1. 短く なった ぶんは、どこへ 行ったの?
1. 短くなったチョークの分は、どこへ行ったのか
1. 削れた分はどこへ行くか ── 質量の減少として測る
えんぴつは、書くと けずれて、その ぶんが 紙の 上の 線に なります。チョークも、にた ことが おきて いるようです。ただし 本当は、チョークは えんぴつの しんでは なく、こなを かためた ぼうです。
黒板に 字を 書くと、チョークの 先が すこし けずれます。けずれた こなが 黒板に のこって、白い 字に 見えて いると 考えられます。
高校生が、チョークで 線を 引く 前と あとの おもさを はかった じっけんが あります[3]。書くと、チョークは かるく なって いました。
では、その こなは、なにで できて いるのでしょう。
字を書いているとき、チョークの先は黒板にこすられて、少しずつ削れています。削れた粉は黒板に残り、それが白い字や線に見えている、と考えられます。チョークが短くなるのは、この粉の分だけ棒が減るからでしょう。
長野県の高校の理数科の生徒が、この「削れる量」を実験で測っています。線を引く前と後のチョークの質量を量り、その差を削れた量としました。書くとチョークの質量は減り、減り方は市販の製品によって違いました[3]。
ここまでは、チョークが粉を固めた棒であることと、この測定から組み立てた説明です。
では、その粉は何でできているのでしょうか。
黒板に字を書くとき、チョークの先端は黒板との摩擦で少しずつ削れ、その粉が黒板に残って描線になる、と考えるのが自然である。短くなった分は、字になった粉の分にあたる。これは、チョークが粉を固めた棒であることと、次の測定から組み立てた説明である。
長野県の高校の理数科の課題研究は、線を引く前後のチョークの質量の差(W₁−W₂)を「削れた量」として測った。書くとチョークの質量が減ることが確かめられ、削れる量は製品ごとに異なった[3]。
では、削れて字になる粉は何か。削れ方の違いは、材料と固め方から説明できるのか。
2. チョークは、なにで できて いるの?
2. 白い棒の正体 ── 石灰石の粉と石膏
2. 材料の二系統 ── 炭酸カルシウムと石膏(硫酸カルシウム)
チョークは、白い いしの こなを、のりの ような ものでかためた ぼうです[1]。いしの こなには、大きく わけて 2しゅるい あります。
ひとつは、せっかいせきという いしの こな。もうひとつは、せっこうという ものの こなです。
高校生が お店で 売って いる チョークを くらべると、書きごこちは、しゅるいごとに ちがって いました。かためで 色が はっきりした ものも、ねばりが ある ものも ありました[3]。
黒板用チョークは、石灰石(主成分は炭酸カルシウム)の粉を、粘結剤で固めたものと、石膏を使ったものに分けられます[1]。粘結剤は、粉をまとめて棒の形に保つ、のりの役目をするものです。
長野県の高校の生徒は、市販のチョークを比べました。ダストレスとフルタッチは主成分が炭酸カルシウム、ポリーは硫酸カルシウム(石膏の仲間)でした。炭酸カルシウムのほうは固めで発色がよく、硫酸カルシウムのほうは粘り気がある、と報告しています。自分で作ったチョークの強さを比べると、炭酸カルシウム<硫酸カルシウムの順でした[3]。
ただし、これは高校生の課題研究で、公的な研究ではありません。すべてのチョークに当てはまる決まりとしては読めないので、「この実験ではそうだった」という程度にとどめます。
3. チョークに 貝がらが まざって いるって 本当?
3. 捨てられていたホタテの貝殻が、チョークになった
3. ホタテ貝殻入りチョーク ── 折れにくさと粉の付き方
北海道では、ホタテという 貝を たくさん とります。その 貝がらが、毎年 およそ 20万トン も 出るそうです[1]。
その 貝がらの こなを まぜた チョークが、2005年から 売られて います。毎年 およそ 80トンの 貝がらが、チョークの ざいりょうに なって います[2]。
貝がら入りの チョークは、おれにくく、書きごこちも なめらかに なったと いいます。黒板に こなが くっつきやすく、線も はっきり 引けたそうです[1]。
ところで、黒板の 上を 走る チョークは、いつも しずかに こなを おいて いる わけでは ありません。ときどき、キーッと 鳴きます。
北海道では、毎年約20万トンのホタテの貝殻が出ます[1]。これを、チョークの原料として生かす研究を、北海道立工業試験場が日本理化学工業と共同で進めました。
この貝殻入りのチョークは、2005年(平成17年)から商品になっています。水産廃棄物だった貝殻が、毎年約80トン、チョークの原料になっていると紹介されています[2]。約80トンは、20万トンの0.04%ほどです。チョークの原料になるのは、貝殻のごく一部ということになります。
試験場の資料によると、貝殻入りのチョークは、従来の炭酸カルシウムのチョークより折れにくく、書き味も滑らかになりました。さらに、黒板への粉の付き方がよく、線がより鮮明に描けたと報告されています[2][1]。貝殻の粉は棒のような形の粒子で、それが補強になったためと「考えられます」と書かれています。
粉がよく付き、折れにくいチョークでも、黒板の上では別のことが起きます。ときどき、キーッと鳴くのです。
北海道では毎年約20万トンのホタテ貝殻が出る[1]。これを原料に使えないかと、北海道立工業試験場が日本理化学工業と共同で貝殻入りチョークを開発し、2005年(平成17年)から商品化された。水産廃棄物の貝殻が、毎年約80トン、チョークの原料になっている[2]。80÷200,000=0.0004で、出る貝殻のおよそ0.04%にあたり、廃棄物の処理という面では、ごく一部の利用である。
試験場の資料によれば、貝殻配合チョークは従来の炭酸カルシウムチョークより折れにくくなり、書き味も滑らかになった。さらに、黒板への粉の付着状態がよく、より鮮明な描線が描けた[2][1]。貝殻粉末が棒状の粒子で、補強効果が現れたためと「考えられる」とされ、あくまで推定である。
粉が黒板によく付くなら、チョークの削れ方と線の出方には関係がありそうだ。ところが黒板の上では、削れて粉を置く以外のことも起きる。ときどき鳴くのである。
4. キーッという 音は、どうして 出るの?
4. 鳴くのは、「すべって、くっついて」のくり返しだから?
4. 鳴きの従来説 ── すべる・くっつくの繰り返し(スティックスリップ)と音の高さ
つくえの 上で、手を おしつけて ずらして みると、ひっかかって とまり、ずるっと すべる、を くりかえす ことが あります。チョークと 黒板でも、にた ことが おきると せつめいされて きました[4]。
ただし 本当は、とても はやいのです。音の 高さは、見つもりで 1びょうに 3000回ほど ふるえる 高さと されます。ピアノの まんなかの ドより、ずっと 高い 音です[4]。
これは おおまかな 見つもりで、正しい 数では ありません。チョークの 長さや 太さでも、ふるえ方は かわると されます。
では、持ち方を かえたら、音は かわるのでしょうか。
チョークで黒板をこすると鳴く現象は、従来、スティックスリップ(すべる・くっつくのくり返し)で説明されてきました。チョークが黒板にくっついて止まり、力がたまると一気にすべる、その動きが速く何度もくり返されて音になる、という考え方です。摩擦の係数が、すべる速さで変わることが原因とされます[4]。
アメリカのMITのQ&Aページは、鳴くチョークの音の高さを約3kHz(真ん中のドの3〜4オクターブ上)と見積もっています。つまり、1秒に約3000回ふるえる計算です。実験では固有振動が約2kHzだったという報告も紹介しています。チョークの長さや太さで決まる、棒の振動だとされます[4]。
どちらも大まかな見積もりで、正確な値ではありません。
音の高さが棒の振動で決まるなら、チョークの持ち方でも変わりそうです。実際、持つ角度で線の出方が違うことを調べた研究があります。
5. 持ち方を かえると、線は かわるの?
5. 持つ角度で、チョークは跳ねたり、なめらかに引けたりする
5. 持ち方(角度)で跳ねる ── sprag-slip とパンルヴェのパラドックス
チョークを、さきが すすむ ほうへ つき出すように おすと、はねて、ぽつぽつと なりやすいと いいます。反対に、引っぱるように 持つと、ひとつづきの 線に なりやすいそうです[5]。
これは 研究者の ろんぶんに 書かれた 話です。「おすと かならず 鳴く」という 決まりでは なく、かたむきが あるというだけです。
チョークは、すべる・くっつくだけでなく、黒板から ういて、また ぶつかる ことも くりかえして います[5]。
この 動きを つかまえた 人が います。
接触力学の論文に、こんな説明があります。チョークの軸と、進む向きの間の角度が鋭角のとき、つまり黒板の上をチョークが押される向きに進んで、力を強めると、チョークは跳ねます。鈍角のとき、つまり引かれる向きに進むときは、一様な線になりやすい、という内容です[5]。
この跳ねる現象は、スプラグ・スリップ(sprag-slip)とも呼ばれます。単なるスティックスリップより複雑で、チョークが黒板から浮き上がり、また当たる、という動きをくり返す点が違います[5]。
ただし「押す向きだと鳴きやすい」というのは、あくまで傾向です。すべての角度や力で成り立つとは書かれていません。
この跳ねる振動を、逆に使った人がいます。
6. いやな 音を、わざと 出した 人は だれ?
6. 嫌な音を、わざと出した物理学者
6. ルーウィンの実演 ── 跳ねる振動で点線を引く
ウォルター・ルーウィンという、アメリカの 物理学者が います。この 人は、チョークを わざと はねさせて、黒板に 点線を すばやく 引く じっけんで、知られて いるそうです[5]。
チョークが とんで、また つくたびに、黒板に 点が ひとつずつ のこります。点線は、チョークが 黒板から ういた あとです。
鳴く チョークは、ただの じゃま ものでは ないのかも しれません。
アメリカの物理学者ウォルター・ルーウィンは、チョークにスプラグ・スリップの振動をわざと起こして、黒板に点線を速く引く実演で知られている、と同じ論文に書かれています[5]。
チョークが黒板に当たる、浮く、また当たる。その一回ずつが、点線の点になります。ふつうなら授業の邪魔になる音と動きを、コツを知ったうえで、道具に変えたことになります。
論文は、この実演を「よく知られている」と紹介しています。
アメリカの物理学者ウォルター・ルーウィンは、チョークにスプラグ・スリップの振動を起こし、黒板に点線を速く引く実演で知られると、上の論文は述べる[5]。チョークが黒板に当たる、浮く、また当たる、の一回ずつが点線の点になると考えられる。
ふつうは避けたい跳ねる動きでも、条件(角度と力)を分かっていれば、狙って出せる。論文は、この実演を「よく知られている」と紹介している。
では、その「すべる・くっつく」という説明だけで、鳴く音はすべて片づくのか。最近、別の観点の研究が出ている。
7. 音の ひみつは、もう ぜんぶ 分かったの?
7. 2026年の新しい研究は、チョークの音を説明したのか
7. ゴムとガラスの新研究は、チョークの音を説明するのか
2026年2月に、やわらかい ものが かたい 面を こすって 鳴る 音の 研究が、ネイチャーという ざっしに のりました。ゴムと ガラスで 調べた 研究です[6]。
ゴムが ガラスから はがれて、またくっつく 波が、すごい はやさで 走ると 書かれて います。これまでの「すべる・くっつく」だけでは、せつめいしきれないそうです。
けれど、これは ゴムの じっけんで、チョークの じっけんでは ありません。チョークの 音が どうなのかは、まだ 分かって いません。
この 研究を しょうかいした 大学の 記事の 題名に、「キーッと 鳴く チョーク」が 出て います[7]。
2026年2月25日、イギリスのノッティンガム大学とハーバード大学のニュースが、新しい研究を紹介しました。ゴムとガラスなど、やわらかい物が硬い面をすべるときの音は、超音速とも呼ばれる速さではがれては、またくっつく波で生じる、という内容です。論文は科学誌「ネイチャー」に出ました。従来のスティックスリップの説では捉えきれない、と説明されています[6]。
ノッティンガム大学の記事は、この研究の応用先の例として、キュッと鳴く運動靴と並べて、きしむチョークを題名に挙げています[7]。ただ、本文でチョークの音そのものの検証は示されていません。実験の対象はゴムとガラスです。
ゴムとガラスで確かめられた仕組みが、チョークの音と同じかどうかは、分かっていません。従来の説と新しい研究は、ここでは並べるだけにして、どちらが正しいとは書きません。
2026年2月25日、ノッティンガム大学とハーバード大学SEASの発表によると、ゴムとガラスなど、やわらかい物が硬い面をすべるときの音は、超音速とも呼ばれる速さで界面がはがれて再び付く波(opening slip pulses)で生じるという研究が Nature 誌に出た。従来のスティックスリップ説では捉えきれない、とされる[6]。
ただし、これはゴムとガラスの実験であり、チョークそのものの実験ではない。ハーバード側の記事にチョークへの言及はなく、ノッティンガム側の記事は題名に「きしむチョーク」を応用先の例として挙げるだけで、本文にもチョークの詳しい検証は示されていない[7]。チョークの音が、この機構で説明できるかどうかは、確かめられていない。
従来説(スティックスリップ、sprag-slip)と新しい研究は、ここでは並べて紹介する。ゴムとガラスの研究だけでは、チョークの鳴き方を説明できるかは分からない。チョークの音の仕組みは、まだ研究の途中にあると読むのが妥当だろう。
自分でも しらべて みたく なったら
自分でも調べてみたくなったら
自分でも調べてみたくなったら
今日できること
黒板に チョークで 字を 書いて、指で 字を なぞって みましょう。指に こなが つきます。それが、短く なった チョークの ぶんです。黒板は、学校で 先生に ことわって から つかいます。
出かけてできること
学校の 黒板で、先生に ことわって、チョークを ねかせて 引く 線と、立てて おす 線を くらべて みましょう。線の ちがいや、音の ちがいが 見つかるかも しれません。
こうしきの 情報
チョークを 作って いる 会社の サイトに、チョークの ざいりょうや、しゅるいの ちがいが 出て います。
今日できること
黒板に字を書いて、指でなぞってみてください。指に付く白い粉が、チョークの削れた分です。黒板やチョークは、学校や家にあるものを、持ち主にことわって使ってください。
出かけてできること
学校の黒板で、先生にことわったうえで、チョークを寝かせて引く線と、立てて押しながら引く線を比べてみてください。線の切れ方や、音が出るかどうかを見るだけでも、論文に書かれていたことの一部を体験できます。
公式情報
チョークメーカーの公式サイトや、北海道立工業試験場(道総研)の技術情報に、材料や開発の話があります。
今日できること
黒板に字を書き、指でなぞって粉を確かめる。黒板とチョークは、持ち主の許可を得て使う。
出かけてできること
学校の黒板で、チョークを寝かせて引く場合と、立てて押す場合の線・音を比べる。論文の「鋭角は跳ねやすく、鈍角は一様」という傾向を、自分の手で確かめられるか試す。条件(角度・力・黒板の状態)を記録すると、再現の難しさも分かる。
公式情報
日本語で読める北海道立工業試験場の資料(貝殻入りチョークの技術情報)と、伊那北高校の課題研究を読み、材料や削れ方の測り方を確かめる。英語に挑戦したいときは、MITのQ&Aや大学のニュースが続きになる。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
材料と削れ方は、道立試験場の技術情報と高校生の課題研究を突き合わせた。鳴く音は、MITのQ&Aと接触力学の論文、2026年の大学ニュースを並べた。チョークの短くなる理由を直接説明する公的資料は見つからず、粉を固めた棒が削れるという説明は、これらからの組み立て。
- 北海道立工業試験場 技術情報「ホタテ貝殻を使ったチョーク」 https://www.hro.or.jp/upload/2670/30-03-07.pdf (材料・貝殻入りの折れにくさと粉の付き方)
- 北海道立工業試験場「ホタテ貝殻を活用したチョークの開発」 https://www.hro.or.jp/upload/56593/iri_dustless_chalk.pdf (商品化の年・年間の使用量)
- 伊那北高校 理数科 課題研究「チョークの成分と書き味について」 https://www.nagano-c.ed.jp/ina/B_educationalinfo/2019/kadaikenkyu/R1kagaku1.pdf (市販品の成分・強度・削れた量の測り方)
- MIT Q&A: What is the pitch of squeaking chalk? https://www.mit.edu/~azlokapa/questions/chalk.html (スティックスリップと音の高さの見積もり)
- Champneys & Várkonyi, The Painlevé paradox in contact mechanics (arXiv版) https://arxiv.org/pdf/1601.03545 (持つ角度と跳ねる動き・ルーウィンの実演)
- Harvard SEAS ニュース「The physics of the squeak」 https://seas.harvard.edu/news/physics-squeak (2026年のゴムとガラスの研究)
- University of Nottingham news https://www.nottingham.ac.uk/news/stop-the-squeak-new-research-could-end-squeaking-trainers-or-screeching-chalk (記事の題名にチョークがあること)
- Nature 掲載論文(2026年、ゴムとガラスのはがれる波) https://www.nature.com/articles/s41586-026-10132-3 (2026年の研究の原典。大学ニュースの内容の確認先)
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