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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

サボテンの とげは、なんの ために あるの?

サボテンのとげは何のため? ── 葉が姿を変えた、いくつもの役目

サボテンの棘は何をしている? ── 葉から変わった棘の役割

分野:自然

サボテンは、とげだらけです。この とげは、じつは 「葉」が すがたを かえた もの だと いわれます。

葉を すてて、とげに した わけは 何でしょう。しらべて みると、答えは ひとつでは ありませんでした。

サボテンは、体じゅうがとげだらけです。ところが、このとげは、もともと葉だったものだと説明されています。葉をとげに変えたのは、いったいなぜでしょうか。

水をのがさないため、食べられないため、日ざしをさえぎるため、霧を集めるため。植物学の資料をたどると、役目はいくつも挙げられていて、どれが主なのかは種や環境で変わるようです。

サボテンの棘は、葉が変形したものである。棘は刺座(しざ)というサボテン特有の器官から生じる[1][3]。

その機能は、蒸散の抑制、食害の軽減、遮光、霧や露の捕集など複数が論じられ、研究でも「主な役割」は一致していない[4]。解説と、棘を除去した実験、集水の研究を突き合わせて整理する。

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1. とげは、じつは 葉

1. とげの正体は、葉

1. 棘の由来 ── 葉の変形と刺座

サボテンの とげは、もともと 葉だった、と せつめいされます[1]。

とげは、刺座しざと いう ところから 生えます。刺座しざは、サボテンだけが もつ、とげの 出る 場所です[1]。

ふつうの 葉は、木の えだから 出ます。サボテンでは、わかい ころに 刺座しざに 葉が できても、すぐに おちて しまうと いいます[2]。

植物の世界では、葉が変化したものを「とげ」、枝が変化したものを「棘(とげ)」と区別することがあります。サボテンのとげは、葉が変化したほうです[1][3]。

とげが生えるのは、刺座しざという、サボテンだけがもつ器官です。日本植物生理学会の解説では、刺座にはまず若い葉ができますが、すぐに退化して落ちてしまう、と書かれています[2]。

葉はいちど顔を出して、消える。そのあとに、とげが残るようです。

棘は葉の変形で、刺座から発生する。この点は日本の大学研究室の解説[1]、英語版Wikipediaの記述[3]で一致している。英語圏では spine(葉の変形)と thorn(枝の変形)を区別し、サボテンが作るのは常に刺座から出る spine である[3]。

日本植物生理学会のQ&Aは、葉は若いときに刺座に形成されるがすぐに退化して脱落する、と述べる[2]。葉はいったん形成され、退化したあとに棘が機能する、という順序で読める。

2. 葉が なくても、光は つくれる

2. 葉をなくしても、光合成はできる

2. サボテンは茎で光合成し、夜にCO2を取り込む

多くの 植物では、葉が、光を うけて 元気の もとを つくる ところです。サボテンは、その かわりに、ふくらんだ 緑色の くきで それを して います[3]。

さばくは、水が とても すくない ところです。葉が あると、そこから 水が にげて しまいます。葉を へらした ことが、水を まもる ことに つながった、と 考えられて います。

サボテンは、夜に 空気を とり入れる 「あな」を ひらきます。夜は すずしくて、水が にげにくいからです[1]。とり入れた ものは 体の 中に ためて おき、昼に つかって 光の 力で 元気の もとを つくります[2]。

光合成をする場所は、ふつうは葉です。サボテンでは、ふくらんだ緑色の茎がその役を引き受けています[3]。

もうひとつ、水を守る工夫があります。植物は気孔きこうという小さな穴で空気を出し入れし、そのとき水も逃げていきます。サボテンは、気温の低い夜にだけ気孔を開いて二酸化炭素にさんかたんそを取り込み、リンゴ酸というかたちで体の中にためておきます。昼は気孔を閉じ、ためた分を使って光合成をします[1][2]。

夜は涼しいので、穴を開けても水が逃げにくい。葉を減らし、夜に息をするやり方は、乾燥した土地で水を守る組み合わせと考えられます。

葉が退化したサボテンでは、肥大した茎が光合成を担う[3]。気孔の開閉にも特徴があり、サボテンはCAM型光合成を行う。気温の低い夜にのみ気孔を開いて二酸化炭素にさんかたんそを取り込み、リンゴ酸に変えて細胞内に貯め、昼は気孔を閉じて、貯めた分で光合成をする[1][2]。夜間は気温が低いため、気孔きこうを開いても蒸散じょうさんで失う水が少なくて済む。

棘そのものについても、表面付近に空気をとどめて湿った層を作り、蒸発・蒸散を減らすと説明される。日陰をつくって表面温度を下げ、水の損失を抑えるという説明も同じ総説にある[3]。ただしこれは百科事典的な総説の記述であり、次章のとおり、実験では温度差が出なかった例もある。

3. 食べられない ため?

3. 動物に食べられないため

3. 食害の軽減という説明

とげの 役目と して、まず よく 聞くのは、「動物に 食べられない ため」と いう せつめいです[2]。

水を ためた 体は、動物にとって ごちそうに 見えるかも しれません。とげが あれば、口を 近づけにくく なります。

ただし、日本植物生理学会は 「ふつうは こう せつめいされて います」と、ことわって います[2]。これだけが 理由だと 言い切る ことは できません。

とげの役目として、いちばんよく耳にするのは「動物に食べられないため」でしょう。日本植物生理学会のQ&Aにも、一般にはそう説明されている、と書かれています[2]。

水をたっぷりふくんだ体は、乾燥した土地では貴重な食べ物にもなりえます。とげがあれば、かじられにくくなるはずです。

ただし、資料が伝えているのは「一般にそう説明される」ところまでです。ほかの役目もいくつも挙げられているので、これだけが理由とは決められません。

日本植物生理学会のQ&Aは、棘の役割を「一般には、動物からの食害を防ぐため」と説明する[2]。これは解説であり、食害防止を実験で示したものではない。

Botanical Sciences の論文の導入部は、棘の機能として水の吸収、極端な温度の影響の軽減、日射の反射と吸収、種子や枝の散布、擬態や送粉者への目印、食害の軽減、寄生の防止の7つを列挙している[4]。食害の軽減は、その中のひとつである。

4. とげを ぬいたら、どう なった?

4. とげを取ったら、光合成が変わった

4. 棘の除去実験 ── 遮光の利益と代償

では、とげを ぬいて みたら どう なるのでしょう。メキシコの 研究者たちが、サボテン 三しゅで じっけんを しました[4]。

そのうち 一しゅ(Turbinicarpus schmiedickeanus)は、とげが 体の 表面の 61パーセントほどを おおって いました。この 一しゅでは、とげを とると、光を 使う はたらきが 上がった、と ほうこくされて います[4]。

とげは、強い 日ざしを さえぎる、小さな 日がさの ように はたらいて いたのです。ただし 日がさは、いつも 光を へらして しまうので、その ぶん、光を 使う 力も 少し 下がって いるようです。

ほかの 研究でも、とげは 光を つかう 大事な ところを まもる、と 言われます[5]。

とげは、日ざしにも関わっているようです。メキシコの研究者たちは、サボテン3種でとげを取りのぞく実験をしました[4]。

そのうち報告されている一つの種(Turbinicarpus schmiedickeanus)では、とげが体の表面の約61%をおおっていました。とげを取ると、夜にためる酸の量(CAMのはたらきの目安)と、光合成の装置の効率が上がったと報告されています[4]。とげが日光をさえぎって、光合成にも影響していた、ということです。

意外なのは、とげの有無で温度に大きな差は出なかったことです[4]。「とげで涼しくなる」という説明は、この種では確かめられませんでした。著者は、とげの主な役目は日射を減らして光合成の装置がいたむのを避けることではないか、と考えています。

アメリカの砂漠にすむウチワサボテン3種を調べた別の研究でも、とげは食べられることや極端な温度からの保護に加え、光合成の装置を守るのに役立つと結論されました。その代わり、日よけによって光合成や成長が減る代償もあるそうです[5]。

Botanical Sciences(2016)の研究は3種で棘を除去して光合成を比較した。そのうち Turbinicarpus schmiedickeanus(棘の被覆率61%)で棘を除去し、光合成を比較した。棘の除去でCAM活性(酸度)と光化学系IIの有効量子収率が上昇し、棘が日射を遮って光合成に影響していることが示された。一方、棘の有無による温度に有意差はなかった。著者は、棘の主な役割は日射を減らして光合成装置の損傷を避けることだと示唆している[4]。

Loik(2008)は、モハベ砂漠のウチワサボテン3種で棘を除去して調べ、光化学系IIの保護を、食害の軽減や温度の極端さからの保護に加わる利点として挙げた。遮光には光合成や成長が減る代償もある[5](要旨にもとづく)。

前章の「棘で温度が下がる」という説明と、温度差が出なかった実験は、種や条件の違いを考えると矛盾とは決められない。どの効果が強いかは、材料と環境で変わるとみるのが安全である。

5. きりの 水を あつめる とげ

5. 霧や朝つゆを集めるとげ

5. 棘による集水 ── 円すい形の構造と水滴の輸送

とげには、水を あつめる 名人も います。ウチワサボテンの 一しゅを しらべた 研究では、とげと 毛に ついた きりの つぶが、あつまって 体の 方へ うごく と わかりました[6]。

この とげは、円すいの 形を して いて、一本が 三つの 部分に わかれて います。それぞれの 部分が ちがう はたらきを して、水てきを 動かす のです[6]。

朝つゆを とげで つかまえ、とげの 根もとから 体に とりこむ サボテンも いる、と せつめいされて います[1]。

ただし、これは じっけんしつで 見つかった ことです。どの サボテンも 同じとは かぎりません。

とげは水を集める道具にもなる、という研究があります。ウチワサボテンの一種では、円すい形のとげと毛が茎にびっしり並び、霧の粒を集める仕組みになっている、と報告されました[6]。

1本のとげは、構造のちがう3つの部分でできていて、それぞれが霧の集水で別々の役目をします。水滴が動くのは、表面の形やエネルギーの差によるとされています[6]。

解説では、とげで朝つゆをとらえ、とげの根もとから体に水を取り込むサボテンもある、といわれます[1]。

ただし、この研究は実験室での観察です。すべてのサボテンが同じ仕組みをもつとは限らず、実際の砂漠でどれだけ水を集められているかは、この資料からは分かりません。

Ju ら(2012)は、Opuntia microdasys の棘と毛が、多構造・多機能の集水系を形成することを報告した。円すい形の棘と毛が茎に群がり、各棘は構造の異なる3つの部位からなり、霧の集水で別々の役割を担う。水滴はラプラス圧の勾配と表面自由エネルギーの勾配によって運ばれる[6]。

大学研究室の解説には、棘で霧や朝露を捕らえ、棘の根元から吸収するサボテンがあるとの記述もある[1]。この記述は解説による。

前者は実験室での観察であり、実際の砂漠での貢献度や、他の種への一般化は資料から読み取れない。水量の数値は本稿では扱わない。

6. 答えは、ひとつじゃ ない

6. 答えはひとつではない

6. 複数の機能と、その優先順位が定まらないこと

ここまで、とげの 役目を 三つ 見て きました。ほかにも、日ざしや 寒さから 体を まもる 役目が あげられて います。高い 山に すむ サボテンには、わたげのような とげで 体じゅうを おおう ものも います[1]。

とげに ついて、研究者が 書きだした 役目は 七つ ありました[4]。ひとつの とげが、いくつもの 仕事を して いる のかも しれません。

サボテンの 中には、ふつうの 木のように 葉を もって いる なかまも います[3]。とげが なぜ できたのか、どの 役目が いちばん 大きいのかは、しゅるいや 場所で かわる と 考えられて います。

ここまでに出てきた役目のほかにも、資料はさまざまな可能性を挙げています。ある論文の導入部では、水の吸収、極端な温度の影響をやわらげること、日射の反射と吸収、種子や枝の散布、擬態や花粉を運ぶ生きものへの目印、食べられにくくすること、寄生の防止、の7つが並んでいます[4]。

高い山にすむサボテンには、綿毛のようなとげで全身をおおい、強い紫外線や温度の変化から身を守るものもある、と紹介されています[1]。

サボテンの仲間には、ふつうの木のように葉をたくさんつける種もあります[3]。すべてが同じ姿ではなく、どの役目が主かは種や環境によってちがうと考えられます。研究でも、その答えは割れています。

棘の機能は、水の吸収、極端な温度の影響の軽減、日射エネルギーの反射と吸収、種子・枝の散布、擬態・送粉者への目印、食害の軽減、寄生の防止の7つが挙げられ、強い日射や紫外線から光合成組織を保護する役割も論じられている[4]。高山のサボテンには、綿毛状の棘で全身を覆うものもある[1]。

ペレスキア類(Pereskia)などは、普通の樹木や低木のように多数の葉をもつ[3]。サボテン全体が葉を失っているわけではなく、葉と棘の関係は種によって幅がある。

研究の結論は、種によっても割れる。ある研究は遮光と光合成装置の保護を主な役割と示唆し[4]、別の解説は食害防止が一般的な説明とする[2]。どれが主かは、種と環境しだいで、現時点では一つに定まっていない。

7. 自分でも 見て みよう

7. 自分でも調べてみたくなったら

7. 自分でも調べてみたくなったら

おうちや、お店に サボテンが あれば、見て みましょう。とげには 手を ふれないで、目で 見るだけです。

とげは、体の どこから 生えて いますか。ぽつぽつと ならぶ ところが ありますか。それが 刺座しざです。とげの 長さや 色、数も くらべて みましょう。

植物園の おんしつなら、いろいろな サボテンを くらべられます。とげの すくない ものや、毛のような ものも あるかも しれません。

今日できること:家や店でサボテンを見つけたら、とげには触らず、目で観察してください。とげが出ている点(刺座)はどう並んでいるでしょうか。長さ、色、数、毛のようなものがあるかどうかを、ノートにメモしてみましょう。とげが少ないサボテンと多いサボテンを比べるのもおもしろそうです。

出かけてできること:植物園の温室で、さまざまなサボテンを見比べてみてください。「このとげは、何の役に立っていそうか」と、自分の仮説を考えるのも楽しめます。

資料を読むなら、日本植物生理学会のQ&A[2]と、中部大学のサボテンの解説[1]が、日本語で読める入り口です。

今日できること:サボテンの棘に触れずに観察し、刺座の配列、棘の長さ・色・密度、毛状の棘の有無を記録する。種による違いから、棘の機能について仮説を立てられる。

出かけてできること:植物園の温室で複数種を見比べる。生育地の環境(乾燥、高山、霧の多い場所など)と棘の形を対応させて考える。

資料を読むなら、日本語では日本植物生理学会のQ&A[2]と中部大学の解説[1]が入り口になる。棘の除去実験を詳しく知るなら、Botanical Sciences の論文[4]、集水については Nature Communications の論文[6]を読むとよい。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

本文で使った資料は、出典欄の番号と対応しています。研究の内容は要旨や解説から読み取ったものを含みます。原典で確かめてください。

  1. 「サボテンの秘密」中部大学 堀部研究室。https://pfs.chubu.ac.jp/faculty/horibe-takanori/secret/ (棘は葉の変形、刺座、夜に気孔を開くしくみ、朝露と綿毛状の棘)
  2. 「みんなのひろば Q&A サボテンについて」日本植物生理学会。https://jspp.org/hiroba/q_and_a/detail.html?id=0984 (若い葉が落ちること、食害を防ぐという一般的な説明、夜に取り込むしくみ)
  3. 「Cactus」Wikipedia(英語)。https://en.wikipedia.org/wiki/Cactus (spineとthornの区別、茎の光合成、棘と蒸散の説明、葉をもつ仲間)
  4. 「Effects of spine-shading on aspects of photosynthesis for three cactus species」Botanical Sciences, 2016。https://www.scielo.org.mx/scielo.php?script=sci_arttext&pid=S2007-42982016000200301 (棘の7つの機能の列挙、棘の除去実験)
  5. Loik ME, 2008, Physiologia Plantarum(要旨のみ確認)。https://esajournals.onlinelibrary.wiley.com/doi/pdf/10.1111/j.1399-3054.2008.01110.x (砂漠のウチワサボテン3種での棘の除去実験)
  6. Ju J et al., 2012, Nature Communications 3:1247(Monash大学リポジトリの要旨)。https://research.monash.edu/en/publications/a-multi-structural-and-multi-functional-integrated-fog-collection/ (円すい形の棘による霧の集水)

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