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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

ダチョウは ほんとうに あたまを すなに いれるの?

ダチョウは頭を砂に埋めない──では、なぜそう言われるのか

ダチョウが頭を砂に埋めるという俗説──プリニウス『博物誌』の「茂み」と、頭が低くなる3つの場面

分野:生きもの

ダチョウが あぶない とき、あたまを すなに ずぼっと いれて かくれる。そんな はなしを きいた ことは ありませんか。

でも ほんとうに、そんな ところを 見た 人は いるのでしょうか。むかしの 本と、どうぶつえんの せつめいを 見て みましょう。

「ダチョウは、危険が迫ると頭を砂に突っこんで隠れる」。どこかで一度は耳にする話です。けれども動物園の解説には、そんなことはしない、とはっきり書かれています。

ではこの話は、いつ、なぜ広まったのでしょうか。いちばん古い記録とされる文章と、ダチョウが頭を低くする場面を、資料をつき合わせて見ていきます。

ダチョウが危険を感じると頭を砂に埋める、という話は広く知られている。しかしサンディエゴ動物園は、実際には埋めないと明記している[5]。

この俗説の最古の記録とされるのは、古代ローマの博物学者プリニウスの一文で、そこに書かれていたのは砂ではなく茂みだった[1]。このメモでは、その原文と、ダチョウの頭が地面に近づく行動、遠目に見えやすい理由、慣用句への広がりを、複数の資料で突き合わせる。

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1. いちばん ふるい 本には なんと かいて ある?

1. 古代ローマの本に書かれていたのは「茂み」

1. プリニウス『博物誌』10巻──「砂」ではなく「茂み」

この はなしの いちばん ふるい きろくと されるのは、二千ねん ちかく まえの ローマの 本です。かいた 人は、プリニウス。しぜんの ことを ぜんぶ 本に まとめようと した 人と いわれます[2]。

その 本には、ダチョウが くびを しげみに かくして、からだ ぜんぶが かくれたと おもいこむ、と かいて あります[1]。

ここに、すなは でて きません。「しげみ」です。

この俗説のいちばん古い記録とされるのは、古代ローマの博物学者プリニウス(西暦23〜79年)が書いた『博物誌』の一文です。ダチョウは首を茂みに突っこんだだけで、体全体が隠れたと思いこんでいる、という趣旨で書かれています[1]。

ここには「砂」の字がありません。砂に変わった経緯は、はっきりしていません。ただ、歴史家はこの一文が俗説のもとになったと推定しているそうです[2]。

俗説の最古の記録とされるのは、プリニウス(西暦23〜79年)『博物誌』10巻の一節で、ダチョウが首を茂みに隠すと、体の残りがどれほど大きくても、自分が隠れたと思う愚かさを述べている[1]。

プリニウスは37巻からなる『博物誌』の著者で、79年のヴェスヴィオ噴火で亡くなった。歴史家はこの一文を俗説の根と推定しているが、あくまで推定だ[2]。また原文は茂みで、砂に置きかわった経緯は、はっきりしていない。

2. あたまが ひくく なるのは、どんな とき?

2. ダチョウの頭が地面に近づく3つの場面

2. 頭が地面に近づく3つの行動──卵・砂・伏せ

ダチョウは たしかに、あたまを じめんの ちかくまで さげる ことが あります。

ひとつめは、すの なかで たまごを ころがす とき。くちばしで そっと まわします[3]。まわすと、たまごが あたたまり かたが そろうから、と いわれます[4]。

ふたつめは、すなや 小石を のむ とき。おなかの 中で たべものを すりつぶすのを たすけます[3]。

みっつめは、にげられない とき。じめんに ふせて、じっと します[5]。

ダチョウは、頭を地面近くまで下げる場面をいくつか持っています。

ひとつめは、巣で卵の世話をするときです。くちばしで卵を回すために、頭を低くします[3]。回すのは、熱を卵全体に均等に届けるためと説明されています[4]。

ふたつめは、砂や小石を飲みこむときです。胃の中で食べ物をすりつぶすのを助けるためで、そのために餌をついばむ頭が地面へ近づきます[3]。

みっつめは、逃げられない危険を感じたときです。地面に伏せて動かず、頭と首を地面に平らにつけます[5]。ここで大事なのは、頭を「埋める」のではなく「平らにつける」という点です。

頭が地面に近づく場面は少なくとも3つ報告されている。第一に、巣で卵を回すとき。スミソニアン国立動物園は、ダチョウが巣の世話中にくちばしで卵を回すため頭を地面近くまで下げると説明し、この行動が俗説の一因かもしれないとしている[3]。卵を回す理由について、BBC Science Focusは熱を均等にするためと説明する[4]。

第二に、砂や小石の摂取。砂嚢(胃の一部)で食べ物をすりつぶすのを助けるためで、餌をついばむ形で頭が地面に近づく[3]。第三に、逃げられない危険を感じたときの伏せ。頭と首を地面に平らにつけてじっとする[5]。

いずれも頭は「埋まる」のでなく「低くなる」だけで、由来が卵を回す行動だという説明も推定にとどまる。

3. とおくから 見ると、どう 見える?

3. 遠くから見ると、埋めたように見える理由

3. 遠目の見え方──頭の色と体の大きさ

ダチョウの あたまと くびは、うすい 色です。つちの 色に にて います[5]。

だから とおくから 見ると、あたまが つちに とけこんで、すなに うまって いるように 見える ことが あるのです、と どうぶつえんは せつめいして います。

ダチョウは 世界で いちばん 大きな とりです。せは 2メートルを こえる ことも あります[5]。その ダチョウが すに ふせると、くびの さきの あたまは、とおくから は 見えにくく なります。

もう一つの手がかりは、頭と首の色です。サンディエゴ動物園によると、ダチョウの頭と首は淡い色で、土の色にとけこみます。そのため遠くからは、頭を砂に埋めたように見える、と説明されています[5]。

ダチョウは世界最大の鳥で、体高はオスでおよそ2.1〜2.7m、メスで1.7〜1.9mです[5]。この高さの鳥が地面の巣に伏せると、首の先の頭は遠目に見つけにくくなります。

「頭が低くなる」ことと「土と同じ色に見える」ことが重なると、頭が消えたように見える場面は、たしかに生まれそうです。

サンディエゴ動物園は、頭と首が淡い色で土の色にとけこむため、遠くからは頭を砂に埋めたように見えると説明している[5]。同園の数値では、体高はオス約2.1〜2.7m、メス約1.7〜1.9m、体重はオス100〜130kg、メス90〜110kg。世界最大の鳥だ[5]。

頭が低くなる行動(第2章)と、頭の色が土に近いこと、遠目であることが重なれば、埋めたように見える条件はそろう。ただし、これは動物園などの説明にもとづく推定で、俗説がそう生まれたと示す史料ではない。

4. ほんとうは、あぶない とき どうする?

4. 本当の身の守り方は、まず走ること

4. 実際の防御行動──走る、蹴る、伏せる

あぶない とき、ダチョウは まず はしって にげます。みじかい 間なら、じそく 70キロ ちかくで はしる、と いわれます[6]。

ふせて じっと するのは、にげられない ときの ことです[5]。

ダチョウは危険を感じると、まず走って逃げます。短い距離なら時速70km近くまで出せるといわれます[6]。ただし、これは短いダッシュの最高値で、この速さで長く走り続けるわけではありません。

地面に伏せてじっとするのは、逃げられないと感じたときの行動です[5]。

ナショナルジオグラフィック日本版によれば、ダチョウは危険が迫るとまず走って逃げ、最高で時速70km近くに達する[6]。スミソニアン国立動物園は時速約69km、サンディエゴ動物園は約70kmとしており[3][5]、いずれも短距離の最高値と読むべきで、長く保てる速さではない。

伏せる行動は、走って逃げられないときの手段にあたる[5]。頭を隠して危険をやり過ごすという話とは、順序が逆だ。

5. ことばに なった はなし

5. 慣用句になった俗説

5. 「bury your head in the sand」──慣用句への広がり

えいごには、「あたまを すなに うめる」と いう ことばが あります。つごうの わるい ことから 目を そらす、と いう いみです[7]。

ダチョウは そんな ことを して いないのに、ことばだけが のこりました。人の くせの たとえに つかわれた のです。

英語には「bury your head in the sand(頭を砂に埋める)」という慣用句があります。都合の悪い現実から目をそらす、という意味で、この俗説から来た言い方です[7]。

フレーズ辞典は、この話を最初に記録したのがプリニウスだと説明しています。ただしその文章は茂みの話で、慣用句がいつ生まれたかは、はっきりしていません。

英語の慣用句「bury your head in the sand」は、都合の悪い現実から目をそらす意味で使われ、この俗説に由来する。Phrases.org.ukは、この話を最初に記録したのはプリニウスで、ダチョウが頭を茂みに隠すと書いたと説明する[7]。

慣用句がいつから使われたかは、はっきりしていない。動物の実際の行動とは別に、比喩だけが独り歩きした例と見ることができる。

自分でも しらべて みたく なったら

自分でも調べてみたくなったら

自分でも調べてみたくなったら

おうちの ゆかや つくえに、ちゃいろい かみを おいて、その 上に ちゃいろい ものを のせて みましょう。ちかくで 見る ときと、へやの すみから 見る ときで、どう ちがう でしょう。

ダチョウの いる どうぶつえんへ いったら、あたまを さげる ところを さがして みましょう。なんの ために さげて いるのか、かんがえて みます。

今日できること:家の中で、茶色い紙の上に茶色の小物を置き、少しずつ離れながら見え方を確かめてみます。近くではっきり見えるものが、遠くでどう見えなくなるかが分かります。

出かけてできること:ダチョウのいる動物園なら、頭を下げる場面を探して、何をしているところなのか考えてみます。飼育員さんの解説があれば、聞いてみるのもよい方法です。

資料を読むなら:ナショナルジオグラフィック日本版のダチョウの記事が、日本語で読めます。

家にある茶色い紙や小物を、部屋の端から見てみる。近くでは見分けられるものが、離れるとどう紛れるか、頭が土の色にとけこむ話(第3章)と重ねて確かめられる。

プリニウスの一文の英訳は、資料[1]で読める。原文が茂みと書いていることも確かめられる[1]。

ダチョウの行動と大きさの数値は、サンディエゴ動物園[5]とスミソニアン国立動物園[3]の動物紹介が、公式の情報源にあたる。走る速さの日本語解説は、ナショナルジオグラフィック日本版の記事が読みやすい[6]。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

出典について:プリニウスの英訳、動物園の公式解説、科学記事、フレーズ辞典を突き合わせて使った。何に使ったかは、それぞれの項目の最後に書いている。

  1. Pliny the Elder, Natural History, Book 10(Attalus訳)。https://www.attalus.org/pliny/hn10a.html (ダチョウが首を茂みに隠すという一文について)
  2. ABC Science, Kruszelnicki, 2006. https://www.abc.net.au/science/articles/2006/11/02/1777947.htm (プリニウスの人物と、歴史家の推定について)
  3. Smithsonian's National Zoo, Ostrich. https://nationalzoo.si.edu/animals/ostrich (卵を回す行動、砂や小石を飲むこと、走る速さについて)
  4. BBC Science Focus, Do ostriches really bury their head in the sand? https://www.sciencefocus.com/nature/do-ostriches-really-bury-their-head-in-the-sand (卵を回す理由について)
  5. San Diego Zoo, Ostrich. https://animals.sandiegozoo.org/animals/ostrich (頭の色、伏せる行動、体の大きさについて)
  6. ナショナル ジオグラフィック日本版(ダチョウの記事)。https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/20/081400469/ (走る速さについて)
  7. Phrases.org.uk, Bury your head in the sand. https://www.phrases.org.uk/meanings/bury-your-head-in-the-sand.html (慣用句の意味と、プリニウスの記録について)

なおした ところ

更新履歴

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