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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

おさらの 絵は、どうして やいても きえないの?

焼いても消えないお皿の絵と、金色だけ薄くなるお皿の絵のちがい

陶磁器の絵付け ── 下絵付け(1200〜1300度)と上絵付け(約800度)、釉薬とフリット

分野:技術

おさらの ふちの 金いろが、いつのまにか うすく なって いる ことが あります。でも、おなじ おさらの 青い 絵は、なかなか きえにくい ものです。

どちらも 火で やいて つけた 絵なのに、どうして ちがうのでしょう。おさらの 作りかたを のぞいて みましょう。

洗ってもなかなか消えにくいお皿の青い絵がある一方で、縁の金色だけがいつの間にか薄くなることがあります。どちらも窯で焼いてつけた絵のはずなのに、なぜ差が出るのでしょうか。

鍵は、絵が「ガラスの下」にあるか「ガラスの上」にあるかです。焼く温度と、絵の具の材料から、その理由を順にたどります。

陶磁器の絵付けには、釉薬の下に文様を入れて高火度で焼く下絵付けと、焼いた釉の表面に低火度で焼きつける上絵付けがある[2]。前者は耐久性が高いとされ[3]、後者は食洗機で変色・はがれが起こる場合があると、メーカーが注意している[5]。

このメモでは、両者の違いを焼成温度と絵具の材料から整理し、食品衛生法上の溶出試験まで、美術館・窯業技術センター・メーカーなどの資料を突き合わせてたどる。

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1. おさらの ひょうめんには、なにが あるの?

1. お皿の表面は、うすいガラスでおおわれている

1. 釉薬 ── 焼くと融けてガラス状の層になる

つるつるした おさらの ひょうめんには、「うわぐすり」という うすい ガラスの まくが かかって います[1]。

うわぐすりは、やく 前は どろどろした ざいりょうです。やくと とけて、ガラスに なります。

ガラスの まくが あると、土の 小さな あなが ふさがって、水が しみにくく なると いわれます[7]。つるつる、ぴかぴかにも なります。

ガラスのうすい膜

お皿や茶わんの表面には、釉薬(うわぐすり)というガラス質を含んだ泥状の材料が掛けてあります。窯で焼くと融けて、器の表面にガラス状の薄い層になります[1]。

水がしみにくく、つやが出る

釉薬の主な成分はシリカ(珪酸)で、長石などが焼成のときに溶けてガラス質になります。この層が土の小さな孔をふさぐので、耐水性が増し、光沢も出るとされています[7]。

ここで、今回の問いが生まれます。絵をつけるなら、このガラスの「下」か「上」か。どちらに置くかで、お皿の丈夫さが変わってきます。

釉薬は、ガラス質を含む泥状の材料で、器の表面に掛けて焼成すると融け、ガラス状の薄い層をなす[1]。主成分はシリカ(珪酸)で、長石などが焼成時に溶けてガラス質になる。層が小孔をふさぐため耐水性が増し、光沢も得られると説明される[7]。

焼成温度は種類ごとに異なり、磁器は約1300度、せっ器は1200〜1300度、陶器は約800〜900度から1200度とされる[1]。陶器には幅があり、一つの温度には決められない。絵をこの層のどちら側に置くかが、以下の本題である。

2. 絵を ガラスの 下に かくと?

2. 下絵付け ── 絵をガラスの下に閉じこめる

2. 下絵付け(釉下彩)── 染付と呉須

おさらの 青い 絵は、うわぐすりを かける 前に かきます。まず、かるく やいた おさらに、青い 絵の具で 絵を かきます。

その 上から、すきとおった うわぐすりを かけて、ほんとうに 高い おんどで やきます[2]。

絵は、ガラスの まくの 下に なります。まどガラスの 内がわに はった 絵は、外から こすっても とれませんね。それと にています。

ただし 本当は、はって いるのでは ありません。ガラスの 下に あるので、こすれにくい、と いう ことです[3]。

素焼きの器に絵を描く

下絵付けでは、まず軽く素焼きした器に、呉須(ごす)という青い顔料で絵を描きます。そのあとで透明な釉薬をかけ、1200〜1300度の高い温度で本焼きをします[2]。呉須はコバルトを含む顔料で、鉄や銅を含む顔料で描くこともあります[1]。

消えない理由は、ガラスの下にあること

この方法を「染付(そめつけ)」といい、釉薬の下に絵があるので釉下彩(ゆうかさい)とも呼ばれます[1]。窯元の大倉陶園は、釉薬の下に着色するため耐久性が高くなる、と説明しています[3]。

釉薬の下にあるため、表面からこすれにくいと考えられます。

下絵付けは、素焼きした器に呉須(コバルトを含む顔料)などで文様を描き、透明釉をかけて高火度(1200〜1300度)で本焼きする技法である[2]。染付(青花)は、コバルト・鉄・銅などを含む顔料で文様を描き、透明釉をかけて焼く釉下彩の一種と位置づけられる[1]。

大倉陶園は、呉須について「釉薬の下に着色するため耐久性が高くなる」と説明している[3]。この説明からは、耐久性の要因はガラス層の下に位置するという構造にあると考えられる。

3. 絵を ガラスの 上に かくと?

3. 上絵付け ── もう一度焼いて、ガラスの上に定着させる

3. 上絵付け(色絵)── フリットと発色剤、600〜800度

おさらの 金いろや 赤い 絵は、べつの 作りかたです。うわぐすりを かけて、いちど やき あげた おさらの 上に、絵を かきます[1]。

そして、もういちど やきます。こんどは、ひくい おんどです。八百どくらいと いわれます[2]。

絵の 具には、ガラスの こなが はいって います。やくと ガラスの こなが とけて、おさらの ひょうめんに くっつきます[4]。

まどの 外がわに はった シールの ようです。ただし、本当は シールでは なく、とけた ガラスで くっつけて います。

焼いたお皿に、もう一度絵を描く

上絵付け(色絵)は、釉薬をかけて一度焼いた器の表面に、低い温度で融ける絵の具で文様を描き、もう一度焼く方法です[1]。焼く温度は600〜800度とされ、資料によって幅があります[2]。下絵付けの1200〜1300度と比べると、ずっと低い温度です。

絵の具の中身はガラスの粉

佐賀県窯業技術センターの説明では、上絵具はガラスの粉(フリット)と、色を出す成分(金属酸化物や顔料)でできています。この絵の具で釉薬の表面に描いて焼くと、フリットが融けて表面に定着します[4]。

お皿の表面のガラスの上に、もう一枚、絵の具のガラスを焼きつける。そう考えると、絵が「上」にある意味が見えてきます。

上絵付けは、釉をかけて一度焼成した器の釉表に、低火度で融ける顔料で文様を描き、再び焼成する技法である[1]。焼成温度は素焼き程度の低火度(600〜800度)とされる[2]が、資料によっては約800度とも記される[4]。資料によって幅がある。

上絵具は、ガラス粉(フリット)と発色剤(金属酸化物や顔料)から成る。釉表に描いて再焼成すると、フリットが融けて表面に定着する[4]。フリットは、一度融かして作ったガラスの粉である。下絵が釉薬の下に入るのに対し、上絵は釉の表面側に定着する点が構造上の違いである。

4. どうして ひくい おんどで やくの?

4. なぜ、低い温度で焼くのか

4. 低火度焼成の理由 ── 高温に耐えない絵具

金いろや 赤い 絵の具は、とても 高い おんどに すると、どろどろに なって しまう ことが あるからです[2]。

だから、ひくい おんどで そっと やきます。じつは、ガラスの こなを ひくい おんどで とかすのも、かんたんでは ありません[4]。

ひくい おんどで とける ガラスを 作るには、ざいりょうの まぜかたを くふうする ひつようが あります。とかす おんどと、ねつに よる のびちぢみと、さんへの つよさを、うまく そろえなければ なりません。

絵の具が溶けすぎないように

陶路(とうろ)の解説では、金彩や色絵の具は高温にすると液状になるおそれがあるため、素焼き程度の低い温度で焼きつけるとされています[2]。下絵の呉須のように、1200度を超える窯に入れられるわけではないのです。

低い温度で融かす工夫

一方で、ガラスの粉を800度以下で融かすには、アルカリなどの成分を多く配合しなければなりません。すると、融ける温度、熱による膨張、酸への強さの釣り合いをとるのが難しくなる、と佐賀県窯業技術センターは説明しています[4]。

低い温度で焼く選択は、色を守るためであり、同時に作り手にとっての難しい調整でもあります。

金彩や色絵具は、高温下で液状になるおそれがあるため、低火度で焼成される[2]。加えて、フリットの融解温度を上絵焼成温度である約800度以下に調整するには、アルカリ・アルカリ土類成分を多く配合する必要があり、融解温度・熱膨張・耐酸性のバランスを取る調整が難しいとされる[4]。

これらから、上絵は「高温に耐えない絵具を、低い温度で無理なく定着させる」ための方法と考えられる。ただし、800度で釉薬が融けないので絵具が表面にとどまる、という因果を直接述べた資料は今回は得られていない。上の説明は、焼成温度の資料からの推論である。

5. おさらを あらう きかいに 入れても、だいじょうぶ?

5. 上絵や金彩は、洗い方に注意が要る

5. 上絵の耐久性の限界 ── 食洗機・電子レンジの注意表示

ガラスの 上に ある 絵は、こすれや 高い ねつに、よわい ことが あります[2]。

おさらを あらう きかいの せつめいには、上に 絵が ある おさらや、金や 銀の いろが ついた おさらは、へんしょくしたり、はがれたり する ばあいが ある、と 書かれて います[5]。

「かならず おちる」では ありません。「おちる ことが ある」です。うちの おさらに、なんて 書いて あるか、見て みましょう。

洗うと、変色やはがれが起こる場合がある

パナソニックのビルトイン食洗機のFAQには、釉薬の上に絵をつける上絵付けや、金彩・銀彩の陶磁器は、食洗機で洗うと変色したりはがれたりする場合がある、とあります[5]。「必ず落ちる」ではなく、「場合がある」という書き方です。

電子レンジも、高い温度に弱い

陶路の解説では、色絵ものや金彩・銀彩に電子レンジ使用不可の表示があるのは、高温に弱いからとされています[2]。食器の裏や箱の表示が、こうした性質を知らせてくれています。

Panasonicのビルトイン食洗機FAQは、「釉薬の上に絵を施す上絵付けや金彩・銀彩の陶磁器は、食洗機で洗浄すると変色したりはがれたりする場合があります」と注意している[5]。「場合がある」であり、必ず起こるとは述べていない点に注意する。

電子レンジについても、色絵ものや金銀彩に使用不可の表示があるのは高温に弱いためと説明されている[2]。これは、上絵が低火度で焼きつけられているという前節の構造と整合する。

6. 口に 入る ものだから、たしかめて いるの?

6. 食器から溶け出す成分を測る試験の決まりがある

6. 上絵具と食品衛生法 ── 鉛・カドミウムの溶出試験

おさらは、たべものを のせる ものです。だから、ほうりつの きまりには、なまりや カドミウムが どれだけ とけだすかを しらべる しけんの やりかたが 書かれて います[6]。

しけんでは、すっぱい 水(さくさん)を おさらに いれて、一日 おいて から、とけだした ものを はかります。

むかしの 上絵の 具には、なまりの 入った ガラスの こなが つかわれて きました[4]。いまは、なまりを つかわない 絵の 具も 作られて います。

酢酸でおよそ一日おいて、溶け出す量を測る

食品衛生法の規格には、陶磁器製の器について、4%の酢酸を満たして常温・暗所で24時間置き、溶け出した鉛とカドミウムの量を測る試験があります[6]。これは深さ2.5cm以上の器の場合の方法で、規格の値は器の大きさや用途によって異なります。

鉛を使わない上絵具へ

上絵具のガラス粉には、これまで鉛ガラスが使われてきました[4]。佐賀県窯業技術センターは、鉛を使わない上絵具をつくった経緯を紹介しています。上絵の色を出すことと、食器としての安全を保つことは、作り手が両方向きあってきた課題です。

上絵具のフリットには、従来から鉛ガラス粉が使われてきた[4]。これに対し、食品衛生法の規格基準には、陶磁器製の器具・容器包装の溶出試験がある。試料を水で洗ったのち、4%酢酸を満たして常温・暗所で24時間放置し、その液から鉛とカドミウムの溶出量を測る(深さ2.5cm以上の場合)[6]。

規格値は器の容量・用途によって異なるため、ここでは数値を挙げない。原文は厚生労働省の新旧対照条文で読める。なお、無鉛上絵具の開発経緯は佐賀県窯業技術センターが公開している[4]。

自分でも しらべて みたく なったら

自分でも調べてみたくなったら

自分でも調べてみたくなったら

おうちの おさらを 1まい えらんで、ふちの 金いろや 絵の ところを、ゆびで そっと なでて みましょう。ごしごし こすっては いけません。

つるつるか、すこし でこぼこか、見て みます。おさらの うらや はこに、「しょくせんき」や 「でんしレンジ」の ひょうじが あるかも、さがして みましょう。

今日できること:家の食器を1枚選び、縁の金色や絵柄の部分を、指でそっとなでてみます。ざらつきや段差を感じるものも、感じないものもあるかもしれません。ちがいがあれば、絵がガラスの上か下か、どちらにありそうか考えてみます。強くこすって試すのはやめましょう。

あわせて、裏や箱にある「食洗機」「電子レンジ」の表示も見てみます。表示のあるお皿とないお皿で、絵の付け方にちがいがあるか、想像するきっかけになります。

公式情報:食洗機メーカーのFAQや、陶磁器の解説サイトは日本語で読めます。食器の扱いは、必ず購入した製品の表示や説明書に従ってください。

大阪市立東洋陶磁美術館の「陶磁入門 鑑賞の手引」[1]は、釉下彩と上絵付けの定義を、日本語で簡潔にまとめている。上絵具の成分と低温焼成の難しさは、佐賀県窯業技術センターの解説[4]が詳しい。

食品衛生法の溶出試験は、厚生労働省の新旧対照条文[6]にある。器の種類ごとの規格値も載っている。上絵と下絵を家の食器で見分けるなら、縁の金彩や絵柄を、強くこすらずに指先でなぞって段差の有無を見るところから始められる。食器の扱いは製品の表示に従うこと。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

本文で使った資料です。ここに書いたのは、本文の主張の根拠として実際に確かめたものだけです。

  1. 大阪市立東洋陶磁美術館「陶磁入門 鑑賞の手引」 https://www.moco.or.jp/intro/guidance/ (釉薬の定義、焼成温度、染付・上絵付けの定義)
  2. 陶路「陶磁器の基礎知識 下絵と上絵」 https://touroji.com/elementary_knowledge/sitaetouwae.html (下絵・上絵の温度、電子レンジの注意)
  3. 大倉陶園「呉須」 https://www.okuratouen.co.jp/technique/gosu/ (下絵の耐久性についての窯元の説明)
  4. 佐賀県窯業技術センター「無鉛上絵具 誕生ストーリー」 https://www.scrl.gr.jp/main/1432.html (上絵具の成分、低温で融かす難しさ、鉛ガラス)
  5. Panasonic「ビルトイン食洗機 FAQ」 https://jpn.faq.panasonic.com/app/answers/detail/a_id/84375/ (上絵付け・金銀彩の食洗機での注意)
  6. 厚生労働省「食品、添加物等の規格基準 新旧対照条文」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000019691.html (陶磁器の溶出試験の方法)
  7. Wikipedia「釉薬」 https://ja.wikipedia.org/wiki/釉薬 (釉薬の成分と耐水性。二次資料)

なおした ところ

更新履歴

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