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ここに書いてあることは、誰かが実際に手を動かして調べ、考え、作り上げてきたものを拾い集めています。専門の本や論文、作品、そしてそれを生み出した人たち。気になったことがあれば、ぜひそのおおもとに直接ふれてみてください。このメモには書ききれない熱を、感じてもらえると思います。

100えんの ものが うれたら、かいしゃの もうけは いくら?

100円のものが売れたとき、会社のもうけは何円か ── 売上と利益のちがい

売上100円のゆくえ ── 「売上」「利益」「経費」と、赤字でも会社が続く理由

分野:技術

100えんの ジュースが 1ぽん うれました。この とき、かいしゃの もうけは いくらでしょう。100えん まるごと? それとも 50えん?

財務省ざいむしょうが しらべた、日本の かいしゃの へいきんは、うりあげ 100えんに つき、ほんぎょうの もうけが 5えん ほどでした。のこりの 95えんは、どこへ いくのでしょう。「うりあげ」と「もうけ」は、ちがう ものです。このメモでは、「けいひ」の こと、うりあげが ふえても もうけが へる ことが ある わけ、あかじの かいしゃが すぐに つぶれない わけ、かいしゃが はらう ぜいきんまで、たどって いきます。

100円のジュースが1本売れました。このとき、会社のもうけは何円でしょうか。100円まるごとでしょうか。それとも50円でしょうか。

財務省の統計では、日本の会社の平均は、売上100円につき、本業のもうけ(営業利益)が5円ほどでした。残りの95円は、どこへ行ったのでしょう。「売上」と「利益」はちがうものです。このメモでは、経費とは何か、売上が増えても利益が減る年があるのはなぜか、赤字の会社がすぐにはつぶれないのはなぜか、会社はどんな税金を払うのか、もうけは最後にどこへ行くのかを、公的な統計でたどります。

100円の商品が売れたとき、会社にもうけとして残るのはいくらか。財務省の法人企業統計調査(2024年度、金融業・保険業を除く全産業)では、売上高に対する営業利益の割合は5.0%だった。売上100円あたり、本業のもうけは平均で約5円。残りの約95円は、仕入れ、給料、家賃などに出ていった計算になる。

では、その95円は誰の手に渡るのか。売上が増えたのに利益が減る年があるのはなぜか。赤字の会社が続いているのはなぜか。会社は給料以外に何を払い、どんな税金を納め、もうけを最後にどう使うのか。売上・利益・経費という3つの言葉を軸に、財務省・国税庁・厚生労働省などの資料でたどる。

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1. 100えんの うりあげ、のこるのは いくら?

1. 100円の売上のゆくえ ── 全産業の平均は、営業利益5円

1. 売上100円の行き先 ── 全産業の営業利益は5.0円(2024年度)

「うりあげ」は、しょうひんを うって、おきゃくさんから うけとった おかねの ぜんぶです。100えんの ジュースが うれたら、うりあげは 100えん。でも、この 100えんが ぜんぶ かいしゃの もうけに なる わけでは ありません。

ジュースの ざいりょう、みせに ならべる ための しいれ、はたらく 人の きゅうりょう、みせの やちん。「もうけ」は、うりあげから、こういう おかねを ひいた のこりです。

ざいむしょうの しらべで、2024ねんどの 日本の かいしゃ(ぎんこうと ほけんの かいしゃは のぞく)の へいきんを、うりあげ 100えんに あわせて みると、だいたい こう なります[1]。

  • ざいりょうや しいれ、でんき だい など、ほかに はらう おかね(ほかの ぶんを ひいた のこり)… 79えん
  • はたらく 人の きゅうりょう など … 14えん
  • やちんや ぜいきん など … 2えん ちょっと
  • ほんぎょうの もうけ … 5えん

まるめて いるので、ぴったり 100えんには なりません。おどろくのは、もうけの 5えんが、はたらく 人に はらう 14えんより すくない ことです。もうひとつ。ざいりょうに はらった 79えんは、ざいりょうを うった かいしゃに とっては、その かいしゃの「うりあげ」に なります。1つの しょうひんの うしろで、たくさんの かいしゃの うりあげが つながって います。

ただし ほんとうは、これは ぜんぶの かいしゃを ならした 数字です。かいしゃに よって、ぜんぜん ちがいます。ところで、この 79えんや 14えんの ような おかねを「けいひ」と よぶ ことが あります。けいひとは、なんでしょう。

「売上」は、商品やサービスを売って受け取った金額です。「利益」は、売上から、そのためにかかった費用を引いた残りです。中小企業庁の会計の手引きも、「収益-費用=利益」と説明しています[2]。100円の商品が売れれば売上は100円ですが、100円がそのまま利益になるわけではありません。

財務省の法人企業統計調査(2024年度、金融業・保険業を除く全産業)では、売上高が1,692兆円あまり、営業利益が84.8兆円でした。営業利益を売上高で割ると5.0%。売上100円あたり、本業のもうけは平均で約5円です[1]。2026年9月に公表された2025年度分でも、営業利益率は5.4%で、5円台の前半です[26]。この記事の詳しい内訳は、2024年度分の表で統一しています。

同じ統計の「付加価値」の内訳を使うと、売上100円の行き先を、次のように分けられます[1]。

売上100円あたりの行き先(全産業の平均、2024年度)
項目売上100円あたり中身
仕入れ・外注・電気代・広告・設備の減価償却など約79円下の4つに入らない残り
人件費約13.6円役員・従業員の給料とボーナス、福利厚生費
家賃・機械の借り賃約1.8円動産・不動産の賃借料
租税公課約0.7円費用として扱う税金や公的な負担金
営業利益約5.0円本業のもうけ

丸めているので、合計は100円ぴったりになりません。見どころは2つあります。1つ目は、人件費(約13.6円)が営業利益(約5.0円)より大きいこと。2つ目は、約79円が「ほかの会社に払ったお金」を多く含むこと。仕入れ先の会社から見れば、この79円は自分の売上です。1つの商品の売上の裏で、いくつもの会社の売上が生まれています。

ただし、これは会社全体を平均した数字です。業種や会社の大きさで大きくちがいます(4章)。そして、この表の「約79円」や「人件費」を、ふだん「経費」と呼ぶことがあります。次の章で、経費とは何かを見ましょう。

「売上」は、商品やサービスを売って受け取った金額。「利益」は、売上からそのためにかかった費用を引いた残りで、中小企業庁の会計の手引きは「収益-費用=利益」と説明している[2]。100円の商品が売れれば売上は100円だが、100円がそのまま利益にはならない。

財務省の法人企業統計調査(年次別、2024年度、金融業・保険業を除く全産業)では、売上高が1,692兆4,018億円、営業利益が84兆8,029億円だった。営業利益を売上高で割ると5.0%。売上100円あたり、本業の利益は平均で約5円になる[1]。2026年9月1日に公表された2025年度分(売上高1,720兆2,560億円、経常利益124兆8,313億円)でも、営業利益率は5.4%、経常利益率は7.3%で、5円台前半という水準は変わらない[26]。この記事の詳しい内訳は、表がそろっている2024年度分で統一している。

同じ統計の「付加価値」の内訳を使うと、売上100円の行き先を分けられる。付加価値は「人件費+支払利息等+動産・不動産賃借料+租税公課+営業純益」、営業純益は「営業利益-支払利息等」と定義されているので、支払利息を営業利益の側にまとめると、人件費・賃借料・租税公課・営業利益の4つになる[1]。

売上100円あたりの行き先(全産業の平均、2024年度、財務省法人企業統計)
項目金額(億円)売上100円あたり
売上高16,924,018100円
人件費2,293,515約13.6円
動産・不動産賃借料309,306約1.8円
租税公課120,286約0.7円
営業利益(支払利息等を含む)848,029約5.0円
上のどれにも入らない残り(売上高-付加価値)―約79円

人件費は役員給与・役員賞与・従業員給与・従業員賞与・福利厚生費の合計。「残り」は、この統計の付加価値に入らない部分で、材料や商品の仕入れ、外注費、電気代、広告費、設備の減価償却などが入る。人件費(約13.6円)が営業利益(約5.0円)より大きいことと、約79円が仕入れ先など別の会社の売上にもなっていることが、見どころだ。1つの商品の売上の裏で、複数の会社の売上が積み重なる。

この数字は標本調査にもとづく全産業の平均で、業種や資本金の大きさでちがう(4章)。また、「約79円」や「人件費」を、ふだん「経費」と呼ぶ。経費とは何かを次の章で整理する。

2. 「けいひ」って なに? かっても、ぜんぶは けいひに ならない ことも

2. 「経費」とは何か ── 買っても、その年に全部は経費にならないもの

2. 経費・費用・損金 ── 利益の5段階と、減価償却

「けいひ」は、うりあげを あげる ために かかった おかねの ことです。ざいりょう、きゅうりょう、やちん、でんき だい、こうこくの おかね。ぜんぶ けいひです。うりあげから けいひを ひいた のこりが「もうけ(利益りえき)」です。もし けいひの ほうが おおきいと、「あかじ」に なります。

ふしぎな ことが あります。たかい きかいを かった とき、はらった おかねは その ときに でて いきますが、けいひには、ぜんぶは ならない ことが あります。たとえば、ゲームきを 3ねん つかう つもりで 3まんえんで かった としましょう。「1ねんに 1まんえんずつ つかった」と かんがえます。これを「減価償却げんかしょうきゃく」と いいます。ただし ほんとうは、なんねんに わけるかは、ものの しゅるいごとに、くにの きまりで きまって います[14]。

だから、おかねが でて いく ひと、けいひに なる ひは、ずれる ことが あります。この ずれは、あとの おはなしで だいじな やくわりを します。

「経費」は、ふだんの言い方です。会社の決算書では「費用」、法人税の計算では「損金」といいます。財務省は、損金を「売上原価や販売費、災害等による損失など費用や損失に当たるもの」と説明しています[7]。売上から費用を引くと利益が出て、費用が売上より大きければ赤字になります。

中小企業庁の手引きによると、決算書の損益計算書は、利益を5つに分けます[2]。売上高から売上原価を引いた「売上総利益」(粗利)、そこから販売費及び一般管理費(給料、旅費交通費、消耗品費など)を引いた「営業利益」、受取利息などを足して支払利息などを引いた「経常利益」、特別な利益と損失を加減した「税引前当期純利益」、法人税などを引いた「当期純利益」です。2024年度の全産業の平均では、売上100円あたり、営業利益が5.0円、経常利益が6.8円、当期純利益が5.3円でした[1]。

経費には、買ったのに、その年に全部は経費にならないものがあります。国税庁の説明(個人事業の場合)では、建物や機械などの減価償却資産は、買った年に全額を経費にせず、使える期間にわたって分けて経費にします[13]。たとえば、5年使える100万円の機械なら、1年に20万円ずつです(定額法の場合)。パソコン(サーバー用を除く)の法定耐用年数は4年と決まっています[14]。会社全体では、2024年度分の減価償却費が、税法上の費用として約49.2兆円入れられています[3]。

お金が出ていく日と、経費になる日が、ずれるのです。このずれは、6章でもう一度出てきます。

「経費」はふだんの言い方で、決算書では「費用」、法人税の計算では「損金」という。財務省は損金を、売上原価や販売費、災害等による損失など「費用や損失に当たるもの」と説明する[7]。

損益計算書は、利益を5段階で示す。中小企業庁の会計の手引きの整理では、(1)売上高-売上原価=売上総利益(粗利)、(2)売上総利益-販売費及び一般管理費=営業利益(販管費には従業員給与・旅費交通費・消耗品費などがある)、(3)営業利益+営業外収益-営業外費用=経常利益(受取利息・受取配当金/支払利息など)、(4)経常利益+特別利益-特別損失=税引前当期純利益、(5)税引前当期純利益-法人税等=当期純利益、となる[2]。2024年度の全産業の平均は、売上100円あたり営業利益5.0円、経常利益6.8円、当期純利益5.3円(当期純利益は89兆6,453億円)[1]。経常利益が営業利益より大きいのは、営業外収益が営業外費用を上回っているためだ(差は約29.9兆円)。

経費には、買ったのに、その年に全部は経費にならないものがある。国税庁の説明(個人事業の場合)では、建物・機械装置・器具備品などの減価償却資産は、取得した時に全額を必要経費にするのではなく、使用可能期間にわたって分割して経費にする[13]。5年使える100万円の機械なら、定額法で年20万円ずつ。パソコン(サーバー用を除く)の法定耐用年数は4年だ[14]。会社全体では、2024年度分の減価償却費の損金算入額が49兆2,483億円ある[3]。

経費には小さな項目もある。国税庁の会社標本調査では、営業収入10万円あたりの交際費等が242円、寄附金が64円だった[3]。人件費は売上100円あたり約13.6円、10万円あたりにすれば約1万3,600円で、統計の尺度は同じではないが、規模の見当はつく。

お金が出る日と経費になる日がずれることは、6章の「利益と現金は別」につながる。その前に、売上が増えれば利益も増えるのか、を見る。

3. うれる かずが ふえたのに、もうけが へる ことは あるの?

3. 売上が増えたのに、利益が減る ── 2022年度の食料品と電気業

3. 増収・減益 ── 売上が増えても営業利益が減る仕組みと、2022年度の数字

あります。うりあげが ふえても、けいひが もっと ふえれば、もうけは へります。

ざいむしょうの しらべでは、2022ねんどに、たべものを つくる しごとで、うりあげが 1わり ちかく ふえたのに、ほんぎょうの もうけは 4ぶんの 1 ほど へりました[1]。この としは、ざいりょうや ねんりょうの ねだんが おおきく あがった ときでした[23]。

たとえば、100えんで うる おかしを 1000こ うって、ざいりょうが 1こ 60えん、ほかの おかねが 3まんえんの ときは、もうけが 1まんえん でます。ざいりょうが 70えんに なって、1100こ うっても、ほかの おかねが 3まん1000えんに ふえると、もうけは 2000えんに へって しまいます。ただし ほんとうは、いつも こう なる わけでは ありません。ねだんを あげて、そのぶんを おきゃくさんに はらって もらう ことも できます。

売上が増えても、費用がそれ以上に増えれば、利益は減ります。財務省の統計に、実際の例があります[1]。

食料品製造業の2022年度は、売上高が9.1%増えて約45.4兆円になりました。ところが営業利益は25.7%減って、約8,991億円でした。売上100円あたりの営業利益は、2.9円から2.0円に下がっています。電気業では、売上高が44.3%増えて約41.2兆円になったのに、営業利益は前の年のマイナス292億円から、マイナス7,178億円へと、赤字が大きくなりました。

この年は、材料や燃料の値段が大きく上がった年でした。日本銀行の速報では、2022年の国内企業物価指数は前の年より9.7%上がり、電力・都市ガス・水道は36.0%、輸入物価は円ベースで39.1%上がっています[23]。個々の会社の中身までは、この統計では分かりません。ただ、売上と費用が別々に動くことは、数字で確かめられます。

たとえば、こんな計算です。100円で売る商品を1,000個売り、材料が1個60円、そのほかの費用が3万円なら、利益は1万円です。材料が70円に上がり、1,100個売れて、そのほかの費用が3.1万円になると、売上は11万円に増えますが、利益は2,000円に減ります。

売上が増えて利益が減る、たとえの計算
前後
売れた数1,000個1,100個
売上(1個100円)10万円11万円
材料費6万円(1個60円)7.7万円(1個70円)
そのほかの費用3万円3.1万円
利益1万円2,000円

値引きをして数を増やす場合も、1個あたりの利益が減るので、同じ結果になることがあります。

売上が増えても、費用がそれ以上に増えれば利益は減る。増収減益という。財務省の統計に、実際の例がある[1]。

食料品製造業の2022年度は、売上高が41兆6,385億円から45兆4,120億円へ9.1%増えたが、営業利益は1兆2,097億円から8,991億円へ25.7%減った。売上100円あたりの営業利益は2.9円から2.0円に下がっている。電気業は、売上高が28兆5,172億円から41兆1,587億円へ44.3%増えたのに、営業利益はマイナス292億円からマイナス7,178億円へ、赤字が拡大した。全産業の平均では、同じ年度に売上高が9.0%、営業利益が16.7%増えているので、業種による差が大きい。

背景として、この年は材料や燃料の値上がりが大きかった。日本銀行の速報では、2022年平均の国内企業物価指数は前年比9.7%、うち電力・都市ガス・水道は36.0%の上昇。輸入物価指数は円ベースで39.1%上昇し、石油・石炭・天然ガスは98.4%上昇した[23]。個々の会社が費用をどこまで価格に転嫁できたかは、この統計からは分からない。ただ、売上と費用が別々に動きうることは、数字でも確かめられる。

仕組みは、簡単な計算で再現できる(たとえの数字)。100円で売る商品を1,000個売り、材料が1個60円、そのほかの費用が3万円なら、利益は1万円。材料が70円に上がり、販売数が1,100個に増え、そのほかの費用が3.1万円に増えると、売上は10%増えるが、利益は2,000円に減る(80%減)。

売上が増えて利益が減る、たとえの計算
前後
売れた数1,000個1,100個
売上(1個100円)10万円11万円
材料費6万円(1個60円)7.7万円(1個70円)
そのほかの費用3万円3.1万円
利益1万円2,000円

値引きで販売数を増やす場合も、1個あたりの利益が減るため、同じ形になることがある。売上は「量×値段」、利益は「量×(値段-1個あたりの費用)-固定的な費用」なので、量だけを見ても利益は決まらない。

4. やすく うる みせと、たかい ものを すこし うる みせ

4. 安く売る会社と、高い商品を少し売る会社は、どう成り立つのか

4. 利益率・回転・損益分岐点 ── 業種でちがう営業利益率と、2つの成り立ち方

もうけの わりあいは、しごとの しゅるいで ちがいます。ざいむしょうの 2024ねんどの しらべでは、うりあげ 100えんに つき、ほんぎょうの もうけは、おみせなどの「うる しごと」で 2えん ちょっと。やちんを もらう ふどうさんの しごとは 12えん ほどでした[1]。

うる しごとの かいしゃは、日本の うりあげの 3ぶんの 1 ほどを しめて いますが、もうけは 6ぶんの 1 ほどです[1]。それでも やすく うる みせが つづく わけを、けいさんで かんがえて みます。

ひとつめ。1こ 10えんの もうけでも、たくさん うれば 大きく なります。ふたつめ。はやく うりきると、おなじ おかねで なんども しいれられます。たとえば、100まんえん ぶんを しいれて 3まんえん のこる しょうばいを、1ねんに 12かい くりかえせば 36まんえん。4かいなら 12まんえんです。ただし ほんとうは、うれのこりが でると、その おかねが うごかなく なります[20]。

たかい ものを すこし うる みせは、どうでしょう。1つ 50まんえんの いすを、30まんえんで しいれたら、1つ うれると 20まんえん のこります。やちんや きゅうりょうなどが 1かげつ 80まんえん かかるなら、4つ うれた ところで、もうけも そんも ない「とんとん」です[22]。100えんの おかしで 10えん のこる みせは、おなじ 80まんえんを まかなうのに、8まん こ うる ひつようが あります。これは たとえの けいさんで、ほんとうの みせの やりかたは、もっと いろいろです。

もうけの割合は、業種によってちがいます。2024年度の営業利益率は、卸売業・小売業が2.4%、建設業が4.5%、運輸業・郵便業が5.3%、サービス業が8.1%、情報通信業が8.2%、不動産業が12.2%でした[1]。国税庁の会社標本調査でも、利益を出した会社の所得率(営業収入に対する所得の割合)は、卸売業が3.5%、小売業が4.1%、不動産業が14.2%と、同じ並びになっています[3]。会社の大きさでもちがい、資本金10億円以上の会社は7.8%、1,000万円未満の会社は1.5%でした[1]。

卸売業・小売業は、売上高では全産業の約3分の1(約564兆円)を占めますが、営業利益は約6分の1(約13.6兆円)です[1]。1つあたりのもうけは小さくても、たくさん売る。これを薄利多売といいます。

それが成り立つ理由を、計算で考えてみます。1つ目は、1個のもうけが小さくても、たくさん売れば合計は大きくなること。2つ目は、早く売り切ること。たとえば、100万円分を仕入れて売ると3万円のもうけが出る商売を、1年に12回まわせば36万円、4回なら12万円です。ただし、売れ残りが増えると、そのお金が動かなくなります[20]。3つ目は、家賃や社員の給料が、売る数にかかわらずかかる費用(固定費)であること。売る数が多いほど、1個あたりの固定費は小さくなります。

高い商品を少しだけ売る会社も、同じ計算で成り立ちます。損益分岐点売上高は、固定費÷(1-変動費の割合)で求められます[22]。次の例(たとえの数字)を比べてください。

2つの店の、たとえの損益分岐点
店A(安く売る)店B(高いものを少し売る)
売る値段1個100円1個50万円
仕入れ・材料90円30万円
1個のもうけ(粗利)10円20万円
毎月の固定費80万円80万円
とんとんになる数8万個(売上800万円)4個(売上200万円)

店Bは、4個売れれば収支がとんとんで、5個なら20万円の黒字です。ただし3個なら20万円の赤字で、売れる数が少ないぶん、1個売れるかどうかの影響が大きくなります。実際の会社のやり方は、これよりずっといろいろです。

営業利益率は業種で大きくちがう。2024年度の営業利益率は、全産業5.0%に対し、卸売業・小売業2.4%、建設業4.5%、運輸業・郵便業5.3%、サービス業8.1%、情報通信業8.2%、不動産業12.2%だった[1]。国税庁の会社標本調査(2024年度分)でも、利益を出した法人の所得率(所得金額÷営業収入金額)は、卸売業3.5%、小売業4.1%、不動産業14.2%で、並び方は同じ[3]。資本金別では、10億円以上が7.8%、1億〜10億円が4.8%、1,000万〜1億円が3.1%、1,000万円未満が1.5%と、会社の規模でもちがう[1]。

卸売業・小売業は、売上高が563兆6,628億円で全産業の約33%を占めるが、営業利益は13兆6,142億円で約16%にとどまる[1]。1つあたりの利益は小さく、量で稼ぐ形(薄利多売)が、業種全体の数字にも出ている。

安く売る会社が成り立つ理由を、計算で整理する。(1)量:1個あたりの利益が小さくても、販売数が多ければ合計は大きい。(2)回転:たとえば、100万円分を仕入れて売ると3万円の利益が出る商売を、1年に12回転させれば36万円、4回転なら12万円。在庫は販売して現金になるまでに時間がかかり、過剰な在庫は資金の負担になる[20]。(3)固定費:家賃や正社員の給料のように、売上に関係なく一定的にかかる費用(固定費)を、多くの販売数で薄める。固定費に対して、原材料や仕入商品のように売上に比例する費用が変動費で、損益分岐点売上高は「固定費÷(1-変動費比率)」で求まる[22]。個々の会社が仕入れ値や売り方でどんな工夫をしているかは、この統計では分からない。その会社の決算資料や説明で調べることになる。

高い商品を少しだけ売る会社も、同じ式で成り立つ。次は、たとえの数字で2つの店を比べた表だ。

2つの店の、たとえの損益分岐点
店A(安く売る)店B(高いものを少し売る)
売る値段1個100円1個50万円
仕入れ・材料90円(変動費)30万円(変動費)
1個の限界利益10円20万円
毎月の固定費80万円80万円
損益分岐点の販売数8万個(売上800万円)4個(売上200万円)

店Bは4個で収支がとんとん、5個なら20万円の黒字、3個なら20万円の赤字。1個あたりの利益が大きいので、少ない数で固定費を回収できる一方、売れる数が少ないぶん、1個売れるかどうかの影響が大きい。実在の会社の姿は、この単純化よりずっと多様だ。

5. きゅうりょうの ほかにも、しゃいんの ために はらう おかねが あるの?

5. 給料のほかに、会社が社員のために払うお金 ── 給料日までのしくみ

5. 労働費用と賃金の支払い ── 現金給与の約15%にあたる法定福利費

あります。厚生労働省こうせいろうどうしょうの しらべでは、2020ねんどの、30人 いじょうの かいしゃで、しゃいん 1人に きゅうりょうを 100えん はらう ごとに、ほかに 15えん ほどを、ねんきんや けんこうほけん などの ために はらって いました[15]。

ねんきんの ほけんりょうは、かいしゃと しゃいんが はんぶんずつ はらいます[16]。しごとで けがを した ときの ほけんは、ふつう、かいしゃが はらう ほけんりょうで まかなわれます[17]。しゃいんが うけとる きゅうりょうより、かいしゃが はらう ぜんぶの おかねの ほうが 大きいのです。

では、かいしゃは どうして まいつき きゅうりょうを はらえるのでしょう。きゅうりょうは、はたらいた あとで もらう ことが ふつうです[19]。そして、まいつき 1かい いじょう、きまった ひに はらう ことも、ほうりつで きまって います[18]。うりあげは まいにち はいって きます。その うりあげの 一ぶを、きゅうりょうびに むけて ためておく ながれです。うりあげが おくれる ときは どうなるかは、つぎの おはなしで。

会社が社員のために払うお金は、給料だけではありません。厚生労働省の就労条件総合調査(2020年度の状況、30人以上の民営企業)によると、社員1人あたり1か月の労働費用は約40万8,000円で、そのうち現金給与が約33万5,000円(82.0%)、現金給与以外が約7万3,000円(18.0%)でした[15]。

現金給与以外の中心は法定福利費で、約5万円です。給料100円に対して約15円にあたります。厚生年金保険の保険料は事業主と被保険者が半分ずつ負担し、保険料率は18.3%です[16]。労災保険の費用は、原則として事業主が払う保険料でまかなわれます[17]。ほかに、退職金などの費用が約1万6,000円、住宅や食事の補助などの法定外福利費が約4,900円、教育訓練費が約670円、募集費が約720円でした[15]。

では、会社は毎月、どうして給料を払えるのでしょう。給料は、働いた後に払うのが原則です。民法は、労働者は約束した労働を終わった後でなければ報酬を請求できない、期間で定めた報酬はその期間が過ぎた後に請求できる、と定めています[19]。労働基準法は、賃金を毎月1回以上、決まった日に払うよう定めています[18]。売上は毎日入ってきて、その一部を給料日のために取っておく流れです。

では、売上が入るのが遅れる月や、赤字の年はどうなるのでしょうか。それが次の章です。

会社が社員のために払うお金は、給料だけではない。厚生労働省の令和3年就労条件総合調査(2020会計年度、常用労働者30人以上の民営企業、1人1か月平均)では、労働費用総額が40万8,140円で、現金給与額が33万4,845円(82.0%)、現金給与以外が7万3,296円(18.0%)だった[15]。

現金給与以外の内訳は、法定福利費5万283円、退職給付等の費用1万5,955円、法定外福利費4,882円、教育訓練費670円、募集費718円など。法定福利費は現金給与額の約15%にあたる(現金給与には従業員が負担する保険料の分も含まれる)。法定福利費の内訳は、厚生年金保険料2万7,905円、健康保険料・介護保険料1万7,496円、労働保険料3,695円などだ[15]。厚生年金保険料は事業主と被保険者が半分ずつ負担し、保険料率は18.3%[16]。労災保険の費用は、原則として事業主の負担する保険料でまかなわれる[17]。法定福利費は税金ではないが、法律で義務づけられた会社の負担だ。財務省の統計の人件費(売上100円あたり約13.6円)は、給与・賞与のほか福利厚生費を含む[1]。

「会社は、なぜ毎月給料を払えるのか」に、仕組みの面から答える。給料は後払いが原則で、民法624条は、労働者は約束した労働を終わった後でなければ報酬を請求できず、期間で定めた報酬は期間の経過後に請求できる、と定める[19]。労働基準法24条は、賃金を通貨で、直接、全額、毎月1回以上、一定の期日を定めて払うよう定める。所得税の源泉徴収など、法令に別段の定めがあるものは、賃金から差し引ける[18]。会社の側から見ると、売上は日々入り、給料の支払いは月1回の決まった日。売上のうち人件費にあたる部分を、給料日に向けて確保しておく流れになる。

この流れが崩れるのは、売上が入るのが遅れるときや、費用が売上を上回るときだ。6章で見る。

6. あかじでも きゅうりょうが はらえるのは どうして?

6. 赤字でも給料を払えるのはなぜか ── 利益と現金は別のもの

6. 赤字と黒字、そして現金 ── 損益計算書に出ないお金の動き

「あかじ」は、けいひが うりあげより 大きい ことです。国税庁こくぜいちょうの しらべでは、日本の かいしゃ 300まん しゃの うち、その としの しょとく(ぜいきんを きめる もうけ)が マイナスか 0だった かいしゃは、6わり ほどでした[3]。それでも かいしゃの ほとんどは つづいて います。あかじは、けいさんの けっかで、わるい ことと きまった わけでは ありません。

わけの ひとつめ。あかじでも、うりあげは はいって きます。たとえば、うりあげが 1000まんえんで、けいひが 1050まんえん。あかじは 50まんえん です。でも、けいひの うち 100まんえんが、まえに かった きかいの「げんかしょうきゃく」だと どうでしょう。これは あたらしく おかねが でて いく わけでは ありません。おかねは、1000まんえん はいって、950まんえん でて いくので、50まんえん ふえます。

ふたつめ。いままで ためた おかねや、ぎんこうから かりた おかねで、たりない ぶんを おぎなえます。かりた おかねは、かえす やくそくや、りしが あります。つづけられる ながさは、あかじの 大きさと、ためた おかねしだいです。

ぎゃくに、くろじでも おかねが たりなく なる ことが あります。「あとで はらうね」と いわれて、100まんえんぶんの しょうひんを わたしたと します。うれた ことには なって、もうけも でます。でも、おさいふには まだ ありません。そのあいだに、しいれや きゅうりょうを はらう ひが きたら、はらえなく なります。これを「くろじとうさん」と いいます[20]。「もうけ」と「おかねが ある こと」は、べつの ことなのです。

「赤字」は、費用が売上より大きいことです。国税庁の会社標本調査(2024年度分)では、約300万社の法人のうち、欠損法人(所得がマイナス、または0の法人)が約181万社、60.3%でした[3]。前の年までの赤字を引いた結果0になった会社も含みます[4]。理由までは、この統計から分かりません。それでも多くの会社が続いています。赤字は計算の結果であり、続けられるかどうかは、お金の流れと先の見通しで決まります。

赤字でも給料を払える理由の1つ目は、赤字でも売上が入ってくることです。売上が1,000万円で費用が1,050万円なら、赤字は50万円です。ところが、費用のうち100万円が、前に買った機械の減価償却なら、新しく出ていくお金ではありません。お金は1,000万円入り、950万円出るので、50万円増えます。

理由の2つ目は、蓄えと借入です。これまでの利益の蓄えや、銀行から借りたお金で、足りない分を補えます。借りたお金は、返す約束があり、利息もつきます。財務省の統計にも実例があります。運輸業・郵便業は、新型コロナウイルスで人の移動が減った2020年度、営業利益が全体でマイナス1兆6,012億円の赤字でした。ただ、売上は約57.4兆円あり、事業は続き、2022年度には営業利益が1兆9,597億円の黒字になっています[1]。税の計算でも、前の年の赤字は、次の年以降の所得から引けます(繰越欠損金)。2024年度分の当期控除額は10兆5,157億円です[3]。

逆に、黒字でもお金が足りなくなることがあります。商品を売って帳簿の上では利益が出ているのに、代金を受け取る前に仕入れや給料の支払いが来て、資金が足りなくなる。これを黒字倒産といい、売上が急に伸びて、売掛金や在庫が増えた時期に起きやすいといわれます[20]。

利益(損益)と現金の増減のちがい、たとえの計算
損益(利益)現金の増減
例1:売上1,000万円(全額入金)、費用1,050万円のうち減価償却100万円マイナス50万円(赤字)プラス50万円
例2:4月に100万円を売る(入金は6月末)、4月末に仕入れ60万円・給料20万円を払うプラス20万円(黒字)マイナス80万円(4月)

もうけ(利益)とお金(現金)は、別のものです。

赤字は、期間の費用が売上を上回ったことを示す計算結果。国税庁の会社標本調査(2024年度分)では、法人299万9,680社のうち、欠損法人が180万7,925社(60.3%)だった。欠損法人は、所得金額が負、または0(繰越欠損金を控除した結果0になったものを含む)の法人で[4]、会計上の赤字とは完全には一致しない[3]。理由までは、この統計から分からない。それでも、法人の多くが、その年の所得はゼロ以下の形で続いている。

赤字でも給料を払える理由を、2つに分ける。(1)赤字でも売上は入る:売上1,000万円・費用1,050万円は50万円の赤字だが、費用のうち100万円が過去に買った機械の減価償却なら、現金の出は950万円で、現金は50万円増える。損益計算書の費用と、現金の支出は、同じではない(2章)。(2)蓄えと借入:過去の利益の蓄えや、金融機関からの借入で不足を補える。借入には返済と利息がある。税の計算でも、前の年までの赤字は、翌年度以降の所得から引ける。2024年度分の繰越欠損金の当期控除額は10兆5,157億円、翌期繰越額は75兆4,819億円だった[3]。

財務省の統計に実例がある。運輸業・郵便業は、新型コロナウイルスで人の移動が減った2020年度に、営業利益が全体でマイナス1兆6,012億円、翌2021年度もマイナス1,330億円だったが、売上は2020年度でも57兆3,545億円あり、2022年度には営業利益が1兆9,597億円の黒字になった[1]。

逆に、黒字でも資金が尽きることがある。中小企業基盤整備機構のJ-Net21は、黒字倒産を「商品が売れて帳簿上は利益が出ているにもかかわらず、支払いに必要な資金が不足し、倒産してしまうこと」と説明する。企業間取引では、販売してから数か月後にしか現金を受け取れないことがあり、その間に仕入代金・人件費・借入返済などの支払いが来る。特に成長期の会社は、売上の伸びで売掛金や在庫が膨らみ、帳簿上は黒字でも資金繰りが追いつかないことがある[20]。

利益(損益)と現金の増減のちがい、たとえの計算
損益(利益)現金の増減
例1:売上1,000万円(全額入金)、費用1,050万円のうち減価償却100万円マイナス50万円(赤字)プラス50万円
例2:4月に100万円を売る(入金は6月末)、4月末に仕入れ60万円・給料20万円を払うプラス20万円(黒字)マイナス80万円(4月)

帳簿上の損益と実際の現金の動きは、必ずしも一致しない。J-Net21が「キャッシュフロー」を見る経営を勧めるのは、このずれのためだ[20]。

7. かいしゃは どんな ぜいきんを はらうの?

7. 会社が払う税金 ── 利益にかかる税、赤字でも払う税、預かって納める税

7. 法人税・法人住民税・法人事業税・消費税 ── 何に課税され、何を預かるのか

もうけ(しょとく)に かかる ぜいきんが「ほうじんぜい」です[7]。国の ほうじんぜいと、まちや けんの ぜいきんを あわせた わりあいは、日本では 3わり ちかく(29.74パーセント)と、ざいむしょうが しめして います[6]。

あかじでも はらう ぜいきんも あります。まちや けんに はらう「きんとうわり」は、その ちいきの かいしゃとして はらう、かいひの ような ものです[8]。

もうひとつ、「しょうひぜい」は、ちょっと ちがいます。おきゃくさんが はらった ぶんを、かいしゃが あずかって、国に とどけます。クラスの きゅうしょくひを あつめて とどける かかりみたいな ものです。100えんの しょうひんに 10えんの しょうひぜいが ついたら、かいしゃは 10えんを あずかります。しいれで はらった しょうひぜいが 6えんなら、とどけるのは その ちがいの 4えん です[11]。ただし ほんとうは、ぜいりつや ルールは ほうりつで きまって いて、かわる ことも あります。

しゃいんの きゅうりょうから、しょとくぜいを ひいて、かいしゃが 国に おさめる しくみも あります[18]。

会社が払う税金は、性格のちがう3種類に分けると分かりやすくなります。

1つ目は、利益(所得)にかかる税金です。法人税は、益金から損金を引いた所得にかかります[7]。税率は、資本金1億円以下の会社などでは、年800万円以下の部分が15%、それを超える部分が23.2%、それ以外の会社は23.2%です[5]。地方の法人住民税・事業税とあわせた法人実効税率は、29.74%と財務省が示しています[6]。2024年度分の法人税額は、全国で約18.7兆円でした[3]。

2つ目は、赤字でも払う税金です。法人住民税の均等割は、会社がどれだけもうけたかにかかわらず、地域社会の一員として払う「会費」のような税で、赤字の会社も払います[8]。資本金1億円を超える会社の法人事業税には、給料や利子、賃借料と損益の合計を基準にする付加価値割や、資本金等の額を基準にする資本割があります[9]。

3つ目は、預かって納める税金です。消費税は、消費者が負担する税金で、標準税率は10%、軽減税率は8%です[10]。会社は、売上にかかる消費税から、仕入れにかかった消費税を引いた額を納めます[11]。消費税の課税標準になる対価の額には、消費税相当額は含まれません[12]。たとえば、税抜き100円で売って10円を預かり、税抜き60円で仕入れて6円を払っていたら、納めるのは4円です。社員の給料から所得税を差し引いて国に納める源泉徴収も、預かって納めるお金です[18]。

このほか、固定資産税や印紙税のように、費用として扱う税金もあります。財務省の統計では、この「租税公課」は売上100円あたり約0.7円です[1]。

会社が払う税金は、性格の異なる3種類に整理できる。

(1)利益(所得)にかかる税。法人税は、益金の額から損金の額を引いた所得に課される[7]。税率は、資本金1億円以下の普通法人などで年800万円以下の部分が15%、超える部分が23.2%、それ以外の普通法人が23.2%(令和7年4月1日以後開始の事業年度)[5]。国と地方を合わせた法人実効税率は、2018年度以降29.74%。2026年4月施行の防衛特別法人税の対象になる場合は30.64%になる[6]。2024年度分の法人税額は18兆6,822億円だった[3]。

(2)赤字でも払う税。法人住民税は、均等割と法人税割からなる。法人税割は国に法人税を納めている(黒字の)法人だけが払うが、均等割は資本金等の額・従業者数に応じて赤字の法人も払う。総務省はこれを「地域社会の会費」の性格が強いと説明している[8]。法人事業税は、所得割・収入割のほか、資本金1億円を超える普通法人には付加価値割(給与・利子・賃借料と損益の合計)と資本割(資本金等の額)が課される外形標準課税がある[9]。

(3)預かって納める税。消費税は、消費者が負担する税で、標準税率10%(国7.8%+地方2.2%)、軽減税率8%[10]。納付税額は、課税期間中の売上税額から仕入税額を控除して求める[11]。課税標準となる対価の額には、消費税相当額は含まれない[12]。たとえば、税抜き100円の売上で10円を預かり、税抜き60円の仕入れで6円を払っていれば、納付は4円(標準税率の場合)。従業員の給与から所得税を差し引いて納める源泉徴収も、預かって納めるお金だ[18]。税率や制度は法律で決まり、変わることがある。最新は国税庁のページで確かめてほしい。

固定資産税や印紙税のように費用として扱う税は、統計上の「租税公課」にあたり、売上100円あたり約0.7円(2024年度)[1]。社会保険料は税金ではないが、法律で決まった会社の負担として、5章のとおり人件費に近い規模で発生する。

8. もうけは、そのあと どこへ いくの?

8. 利益のゆくえ ── 税金、株主への配当、会社に残す分

8. 益金処分と内部留保 ── 利益の使いみちと、「現金の山」ではない理由

国税庁こくぜいちょうの しらべに、もうけを だした かいしゃの、もうけの つかいみちが あります(2024ねんど)[3]。

  • かいしゃに のこす … 5わり ちかく
  • かぶぬしに わたす「はいとう」… 3わり ちかく
  • ぜいきん … 2わり ちょっと

「はいとう」は、かいしゃに おかねを だして くれた 人に、もうけの 一ぶを わける おかねです。「かいしゃに のこす」ぶんは、「ないぶりゅうほ」と よばれます。おかねを ためた おさいふの ことでは ありません。かいしゃの おかねの ためかたは、きかいや たてものに かわって いる ことが おおいのです[21]。

きかいを かえば、まえの おはなしの「げんかしょうきゃく」で、あとの ねんから すこしずつ けいひに なります。もうけは、また けいひの なかに もどって きます。

国税庁の統計に、利益を出した会社(約119万社)の、利益の使いみちが出ています[3]。2024年度分では、合計140兆3,268億円のうち、社内留保が49.7%、株主などへの支払配当が29.3%、法人税額等が14.8%、その他の社外流出が6.2%でした。社内留保は、期末の利益積立金から期首の利益積立金を引いた額、その他の社外流出は、道府県民税・市町村民税などです[4]。税金にあたる2つを合わせると、約2割になります。

財務省の統計でも、2024年度の全産業の当期純利益は89兆6,453億円で、配当金が40兆747億円(純利益の44.7%)でした[1]。配当は、会社にお金を出してくれた株主に、利益の一部を分けるお金です。

会社に残った分の累計は、貸借対照表の「利益剰余金」に載り、「内部留保」と呼ばれます。2024年度末には、全産業で約637.5兆円でした[1]。ここで気をつけたいのは、内部留保は、会社が今持っている現金や預金のことではない、という点です。J-Net21は、多くは機械設備や建物などの資産として持たれていると説明しています[21]。設備は、2章で見たとおり、減価償却として次の年からまた費用に入ります。1章の「約79円」の中に、その分が戻ってくる、ということです。

内部留保には、財政の安定や投資の元手になるという良い面と、増やしすぎると配当や賃上げが抑えられたように受け取られかねないという面があると、J-Net21は説明しています[21]。

国税庁の会社標本調査は、利益計上法人(119万1,755社)の益金処分を集計している。2024年度分は、益金処分の総額140兆3,268億円のうち、社内留保49.7%、支払配当29.3%、法人税額等14.8%、その他の社外流出6.2%だった[3]。社内留保は当期末と期首の利益積立金の差、その他の社外流出は道府県民税・市町村民税などをいう[4]。赤字の会社は、この集計に入っていない。

財務省の法人企業統計では、2024年度の全産業の当期純利益が89兆6,453億円、配当金が40兆747億円(44.7%)[1]。配当は、出資者である株主に、利益の一部を分ける支払いだ。

会社に残った利益の累計は、貸借対照表の純資産の部に「利益剰余金」として載り、一般に内部留保と呼ばれる。2024年度末の全産業の利益剰余金は637兆5,316億円(前年度比6.1%増)[1]。ただし、内部留保は現金や預金のことではない。J-Net21は「内部留保=会社が現在保有している現金や預金」ではなく、多くの場合は機械設備や建物などの資産として保有されていると説明する。メリットは財務の安定と投資の元手、デメリットは、蓄積しすぎると資金の運用が非効率になりうること、配当や賃金の引き上げが抑えられたと受け取られうることだという[21]。

内部留保が設備に変わると、2章の減価償却として、次の年から費用に入っていく。1章の「約79円」(仕入れ・外注・電気代・広告・減価償却など)の一部は、そうして過去の利益が戻ってきたものでもある。売上の行き先の話は、利益のゆくえの話に戻ってくる。

9. 100えんを、じぶんで わって みよう

9. 身近な会社の「100円あたり」を計算してみる

9. 決算資料の数字を「売上100円あたり」に直す

ノートに、100えんの ジュースを うる みせを かいて、けいさんして みましょう。うりあげ 100えん。ざいりょうと しいれが 60えん。はたらく 人が 20えん。やちんが 10えん。のこりは いくら?(10えん)

つぎに、ざいりょうの ねだんを 75えんに かえて みます。のこりは、いくらに なるでしょう。マイナスに なったら、それが「あかじ」です。うれる かずが ふえても、もうけが ふえるとは かぎらない わけが、けいさんで みえて きます。

もっと しりたく なったら、おうちの 人と いっしょに、ざいむしょうの「ほうじんきぎょうとうけい」の ページを ひらいて みましょう[25]。この メモの 数字は 2024ねんどぶんですが、もっと あたらしい ものも のって います。

次は、この記事のやり方を、身近な会社で試す番です。大人といっしょに、金融庁のEDINET(有価証券報告書などの開示書類を、誰でも見られるシステム)を開いて[24]、名前を知っている会社の損益計算書を探します。

売上高、営業利益、当期純利益を、それぞれ売上高で割って、「売上100円あたり」にしてみましょう。財務省の業種別の営業利益率[1]と並べると、その会社が平均より上か下かが見えてきます。前の年と比べて、売上が増えたのに営業利益が減っていたら、費用のどの項目が増えたのかを探します。これは数字の読み方の練習で、株を買うかどうかの助言ではありません。

この記事の数字は主に2024年度分ですが、財務省の法人企業統計調査のページには、2025年度分も出ています[25]。平均5円の裏には、20円残す会社と、1円も残らない会社が、どちらもいるはずです。その差は、何を売るか、費用の形、回転の速さのうち、どれで説明できるのでしょうか。

この記事の数字は、金融業・保険業を除く全産業の平均だ。次は、個々の会社で同じ計算をしてみる。金融庁のEDINETは、有価証券報告書などの開示書類を、提出から公衆縦覧まで電子化したシステムで、誰でも閲覧できる[24]。名前を知っている会社の連結損益計算書から、売上高・売上原価・販売費及び一般管理費・営業利益・経常利益・当期純利益を拾い、売上高で割って「売上100円あたり」に直す。

比べる相手は、財務省の業種別の営業利益率(4章)[1]。前の年と並べて、売上が増えたのに営業利益が減っていたら、売上原価率と販管費率のどちらが上がったのかを見る(3章)。減価償却費と、現金の動きを示すキャッシュフロー計算書を見比べれば、利益と現金のずれ(6章)も見える。株を買うかどうかの助言ではなく、数字の読み方の練習として使う。

財務省の法人企業統計調査のページには、この記事の内訳で使った2024年度分のほか、2025年度分も公開されている[25]。平均5円の裏に、20円残す会社と1円も残らない会社が、どちらもいるはずだ。その差は、何を売るか、費用の構造、回転の速さのどれで説明できるか。同じ業種の会社を2〜3社並べると、答えの手がかりが見つかるかもしれない。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

このメモは、下にあげた公開情報をもとに書いています。文章や図を無断で転載してはいません。もっと正確に知りたいときは、必ず下の出典にあたってください。リンク先の内容や、リンク先で起きたことについて、当サイトは責任を負いません。

  1. 財務省 財務総合政策研究所「年次別法人企業統計調査(令和6年度)結果の概要」(2025年9月1日)。 https://www.mof.go.jp/pri/reference/ssc/results/r6.pdf (売上高・営業利益・経常利益・当期純利益・配当金・利益剰余金、業種別・資本金別の利益率、付加価値の構成、2020〜2024年度の推移)
  2. 中小企業庁「中小企業の会計 31問31答」問5「損益計算書」って、何ですか? https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/kaikei/tools/2008/06.html (収益-費用=利益、利益の5段階と各項目の説明)
  3. 国税庁「会社標本調査結果(令和6年度分)調査結果の概要」。 https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/kaishahyohon2024/pdf/kekka.pdf (欠損法人の割合、業種別の所得率、益金処分の内訳、法人税額、繰越欠損金、減価償却費、交際費等・寄附金)
  4. 国税庁「会社標本調査結果(令和6年度分)調査の概要」。 https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/kaishahyohon2024/pdf/gaiyou.pdf (欠損法人・利益計上法人・社内留保・その他の社外流出などの用語の定義)
  5. 国税庁 タックスアンサー「No.5759 法人税の税率」。 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5759.htm (普通法人の税率15%・23.2%と、年800万円以下の部分の区分)
  6. 財務省「諸外国における法人実効税率の比較(2026年1月現在)」。 https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/corporation/084.pdf (日本の法人実効税率29.74%と、防衛特別法人税の対象となる場合の30.64%)
  7. 財務省「「法人税」を知ろう ── もっと知りたい税のこと」(令和7年7月)。 https://www.mof.go.jp/tax_policy/publication/brochure/zeisei0707_pdf/06.pdf (法人の所得金額は益金の額から損金の額を引いた金額であること、損金の説明)
  8. 総務省「地方税制度 法人住民税」。 https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/150790_08.html (均等割と法人税割のちがい、均等割は赤字の法人も払う「地域社会の会費」であること)
  9. 総務省「地方税制度 法人事業税」。 https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/150790_09.html (所得割・収入割・付加価値割・資本割と、外形標準課税の対象)
  10. 国税庁 タックスアンサー「No.6303 消費税および地方消費税の税率」。 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6303.htm (消費者が負担する消費税の標準税率10%・軽減税率8%と、国・地方の内訳)
  11. 国税庁 タックスアンサー「No.6351 納付税額の計算のしかた」。 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6351.htm (売上税額から仕入税額を控除して納付税額を求めること)
  12. 国税庁 タックスアンサー「No.6301 課税標準」。 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6301.htm (課税標準となる対価の額に、消費税相当額は含まれないこと)
  13. 国税庁 タックスアンサー「No.2100 減価償却のあらまし」。 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2100.htm (個人事業の場合の説明。減価償却資産は使用可能期間にわたって分割して経費にすること)
  14. 国税庁 確定申告書等作成コーナー「耐用年数(器具・備品)(その1)」。 https://www.keisan.nta.go.jp/r6yokuaru/aoiroshinkoku/hitsuyokeihi/genkashokyakuhi/taiyonensukigu1.html (パーソナルコンピュータ(サーバー用を除く)の耐用年数が4年であること、耐用年数が種類ごとに決まっていること)
  15. 厚生労働省「令和3年就労条件総合調査の概況」(2021年11月9日)。 https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/jikan/syurou/21/dl/gaikyou.pdf (労働費用総額、現金給与額、法定福利費・法定外福利費・退職給付等の費用などの金額と割合)
  16. 日本年金機構「厚生年金保険の保険料」。 https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/hoshu/20150515-01.html (保険料は事業主と被保険者が半分ずつ負担すること、保険料率18.3%)
  17. 厚生労働省「労災保険制度」。 https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/rousaihoken.html (労災保険の費用は、原則として事業主の負担する保険料でまかなわれること)
  18. 厚生労働省「賃金の支払方法に関する法律上の定めについて教えて下さい。」(労働基準情報:よくある質問)。 https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/faq_kijyungyosei05.html (賃金支払の五原則、所得税の源泉徴収などを賃金から差し引けること)
  19. e-Gov法令検索「民法」第624条(報酬の支払時期)。 https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089 (労働者は約束した労働を終わった後でなければ報酬を請求できないこと)
  20. 中小企業基盤整備機構 J-Net21「黒字倒産とはどのようなものでしょうか?また、そうならないためにはどうしたらよいのでしょうか?」。 https://j-net21.smrj.go.jp/qa/financial/Q1045.html (黒字倒産の説明、帳簿上の損益と現金のずれ、成長期の売掛金・在庫、過剰在庫の資金負担)
  21. 中小企業基盤整備機構 J-Net21「内部留保のメリットとデメリットについて教えてください。」(2025年3月21日)。 https://j-net21.smrj.go.jp/qa/financial/Q1515.html (内部留保は利益剰余金で、現金・預金とはかぎらず、多くは機械設備や建物などであること、メリットとデメリット)
  22. 中小企業基盤整備機構 J-Net21 起業マニュアル「損益分岐点を使った目標売上高」。 https://j-net21.smrj.go.jp/startup/manual/list5/5-2-9.html (固定費と変動費の説明、損益分岐点売上高=固定費÷(1-変動費比率))
  23. 日本銀行「企業物価指数(2022年12月速報)」付・2022年中の企業物価指数の動向。 https://www.boj.or.jp/statistics/pi/cgpi_release/cgpi2212.pdf (2022年平均の国内企業物価指数、電力・都市ガス・水道、輸入物価指数の前年比)
  24. 金融庁「EDINETについて」。 https://www.fsa.go.jp/search/20130917.html (有価証券報告書などの開示書類を、提出から公衆縦覧まで電子化したシステム)
  25. 財務省 財務総合政策研究所「法人企業統計調査 調査の結果」。 https://www.mof.go.jp/pri/reference/ssc/results/data.htm (年次別・四半期別の調査結果の一覧。2025年度分も公開されていること)
  26. 財務省 財務総合政策研究所「年次別法人企業統計調査(令和7年度)結果の概要」(2026年9月1日)。 https://www.mof.go.jp/pri/reference/ssc/results/r7.pdf (2025年度の全産業の売上高1,720兆2,560億円、経常利益124兆8,313億円、売上高営業利益率5.4%、売上高経常利益率7.3%)

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