このサイトは、ほんの入り口です

ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

パンの 中の あなは、なにが あけたの?

パンの穴は、生地の中の泡の跡 ── 酵母・グルテン・オーブンの3役

パン生地がふくらむ仕組み ── 酵母の発酵、グルテンの膜、窯伸び

分野:技術

パンを ちぎると、中は あなだらけです。この あなは、やく まえの 生地の 中に あった あわの あとです。

あわを 作る のは だれで、にげないように つかまえて いる のは だれなのか。じゅんばんに たどって みましょう。

食パンをちぎると、断面は小さな穴だらけです。その穴は、焼く前の生地の中にあった泡が、焼いているあいだにふくらんで形を保った跡だと考えられます。

泡を作る役、泡を逃がさず抱える役、焼いて形を決める役は、それぞれ別のものが受け持っています。資料をつき合わせて、順番に見ていきます。

パン生地がふくらむのは、酵母が糖を発酵させて二酸化炭素を出し[1][2]、グルテンの薄い膜がその気泡を包んで漏れにくくするためだ[1][3]。焼成中にも体積はさらに増える[2]。

このメモでは、製パンの業界団体・製粉会社・製菓学校などの資料を突き合わせ、ガスの発生、保持、窯伸びと凝固という3段階に整理する。温度や時間は資料・パンの種類で幅があり、目安として扱う。

読み方を切り替えられます。画面の上にある「よみかた」のボタンで、小学校低学年むけ・小学校高学年むけ・中学生むけの3つの書き方に切り替わります。むずかしいと思ったら、いつでもやさしい方に戻ってください。選んだ読み方はブラウザが覚えているので、次に別の記事を開いたときも同じ読み方で始まります。

1. あなは、いつ できるの?

1. 断面の穴は、焼く前の泡の跡

1. パン生地は「気泡を含んだ膜」でできている

こなと 水を こねた だけの 生地には、さいしょ、あなは ほとんど ありません。

こねて いる うちに、生地の 中に 空気が まざります。その 空気で、ちいさな あわが たくさん できます。ぜんぶで 生地の 1わり ぐらいの 空気だと いう せつめいが あります[3]。

あわの まわりには、うすい まくが はりついて います。この まくの おかげで、あわは すぐには こわれません[3]。

こねると空気が入る

粉と水をこねると、生地の中に空気が練り込まれ、無数の小さな気泡ができます。その量は生地全体の容積の1割弱に相当するという説明があります[3]。

泡の表面には薄い層がある

気泡の表面には、グルテンという薄い層が張り付いています[3]。この層が何者なのかは3章で見ます。まず、その泡を大きくする役のほうから見ていきましょう。

こねる工程で生地には空気が取り込まれ、その量は生地全体の容積の1割弱に相当し、内部に無数の微小な気泡が生じる。気泡の表面にはグルテンの薄い層が付着している[3]。

つまりパンの断面に見える気孔は、焼成前の気泡が固定された跡と考えられる。この気泡を膨張させる主役が2章の酵母、気泡を保持する主役が3章のグルテンである。

2. あわを ふくらませる のは だれ?

2. 泡を大きくするのは、目に見えない酵母

2. 酵母の発酵 ── 糖から二酸化炭素とエタノール

あわを ふくらませて いるのは、酵母こうぼという とても ちいさな 生きものです[1]。

大きさは、1ミリの 100ぶんの 1から 200ぶんの 1 ぐらいです。1グラムに、100おく こ ほど あつまる といいます[5]。

酵母こうぼは、生地の 中の あまい もの(とう)を 食べて、ガスを 出します。この ガスが、さいしょに 入った あわに たまって、あわが 大きく なります[1][2]。

ガスの 名前は、二さんかたんそです。ジュースの しゅわしゅわと おなじ なかまの ガスです。

ふくらませ役は酵母

パンに使う酵母は、糖を発酵させるはたらきをもつ微生物です[1]。糖を使って、二酸化炭素(炭酸ガス)とエタノール(アルコール)などの風味成分を作ります[7]。生地の中で出た二酸化炭素は、小さな気泡になって生地の組織に入り込み、全体を押し広げます[2]。

とても小さな生きもの

酵母の大きさは5〜10マイクロメートルほどで、これは1ミリの100分の1〜200分の1にあたります。約100億個が集まって、やっと1グラム程度の重さになります[5]。桁の大きな数字ですが、酵母は体から芽を出して増えるので、生地の中でもたくさんの数になりえます[5]。

パンに使う酵母はSaccharomyces cerevisiaeと呼ばれる種で、生地中の糖類(グルコースなど)を利用し、二酸化炭素とエタノールを生じる[7][2]。酸素のない環境での反応は、C6H12O6 → 2CO2 + 2C2H5OH + 2ATP と表される[5]。生地中の二酸化炭素は無数の小さな気泡となって生地組織に入り込み、全体を押し広げる[2]。

酵母の大きさはおよそ5〜10μm(1mmの100分の1〜200分の1)、約100億個で1g程度とされ、細胞から芽を出して増える[5]。活発に働く温度帯は30〜40℃とされる[1]が、これは条件つきの目安である。

3. あわを にがさない のは だれ?

3. 泡を逃がさず抱えるのは、グルテンの膜

3. グルテンの形成 ── グリアジンとグルテニンが作る網

ガスを 出す のは 酵母こうぼですが、ガスを にがさず もって いる のは、べつの ものです。それが、小麦こに ふくまれる たんぱくしつが 作る、グルテンの まくです[1]。

こなに 水を くわえて こねると、二しゅるいの たんぱくしつが からみ あって、グルテンが できます[2]。

ふうせんを おもいうかべて ください。ゴムが のびて、中の 空気を とじこめます。グルテンの まくも、のびて ガスを つつみます[1]。ただし 本当は、ゴムでは なく たんぱくしつの あみです。

もし まくが なければ、酵母こうぼが ガスを 出しても、生地の 外へ ぬけて しまうと 考えられます。

2種類のたんぱく質が絡み合う

小麦粉のたんぱく質には、グリアジンとグルテニンがあります。グリアジンは弾力が弱く、粘着力が強くて伸びやすい性質をもち、グルテニンは弾力に富みますが伸びにくい性質をもちます[2]。グリアジンは「伸ばせる」性質(伸展性)、グルテニンは引っ張ると元に戻ろうとするゴムのような性質(弾性)と説明されます[4]。

粉に適量の水を加えてこねると、この2つが絡み合ってグルテンができます[2]。こうしてできた生地は、軟らかいのに弾力があります。

ガスを包んで漏れにくくする

グルテンはたんぱく質の一種で、炭酸ガスの気泡を包み込んで外へ漏れにくくします[1]。ふくらませる役と抱える役は別々で、この二人がそろってはじめて、生地は大きくなります。

グリアジンは弾力が弱く粘着力が強い、伸びやすいたんぱく質、グルテニンは弾力に富むが伸びにくいたんぱく質である[2]。前者は伸展性、後者は引っ張って手を離すと元に戻ろうとするゴム状の弾性をもつと説明される[4]。小麦粉に適量の水を加えてこねると、両者が絡み合ってグルテンが形成される[2]。

グルテンは気泡を包み込み、二酸化炭素を外へ漏れにくくする[1]。米ワシントン州立大学の科学解説も、たんぱく質の強い網がガスを閉じ込めて生地をふくらませると説明している[8]。

4. まつと、どう なるの?

4. 発酵の時間と、ガス抜きの意味

4. 発酵工程 ── 体積の増加とパンチ(ガス抜き)

こねた 生地は、あたたかい ところで しばらく まちます。酵母こうぼが ガスを 出す のを まつ ため です。

酵母こうぼが げんきに はたらく のは、30どから 40どぐらいの あたたかさ だと いわれます[1]。

あるパンの 作りかたでは、90ぷん まって、生地が 3ばいに なります[3]。ただ、これは 一つの れいです。パンに よって ちがいます。

そのあと、生地を おさえて ガスを ぬく ことも あります。大きな あわを つぶして、小さな あわに わけます[3]。

あたたかい場所でふくらむのを待つ

酵母が活発に働く温度は、30〜40℃とされています[1]。生地をそのくらいの温度で置くと、二酸化炭素が出てふくらみます。

ある製パン工程の説明では、生地を90分発酵させて体積を3倍にしています[3]。これは一例で、パンの種類によって時間も倍率も変わります。

ガス抜きでもう一度小さな泡に

発酵の途中で、生地を押してガスを抜く「パンチ」をすることがあります。大きなガスの泡をこわして、小さくて数の多い泡に分けるためです[3]。

酵母が活発に活動する温度帯は30〜40℃とされる[1]。ある製パン工程では、90分の発酵で生地の体積を3倍に膨張させる。90分・3倍はあくまで一例で、パンの種類や配合により異なる[3]。

その後のパンチ(ガス抜き)では、大きなガス泡を壊して小さな多数のガス泡に分散させ、再発酵させる[3]。

5. オーブンに 入れると?

5. オーブンの中で、さらに一気にふくらむ

5. 窯伸び ── 焼成初期の急激な膨張

生地を オーブンに 入れると、さいしょの 5ふん ぐらいで、いっきに ふくらみます[1]。これを 「窯伸びかまのび」と いいます。

あたためられて、ガスが ふくらみ、水が 水じょうきに なる からです[6]。

水は 水じょうきに なると、体せきが 1700ばいほどに なります[1]。ただし 生地ぜんたいが 1700ばいに なる わけでは ありません。

最初の5分ほどで一気に伸びる

生地はオーブンに入れて最初の5分ほどで、一気にふくらみます。これを窯伸びといいます[1]。温度が上がると、酵母が作ってたまったアルコールの蒸発、ガスの膨張、水の蒸発が重なって、体積が急に増えます[6]。

水蒸気は約1700倍

水1mlが水蒸気になると、体積は約1700倍になります[1]。これは水から水蒸気への体積の比で、生地全体が1700倍になるわけではありません。

焼くあいだにもガスが発生し、体積がさらに増えるという説明もあります[2]。

生地はオーブンに入れて最初の5分ほどで一気に膨張する(窯伸び)[1]。生地温度が上がると、アルコールの蒸発、ガスの膨張、水の蒸発により体積が急激に増加する[6]。発酵終盤までに二酸化炭素を蓄えて伸びた生地は、焼成中にもガスが発生し、体積がさらに増える[2]。

水1mlは水蒸気になると体積が約1700倍になる[1]が、これは水から水蒸気への体積比であり、生地全体の膨張倍率ではない。窯伸びの時間・温度は資料やパンの種類で幅がある。

6. ふくらんだ あと、どう かたまるの?

6. 酵母は働きを終え、グルテンとでんぷんが形を決める

6. 焼成後半 ── 酵母の死滅、グルテンの凝固、でんぷんの糊化

ふくらみ つづけるのは、生地が あついうちだけです。あたたかく なりすぎると、酵母こうぼは はたらけなく なります。

そのあと、グルテンや でんぷんが、ねつで かたまって、ふくらんだ かたちが きまります[6]。

だから パンを ちぎると、あなが のこって いるのです。

酵母の終わり、グルテンの固まり

ある資料では、生地の温度が60℃に近づくにつれて酵母が死滅していき、グルテンは74℃近辺から固まり、生地の中心温度が97〜98℃になると余分な水分がほとんど蒸発してでんぷんが完全に固まるとされています[6]。温度は目安で、パンの種類や資料によって幅があります。

こうしてふくらんだ形が固定され、穴の空いたパンの中身ができあがります。

生地温度が60℃に近づくにつれ酵母は死滅し、グルテンは74℃近辺から凝固し、生地の中心温度が97〜98℃になると余剰水分の大部分が蒸発してでんぷんが完全に凝固するとされる[6]。これで気泡を含んだ膜の形が固定され、パンの構造が完成する。温度は目安であり、パンの種類・資料で幅がある。

自分でも しらべて みたく なったら

自分でも調べてみたくなったら

自分でも調べてみたくなったら

いま できる こと:やいた パンを ちぎって、中の あなを 見て みましょう。大きな あなと 小さな あなは、どこに ありますか。うすい まくが のびて いる ところも あるかも しれません。

ナイフや 火は つかわず、手で ちぎる だけで だいじょうぶです。パンの しゅるいを かえて くらべても おもしろいです。

今日できること:食パン、ロールパン、フランスパンなどを手でちぎり、断面の穴の大きさと並び方を見比べてみましょう。穴の大きさや薄い膜の伸び方が、パンによって違うかどうかを観察します。刃物や火は使わず、手でちぎるだけで構いません。

調べるなら:木下製粉の製パンの解説には、工程ごとに生地の中の泡がどう変わるかが書かれています。読んだあとにもう一度パンをちぎると、穴の見え方が変わるかもしれません。

今日できること:種類の違うパンの断面を観察し、気孔の大きさと分布を比べる。ちぎるだけで刃物は要らない。

資料を読むなら:木下製粉の製パンの解説[3]は工程ごとの気泡の変化を扱う。焼成中の変化の温度は、学術論文に当たると幅や測定条件まで確かめられる。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

本文の参照番号は、下の資料の番号に対応しています。

  1. 神戸製菓専門学校「パンはなぜ膨らむの?」 https://www.kobeseika.ac.jp/contents/boulanger/reason_bread_expands/ (酵母の発酵、グルテン、窯伸び、酵母の温度帯、水蒸気の体積比)
  2. 製粉振興会「小麦粉の科学」 https://www.seifun.or.jp/pages/120/ (発酵で出る二酸化炭素、グリアジンとグルテニン、グルテンの形成、焼成中の最後のガス)
  3. 木下製粉「製パンを科学する②」 https://www.flour.co.jp/news/article/520/ (こねると入る空気と気泡の膜、90分・3倍の一例、ガス抜き)
  4. 木下製粉「グルテンその②」 https://www.flour.co.jp/news/article/113/ (グリアジンの伸展性とグルテニンの弾性)
  5. 市民科学研究室「酵母のプロフィール」 https://www.shiminkagaku.org/3/ (酵母の大きさ・個数・出芽、発酵の化学式)
  6. BAKE FIRST「焼成中、生地の中で何が起こっているのか」 https://paopao-bakefirst.com/entry/2021/04/25/110530 (焼成中の体積増加と、酵母・グルテン・でんぷんの温度の目安)
  7. オリエンタル酵母工業「発酵種とは」 https://www.oyc.co.jp/business/product/fermentation_broth/index.html (出芽酵母、糖から炭酸ガスとエタノール)
  8. Ask Dr. Universe(ワシントン州立大学)"Why does bread expand in the oven?" https://askdruniverse.wsu.edu/2026/04/30/bread-expand-oven/ (たんぱく質の網がガスを閉じ込める、という一般向け解説)

なおした ところ

更新履歴

更新履歴(改版の記録)

  •  初版を公開。

このサイトでは、公開した記事の本文は原則として書き直しません。誤りが見つかったときや、内容が古くなったときだけ手を入れ、その理由をこの欄に残します。