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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

火星の 土を、どうやって ちきゅうに もちかえるの?

火星の地面から、もう一度ロケットを飛ばす ── 中国の「天問3号」が持ち帰ろうとするもの

天問3号の火星サンプルリターン ── 火星から打ち上げる上昇機と、祝融号の観測が示した「持ち帰る理由」

分野:宇宙・天文

火星の 地面から、ロケットを もう一ど とばして かえってくる。そんな 計画が、中国で すすんで います。

火星の つちや 石を、地球まで はこんで くるのは、なぜでしょう。どこに おりて、どうやって かえってくるのでしょう。それが わかります。

中国の火星探査計画「天問3号」には、火星の地面から、もう一度ロケットを打ち上げて帰ってくるという場面があります。火星に着くだけでなく、火星から飛び立つのです。

なぜそこまでして土と岩を持ち帰るのか、どこに降りる予定なのか、予定はどう動いてきたのか。そのあらましが分かります。

天問3号の計画で目を引くのは、火星の地表から試料を載せた機体を再び打ち上げ、軌道上で待つ周回機とドッキングさせる手順だ。着陸だけでなく、離陸と宇宙での受け渡しまでを自前でやりとげる必要がある。

なぜ、これほど手間のかかる方法を選ぶのか。着陸候補地や打ち上げ時期は資料でどう変わってきたのか。公表されている数字から分かることと、まだ決まっていないことが分かる。

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1. 火星から どうやって かえってくるの?

1. 火星に降りたあと、どうやって帰ってくるのか

1. 往路より難しい復路 ── 2機のロケットと「火星からの離陸」

2026ねん4月の しんかしゃの ほうどうでは、てんもん3ごうは、火星の つちと 石を、2028ねんごろに うちあげ、2031ねんごろに もちかえる よていです[1]。

うちあげる ロケットは 2き。1きめは、火星に おりる きかいと、そこから とびたつ ちいさな ロケットを はこびます。2きめは、火星の まわりを まわる きかいと、地球に もどる きかいを はこびます[2]。

火星に おりた きかいは、つちを とって、ちいさな ロケットで 入れものを 火星の 空へ うちあげます。火星の まわりを とぶ きかいと、うちゅうで くっつく のです[2]。

ただし、日づけは かわる ことが あります。「ごろ」と いう ことばが つくのは、そのためです。

2機のロケットと、宇宙での待ち合わせ

2026年4月の新華社報道によると、天問3号は2028年前後に打ち上げ、2031年前後に火星の試料を地球へ持ち帰る予定です[1]。ロケットは2機に分かれます。1機は火星に降りる着陸機と、そこから飛び立つ上昇機を運びます。もう1機は、火星の周りを回る周回機と、地球へ戻る帰還機を運びます[2]。

火星に降りた着陸機は土や岩を集め、小型のロケットで試料の入れ物を火星の周回軌道へ打ち上げます。そこで待つ周回機と宇宙でドッキングし、受け取った試料が地球へ向かいます[2]。

中国の資料では、この計画の目標に、地表での試料採取、離陸と上昇、火星軌道上での宇宙船どうしのランデブーという技術を確立することも挙げられています[4]。着いて終わりではなく、飛び立つところまでが挑戦なのです。

日づけの「前後」に意味がある

打ち上げの月やロケットの型番は、報道によって違いがあります。たとえば2022年のPlanetary Societyの記事は、周回機を2028年11月、着陸機を12月に打ち上げ、試料は2031年7月に戻る予定としていました[3]。2026年4月の新華社報道は「前後」までなので、この記事も月は書かないことにします。

天問3号では、火星からの帰り道にも難しい工程がある。着陸機は火星の地表で試料を集めたあと、搭載した上昇機の固体ロケットで試料容器を火星周回軌道へ送り込み、待機する周回機とドッキングさせる計画だからだ[2]。

そのため機体は2機のロケットに分けて打ち上げる。1機は着陸機・上昇機、もう1機は周回機・地球帰還機を運ぶ構成で、文昌(海南島)からの打ち上げと報じられている[2]。新華社は、2028年前後の打ち上げ、2031年前後の試料帰還という予定を伝える[1]。

中国側の紹介では、地表での採取、離陸と上昇、軌道上のランデブーという3つの技術の確立も目標に挙がる[4]。ただし時期は資料で揺れる。2022年のPlanetary Societyは周回機を2028年11月、着陸機を12月(5月案も併記)の打ち上げ、試料帰還を2031年7月としていた[3]。最新の公表は「前後」までなので、月やロケットの型番は断定できない。

では、そこまで苦労して、何を集めるのか。

2. 地面を どこまで ほるの?

2. 地下2mまで掘って、何を探すのか

2. 地下最大2mの採取と、第一目標「生命の痕跡」

おりた きかいは、地めんを ほります。ほる ふかさは、さいだい 2メートルです[2]。ドアの たかさ ぐらいです。さいだいが 2メートルで、いつも そこまで ほるとは かぎりません。

あつめる おもさは、すうひゃく グラムです。500グラムいじょうと する しりょうも、800グラムくらいと する しりょうも あります[2][5]。

いちばんの ねらいは、火星に いのちの あとが あるか しらべる ことです[4]。

ドアの高さほどの穴

Scientific Americanによると、着陸機は少なくとも500gの試料を集め、地下最大2mまで掘ります[2]。2mは、家のドアの高さほどです。これは最大の深さで、いつもそこまで掘るとは限りません。地表だけでなく、地面の下の岩や土も取ろうというわけです。

試料の量は資料で少し違います。深宇宙探査実験室の発表を転載した記事には「約800g」とあり、500gとの差は資料の書き方の違いのようです[5]。この記事では「数百グラム」と書きます。

「人類は孤独か」という問い

第一の科学目標は、火星に生命の痕跡があるかを探すことです[4]。深宇宙探査実験室の発表では、「世界で人類は孤独か」という問いに答えることを狙うとされています[5]。もちろん、痕跡が見つかると決まっているわけではありません。調べるための材料を地球へ持ち帰ることが、この計画の中心です。

火星の地表を掘るとき、深さが目標の大きな要素になる。Scientific Americanは、着陸機が最低500gの試料を集め、最大2mまで掘削すると伝える[2]。地表に近い層は放射線や乾燥にさらされやすいので、より深い層を狙う意図があると考えられるが、この理由は引用した資料には書かれていない。

試料量は資料で食いちがう。深宇宙探査実験室の発表を転載したITホームは「約800g」と記すのに対し、Scientific Americanは「最低500g」とする[5][2]。前者は目標値、後者は下限と読めるので、この記事は「数百グラム」にとどめる。

第一の科学目標は「火星の生命の痕跡を探すこと」で、同実験室は「世界で人類は孤独か」という問いに答えることを狙うとしている[4][5]。ただし採取できる試料に痕跡があるかは、持ち帰って分析するまで分からない。

実験室の紹介には、着陸区の外3〜5kmで小型の飛行機を使って採取する案も出てくるが、一文の言及にとどまり、確定した計画かは分からない[5]。

3. なぜ 火星の 石を 地球に もってくるの?

3. 先に動いた「祝融号」は、何を見つけたのか

3. 祝融号の観測と、現地観測の限界

天問3ごうの まえに、中国は 火星に ロボットの くるまを おくりました。「しゅくゆうごう」と いいます。

この ロボットは、2021ねん5月に 火星の ユートピア平げんに おりました。つくった ときの 目あては 90火星日 ほどでしたが、347火星日 も うごいて、およそ 1.9キロメートル はしりました[8]。

しゅくゆうごうは、水を ふくむ 石や、むかしの 海ぎしかも しれない ちけいを しらべました[8]。ただし これは、まだ 生きものの しょうこでは ありません。もっと くわしく しらべたいから、地球に もちかえります。

設計寿命の約4倍、動いた探査車

天問1号が運んだ探査車「祝融号」は、2021年5月にユートピア平原へ着陸しました。設計寿命は90火星日でしたが、2022年5月まで347火星日(358日)動き、約1.9km走りました[8]。347を90で割ると約3.9倍で、予定の4倍近くです。

この探査車は、水を含む硫酸塩や水を含むシリカを見つけたと報告され、古い海岸線の可能性を示す地形も報告されました[8]。

見つけたことと、まだ言えないこと

これらは古い水の環境があった可能性を示す観測ですが、生命の証拠ではありません[8]。探査車が積める機器は限られます。だから、土や岩を地球の実験室に持ち帰り、より大きな装置で調べようとするのです。この「現地で見えたことの先を、実験室で確かめる」という考え方が、持ち帰る理由の中心です。

天問3号の前段階にあたる天問1号は、探査車「祝融号」をユートピア平原に降ろした(2021年5月14日)。設計寿命は90火星日だったが、実際には2022年5月までの347火星日(358日)にわたって動き、走行距離は約1.9kmに達した[8]。347÷90は約3.9で、設計寿命の約4倍にあたる。

観測では、水を含む硫酸塩・水を含むシリカが報告され、古い海岸線の可能性を示す地形も議論された[8]。だが、これらは古い水の環境を示唆するにとどまり、生命の証拠とはいえない[8]。

この限界が、サンプルリターンの動機になる。探査車に積める分析装置は小さく、試料の扱いも限られる。そのため、岩石そのものを地球に運び、より大きな装置で調べる構想が出てくる。これは筆者の整理であり、各資料が明文でそう述べているわけではない。

では、その試料をどこで拾うのか。

4. どこに おりるの?

4. 着陸地はまだ決まっていない

4. 86か所から8か所へ ── 着陸区の絞り込みと、2026年末の確定見込み

2024ねん11がつの ほうどうでは、はじめに 86か所の こうほが ありました[6]。おりる ばしょは、まだ きまって いません。

むかしの 海ぎしや、みずうみの あとなど、水が あった かもしれない 土地が えらばれました[6]。

2026ねん9月の ほうどうでは、こうほは 8か所。おわりに きまるのは、2026ねんの すえごろと いわれます[7]。

86か所からのしぼりこみ

2024年11月のCGTNの報道では、科学者は86か所の着陸候補地を挙げ、主にクリュセ平原とユートピア平原という2つの地域を調べていました。海岸線や三角州、湖、峡谷といった古い地形が対象です[6]。

2026年9月4日の光明網の報道では、最終的な着陸区は2026年末に決まる見込みで、候補は8か所とされています。任務は初めての試作機の開発段階に入ったとも伝えられています[7]。

8か所は決定ではない

8か所は、初めの選定の数で、確定ではありません。候補の数は86、19、8と報道で移り変わってきたので、最新の発表を待つのがよさそうです。

着陸区の選定は、候補を絞る作業だ。CGTNは2024年11月、86か所の候補を挙げ、主な地域をクリュセ平原とユートピア平原だと伝えた。対象は海岸線・三角州・湖・峡谷といった、古い水の環境をうかがわせる地形である[6]。

光明網(2026年9月4日)は、候補が8か所に絞られ、最終着陸区は2026年末に確定する見込みで、任務は試作機の開発段階に入ったと伝えた[7]。

ただし、候補数は報道ごとに86から19、8へと移り変わっており、8という数字は初歩的な選定の段階を指す。確定した着陸地ではないので、記事では「候補」と呼ぶ。

こうして場所を決めても、計画は一国だけで進むのか。

5. ほかの 国も てつだうの?

5. 国際協力の観測機器と、変わってきた打ち上げ予定

5. 国際協力の5機器と、天問2号・予定の変遷

天問3ごうには、ほかの 国の きかいも のります。しらせを だして 28この あんが あり、そのうち 5こが えらばれました[1]。

いちばんの ほうは、火星の いきものの あとや、石を しらべる きかいです[1]。

中国は、天問2ごうも とばして います。小わく星の ちかくまで いって、しらべはじめました[9]。

28件の提案から、5件が選ばれた

新華社によると、2025年4月の募集に28件の提案があり、5件の国際協力の観測機器が選ばれました。選ぶ基準は、科学的な価値、任務を支える力、実現できるか、技術の成熟度です[1]。5件のうち周回機に載るのは3台で、火星の生命の痕跡や鉱物を調べる分光計、大気が宇宙へ逃げる様子を調べるイオン分析計、水の同位体や風を調べるレーザー分光計です[1]。

天問シリーズと、動く予定

天問2号は2025年5月に打ち上げられ、2026年7月初旬に小惑星の約20kmまで近づいて探査を始めたと報じられています[9]。

天問3号の予定は、報道で少しずつ変わってきました。2022年は2028年、2024年初めは2030年前後、2024年11月以降は2028年前後とされています[3][10]。宇宙の計画は、こうして調整されながら進みます。

国際協力の枠組みも整えられている。新華社によると、2025年4月の募集に28件の協力意向が寄せられ、科学的価値・任務への貢献・実現可能性・技術成熟度の観点から5件が選ばれた[1]。内訳は周回機に3台、サービスモジュールに1台、着陸機に1台だ。周回機の3台は、生命の痕跡と鉱物を調べる分光計、大気散逸を調べるイオン分析計、水の同位体と風を調べるレーザー分光計である[1]。

天問シリーズ全体の動きも見ておく。天問2号は2025年5月29日に西昌から打ち上げられ、2026年7月初旬に小惑星2016HO3の約20kmまで接近して探査を始めた。航行は約400日・約10億kmと報じられる[9]。

3号の予定は何度か動いている。2022年に2028年とされたものが、2024年初めには2030年前後と報じられ、同年11月以降は2028年前後に戻った[3][10]。報道された時期は変わってきた。この記事では、最新の予定を「前後」と紹介する。

6. たしかめて みよう

6. 数字を手元で確かめ、続報を待つ

6. 数字を手元で確かめ、一次資料を読む

おうちの キッチンスケールで、500グラムと 800グラムを はかって みましょう。500グラムは、さとうの ふくろ(1キロ)の はんぶん くらいです。大きな ふくろを つかう ときは、おとなと いっしょに やりましょう。

ドアの たかさ(ほぼ 2メートル)も 見て みましょう。そこまで 地めんを ほる のだと おもうと、どんな きもちに なりますか。

おりる ばしょは、2026ねんの すえごろに きまる みこみです。まだ はっぴょうが なければ、まって みましょう。はっぴょうが あったら、こうほの 8か所の うち どこか、ニュースで たしかめて みましょう。

今日できること

台所のはかりで、500gと800gの砂糖や小麦粉を量ってみましょう。500gは1kg入りの袋のちょうど半分です。この量の土や岩で、火星のどんなことを調べたいと思うか、想像してみてください。2mはドアの高さの目安なので、家のドアの前に立って見上げてみるのもよいでしょう。

続報の探し方

着陸区は2026年末に決まる見込みと報じられています[7]。まだ発表がなければ待ち、発表されたら、候補の8か所と選ばれた場所を比べてみましょう。

発表主体に近い資料としては新華社の記事(協力機器の5件)がある。ほかに光明網の報道(着陸区の候補)、Planetary SocietyとScientific Americanの記事(構成と時期の比較)が参考になる[1][7][3][2]。中国語と英語の資料が中心なので、日本語では確かめにくい。この記事ではCNN.co.jpの日本語記事も参照した[4]。

手元でできる確認として、500gと800gを台所のはかりで量り、試料量の資料差の大きさを実感してみるとよい。500gと800gの差は300gで、500gを基準にすると60%増になる(800÷500=1.6)。資料によって書き方が違う。今後の発表で、試料量がどう示されるか確かめてみよう。

着陸区は2026年末に決まる見込みと報じられている[7]。まだ発表がなければ待ち、発表されたら、候補の8か所と比べてみるとよい。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

一次資料(新華社)を確認し、そのほかは報道・紹介記事で補っています。試料の量・打ち上げ時期は資料で食いちがうため、この記事では「数百グラム」「前後」と書いています。

  1. 新華社(news.cn)「天問三号国際協力搭載機器」(2026年4月24日)。https://www.news.cn/20260424/f0c0b487dc004eafbcd9c5359a1983dc/c.html (打ち上げ・帰還時期と、国際協力機器の5件について)
  2. Scientific American「China's Tianwen-3 Mission Could Beat the U.S. in the Race to Grab Mars Rocks」。https://www.scientificamerican.com/article/chinas-tianwen-3-mission-could-beat-the-u-s-in-the-race-to-grab-mars-rocks/ (2機のロケット構成、採取量と掘る深さ、ドッキングについて)
  3. The Planetary Society「Tianwen-3, China's Mars sample return mission」(2022年)。https://www.planetary.org/articles/tianwen-3-china-mars-sample-return-mission (2022年時点の打ち上げ月の案について)
  4. CNN.co.jp「中国の火星サンプルリターン計画」。https://www.cnn.co.jp/fringe/35223733.html (科学目標と技術目標について。報道)
  5. ITホーム(深空探測実験室の発表の転載)。https://www.ithome.com/0/813/781.htm (試料量の記述と、第一の科学目標について。転載記事)
  6. CGTN「China plans to retrieve Martian samples around 2031」(2024年11月28日)。https://news.cgtn.com/news/2024-11-28/China-plans-to-retrieve-Martian-samples-around-2031-1yTg843rjIQ/p.html (着陸候補地86か所について。報道)
  7. 光明網(2026年9月4日)。https://m.gmw.cn/2026-09/04/content_1304559004.htm (着陸区が2026年末に確定する見込みと、候補8か所について。報道)
  8. Wikipedia「Zhurong (rover)」。https://en.wikipedia.org/wiki/Zhurong_(rover) (祝融号の稼働日数と観測について。二次資料)
  9. 光明網(2026年7月6日)。https://m.gmw.cn/2026-07/06/content_1304521532.htm (天問2号の探査開始について。報道)
  10. AFPBB News「中国、火星サンプルリターン計画」。https://www.afpbb.com/articles/-/3526662 (2024年初めの「2030年前後」という報道について)

なおした ところ

更新履歴

更新履歴(改版の記録)

  •  初版を公開。
  •  予定の年月や候補数に報道時期・「予定」「候補」を補い、数値が確定事項に読めないようにしました。

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