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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

おなじ おんどなのに、水の 中は どうして 空気より つめたく かんじるの?

同じ温度なのに、水に入ると空気中よりずっと冷たいのはなぜか

同じ温度の水と空気で、水のほうが体の熱を速く奪うのはなぜか:熱伝導率・熱容量・対流と、冷水ショック

分野:からだ

おふろの 水を、へやの 空気と おなじ おんどに しても、手を 入れると 水の ほうが ずっと つめたく かんじます。じつは 水は、空気より ねつを つたえやすいと いわれて います。

どうして そんなに ちがうのでしょう。水に 入ると、さいしょの 1ぷんに 体では 何が おこるのでしょう。この ページを 読むと、その わけと、水に 入る ときに 気を つける ことが わかります。

水の温度と空気の温度がまったく同じでも、手を入れると水のほうがはるかに冷たく感じます。水の熱の伝えやすさは、空気の約23倍です。ただし、この倍率は水の熱の伝えやすさを空気と比べただけで、体が実際に冷える速さそのものではありません。

どうして水はそんなに熱を運ぶのでしょう。水に落ちた直後、体にはどんな変化が起こるのでしょう。この記事を読むと、水が体の熱を奪う3つの理由と、最初の1分が大事だといわれる理由が分かります。

水の熱伝導率は、25℃付近で空気の約23倍にあたる。さらに水は熱をためこむ力も大きく、体のまわりで温まった水は流れて入れかわる。同じ温度でも、水が空気より体の熱を速く奪う理由は、この3つが重なっているからだと説明される。ただし、この倍率がそのまま体の冷える速さの倍率になるわけではない。

この記事を読むと、3つの理由が数字でどう表されるか、冷水に落ちた直後の最初の1分に体で何が起こるか、「1-10-1」と呼ばれる目安が何を伝えているかが分かる。

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1. 18どの 空気は すずしいのに、18どの 水は どうして つめたいの?

1. 18℃の空気は涼しいのに、18℃の水は冷たくてたまらないのはなぜか

1. 同じ温度なのに水のほうが冷たい:体から熱が出ていく速さのちがい

18どの 空気は、すずしくて 気もちが いい くらいです。ところが 18どの 水に 手を 入れると、すぐに つめたくて 手を ひっこめたく なります。おんどは おなじなのに、ふしぎです。

手が 「つめたい」と かんじる のは、水の おんどそのものでは なくて、手から ねつが にげて いく はやさを かんじて いるからです。水は、その ねつを うばう はやさが 空気より ずっと 大きい のです。

わけは 3つ あると いわれます。1つめ、水は ねつを つたえる ちからが 強い。2つめ、水は ねつを たくさん ためこむ。3つめ、体の まわりの あたたまった 水が、すぐ ながされて、つめたい 水と いれかわる。つぎの しょうから、1つずつ 見て いきます。

たとえば18℃という温度を考えてみてください。空気なら、涼しくて過ごしやすい温度です。ところが同じ18℃でも、水に手を入れると、すぐに引っこめたくなります。

手や体に「冷たい」と感じるのは、水そのものの温度ではなく、体から熱が出ていく速さです。同じ温度なら、水のほうが熱を奪う速さがずっと大きくなります。

その理由は、おおまかに3つに分けられます。水は熱を伝えやすいこと、水は熱をためこみやすいこと、体のまわりの温まった水が流れて入れかわることです。この章のあとの2つの章で、順に見ます。

18℃の空気は涼しく過ごしやすいが、18℃の水に手を入れると、すぐに引っこめたくなる。「冷たい」という感覚は、皮膚の温度が下がる速さ、つまり体から熱が出ていく速さに強く依存する。水の中では、この速さが空気中より大きい。

理由は、物理量でいえば3つに整理できる。熱を伝える力(熱伝導率)、熱をためこむ力(体積あたりの熱容量)、そして体表面で温まった水が流れて入れかわる現象(対流)である。以下、順に数字で見る。まず、いちばん数字にしやすい熱伝導率から入る。

2. 水は ねつを どれくらい つたえやすいの?

2. 水は空気の何倍、熱を伝えやすいのか

2. 熱伝導率を割り算する:「23倍」と「25倍」のあいだ

ねつの つたえやすさは、ざいりょうごとに ちがいます。ある しりょうの ひょうでは、25どの ときの 水は 0.606、空気は 0.0262 と 書かれて います。ちいさな 数字ですが、大きい ほうが ねつを よく つたえます。

水の 数字を 空気の 数字で わると、23 ぐらいに なります。つまり 水は 空気の 23ばい くらい、ねつを つたえやすいのです。

「25ばい」と 書いて ある しりょうも あります。ここでは ひょうの 数字から けいさんした 23ばいを つかいます。ただし、本当に 体が 23ばい はやく ひえる わけでは ありません。ひえかたは、水の おんどや、きて いる ふくで かわります。

熱の伝えやすさを表す数字を熱伝導率といいます。ある資料の表では、25℃付近で水は約0.606、空気は約0.0262と書かれています(単位はW/(m·K))[1]。数字が大きいほど熱を伝えやすい、と読みます。

実際に割り算してみましょう。0.606を0.0262で割ると、約23.1になります。水は空気の約23倍、熱を伝えやすいのです。

別の資料は、水の熱伝導率を空気の約25倍としています[2]。ここでは表の値から計算した約23倍を使います。「20倍あまり」と覚えておけば十分です。

注意したいのは、この倍率が「熱伝導率の比」であって、体の冷える速さの比ではないことです。実際の冷え方は、水温、体の脂肪の厚さ、動き、着ている服で変わります。倍率だけで体の冷え方を決めつけないほうが安全です。

では、熱伝導率が高いだけで、体はそんなに冷えるのでしょうか。

熱伝導率の値は、資料の表によれば25℃付近で水が約0.606 W/(m·K)、空気が約0.0262 W/(m·K)である[1]。0.606÷0.0262は約23.1になるので、水は空気の約23倍熱を伝える。別の資料は「水の熱伝導率は空気の約25倍」と説明する[2]。資料によって約23倍から約25倍の幅があるが、どちらも熱の伝わりやすさの比であり、体の冷える速さの倍率ではない。ここでは表の値から計算した約23倍を使う。実際の冷え方は、水温や脂肪、動き、服で変わる。

ここで、倍率の意味を確認しておく。熱伝導率の比は、物質中を熱が伝わる能力の比にすぎない。実際の体の冷え方は、水温、皮下脂肪、運動、衣服などで大きく変わるので、「冷える速さが常に23倍(25倍)になる」とは言えない。この数字が答えるのは、「なぜ水のほうが速く冷えやすいのか」であって、「何倍速く冷えるのか」ではない。

では、熱伝導率だけで説明は足りるのか。熱が皮膚から水に出ていくとき、水の側で何が起きているのかを見る必要がある。

3. 体の まわりの あたたかい 水は、どうなるの?

3. 体のまわりの「あたたまった水」は、なぜ居座れないのか

3. 熱容量と対流:体表で温まった水が入れかわり続ける

空気の 中では、はだの すぐ そばの 空気が、体の ねつで あたたまって、そこに とどまります。この うすい 空気の そうが、あたたかい 上着のように はたらきます。

水の 中では、そう なりません。水は ほんの すこしの ながれでも、ふくの すきまや け の あいだに 入って、あたたまった 水を おし出して しまいます。あたたかい 水は いすわれず、つめたい 水が つぎつぎ はだに ふれます。

水は ねつを ためこむ ちからも 大きいのです。同じ 大きさで くらべると、1どあげるのに いる ねつは、水が 空気の 3000ばい いじょうと いわれます。だから まわりの 水は なかなか あたたまらず、体との おんどの さが 大きい まま、ねつが 出つづけます。

空気の中では、肌のすぐそばの空気が体の熱で温まり、その場にとどまります。この動かない薄い空気の層が、上着のように断熱の役目をします。

水の中では、そうなりません。ほんの少しの流れでも、水は服のすき間や肌の産毛のあいだに入りこみ、すでに温まった水を押し流します[3]。温まった水は居座れず、冷たい水が次々と肌に触れます。

さらに、水は熱をためこむ力も大きい物質です。同じ体積で比べると、水を1℃上げるのに必要なエネルギーは、空気の3000倍以上(資料では3200倍以上)だと説明されています(別の解説では3500倍とする資料もあります)[3]。体のまわりの水はなかなか温まらないので、体との温度差が大きいまま、熱が出つづけます。

ちなみに、人の体の水分は、成人男性で体重の約60%、成人女性で約55%、乳児で約70%と、年齢や性別で変わります[4]。ただし、体の水分が多いことと冷えやすさの関係までは、ここで挙げた資料で説明されているわけではありません。

こうして、水が体の熱を奪う3つの理由がそろいました。水は熱を伝えやすく、熱をためこみ、温まってもすぐ入れかわります。では、この冷たさは体に何をするのでしょうか。

空気中では、皮膚のすぐ外側の空気が体熱で温まり、動かない境界層となってとどまる。熱伝導率の低い空気が皮膚を覆うので、これが断熱材として働く。水中では事情が逆になる。わずかな流れでも水は衣服の繊維の間や体毛の間に浸入し、すでに温まった水を押しのけるため、境界層が保たれない[3]。つまり熱の伝わりやすさに加え、温まった水が居座れないことが、熱を奪い続ける仕組みになる。

もう一つの要素は熱容量である。体積あたりでは、水を1℃上げるのに要するエネルギーは空気の3200倍以上とされ、別の解説は3500倍と書く[3]。値が資料でずれるため、「3000倍以上」程度に丸めるのが適切だろう。熱容量が大きいと、体から熱を受けとっても周囲の水の温度は上がりにくく、体表との温度勾配が急なまま保たれる。したがって熱の流出は続く。

この三つは独立ではなく、重なって効く。熱伝導率が高い水は熱を速く運び、熱容量が大きい水は温まりにくく、対流で入れかわるので温度差が回復する。なお、人体の水分量は環境省のマニュアルで、新生児約80%、乳児約70%、成人男性約60%、成人女性約55%、高齢者50〜55%とされ、年齢や性別で異なる[4]。ただし、ここで挙げた資料は、水分量が多いことが水中での冷えやすさにどう関わるかまでは述べていないので、因果としては扱わない。

理由が出そろった。次の問いは、この冷えが体にどんな順番で現れるかである。意外なことに、最初に問題になるのは体温ではない。

4. つめたい 水に 落ちたら、さいしょの 1ぷんで 何が おこるの?

4. 冷たい水に落ちた最初の1分間に、体で何が起こるか

4. 冷水ショックと「1-10-1」:最初の1分は体温ではなく呼吸の問題である

おもったより つめたい 水に 急に 入ると、体は びっくりして、いきを 大きく すいこんだり、いきが はやく なったり します。これを 「れいすいショック」と よぶ ことが あります。

カナダの 水の あんぜんを 考える 人たちは、水に 落ちた ときの 目安を 「1・10・1」と おぼえるように すすめて います。さいしょの 1ぷんは、れいすいショック。つぎの 10ぷんで、手足が うごきにくく なって、およげなく なって いきます。そして 1じかんほどで、たいおんが さがりすぎて いしきを うしなう ことも あります。この じかんは めやすです。

ここで 大じなのは、さいしょの 1ぷんです。じっくり ひえる 前に、まず いきが みだれる ことが 問題に なる、と 研究した 人は 考えました。

この 時間は おぼえやすい 目安で、人や 水の おんどで かわります。

冷たい水に落ちたとき、最初に問題になるのは、体温が下がることではありません。急な冷たさで反射的に息を大きく吸いこんだり、呼吸が速くなったりする「冷水ショック」です。

カナダ水難安全協会は、水に落ちたときの目安を「1-10-1の原則」として説明しています[5]。最初の約1分が冷水ショック、次の約10分で冷えによって手足が動かしにくくなり、泳ぎ続けられなくなる、約1時間でさらに冷えて意識を失うおそれが出る、という順です。

研究者のティプトンは1989年の論文で、冷水ショックは低体温になるよりずっと前に、人の動きを奪い、命の危険をもたらすことがあり、野外の水の事故の多くの原因ではないかと論じました[6]。体が冷えきる前に呼吸が乱れることが、大きな問題になるということです。

この時間は覚えやすい目安であり、人や水温で変わります。それでも「最初は呼吸、次に手足、最後に体温」という順番を知っておくと、水の冷たさを数字だけでなく時間の流れで考えられます。

ところで、冷たい水は、避けるだけの相手なのでしょうか。

冷水に落ちた直後に問題になるのは、体温の低下ではなく、冷水ショックである。急激な皮膚の冷却に対して、反射的な吸気と過呼吸が起こる。カナダ水難安全協会の「1-10-1の原則」は、これを時間軸に並べた覚え方で、約1分の冷水ショック、約10分の冷えによる運動能力の低下(泳げなくなる)、約1時間の低体温症による意識消失の順に進むとされる[5]。

Tipton(1989)は、冷水に入った直後の反応を整理した論文で、冷水ショック反応は低体温が生じるよりはるか前に個人の動きを奪い、命の危険をもたらしうるため、野外の水難の多くの原因だろうと論じた[6]。水難というと「体が冷えて動けなくなる」と想像しがちだが、その前に呼吸の制御が崩れる局面があるという指摘である。

この時間割は、あくまで覚えやすさを優先した目安であり、水温、体格、服装、体調で大きく変わる。数字の正確さより、「最初の1分は呼吸、その次に手足の動き、最後に体温」という順序のほうが伝えたいことである。

ただし、冷水は避けるだけの対象なのか。冷水に入ることの利点を整理した研究がある。

5. 水と 上手に つきあうには?

5. 水温を知り、手で冷たさを確かめる

5. 冷水の「危険と利用」を総説で確かめ、手で体感する

きょう できる こと

おとなの 人と いっしょに、水どうの 水を せんめんきに 入れて、へやの 空気と おなじ おんどに なるまで おいて おきます。まず 手を 空気の 中で 30びょう、じっと して みます。つぎに その 手を 水の 中に 30びょう つけます。おんどは おなじでも、水の ほうが ずっと つめたく かんじる はずです。ひえた 手は、タオルで ふいて、あたためて ください。おんどけいが あれば、水と 空気の おんどを はかって、おなじか たしかめます。

おでかけの とき

プールや うみで あそぶ ときは、水の おんどを ききましょう。体が ふるえたり、さむけが したら、水から 上がって、あたたかく します。

家で、同じ温度の水と空気を比べる

洗面器に水道水を入れて、室温になるまで置いておきます。まず片手を空気中に30秒かざし、次にその手を水に30秒つけて比べてください。温度計があれば、水と空気の温度を測って、ほぼ同じであることを確かめます。同じ温度なのに水のほうが冷たく感じるなら、それが、第1章の「熱が出ていく速さ」のちがいです。

氷水や冷たすぎる水は使いません。手が冷えたら、タオルで拭いて温めます。

水に入るとき

プールや海では、入る前に水温を聞き、体が震えたり寒気がしたら、早めに上がって体を温めます。

手で確かめる

洗面器の水道水を室温になるまで置き、片手を空気中、次に水中に各30秒入れて比べる。温度計で水温と室温が近いことを確認する。第1章で述べた「冷たさ=熱が出ていく速さ」を、自分の手で確かめることになる。氷水や冷たすぎる水は使わず、冷えた手は拭いて温める。

危険と利用の両方を読む

Tipton らの総説(2017)は、冷水に入る行為の危険(溺れ、心停止、低体温)と利用(熱中症の処置、運動後の回復など)を並べて検討し、主張ごとに証拠の強さはまちまちだと結論している[7]。冷たい水を悪者として扱うのではなく、どの条件でどこまでが分かっているかを区別して読む姿勢を教えてくれる。カナダ水難安全協会のページ[5]は、冷水ショックの対処を短くまとめている。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

本文で使った資料です。

  1. The Engineering ToolBox. Thermal Conductivity of common Materials and Gases. https://www.engineeringtoolbox.com/thermal-conductivity-d_429.html (水と空気の熱伝導率の値)
  2. DTIC AD0601044(米国の技術資料). https://apps.dtic.mil/sti/pdfs/AD0601044.pdf (水の熱伝導率が空気の約25倍という説明)
  3. BBC Science Focus. Why does being in cold water feel worse than being in air of the same temperature? https://www.sciencefocus.com/science/why-does-being-in-cold-water-feel-worse-than-being-in-air-of-the-same-temperature (熱容量と水の入れかわり)
  4. 環境省 熱中症環境保健マニュアル. https://www.wbgt.env.go.jp/pdf/envman/3-1.pdf (体の水分量の目安)
  5. Canadian Safe Boating Council. 1-10-1 Principle. https://csbc.ca/1-10-1-principle/ (冷水に落ちたときの時間の目安)
  6. Tipton MJ. The initial responses to cold-water immersion in man. Clinical Science 77:581-588 (1989). https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/2691172/ (冷水ショックの論文)
  7. Tipton MJ et al. Cold water immersion: kill or cure? Experimental Physiology 102:1335-1355 (2017). https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28833689/ (冷水に入ることの危険と利用)

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