1. てぶくろには、どんな ねがいが こもって いるの?
1. 手袋の素材は「あたためたい・動かしたい・守りたい」で選ばれる
1. 同じ手袋でも、毛と革とゴムでは何がちがうのか ── 用途で決まる素材
さむい あさ、てぶくろに ゆびを とおすと、ほっと しますよね。でも てぶくろには、あたたかく したい だけでなく、「手を まもりたい」「ぬれても つかいたい」と いう ねがいも あります。ざいりょうは、その ねがいに あわせて えらばれて きました。
じてんには、ふゆ用の てぶくろに 羊毛や、合成繊維の ぬのや あみものが つかわれると あります。ひつじや しかの やわらかい 革も つかわれます。しごと用には、ぐんてや ゴムの てぶくろが ひろく つかわれて います[1]。
ひつじの けは ちぢれて いて、あいだに 空気を ためやすいので、あたたかいと いわれます[3]。
では、そんなに たよりに なる ざいりょうにも、にがてな ことは ないのでしょうか。
冬の朝、手袋に指を通してほっとするとき、わたしたちは「あたたかくなってほしい」と願っています。けれど、軍手やゴム手袋のように、あたたかさより「手を守りたい」「濡れても使いたい」という願いで選ぶ手袋もあります。素材は、その願いごとの答えとして選ばれてきました。
辞典には、防寒用の手袋に羊毛・カシミヤ・アンゴラ・合成繊維の織物や編物が使われ、羊・山羊・カモシカ・鹿・牛などの柔らかいなめし革も使われるとあります。作業用では、軍手やゴム手袋が広く使われます[1]。
合成繊維のアクリルは、羊毛に似た手触りで軽く、保温性がよい繊維で、セーターや靴下、毛布にも使われます[2]。羊毛は縮れ(クリンプ)があって空気を含みやすいため、保温性にすぐれるといわれます[3]。販売ページでは、羊の革は軽くて柔らかく手になじむと説明されています[4]。
ところが、そんなに頼れる素材にも、苦手なものがあります。
手袋の素材は、用途に合わせて選ばれることが多い。辞典の整理では、防寒用は羊毛・カシミヤ・アンゴラ・合成繊維の織物や編物と、伸縮して柔らかい羊・山羊・カモシカ・鹿・牛のなめし革が使われ、作業用は軍手とゴム手袋が広く使われる[1]。
あたたかさを受け持つ性質は、素材ごとに説明が分かれる。アクリルは羊毛に似た手触りで軽く、保温性がよく、ナイロンとともに最も軽い部類の合成繊維で、セーターや靴下、毛布にも使われる[2]。羊毛は、縮れ(クリンプ)が空気を多く含むことで保温性にすぐれるといわれ[3]、保温の仕組みは毛の形に理由があると考えられている。
手へのなじみ方は、また別の性質が受け持つ。革製品の販売ページでは、羊革は革の中でも軽さと柔らかさがあり、手触りが柔らかく手になじむと説明されている[4]。
では、これほど使い分けられている素材に、弱点はないのか。
2. あらったら ちぢんだ! ざいりょうごとの にがて
2. 洗ったら縮んだ、濡れたら傷んだ ── 素材ごとの苦手なこと
2. 素材ごとに違う、水・洗濯・摩擦・年月への弱さ
おきにいりの てぶくろを あらったら、ちいさく なって しまった。そんな ことが あるのは、ざいりょうごとに にがてな ことが ちがうからです。
おていれの しょうかいでは、革は 水に よわく、めんや ウールは ちぢみやすいと されて います。ウールは かたまって ごわごわに なりやすい ことも あります。ナイロンは こすれや ねつに よわいと いわれます[5]。
つくりものの 革も、水を たくさん ふくむと いたみやすい ものが あります。なかには、つくってから 4ねんほどが つかえる めやすの ものも あります[5]。
てぶくろの ひょうじには、牛の 革か、つくりものの 革かが かいて あります[10]。
ただ、あたたかくても ぶあつい てぶくろだと、ゆびさきで できない ことが でて きます。たとえば スマホです。
お気に入りの手袋を洗ったら、ひと回り小さくなってしまった。洗い方や素材によっては、お気に入りの手袋が縮んだり傷んだりすることがあります。
お手入れを説明した記事では、本革は水に弱く、合成皮革は水分を多く含むと加水分解が進んで劣化するとされています。ポリウレタンを含む製品は、製造から約4年が寿命の目安という説明もあります。綿やウールは縮みやすく、ウールは繊維がからまってフェルト状になりやすく、ナイロンは摩擦や熱に弱いそうです[5]。4年はあくまで目安で、使い方によって変わります。
手袋の表示にも、素材のちがいが出ます。革や合成皮革でできた手袋では、牛革・馬革・豚革・羊革・やぎ革・鹿革のように革の種類を書き、合成皮革は「合成皮革」と表示します。特殊な不織布を使ったものは「人工皮革」の用語も使えます。繊維を一部に使うときは、その混用率も書きます[10]。
では、手を守るために厚くした手袋で、指先の細かい作業はできるのでしょうか。いまは、その答えの一つがポケットの中にあります。
素材の弱点は、水・洗濯・摩擦・年月の4つで整理できる。お手入れの解説では、本革は水に弱く、合成皮革は水分を多く含むと加水分解が進んで劣化し、ポリウレタンを含む製品は製造から約4年が寿命の目安とされる。綿とウールは縮みやすく、ウールは繊維がからんでフェルト化しやすい。ナイロンは摩擦や熱に弱い[5]。
注意したいのは、約4年が固定の寿命ではなく目安だという点である。また、この資料はお手入れ記事であって、素材の化学的な性質を調べた学術資料ではないため、縮む理由や劣化の仕組みまでは本文から読み取れない。仕組みを知りたい場合は、繊維や高分子の専門の資料に当たる必要がある。
素材は、表示にも手がかりが残る。家庭用品品質表示法の手袋(革・合成皮革)の項では、革の種類として牛革・馬革・豚革・羊革・やぎ革・鹿革などを示し、合成皮革は「合成皮革」と表示する。特殊不織布なら「人工皮革」の用語も使え、繊維を一部に使う場合は混用率も記す[10]。ただしこの区分は革・合成皮革製の手袋の話で、繊維製の手袋は別の規程になる。
では、手を守る厚みと、指先で細かく操作したい願いは、どう両立するのか。
3. てぶくろの まま、スマホは うごかせるの?
3. 手袋をしたまま、スマホが動かせるのはなぜ
3. 導電糸 ── 絶縁体の手袋で静電容量式の画面を動かす
ふつうの てぶくろで スマホの 画面を さわっても、うごかない ことが あります。スマホの 画面には、ゆびの ちかくで おきる でんきの へんかを かんじとる ものが 多く、ふつうの てぶくろは でんきを とおさないからです[6]。
ゆびさきに、でんきを とおす いとを あみこんだ てぶくろなら、つけたままでも うごかせます。「あたたかく したい」と「うごかしたい」を、いっしょに かなえる ざいりょうです。
では、てぶくろは、いつごろから あるのでしょう。
4. いちばん ふるい てぶくろは、いつの もの?
4. 麻の手袋から軍手まで ── 手を包む工夫は3000年以上前にさかのぼる
4. 最古の手袋と日本への入り方 ── 麻の手袋と木綿の軍手
いちばん ふるい てぶくろの のこりものと かんがえられて いるのは、いまから 3000ねんいじょう まえの、むかしの エジプトの ものです。ツタンカーメン王の ものとされ、あさで つくった こまかい てぶくろだと、じてんには あります[1]。
日本では、江戸じだいの おわりごろ(幕末)に、ぐんぷくと いっしょに、木綿で あんだ しごと用の てぶくろ、ぐんてが はいって きたのが、ほんとうの はじまりと されて います[1]。
では、いまの 日本の てぶくろは、どこで つくられて いるのでしょう。
5. にほんの てぶくろは、どこで つくって いるの?
5. 稲作に向かない東かがわで、手袋づくりが広がった
5. 東かがわ市に手袋産業が集まった条件 ── 約90%という数字と、その検算
10くみの うち 9くみほどの てぶくろを つくって いると しょうかいされて いるのが、かがわけんの 東かがわ市です[7]。
この あたりは 雨が すくなく、水も とりにくくて、いねづくりに むいて いませんでした。江戸じだいには しおや さとうを つくって いました。それが おとろえた あと、明治の おわりごろから、てぶくろづくりが おこなわれるように なりました[9]。
さいきんの 出荷の きんがくでも、スポーツ用の 革てぶくろの 91パーセントほどと、ニットの てぶくろの 86パーセントほどが、かがわけんの ものでした[8]。
いちばん さかんな ころには、ほとんどの 家が てぶくろづくりに かかわって いたそうです[9]。
では、その まちの てぶくろは、ずっと おなじ ざいりょうだったのでしょうか。
東かがわ市を含む東讃地域は、雨が少なく水の便も悪く、稲作には向きませんでした。江戸時代には製塩や製糖が発達しました。それが衰えたあと、明治後期から手袋づくりが行われるようになりました。第一次世界大戦の特需を背景に急速に発展し、最盛期にはほとんどの家が手袋づくりに携わっていたといいます[9]。
手袋は、1888年に元僧侶が大阪で製造を始めたのが起源とされ、1899年に現在の東かがわ市に工場が設立されたと紹介されています[7]。創業者の名前は資料によって表記が違うため、ここでは書きません。
いまの出荷額を見ると、香川県の2024年経済構造実態調査の結果(令和5年)では、衣服用のニット手袋が34億4900万円、スポーツ用の革手袋が48億3900万円で、全国シェアはそれぞれ85.6%と91.2%でした[8]。革手袋のほうが、ニット手袋の約1.4倍です。「約90%」とシェアの数字が違うのは、数え方の区分が違うためです。
では、手袋づくりが根づいた町で、素材はどう変わっていったのでしょうか。
手袋の約90%という数字は、国土交通省の多言語解説に載る紹介である[7]。では、なぜ東かがわだったのか。文化遺産オンラインは、東讃地域は雨が少なく水の便が悪く、稲作に向かなかったと述べる。江戸時代には製塩・製糖が発達したが、それが衰えた明治後期から手袋づくりが行われ、第一次世界大戦の特需を背景に急速に発展して、最盛期にはほとんどの家が手袋づくりに携わった[9]。稲作に向かない土地が手袋の産地になったことを、資料は事実として示すが、産業転換の理由までは書いていない。
起源については、1888年に元僧侶が大阪で手袋の製造を始め、1899年に現在の東かがわ市に新工場が設立されたと紹介される[7]。創業者の人名は資料で表記が割れるため、ここでは年号のみ書く。
数字を検算してみよう。香川県統計調査課によると、2024年経済構造実態調査の結果(令和5年)の出荷額は、衣服用ニット手袋が34億4900万円(全国シェア85.6%)、スポーツ用革手袋が48億3900万円(同91.2%)で、ともに全国1位である[8]。シェアから全国の出荷額を逆算すると、ニット手袋は34.49億円÷0.856で約40億円、革手袋は48.39億円÷0.912で約53億円となる。革手袋のほうが、香川県の出荷額で約1.4倍大きい。
ここで注意したいのは、「約90%」と、85.6%・91.2%が一致しない点だ。前者は紹介文の数字で、後者は出荷額の区分別シェアである。どちらも手袋全体の同じ割合を示すわけではない、と読むほうが安全である。
では、その産地で手袋の素材と作り方は、どう変わっていったのか。
6. まちの てぶくろの ざいりょうは、かわって いったの?
6. 綿手袋から、革・レーヨン・合皮へ ── 産地で増えた素材
6. 綿手袋を中心に素材が増えた産地 ── 綿作の道具が手袋づくりに使われた
はじめから つくられて いたのは、めんの てぶくろです。あとから 革や レーヨン、ごうせいの 革の てぶくろも ふえて、ざいりょうや かたちの うつりかわりが わかる そうです[9]。
てぶくろを つくる どうぐには、めんを つくる 農家の どうぐを つかいまわした ものも あります[9]。
はたけの どうぐが、てぶくろの どうぐに なる。おもしろいですね。
さて、おうちの てぶくろは、なにで できて いるのでしょう。
東かがわの手袋は、最初から作られてきた綿手袋を中心に、革手袋、レーヨン手袋、合成皮革の手袋などがあります。素材や形の移り変わりをたどれるのが特徴だと、文化遺産オンラインは紹介しています[9]。
手袋を作る用具にも、綿作の用具を転用したものがあります[9]。畑仕事の道具が、手袋づくりの道具になったことになります。稲作に向かない土地で、塩や砂糖が衰えたあとに始まった産業が、手元にあった道具を使いながら素材を増やしていった様子がうかがえます。
この流れは、冒頭の「あたためたい・動かしたい・守りたい」とも重なります。では、わたしたちの手元の手袋は、どの願いに近いのでしょうか。
産地の手袋を素材で見ると、当初から作られてきた綿手袋を中心に、革手袋、レーヨン手袋、合成皮革の手袋などがあり、素材や形の変遷をたどれると文化遺産オンラインは説明する[9]。製作の用具にも綿作の用具を転用したものがある[9]。
ここから分かるのは、素材が増えても綿手袋が出発点だったことと、道具が農業から手袋づくりへ受け継がれたことである。一方、どの年代にどの素材が増えたか、なぜその素材が選ばれたかは、この資料の抜粋からは読み取れない。そこは現地の資料館や所蔵資料に当たると確かめられる。
冒頭の問いに戻ると、素材は用途に合わせて選ばれることが多く、産地の素材も時代の中で増えてきた、とまとめられる。では、自分の手袋はどの願いに近いのか。
7. おうちの てぶくろの タグを よんで みよう
7. 手袋のタグには、素材と作り手の願いが書いてある
7. 手持ちの手袋の表示を読み、公的資料にさかのぼる
きょう できること
おうちに ある てぶくろを ならべて、タグを よんで みましょう。「ウール」「アクリル」「革」など、ざいりょうが かいて あります。その てぶくろは、あたためたい、うごかしたい、まもりたいの どれに ちかいでしょう。「スマホたいおう」と かいた てぶくろが あれば、タグの ざいりょうと、ゆびさきの いとを、ふつうの てぶくろと みくらべて みましょう。
おでかけで できること
てぶくろうりばで、いろいろな タグを くらべて みましょう。
しらべる ばしょ
かがわけんの うどんけん とうけいの ページや、ぶんかいさんオンラインに、てぶくろの まちの ことが のって います。
今日できること
家にある手袋を並べて、タグの表示を読んでみてください。羊毛、アクリル、革、綿など、素材と混用率が書いてあります。そのうえで、「あたためたい」「動かしたい」「守りたい」のどれに近いかを、手袋ごとに決めてみます。ふだんの使い方と、素材の得意なことが合っているかも見えてきます。
出かけてできること
手袋売り場では、同じ冬用でも、素材の表示がずいぶん違います。気になった手袋の素材名をメモして、家の手袋と比べてみると、選び方の違いが分かります。家に「スマホ対応」と書かれた手袋があれば、タグの素材表示と指先の糸も見比べてみてください。
公式情報
香川県の統計情報コーナーには、手袋の出荷額が載っています。文化遺産オンラインでは、東かがわの手袋の素材や、製作用具の移り変わりが紹介されています。数字や名前は、原典で確かめるのが確実です。
手持ちの手袋で検算する
家にある手袋のタグの素材と、実際に使う場面を書き並べ、あたためる・動かす・守るの願いが重なっているものがあるかを見てみよう。
原典にあたる
出荷額と全国シェアは香川県統計調査課の統計ページ、産地の成り立ちは文化遺産オンライン、表示の規則は消費者庁の家庭用品品質表示法の案内で読める。スマホ対応手袋の説明は報道記事なので、各社の製品説明も合わせて見るとよい。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
辞典・統計・公的機関の資料を中心に使いました。素材の特性の一部は解説記事や販売ページの説明に基づくため、本文では「といわれる」「とされる」と書いています。
- コトバンク「手袋」(日本大百科全書ほか) https://kotobank.jp/word/%E6%89%8B%E8%A2%8B-101384 (素材と用途、最古の手袋、日本での普及)
- コトバンク「アクリル繊維」 https://kotobank.jp/word/%E3%82%A2%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%AB%E7%B9%8A%E7%B6%AD (アクリル繊維の性質)
- 京都女子大学 大学院入試関連資料(羊毛の性質の抜粋) https://www.kyoto-wu.ac.jp/nyushi/daigakuin/n0oio70000005mz4-att/n0oio70000006mou.pdf (羊毛の縮れと保温)
- BIGLOBEくらしナビ「手袋と革」 https://kurashi.biglobe.ne.jp/item_gloves/keyword_leather/ (羊革が手袋に向く理由)
- ウェザーニュース「手袋のお手入れ」 https://weathernews.jp/news/202602/090226/ (素材ごとの苦手なこと)
- ITmedia「スマホ対応手袋」 https://www.itmedia.co.jp/mobile/spv/2202/06/news018.html (導電糸とタッチ操作)
- 国土交通省 多言語解説文データベース「東かがわ市の手袋産業」 https://www.mlit.go.jp/tagengo-db/R2-01883.html (全国の約90%、起源の年号)
- 香川県統計調査課 うどん県統計情報コーナー(手袋の出荷額) https://www.pref.kagawa.lg.jp/tokei/sogo/udonken/1007.html (令和5年の出荷額と全国シェア)
- 文化遺産オンライン(東かがわの手袋) https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/292380 (産地の成り立ち、素材の変遷)
- 消費者庁 家庭用品品質表示法「手袋(革・合成皮革)」 https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/household_goods/guide/zakka/zakka_11.html (革・合成皮革の表示)
なおした ところ
更新履歴
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