1. きゅうりと にんじんは、なにが ちがうの?
1. 曲がる理由と二股になる理由は、同じではない
1. 曲がり果は養分、二股根は根の行く手 ── 原因の違い
まがった きゅうりと、ふたまたの にんじんは、にて いるようで、できかたが ちがいます。
きゅうりは、はっぱを つみすぎたり、かぶが よわったり して、みに えいようが うまく とどかない ときに、まがる ことが あります[1]。
にんじんは、ねっこが のびて いく さきに、かたい つちや いしが あると、ふたまたに なる ことが あります[1]。
つまり、きゅうりは「えいようの とどきかた」、にんじんは「ねっこの いく さき」が かぎです。では、きゅうりから くわしく みて いきましょう。
先に答えを短く言うと、キュウリが曲がる原因で多いのは、実へ運ばれる養分が少なくなることです。ニンジンが二股になる原因の一つは、根が伸びる先に硬い土や石があることです。どちらも、畑の中の条件が形に表れることがあります。
奈良県の農業の相談窓口の資料には、キュウリが曲がる原因として、葉を摘みすぎたり、草勢(株全体の勢い)が弱かったりして、実へ養分が順調に運ばれないことが挙げられています。ネットにからまるなどの物理的な原因もありますが、一般には生理的な原因による曲がりが多いと書かれています[1]。
同じ資料は、ニンジンについて、根の伸びる先の土の中に硬い土や石があるとき、股根(二股の根)になると説明しています[1]。
では、実へ運ばれる養分は、どんなときに少なくなるのでしょう。
2. きゅうりは、どんな ときに まがるの?
2. キュウリは、どんなときに養分が足りなくなるのか
2. 樹勢が落ちると曲がり果が増える ── キュウリの条件
きゅうりの はっぱは、ひかりを うけて、みを そだてる ごはんを つくる ところです。そこで、はっぱを つみすぎると、みに とどく ごはんが すくなく なります[1]。
ほかにも、ひが たりない、ちからが でない、かわく といった ことで、きゅうりの かぶ ぜんたいが つかれると、まがった みが ふえると いわれます[2]。
また、はなが さいた ときに、みの もとの ふくらみ(しぼう)が ちいさい ものは、えいようが すこししか もらえず、まがりやすい そうです[1]。
まがり方は、まんなかの あたりから ぐいっと まがり、さきが ほそく なったり、ふとく なったり する ことが 多いと いわれます[2]。
では、にんじんの ふたまたは、どうして できるのでしょう。
キュウリの実は、葉でつくられた養分が運ばれてきて育ちます。そのため、葉を摘みすぎれば、運ばれる養分は少なくなります[1]。
高知県の農業情報サイトには、成り疲れ、日照不足、窒素欠乏、乾燥などで樹勢(株の勢い)が落ちてくると、曲がり果が増えると書かれています[2]。たくさん実をつけて疲れた株も、日が足りない株も、水の足りない株も、実へ運ばれる養分が少なくなりやすい、ということです。
もう一つ、花の時点ですでに決まる要素もあります。開花したときに子房(のちに実になる部分)が小さいものは、養分の分配が少なくなり、曲がり果になりやすいと奈良県の資料は説明しています[1]。
曲がり方にも特徴があります。実の中心あたりから大きく曲がり、先が細くなったり太くなったりすることが多い、と高知県の資料は書いています[2]。
さて、キュウリは「届け方」が原因でした。ニンジンは地面の下で何に出会うのでしょう。
キュウリの果実は、葉で光合成によってつくられた養分が転流して育つ。したがって、葉を摘みすぎる、株の勢い(草勢)が弱いといった状況では、果実へ運ばれる養分が少なくなり、形が崩れやすい[1]。
高知県の資料は、成り疲れ、日照不足、窒素欠乏、乾燥などで樹勢が低下すると発生が増えると整理している[2]。成り疲れとは、実をつけすぎて株が消耗した状態をさす。つまり、曲がり果は一つの原因で説明されるのではなく、「株全体が疲れている」というサインとして現れる。
花の段階でも差がある。開花時に子房が小さい花は、そもそも分配される養分が少なく、曲がり果になりやすい[1]。株が元気でも、花ごとに条件がそろうとは限らない、ということだ。
症状は、果実の中心付近から著しく曲がり、先細りや先太りを伴うことが多い[2]。ネットなどにからまる物理的な要因もあるが、一般には生理的なものが多い[1]。この点は、次のニンジンと対照的である。ニンジンでは「物理的な障害」が主役になる。
3. にんじんは、どうして ふたまたに なるの?
3. ニンジンの根は、行く手をふさがれると二股になる
3. 主根が止まると二次根が埋め合わせる ── 二股根の成り立ち
にんじんの おおきな ねっこは、しゅこん(まんなかの ふとい ねっこ)です。しゅこんが まっすぐ したへ のびれば、まっすぐな にんじんに なります。
ところが、いくさきに かたい つちや いしが あると、しゅこんは まっすぐ のびにくく なります[1]。しゅこんが きずつくと、よこから ほかの ねっこが のびて、おぎなうように ふとります。それが、ふたまたに みえる ようすです[3]。
つちが ぎゅっと かたまって いる ところや、いしが おおい ところでも、ふたまたや へんな かたちの ねっこが できると いわれます[5]。
つまり ふたまたは、にんじんが「ここは とおれない」と なったとき、べつの みちを みつけた すがたとも いえます。ほかにも げんいんは あります。
ニンジンのおもな根は、主根と呼ばれる太い根です。ふつうは、まっすぐ下へ伸びます。ところが、伸びる先に硬い土や石があると、主根の伸びが妨げられたり、向きがそらされたりすることがあります[1]。
アメリカのユタ州立大学の資料では、主根が傷つくと二次根(横から出る根)が成長して埋め合わせ、二股のように見えると説明されています[3]。通れなくなった主根の代わりに、脇の根が役目を引き継いで太る、というわけです。
土の状態も関わります。ミネソタ大学の資料は、土が締まっていたり、石が多かったりすると、二股や変形した根ができると書いています[5]。イリノイ大学の資料は、石や深い耕し方のほか、土の準備が不十分なことが原因としてより多いと説明しています[4]。
でも、石がなくても二股になることはあります。ほかには、どんな原因があるのでしょう。
ニンジンの主根は、通常は垂直に伸びる。伸長方向の土中に硬い土や石があると、主根の伸びが妨げられたり、向きがそらされたりすることがある[1]。主根が損傷を受けた個体では、二次根が成長して損傷部分を埋め合わせ、結果として二股(フォーク)状の外観になる[3]。
なお、ここでいう「二股」は根の途中で二本に分かれた形をさす。分かれ方は、障害物の位置や損傷の程度で変わると考えられるが、資料はその細かな分類までは述べていない。
土の条件についての記述は、資料ごとに視点が少しずつ違う。ミネソタ大学の診断ページは、土が圧縮されていたり石が多かったりすると二股や変形した根ができるとする[5]。イリノイ大学の資料は、石、深い耕し、そして(より頻繁には)土の準備不足を並べ、根結線虫の寄生も原因に挙げている[4]。
三つの資料を並べると、共通するのは、根の伸び先に硬い土や石、締まった土があると形が乱れやすい、という点である。では、石や硬い土以外に、何が根を傷つけるのか。
4. ほかにも、にんじんを ふたまたに する ことは あるの?
4. 肥料、虫、水やり、苗の間引き ── 石がなくても二股になる理由
4. 肥料・線虫・水・間引き ── 二股根を引きおこす別の条件
にんじんの ねっこは、ひりょう(こやし)が おおすぎても きずつく ことが あります。まだ じゅくして いない たいひ(こやしの いっしゅ)を つかった ときも、ねっこが きずついて、わかれた かたちに なる ことが あります[3]。
つちの なかに いる、とても ちいさな いきもの(こんけつせんちゅう)が ねっこに ついても、ねっこが ゆがんだり、ふたまたに なったり します[6]。
みずを やりすぎても、ひげのような ねっこが ふえて、ふたまたに なると いわれます[7]。
たねを たくさん まきすぎて、まびきを しないと、ねっこが ねじれたり、からまったり します[4]。
こうして みると、にんじんが ふたまたに なる ことは、いくつもの わけが あって、はたけの じょうけんが かたちに でる ことが あります。でも、かたちだけでは げんいんは きめられません。
石や硬い土がなくても、二股になることがあります。ユタ州立大学の資料は、肥料の置き方、虫や病気による傷、窒素の多すぎ、未熟な堆肥(発酵が十分でないもの)の使用でも根が傷つき、枝分かれが起きると説明しています[3]。日本の奈良県の資料にも、肥料や未熟な堆肥があるときに股根になる、と書かれています[1]。
根結線虫という、土の中にすむ小さな生きものがニンジンに寄生すると、根が二股になったり、ゆがんだり、小さくなったりします[6]。
水やりのしすぎも原因の一つに挙げられています。水をやりすぎると、細い毛のような根が増え、二股にもなるという説明です[7]。また、種を厚くまきすぎたり、間引きが足りなかったりすると、根がねじれたり絡み合ったりします[4]。間引きは、苗が込み合わないように、育つ株を選んで抜く作業です。
石、肥料、虫、水、苗の込み合い。ニンジンの形には、畑での条件が表れることがあります。ただし、形だけで原因は決められません。
石や締まった土のほかにも、根を傷つける要因は複数ある。ユタ州立大学の資料は、肥料の置き場所、昆虫や病気による損傷、窒素過多、未熟な堆肥の使用が根を傷つけ、枝分かれを招くとする[3]。奈良県の資料も、肥料や未熟な堆肥がある場合に股根になるとしている[1]。肥料や堆肥が直接触れると根が傷むためと考えられるが、資料は仕組みの詳細までは述べていない。
生物的な要因としては、根結線虫がある。ニンジンの根に寄生すると、根が二股、ゆがみ、矮小といった症状を示す[6]。
水の管理も関わる。水のやりすぎは、毛根の形成と二股化を促すとされる[7]。また、播種が密すぎる、あるいは間引きが不十分だと、ねじれや絡み合いが生じる[4]。これは二股とは別の変形だが、「根が自由に伸びる空間」が奪われるという点で、同じ見方でとらえられる。
要するに、二股は「障害物に当たる」だけでなく、「傷つく」「込み合う」「水が多すぎる」といった複数の条件の結果で、土の準備と日々の世話が鍵になる。ここから、出来た野菜を台所で眺めたとき、どんな見方ができるだろうか。
5. だいどころの やさいを、じっくり みてみよう
5. 台所の野菜で、畑の中の出来事を想像してみる
5. 形から畑の条件を推測する ── 観察の道すじ
ほんとうに はたけで なにが あったかは、やさいを みただけでは わかりません。でも、「こんな ことが あったかも」と かんがえる ことは できます。
やってみよう。おうちや おみせで、ふたまたや ねじれた にんじんを みつけたら、ふたまたに なっている ところを よく みてください。しゅこんの さきに、きずの ようなものが ないか、よこから ふとった ねっこは どの あたりかを、えに かいてみましょう。ほうちょうは つかいません。
きゅうりが まがって いたら、どちら がわに まがっているか、さきが ほそいか ふといかも みてみましょう。まがり方を、しゃしんや えに のこしておくと、あとで くらべられます。
形が不揃いな野菜を見つけたら、畑の中で何があったのかを想像してみてください。
ニンジンなら、二股の分かれ目の位置と、それぞれの根の太さを見てみます。途中で分かれているなら、伸び先で何かに当たった可能性があります。細い毛のような根が多いこともあります。水のやりすぎも原因の一つですが、形だけでは判断できず、あくまで想像のきっかけです。
キュウリなら、曲がりが実のどのあたりから始まるか、先が細いか太いかを見ます。中心あたりから曲がって先が細いなら、高知県の資料が書く典型的な症状に当たります[2]。
やってみよう:家にある野菜を2〜3本ならべ、形を紙にスケッチして、「畑で何があったか」を一言ずつ書いてみましょう。刃物は使わず、見るだけで十分です。
野菜の形には、畑での条件が表れることがある。ただし、一つの形に複数の原因が重なりうるため、形だけで原因は決められない。資料が示すのは「そうなりやすい条件」までである。
観察の観点は二つある。キュウリでは、曲がりの始まる位置と、先細り・先太りの有無[2]。ニンジンでは、分岐の位置、二次根の太さ、細根の量である[3][7]。家にある野菜で、刃物を使わずに外観だけ観察するとよい。
原典に当たるなら、奈良県の「今月の質問」(日本語)が、キュウリとニンジンの両方を短く扱っていて入口に向く[1]。ユタ州立大学、イリノイ大学、ミネソタ大学の資料は英語だが、ニンジンの原因が項目ごとに整理されている。
残る疑問もある。キュウリの品種による曲がりやすさの違い、家庭菜園での土壌改良の具体的な配合は、今回の資料からは分からない。そこから先は、自分の畑や育てる品種に合わせて調べていく領域である。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
今回は、日本の県の農業情報(キュウリ・ニンジンの両方)と、アメリカの大学の普及資料(ニンジンの原因)を突き合わせた。
- 奈良県「過去の「今月の質問」」 https://www.pref.nara.lg.jp/n120/28741.html (キュウリの曲がり・ニンジンの股根)
- こうち農業ネット「きゅうり 曲がり果」 https://www.nogyo.tosa.pref.kochi.lg.jp/info/dtl.php?ID=3638 (曲がり果の要因・症状)
- Utah State University Extension「Physiological Problems」 https://extension.usu.edu/vegetableguide/root-crops/physiological-problems (主根の損傷・肥料)
- University of Illinois Extension「Carrots | Home Vegetable Gardening」 https://extension.illinois.edu/gardening/carrots (石・耕し・間引き)
- University of Minnesota Extension「Carrot > Root > Forked or misshaped root」 https://apps.extension.umn.edu/garden/diagnose/plant/vegetable/carrot/rootforked.html (締まった土・石の多い土)
- Utah State University Extension「Nematodes」 https://extension.usu.edu/vegetableguide/root-crops/nematodes (根結線虫の被害)
- Utah State University Extension「How to Grow Carrots in Your Garden」 https://extension.usu.edu/yardandgarden/research/carrots-in-the-garden (水のやりすぎ)
なおした ところ
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