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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

じてんしゃの むれの まん中は、なぜ らくなの?

集団の中ほどで、風は「約3分の1の速さ」になる ── 自転車の集団走行と空気抵抗

自転車集団(ペロトン)の空気抵抗 ── Kyle(1979)から Blocken ら(2018)の数値流体計算まで

分野:技術

じてんしゃの 大きな むれの まん中では、時速54キロで 走って いても、時速17キロくらいの 風しか 受けない ばしょが ある、という けいさんが あります。どうして、そんな ことに なるのでしょう。

この 話では、風が じてんしゃに とって どれだけ じゃまなのか、後ろに つくと どれだけ ちがうのか、そして 先頭の 人は そんを するのか。その こたえが わかります。

自転車の大きな集団の中ほどにいる選手は、時速54kmで走っていても、時速12〜17kmで走るときと同じくらいの風しか受けていない、という計算結果があります(54kmは例として置いた速さです)。計算上は、風の強さが3分の1から4分の1ほどになるということです。

なぜ、人の後ろにいるだけで、それほど風が弱くなるのでしょうか。空気抵抗の割合、集団の位置ごとの差、そして先頭の選手が交代する理由が分かります。

自転車集団(ペロトン)の中ほど後方では、選手の空気抵抗が単独走行の5〜10%まで下がるという数値流体力学(CFD)の計算結果がある[2]。抵抗が速度の2乗に比例することから、これは集団の速度の約3.2〜4.5分の1の速さで走る風に相当する。

従来の少人数研究では、後ろの選手の抵抗は単独走行の70〜50%とされてきた[2]。この差はどこから出るのか。研究ごとの条件の違いと、先頭交代の意味が分かる。

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1. じてんしゃに とって、風は どれくらい じゃま?

1. 自転車のエネルギーは、ほとんど風に使われる

1. 走行エネルギーに占める空気抵抗の割合

じてんしゃで 走ると、風を 顔で 感じます。この 風の じゃまは、思って いる より 大きいようです。

1979ねんの 研究では、じてんしゃで 使う 力の 8わりから 9わりが、風に ぶつかる ぶんに 使われると 書かれて います[1]。人が 走る ときは、4パーセントから 8パーセントで、ずっと 小さい かずです。

ただし、これは はやく 走る ときの めやすです。ゆっくり 走る ときや、のぼり坂では、もっと 小さく なります。

風の じゃまが 大きい ぶん、風を よけられる ときの ごほうびも 大きい、というわけです。

自転車で走るとき、こぐ力の大半は、空気を押しのけることに使われます。1979年のKyleの研究では、自転車のエネルギー消費の80〜90%が空気抵抗によるもので、人が走る場合の4〜8%と比べてずっと大きいとされています[1]。

この80〜90%は速く走るときの目安です。ゆっくり走るときや登り坂では、割合は下がります。

空気抵抗がこれだけ大きな割合を占めるからこそ、前の人に風を受けとめてもらうと、効果が大きく出ます。

Kyle(1979, Ergonomics 22)は、自転車走行の代謝コストの80〜90%が空気抵抗に向かい、走者ではその影響が4〜8%とはるかに小さいと報告した[1]。集団で風を避ける効果が自転車で特に大きい理由の一つとされる。

この比率は高速走行時の目安であり、低速や登坂では空気抵抗の割合は下がる。また、この要旨は検索結果の抜粋で確認したもので、本文全体は読んでいない。

2. 前の 人の 後ろに つくと、どうなる?

2. 一列で走ると、後ろの人は楽になる

2. 一列走行(ドラフティング)の測定値

前の 人の 後ろに つくと、風の 当たり方が 弱く なります。風から、すこし まもって もらえる からです[1]。

1979ねんの 研究では、きょうぎの はやさで、後ろの 人が 出す 力が 3わり いじょう へる、と 書かれて います[1]。

そとの 道を 走りながら、体の さんその かずを はかった しらべも あります。時速40キロで、8人の れつの さいごに つくと、体が 使う さんその かずが 39パーセントくらい へりました[4]。たった 1人の 後ろより、8人の 後ろの ほうが、へり方は 大きく なって いました。

いつも 前を 走る 人は、ずっと 大きな 風を 受けます。あとで、そこに 出てくる 「交代」の 話を します。

前を走る人の後ろにつくことを、ドラフティングといいます。後ろの人は風から部分的に守られ、エネルギーの消費が少なくなります。Kyleは、競技の速さで、外部に出すパワーが30%以上減ると報告しました[1]。

体の中でも測られています。McColeらは、屋外を時速40kmで走り、8人の列の最後尾につくと、酸素の消費量が39±6%下がったと報告しました。1人・2人・4人の列の後ろよりも、下がり方は大きかったそうです[4]。

ただ、少人数の一列走行の研究では、後ろの選手の空気抵抗は単独走行の70〜50%まで下がると考えられてきました。そして、この数字が大きな集団にも当てはめられてきたと、次の研究は述べています[2]。

集団の後ろの走者は風から部分的に守られ、エネルギー消費が小さくなる。Kyleは、競技速度で外部パワーが30%以上減少すると報告した[1]。McColeら(1990, J Appl Physiol)は、時速40kmで8人列の最後尾につくと酸素消費量が39±6%低下し、1人・2人・4人の列の後ろより有意に大きいとした[4]。

少人数の一列走行の従来研究では、単独走行の70〜50%まで空気抵抗が下がるとされ、この値が大集団にも使われてきた[2]。日本語の解説には、4人の一列で2番手の動力が15〜30%、3・4番手が20〜35%少ないとの数字があるが、一次の論文を未確認なので、「とされる」程度の扱いにとどめる[6]。なお、Kyleと McCole の要旨は検索結果の抜粋で確認した。

3. 大きな むれの まん中では、どうなる?

3. 大集団の中ほどは、さらに風が弱い

3. 121人の集団のCFD計算(Blocken ら, 2018)

大きな むれでは、まわりを たくさんの 人が かこみます。前だけでなく、よこにも 人が いる わけです。それなら、後ろに 1人 つく ときより、もっと 風が 弱く なりそうです。

しらべた 人たちは、121人の むれを コンピューターで けいさんしました。あわせて、風どうで 小さな もけいを 使って たしかめました[2]。

けっかは、むれの 全員の 風の じゃまが、1人で 走る ときより へりました。まん中の 後ろの ほうでは、1人の ときの 20分の 1から 10分の 1まで 下がりました[2]。

たとえば 風の じゃまが 10分の 1なら、はやさに すると、およそ 3分の 1です。時速54キロの むれなら、時速17キロくらいの 風と 同じです[5]。

ただし、20分の 1は、いちばん 小さく なる ばしょの ことです。ぜんいんが そうなる わけでは ありません。

大きな集団では、前だけでなく、横にも人がいます。そこで、Blockenらの研究チームは、121人の集団を2種類の並べ方でコンピューターで計算しました(約30億のマス目を使ったCFD)。さらに、121体の模型を入れた風洞実験4回で、その計算を確かめました[2]。

結果は、集団の全員で、空気抵抗が単独で走るときより減るというものでした。中ほどの後ろのほうでは、単独の5〜10%まで下がっていました[2]。

空気抵抗は速さの2乗に比例するので、抵抗が5〜10%なら、風の速さは約0.22〜0.32倍(約4.5〜3.2分の1)になります。たとえば時速54kmの集団なら、時速12〜17kmで走る風に相当します[2][5]。

ここで注意したいのは、5〜10%は「中ほど後ろ」の最小値だということです。集団の全員がそうなるわけではなく、位置によって受ける風はかなり違います。

Blocken ら(2018, J. Wind Eng. Ind. Aerodyn.)は、121人の集団2種類を約30億セルのCFDで計算し、121体の模型を含む4回の風洞実験で検証した。全員の空気抵抗が単独走行より減り、集団の中ほど後方では単独走行の5〜10%まで下がる[2]。

論文はこれを「等価な走行速度」でも表し、集団の速度の4.5〜3.2分の1に相当するとする。抵抗が速度の2乗に比例するので、抵抗5%は速度の約0.22倍(1/4.5)、10%は約0.32倍(1/3.2)になり、数字の整合が取れる[2]。解説記事は時速54kmの集団の中央の選手が時速17kmに相当すると述べるが、この換算は二次資料の設定値であり、論文要旨に速度はない[5]。同記事によれば、列12〜14付近の中核では単独走行の10〜20分の1の抵抗という。

5〜10%は中ほど後方の最小値であり、集団の全員に当てはまる数字ではない。「速度が5〜10分の1」でもない(抵抗が5〜10%で、速度は約3〜4.5分の1)。

4. 先頭の 人は、そんばかり?

4. 先頭は交代でつとめる

4. 先頭の交代とチームタイムトライアル

いちばん 前の 人は、風を いちばん 受けます。それでは、先頭の 人だけが、ずっと つらい のでしょうか。

チームで きょうそうを する ときは、先頭を こうたい します。前に 出た 人は 風を うけて 引き、そのあと よこに はずれて、さいごの 後ろに もどります。その あいだ、ほかの 人は 後ろで 休めます[3]。

7人から 9人が ぴったり くっついて 走ると、1人 あたりの 風の じゃまは、1人の ときの 半分くらいに なると けいさんされて います[3]。

後ろに つく 人が いる ことで、先頭の 人も ほんの すこし 楽に なる、と 言われます。でも、それは 2〜3パーセントくらいで、先頭が 楽に なる とは 言えません[6]。

先頭の選手は、いちばん大きな空気抵抗を受けます。そのため、チームで競うタイムトライアルでは、選手が交代で先頭に立ちます。前を引いた選手は横へ外れ、最後尾に戻って、後ろで回復しながら走ります[3]。

チームのタイムトライアル(最大9人)の一列走行を、風洞で確かめたCFDで調べた研究では、7〜9人がぴったり近づいて走ると、1人あたりの平均の抵抗が単独走行のおよそ半分になりました[3]。

後ろの選手が、前の選手にも小さな恩恵を与えるといわれます。間隔が1m以内だと、先頭の抵抗が約2〜3%減るという説明があります。ただし、これは日本語の解説にある数字で、論文で確かめたものではありません[6]。先頭が楽になるほどの差ではありません。

Blocken らのチームタイムトライアル(最大9人)の研究では、選手が交代で先頭に立ち(pull)、他の選手が先頭の航跡(slipstream)を利用する。先頭が最大の空気抵抗を受け、引いた後は横へ外れて最後尾に戻る[3]。風洞で検証したCFDでは、最後尾の走者の抵抗が最小になるのは5人までの群れとされ、7〜9人が近接して走る場合の平均抵抗は単独走行の約半分だった[3]。

後続が先頭に与える影響として、間隔1m以内で先頭の抵抗が約2〜3%減るとされる。背後の渦流の減少による説明で、二次資料の数字で一次資料では未確認であり、先頭が有利になる根拠にはならない[6]。

5. この かずは、どこまで 使える?

5. この数字をどう読むか

5. 数値の適用範囲

この けいさんは、風が ない ところで、体の 大きさが 同じ 人たちが、きまった ならび方を した ときの 話です。

ほんものの レースでは、風が ふき、れつが みだれ、人の 体も ちがいます。だから、5〜10パーセントは、そのまま 当てはまる とは かぎりません。

それでも、「大きな むれの 中では、風が とても 弱い ばしょが ある」という 大きな すじは、かわりません。

この計算は、特定の並び方をした集団を対象にしたものです。実際のレースでは、風向きや列の乱れが、計算とは違います。5〜10%という数字が、そのまま当てはまるとは限りません。

「前の人が風を受けとめてくれて、後ろは風が弱まる」という程度が、確かに言えるところです。

CFDは特定の配置を対象にした計算であり、実レースの風向きや列の乱れでの値は別に考える必要がある。McCole と Kyle の要旨は検索結果の抜粋で確認したにとどまる[1][4]。

6. 風を 手で 感じて みよう

6. 自分でも調べてみたくなったら

6. 自分でも調べてみたくなったら

まわりに 人も 車も いない、ひろい ところで、手のひらを 前に 向けて 歩いて みます。つぎに、ゆっくり 走って みます。風の 強さは どう かわりますか。

はやく 走るほど、風の じゃまは 大きく なるはずです。じてんしゃで 前の 人に くっついて 走ると ぶつかる きけんが あるので、やらないで ください。

もっと 知りたい 人は、図書かんで 自転車の 本を さがして みましょう。

広い公園や校庭など、人や車がいない安全な場所で、手のひらを進行方向に向けて、歩くときと小走りのときの風の強さを比べてみてください。速さが増えるほど、手が受ける風は強くなるはずです。空気抵抗が速さの2乗で増えることを、手で感じる練習になります。

自転車で前の人に近づいて走るのは、衝突の危険があるので、試さないでください。

調べるなら、Blockenらの論文[2]の要旨が入り口です。英語で書かれた資料です。

手軽な確かめとして、人や車のいない広い場所で、手のひらを進行方向に向けて歩行と小走りで風の強さを比べる。抵抗が速度の2乗に比例するなら、速度が2倍で約4倍になるはずである。ただし、自転車で前走者に接近して走る実験は、衝突の危険があるので勧めない。

原典は Kyle(1979)[1]、Blocken ら(2018)の集団の研究[2]とチームタイムトライアルの研究[3]、McCole ら(1990)[4]の要旨が読める。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

本文で使った事実の出どころ。論文は要旨(検索結果の抜粋を含む)で確認し、本文全体は読んでいない。解説記事2点は二次資料。

  1. Kyle 1979年の論文の要旨 Ergonomics 22(4) (1979) https://www.tandfonline.com/doi/abs/10.1080/00140137908924623 (空気抵抗の割合、後ろの走者の省エネ)
  2. Blocken et al. "Aerodynamic drag in cycling pelotons: New insights by CFD simulation and wind tunnel testing" J. Wind Eng. Ind. Aerodyn. (2018) https://orbi.uliege.be/handle/2268/226177 / https://research.tue.nl/en/publications/aerodynamic-drag-in-cycling-pelotons-new-insights-by-cfd-simulati/ (121人の集団の空気抵抗と従来値)
  3. Blocken et al. チームタイムトライアルの一列走行の研究(2018) https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0167610518306755 (先頭の交代・7〜9人の平均抵抗)
  4. McCole et al. 要旨 J Appl Physiol 68(2) (1990) https://journals.physiology.org/doi/abs/10.1152/jappl.1990.68.2.748 (酸素消費量の低下)
  5. Digital Engineering 24/7 "Jostling for the Best Position in a Peloton" https://www.digitalengineering247.com/article/jostling-for-the-best-position-in-a-peloton/cfd (時速54kmの例と中核の位置の紹介)
  6. 自転車探検!「ドラフティング」 https://jitetan.com/term/drafting.html (一列走行の動力の数字・先頭の恩恵。日本語の解説)

なおした ところ

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