1. あかい ぬのに、うしは おこるの?
1. 「赤い布に牛が怒る」というイメージ
1. 「牛は赤に興奮する」という通説
あかい ぬのを ふる とうぎゅうしと、はなから いきを はく うし。テレビや えで 見た ことが ある 人も いるでしょう。
「あかは、うしを おこらせる いろ」と、おもわれて います。でも、これは ほんとうでしょうか。うしの 目の しくみから、しらべて みます。
赤い布を振る闘牛士と、鼻息を荒くして向かってくる牛。テレビやマンガで、一度は見たことがある場面だと思います。
このため、「赤は牛を怒らせる色」だと信じている人は多いようです。ただ、この話は、牛の目のつくりを調べると、少しあやしくなってきます。
闘牛では、赤い布を振る闘牛士に牛が向かっていく場面がよく知られている。この印象から、牛は赤という色に反応して興奮する、という通説が生まれたと考えられる。
以下ではまず、牛が色をどう感じ取るかを調べ、通説を検討する。
2. うしの 目には、あかが どう 見える?
2. 牛の目には、色を感じる細胞が2種類しかない
2. 2色型色覚 ── 錐体2種類の意味
目の おくには、いろを かんじる さいぼうが あります。人の 目には、その さいぼうが 3しゅるい あります。うしの いろを かんじる さいぼうは、2しゅるいだけです[1]。
たとえば、3しゅるいの えのぐで かく えと、2しゅるいの えのぐで かく えを くらべると、2しゅるいの ほうが、いろの ちがいは すくなく なります。それと にた ことが、うしの 目でも おきて いるようです。ただし、これは たとえで、ほんとうの 見え方とは ちがいます。
あかい ものは、うしには ちゃいろや はいいろに 見える かもしれない、と いわれて います[1]。
目の奥の網膜には、色を感じる錐体という細胞があります。人の目には錐体が3種類ありますが、牛の錐体は2種類です[1]。牛のような色の感じ方を、2色型色覚といいます。
ウシ・ヤギ・ヒツジを調べた研究では、錐体は、波長の短い光に強く反応する種類と、中くらいから長い光に強く反応する種類の2つだと報告されました[2]。赤は、波長の長い光です。
そのため、牛には赤い物が茶色や灰色に見えるかもしれない、と説明されています[1]。
牛の網膜には、色を感じる錐体が2種類しかない2色型色覚で、人(3種類の3色型)とは異なる[1]。ウシ・ヤギ・ヒツジの網膜電図(ERG。網膜が光に反応して出す電気信号の記録)を測った1998年の研究では、S錐体(短波長側。感度の頂点はおよそ444〜455nm)と、M/L錐体(中〜長波長側。およそ552〜555nm)の2種類が見つかり、2色型色覚の基盤があると結論された[2]。ここは検索結果に載った要旨に基づく。
この性質から、赤い物は牛には茶色や灰色に見える可能性があると説明される[1]。ただし、これは「赤が特別な色として区別されにくい」という意味である。「赤がまったく見えない」とは断言できない。
3. あかく ない ぬのにも、つっこむの?
3. 赤くない布にも、牛は突進する
3. カポーテとムレータ ── 布の色は関係するか
とうぎゅうの さいごの ばめんで つかう ぬのは、ムレータと いいます。あかい ぬのです。でも、この あかい いろは、うしには かんけいが ない、と せつめいされて います[5]。
その まえの ばめんで つかう おおきな ぬのは、カポーテと いいます。おもては ピンクの ような いろ、うらは きいろか あおです。それでも うしは つっこむ と しょうかい されて います[3]。
いろが ちがっても つっこむのなら、いろが りゆうでは ないようです。
4. うしは、なにに 気づいて いるの?
4. 牛が反応するのは、布の「動き」だと説明されている
4. 反応するのは布の動きだと説明される ── 番組の検証から
うしが はんのう して いるのは、いろでは なく、とうぎゅうしが ぬのを はげしく ふる、うごきの ほうだ、と せつめい されて います[3]。
2007ねんの アメリカの テレビばんぐみでも、しらべて いました。あかい はたも、あおい はたも、しろい はたも、うごかない ときには、うしは おなじ くらい よわく つついた だけ だったと ほうじられて います[4]。はたを ふると、つっこんで きたそうです。
これは、ばんぐみの けんしょうで しめされた ことです。
5. うしは、どんなふうに そだつの?
5. 闘牛用の牛は、特別に選ばれ、育てられる
5. スペイン闘牛用の牛 ── 選抜と環境
とうぎゅうに でる うしは、ふつうの うしと ちがいます。いきおいが あり、ちからが つよく、ながく はしれる うしが えらばれます[6]。
そして、そだつ あいだ、あるいて いる 人には ほとんど あいません。だから、ぬのを ふる 人が いきなり 出て きたら、びっくりして むかって いく こと も ありそうです。ただし、これは そう かんがえる ことも できる、という はなしです。
闘牛に出る牛には、スペイン闘牛種と呼ばれる牛の集団があります。攻撃性・活力・力・持久力をあわせもつ牛が、おもに選ばれて育てられています[6]。
この牛は、育つ間、人と、とくに歩いている人とは、ほとんど接しません[6]。ふだん見慣れない歩く人が急に目の前に現れて、布が激しく動く。そういう場面で牛が向かってくるのは、色の問題ではなく、こうした育ちや環境の影響も大きいのかもしれません。これは資料の記述から考えた見方です。
スペイン闘牛用の牛は、攻撃性・活力・力・持久力の組み合わせを重視して選抜され、育つ間に人、とくに徒歩の人とはほとんど接しない[6]。
この性質と、慣れない徒歩の人、および激しく動く布という状況が重なって、牛が突進しやすくなっている可能性がある。これは資料の記述から導いた推測である。
6. どうして あかと いう はなしが ひろまったの?
6. なぜ「赤い布」の話が広まったのか
6. 「牛は赤に興奮する」という俗説の背景
あかは、人の 心では「おこる」「もえる」と むすびつきやすい いろです。だから、あかい ぬのは うしを おこらせる、と おもわれた のかも しれません[3]。
ムレータが あかいのは、むかしからの きまりと、ちの しみが 目立たない ため、と せつめいされて います[5]。でも、この はなしの はじまりは、はっきり しません。
自分でも しらべて みたく なったら
自分でも調べてみたくなったら
自分でも調べてみたくなったら
今日できること
まどの そとを 見て みましょう。とまって いる あかい かんばんと、かぜで ゆれて いる はっぱ。どちらに 目が いくでしょうか。じぶんの 目が、いろと うごきの どちらを 先に 見つけるか、かんさつして みます。
出かけてできること
ぼくじょうなどで うしを 見る ことが あったら、とおくから 見るだけに しましょう。ちかづいたり、ものを ふったり しては いけません。
今日できること
窓の外を眺めて、止まっている赤い看板と、風で揺れる木の葉を見比べてみましょう。自分の目がどちらに先に向かうかを観察すると、「動くもの」が目を引く感じが分かるかもしれません。
出かけてできること
牧場などで牛を見る機会があれば、遠くから見るだけにしましょう。牛に近づいたり、布などを振ったりしてはいけません。
公式情報
大学や動物園の解説に、牛の目のつくりの話があります。
今日できること
窓の外で、止まっている赤い物と、風に揺れる木の葉のどちらに先に目が向くかを観察する。色と動きのどちらが注意を引くかを、自分の目で考える材料になる。
出かけてできること
牧場で牛を観察するときは、離れた場所から見るにとどめ、近づいたり物を振ったりしない。
公式情報
Ohio State大学のfact sheetは、牛の視覚と行動をまとめている。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
牛の色覚は動物学の解説と研究の要旨、闘牛の布と番組の検証は解説記事による。原論文の本文と番組の映像は参照していない。
- Beef Cattle Handling: Physiology and Behavior(Ohio State University CFAES) https://cfaes.osu.edu/fact-sheet/beef-cattle-handling-physiology-and-behavior (牛の2色型色覚・赤の見え方・光への敏感さ)
- Jacobs, Deegan, Neitz「Photopigment basis for dichromatic color vision in cows, goats, and sheep」Visual Neuroscience 15:581-584(1998)の要旨 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/9685209/ (錐体2種類の測定)
- Are bulls enraged by the colour red?(Centre of the Cell, Queen Mary University of London) https://www.centreofthecell.org/story/are-bulls-enraged-by-the-colour-red/ (布の動き・カポーテ・俗説の背景)
- Ripley's「Bulls Seeing Red」 https://www.ripleys.com/stories/bulls-seeing-red (2007年のテレビ番組の検証の報道)
- Muleta(Wikipedia英語版) https://en.wikipedia.org/wiki/Muleta (ムレータの赤の理由)
- Spanish Fighting Bull(Wikipedia英語版) https://en.wikipedia.org/wiki/Spanish_Fighting_Bull (闘牛用の牛の選抜と育ち)
なおした ところ
更新履歴
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