1. 皮は どうして 茶色や あおみどりの 革に なるの?
1. 腐る皮が、茶色や青緑の革に変わるまで
1. 腐る皮を革に変える二つの道:植物タンニンとクロム
お肉と おなじで、牛の 皮も ほうって おくと くさります。かわくと、かちかちに かたまります。
そこで、むかしから 人は、皮に 薬を しみこませて、くさりにくく やわらかい 革に して きました。これが「なめし」です。むかしは 動物の のうや、木の 皮、根や 実から とった しるが 使われました。今は、金属の クロムが いちばん 多く 使われて います。
木の 皮などの しるには「タンニン」と いう ものが 入って います。これでなめすと、革は ちゃいろに なります。クロムでなめすと、あおみどりに なります。
どちらも、皮の 中の せんいに くっついて、くさりにくく します。でも、できあがる 革の せいしつは、ずいぶん ちがいます。
牛の皮は、そのままにすると腐り、乾くと板のように硬くなります。そこで、薬品を染みこませて、腐りにくくやわらかい革に変えます。この工程がなめしです。
東京都の資料によれば、かつては動物の脳や、植物の樹皮、根や実の抽出液が使われていました。現在は、クロムという金属の塩がいちばん多く使われています[1]。植物の抽出液に含まれる渋の成分がタンニンで、植物タンニンでなめした革は茶系、クロムでなめした革は青緑色になります[1]。
どちらも、皮のたんぱく質(コラーゲン)の繊維に結びつくことで、腐りにくい革になると説明されています。ただし、結びつき方は種類によってちがい、クロムの結びつき方の細かい仕組みは資料で説明が分かれます[3]。
色だけを見ると、「好みのちがい」に思えるかもしれません。ところが、革を熱いお湯に入れると、二つの革の差がはっきり現れます。
皮は、そのままでは腐敗し、乾燥すれば硬化する。なめしは、皮のコラーゲン繊維に薬剤を結びつけ、腐りにくく柔軟な革に変える工程である。東京都の資料によれば、かつては動物の脳や植物の樹皮・根・実の抽出液が用いられたが、現在はクロムという金属塩が最も多く使われる[1]。
植物の抽出液に含まれるのがタンニンで、これでなめした革は茶系、クロムでなめした革は青緑色になる[1]。結びつき方も同じではない。クロム(III)はコラーゲンのカルボキシル基と結合するが、それが繊維どうしの橋かけ(架橋)になるかどうかは資料で説明が分かれる。植物タンニンは水素結合などでコラーゲンに結びつくと考えられているが、この機構も研究途上の面がある[3]。そこで、この記事は「繊維と結びつき、腐りにくくする」という範囲にとどめる。
機構が完全には分かっていなくても、できた革の性質の差は測れる。その代表が、熱に対する強さである。
2. お湯に 入れると、どちらが ちぢみにくいの?
2. 熱いお湯に入れると、どちらの革が先に縮むのか
2. 収縮温度が示す差:熱に強いのはどちらか
なめした 革を お湯に つけて、すこしずつ あつくして いくと、あるとき ちぢみ はじめます。この ちぢみ はじめる 温度を、しゅうしゅく温度と いいます。とける 温度では ありません。
東京都の しりょうの 表では、クロムなめしの 革は 90ど いじょう、植物タンニンなめしは 80ど ぐらいと されて います。お湯が ふっとうする 100どに 近い ところまで、クロムの 方が ちぢみにくいのです。
この 数字は、やり方や じょうけんで かわる めやすです。
ねつに 強い 革は、あつい ところでも 形が かわりにくい 革だと 考えられます。
なめしの出来を測る方法の一つが、収縮温度です。なめした革の小片をお湯に入れ、少しずつ温度を上げていくと、ある温度で急に縮みはじめます。この温度が収縮温度です。革が溶ける温度ではなく、縮みはじめる目安の温度です。
東京都の資料の表では、クロムなめしの収縮温度は90℃以上、植物タンニンなめしは80℃程度とされています[1]。これは資料に示された目安で、革の原料やなめし条件、測り方によって数字は変わります。
熱に強い革は、湯気やアイロンのような熱にさらされる場面で、形を保ちやすいと考えられます。
ここまでだけなら、クロムの勝ちに見えます。それなのに、なぜ植物なめしは今も作られているのでしょうか。
なめしの出来を測る指標の一つが、収縮温度である。なめした革片を液中で徐々に加熱すると、ある温度で急に縮みはじめる。この温度が高いほど、コラーゲンが熱で変性しにくい、つまり、なめしによる安定化が強いと見なせる。収縮温度は、革が縮みはじめる目安であり、溶ける温度ではない。
東京都の資料の表では、クロムなめしの液中熱収縮温度は90℃以上、植物タンニンなめしは80℃程度とされる[1]。これは資料に示された目安であり、革の原料、なめし条件、測定法によって値は変わるため、一つの値に固定しない方がよい。
熱に強いという性質は、用途の広さにつながる。それでも植物タンニンなめしが消えないのは、熱以外の軸では別の長所があるからだ。
3. なぜ、手間の かかる 植物なめしが のこって いるの?
3. 手間のかかる植物なめしが、今も残っているのはなぜか
3. 時間と費用の軸:クロムが主流になった理由と、植物なめしが残る理由
植物なめしは、時間が かかります。木の わくに はった 皮を、タンニンの 少ない えきから だんだん こい えきへ うつして、数週間 つけると いわれて います。ひめじの ある ブランドでは、1か月 近く かけると せつめい されて います。ただし、これは 一つの れいで、どこでも 1か月とは かぎりません。
クロムなめしは、東京都の しりょうに よると、しごとの 時間が みじかく、かんりも しやすく、ねだんも 安いと されます。じょうぶな 革が 早く、たくさん できるので、今の 革は クロムなめしが 多いのです。せかいの 革の 8わりから 9わり ぐらいが クロムなめしだと する 本も あります。
それでも 植物なめしが のこって いるのは、時間を かけた 分だけ、ほかの 革には ない よさが あるからです。
植物なめしは、時間がかかります。伝統的には、木枠に張った皮を、タンニンの濃度を段階的に上げた槽に数週間浸します[3]。姫路の新ブランドを伝えた新聞記事は、昔ながらの手法のヌメ革について、1か月近くかけてなめすことで、形崩れしにくく、しっかりした革になると説明しています[4]。これは一社の例で、植物なめしがすべて約1か月というわけではありません。
一方、クロムなめしは、東京都の資料で、なめし作業が短く管理しやすい、安い、耐熱性や強度が高い、と整理されています[1]。実用化が進んだのは19世紀末で、1893年に米国のデニスが、現場で使いやすい一浴法を開発したことが節目とされます[2]。こうして、革の多くをクロムなめしが占めるようになりました。割合は資料によって幅があり、世界の革の約8〜9割という説明が見られます[3]。
数日と数週間の差は、そのまま値段と生産量の差になります。それでも植物なめしが残るのは、時間をかけてできる革に、別の持ち味があるからです。それは、使い込んだときに現れます。
植物なめしは時間がかかる。伝統的には、木枠に張った皮を、タンニン濃度を段階的に上げた槽に数週間浸す[3]。姫路の新ブランドを報じた新聞記事は、昔ながらの手法のヌメ革について、1か月近くかけてなめすことで形崩れしにくくしっかりした革になる、と説明している[4]。ただし一社の例であり、植物なめし全般の所要日数に一般化はできない。
これに対して、クロムなめしはなめし作業が短く管理しやすく、安価で、耐熱性・強度が高いと整理される[1]。実用化の経緯は、1884年に米国のシュルツが六価クロムを使う二浴法を発明し、1893年に同じく米国のデニス(資料表記はデニーズ)が塩基性硫酸クロムの一浴法を開発したことで進んだとされる。二浴法は危険を伴ったが、一浴法で扱いやすくなった[2]。ただし、これより前の年代に発見や特許があったとする資料もあり、誰が最初かは言い切れない。
その結果、現代の革づくりの85〜90%をクロムなめしが占める、という英語版Wikipediaの説明があり、別の解説では世界の革の約8割ともされ、数字には幅がある[3]。クロムが主流になったのは、品質だけでなく、時間・費用・管理のしやすさが総合的に有利だったからと考えられる。それでも植物なめしが残るのは、時間をかけた革に、使い込んで初めて分かる別の持ち味があるためだ。
4. つかって いくと、革は どう かわるの?
4. 使い込むと、植物タンニンなめしとクロムなめしの革はどう変わるのか
4. 使い込んだときの差:ヌメ革の経年変化と、クロムなめしの染めやすさ
植物タンニンでなめした 牛の 革を「ヌメ革」と いいます。色を ぬったり そめたり せず、そざいの まま つかうので、もとの 風合いが あります。つかって いくと、あめ色に かわる ところが 人気です。じょうぶですが、水には 弱いと されます。
クロムなめしの 革は、あおみどりの 色を いかして、いろいろな 色に そめた 革も 多いと いわれます。
つまり、ヌメ革は「つかうほど かわる」ところが とくちょうです。
植物タンニンでなめした牛革を、ヌメ革と呼びます。染色や塗装をしない自然な風合いを保ったものが特徴で、使うと飴色に変わっていきます。丈夫ですが、水には弱いとされます[5]。色が変わる様子は経年変化と呼ばれ、先ほどの新聞記事も、形崩れしにくいことに加えて、経年変化を楽しめることを魅力として挙げていました[4]。
これに対してクロムなめしは、熱に強く、作業が短く管理しやすいことから、多くの革製品に使われています[1]。ヌメ革のように自然な風合いを残す革もあれば、色を付けた革もあり、使い方で選ばれます。
ヌメ革は「時間とともに表情が変わる革」、クロムなめしは「熱に強く、手早く作りやすい革」と言えます。どちらが上というより、持ち味がちがいます。では、その持ち味を一つの革で合わせることはできるのでしょうか。
植物タンニンでなめした牛革で、染色や塗装をしない自然な風合いを保ったものがヌメ革である。使用すると飴色に変わる性質があり、丈夫だが水に弱い[5]。この色の変化が経年変化で、前述の新聞記事も、形崩れしにくいことと並べて、経年変化を楽しめることを利点に挙げている[4]。
一方、クロムなめしは、耐熱性・強度が高く、作業が短く管理しやすいと整理される[1]。ヌメ革は水に弱いとされ、この点は熱に強いクロムなめしと対照的である。
以上は特性の傾向であり、個々の製品の品質を保証するものではない。重要なのは、二つが優劣ではなく、得意な場面がちがう、という点である。ならば、片方だけでなく、両方の長所を一枚の革に求めることはできないのか。
5. 2つを 合わせて つかうことは あるの?
5. 二つを組み合わせる複合なめしと、クロムをめぐる工夫
5. 複合なめしと、クロムの環境面への工夫
あります。いくつかの 薬を 組み合わせる「ふくごうなめし」が あります。
ねらいは、それぞれの よさを いかす ことです。たとえば、ねつへの 強さを クロムに まかせ、のこりの せいしつを 植物なめしで 足す、と いう 考え方です。
クロムには、気を つける ことも あります。クロムには しゅるいが あり、なめしに 使う 3か(さんか)クロムは、どくの 強い 6か(ろっか)クロムより ずっと どくが 弱いのですが、クロムを ふくむ ものを 空気の 多い 中で もやす やり方などでは 6かに かわる ことが あると いわれます。そのため、使う りょうを 少なくする「しょうクロム」や、クロムを 使わない なめしの 研究も すすんで います。
二つ以上のなめし剤を組み合わせる複合なめしという方法もあります。組み合わせるのは、クロムの耐熱性と、植物タンニンの持ち味を、必要に応じて取り入れるためと考えられます。
もう一つ、クロムには工夫の歴史もあります。なめしに使う三価クロムは、毒性の強い六価クロムよりずっと毒性が低いとされます。ただし、クロムを含むスラッジ(かす)を空気の多い状態で焼却すると六価クロムができることがある、と東京都の資料は述べています[1]。その東京都の資料には、三価クロムが排水規制の対象になったことで、使う量を減らす省クロムや、クロムを使わないノンクロムのなめしへの関心が高まった経緯が書かれています[1]。
東京都の資料は、省クロムやノンクロムのなめしへの関心が高まった経緯を伝えています。
二つ以上のなめし剤を組み合わせる複合なめしという方法がある。クロムによる耐熱性と、植物タンニンの持ち味を、用途に合わせて取り入れる発想だと考えられる。
クロムには別の課題もある。なめしに使うクロム(III)は六価クロムよりはるかに毒性が低いが、クロムを含むスラッジを空気の多い状態で焼却すると六価クロムが生じうる、と東京都の資料は述べる[1]。同資料は、三価クロムが排水規制の対象になったことで、省クロムやノンクロムのなめしへの関心が高まった経緯を伝えている[1]。規制を契機に、革づくりの技術が改良される流れが見える。
二つのなめしには、色、熱への強さ、時間、使い込んだときの変化にちがいがある。必要に応じて、複合なめしで両方の性質を取り入れることもある。
6. おうちの 革を 見くらべて みよう
6. 家の革製品で、茶色と青緑のちがいを探す
6. 革製品と資料で、なめし方のちがいを確かめる
きょう できる こと
おうちの 人に 聞いて、くつや かばん、さいふなどの 革の ものを 見せて もらいましょう。ぬった ような つるつるした 革と、木の 色が そのまま 見える 革では、さわった 感じや 色が ちがいます。「ヌメ革」と 書いて ある ものが あれば、おうちの 人が 使い はじめた ころの 色と、今の 色を くらべて もらいましょう。
おでかけで
くつや かばんの お店で、「ヌメ革」や「クロムなめし」と 書いた ふだが ないか、さがして みましょう。ふだが ない ものも あり、ふだだけでは なめし方が わからない ことも あります。水で ぬらしたり、こすったり しては いけません。
家で見比べる
家族に頼んで、靴、かばん、財布など革製品を何点か見せてもらいます。表面が均一で色のそろったものと、木の色や模様がそのまま見えるものを、手ざわりと色で分けてみてください。「ヌメ革」と書かれた製品があれば、持ち主に、使いはじめのころの色と、今の色を聞いてみましょう。
お店で探す
革製品の店で、表示やタグに「ヌメ革」「クロムなめし」などと書かれていないか、探してみましょう。表示がない製品もあり、表示だけではなめし方が分からないこともあります。どんななめし方か、店の人に聞くのもよい方法です。水をかけたり、爪で傷をつけたりするのは、やめてください。
資料を読むなら
東京都立皮革技術センターの広報誌『かわとはきもの』[1]は、革の種類やなめし剤のちがいが日本語でまとめられています。
身近な革製品を分類する
家族に頼んで革製品を見せてもらい、染色や塗装がされた均一な表面のものと、自然な風合いのものに分ける。表示に「ヌメ革」などと書かれていれば、持ち主に使いはじめの色と今の色を尋ね、経年変化の実例として記録できる。製品の表示はなめしの種類を示さないこともあるので、分類は推定にとどまる。水をかけたり傷をつけたりしてはいけない。
資料を読むなら
収縮温度を含む表は東京都立皮革技術センターの資料[1]にある。クロムなめし実用化の経緯は同じ連載の別号[2]で読める。ヌメ革の説明は[5]、姫路の例は[4]にある。収縮温度の数値が測定条件によって変わる理由を、資料の表の注記から探してみると、数値の読み方が身につく。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
本文で使った資料です。
- 東京都立皮革技術センター『かわとはきもの』(表1 主ななめし剤と革の特徴). https://www.hikaku.metro.tokyo.lg.jp/Portals/0/images/shisho/shien/public/152_3.pdf (色・収縮温度・クロムが多い理由・環境面の経緯)
- 鍛治雅信「かわのはなし 10.鞣し(2)鞣し剤」東京都『かわとはきもの』. https://www.hikaku.metro.tokyo.lg.jp/Portals/0/images/shisho/shien/public/189_3.pdf (クロムなめし実用化の経緯)
- Wikipedia: Tanning (leather). https://en.wikipedia.org/wiki/Tanning_(leather) (割合・植物なめしの手順・クロム(III)の注意点・結びつき方の説明)
- 神戸新聞NEXT 姫路ヌメ革の記事(2022年11月). https://www.kobe-np.co.jp/news/himeji/202211/0015791810.shtml (ヌメ革を約1か月かけてなめす一例)
- FASHIONSNAP 用語辞典「ヌメ革」. https://www.fashionsnap.com/dictionary/numekawa/ (ヌメ革の特徴・飴色への変化)
なおした ところ
更新履歴
更新履歴(改版の記録)
- 初版を公開。
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