色はメラニン系の色素によるものだと説明されています[3]。

色素が胞子を守る

アスペルギルス属のカビの一種を調べた研究では、胞子の色素(DHNメラニン)をつくる遺伝子がないと、紫外線に弱くなると報告されています[6]。色素には、胞子を紫外線などから守る働きがあるようです。

この報告は特定の一種についての研究なので、パンに生えるカビ全般にそのまま当てはまるかどうかは、分かっていません。「日よけのために色がある」と目的のように言い切ることも、できません。

クロコウジカビなど黒色のカビの色は、メラニン系色素によるとされる[3]。調べられた Aspergillus fumigatus の一部の株では、分生子(無性胞子)の DHN メラニンをつくる遺伝子を欠くと、UV-C への感受性が高まったと報告されている[6]。色素が胞子を紫外線から守る、という説明である。

この報告は Aspergillus fumigatus という特定の種についてのものであり、パンに生える他のカビへ一般化はできない。また「日よけとして進化した」という目的論的な説明は資料から導けないので、ここでは「守る働きがある」にとどめる。

6. 見える ところを とれば、食べられる?

6. 見えるところを取っても、食べない理由

6. 食品のカビと、カビ毒への公的な注意

カビが 生えた パンは、見える ところを とっても 食べません。のうりんすいさんしょうは、見えない カビが 中に のこって いる ことが ある ため、食べない ように あんない しています[7]。

カビが つくる 「カビどく」は、見た目では わかりません。ねつに つよい ものも あります[7]。すべての カビが どくを つくる わけでは ありませんが、見分けられないので、食べないのが 安心です[8]。

農林水産省は、カビが生えた食品は、見える部分を取り除いても、見えないカビが内部に残っていることがあるため、食べないよう案内しています[7]。

カビがつくるカビ毒は見た目では分からず、加熱に強いものもあります[7]。すべてのカビが毒をつくるわけではありませんが、パンの上のカビがどれかは、色では判断できません。健康上の問題が起きていなくても食べないように、と案内されています[8]。

カビの色の変化は面白い観察ですが、おいしそうかどうかの目安にはなりません。

農林水産省は、カビの生えた食品は、見える部分を除いても見えないカビが内部に残りうるため、食べないよう案内している[7]。カビそのものは加熱で死滅するが、カビ毒には比較的熱に強く、通常の調理では十分に減らないものもある[7]。同省は、これまで健康上の問題がなくても、カビの生えた食品は食べないよう呼びかけている[8]。

すべてのカビが毒をつくるわけではない[7]。しかし前節のとおり外見からは種類を判別しにくいので、色を手がかりに安全を判断することはできない。

7. じぶんで しらべて みたく なったら

7. 自分でも調べてみたくなったら

7. 自分でも調べてみたくなったら

きょう できること

カビが 生えた パンを 見つけたら、ふくろを あけずに、おうちの 人に つたえましょう。においを かいだり、さわったり しては いけません。

ふくろの 外から、白い ところと 色の ついた ところが どこに あるか、見て みるだけで だいじょうぶです。

しらべる ときは

のうりんすいさんしょうの ホームページで、カビの ことが 見られます[7]。

今日できること

カビの生えたパンを見つけたら、袋を開けずに、家の人に知らせてください。においをかいだり、触ったりはしません。袋の外から、白い部分と色のついた部分の位置を観察するだけでも、この記事の内容とつなげられます。

古い食べ物を自分でわざとカビさせる実験は、胞子を吸い込むおそれもあるので、ここではすすめません。かわりに、家にある食品の表示で「保存方法」や「賞味期限」を読み、カビを防ぐ工夫が書かれていないか探してみましょう。

公式情報

農林水産省の「かびとかび毒についての基礎的な情報」で、カビ毒と食品の扱い方が解説されています[7]。

今日できること

カビの生えたパンは、袋を開けずに大人へ伝える。においをかがず、触らない。袋越しに、白い部分と色づいた部分の分布を観察できる。この分布は、胞子形成が進んでいる場所と、まだ菌糸中心の場所の違いを反映しているのかもしれない、と考えてみるのも一つの手である。

資料を読むなら

  • 農林水産省「かびとかび毒についての基礎的な情報」[7]
  • mBio 2020 の Aspergillus fumigatus 分生子の紫外線耐性の論文[6](英語)

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

記事づくりに使った資料です。分かったことの土台にした部分だけを挙げています。

  1. 東京都 食品衛生の窓「カビとカビ毒」 https://www.hokeniryo1.metro.tokyo.lg.jp/shokuhin/kabi/kabiqa.html (菌糸と胞子、色は胞子の色で決まる)
  2. 島津ダイアグノスティクス「カビとは」 https://industrial-diagnostics.biz.sdc.shimadzu.co.jp/testing/fungus/basic5/ (白い綿状になるまでの成長)
  3. 金沢医科大学「かびの色素について」 http://www.kanazawa-med.ac.jp/~kansen/situmon3/kabi-shikiso.html (菌糸と胞子の色、メラニン系色素)
  4. 東京都ペストコントロール協会「カビの種類」 https://www.pestcontrol-tokyo.jp/kabi/kabi_syurui01.html (種類ごとの色、見た目での判別の難しさ)
  5. Wikipedia「Rhizopus stolonifer」 https://en.wikipedia.org/wiki/Rhizopus_stolonifer (胞子のうの白から黒への変化。百科事典的な解説)
  6. mBio 2020, Aspergillus fumigatus の分生子と紫外線に関する論文 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7029147/ (色素と紫外線への強さ。特定の種の研究)
  7. 農林水産省「かびとかび毒についての基礎的な情報」 https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/risk_analysis/priority/kabidoku/kiso.html (見える部分を除いても食べない理由)
  8. 農林水産省「食品のかび毒に関する情報」 https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/risk_analysis/priority/kabidoku/index.html (健康上の問題がなくても食べない)

なおした ところ

更新履歴

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