このサイトは、ほんの入り口です

ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

いぬは あついとき、どうして はあはあ するの?

汗をかかない犬は、はあはあ息をして体をどう冷やすのか

犬のパンティング ── 汗腺に頼らず、上気道の湿った面からの蒸発で放熱する仕組み(1981年の3型の観察を含む)

分野:からだ

なつの さんぽで、いぬが 舌したを だして、はあはあ して いるのを 見た ことは ありますか。人は 汗あせを かきますが、いぬは あまり かきません。

では、どうやって あつさを にがして いるのでしょう。はあはあ の ひみつを、いっしょに たどって みましょう。

暑い日の散歩で、犬が舌を出して息を荒くしている。人ならシャツが汗でぬれるところですが、犬の毛は乾いたままです。

あの「はあはあ」は、ただ苦しがっているのではなく、体の熱を逃がすための作業だと説明されています。何が起きているのか、鼻と口の使い分け、湿度に弱い理由まで、獣医学の資料からたどります。

犬は、人のように汗で体を冷やすことがほとんどできない。余分な熱を逃がす主な手段は、パンティング(舌・鼻・口の湿った面から水を蒸発させる呼吸)である[1][2]。

このメモでは、汗腺のありか、パンティングの定義、1981年の実験で報告された3つの型、湿度と鼻の短さによる弱点を、獣医学の資料や論文の抄録をつき合わせてたどる。

読み方を切り替えられます。画面の上にある「よみかた」のボタンで、小学校低学年むけ・小学校高学年むけ・中学生むけの3つの書き方に切り替わります。むずかしいと思ったら、いつでもやさしい方に戻ってください。選んだ読み方はブラウザが覚えているので、次に別の記事を開いたときも同じ読み方で始まります。

1. いぬの 汗あせは どこに あるの?

1. 犬が体を冷やす汗は、主に足の裏から出る

1. 汗腺のありか ── 肉球と、体温調節に使われない腺

いぬにも 汗あせを だす ところは あります。でも、あるのは あしの うら、にくきゅうの あたりです[2]。

そこの 汗あせが、からだを ひやす はたらきは、ちいさいと いわれます[1]。きんちょうした ときに、あしあとが しめる ことも あるそうです[3]。

ぜんしんを ひやす、おおきな しごとは、ほかの やりかたに まかせて います。

汗を出す場所が足に集まっている

獣医大学の資料には、人と違って犬の汗腺は足にしかなく、体を冷やすにはパンティングに頼る、とあります[2]。足の汗腺が体を冷やす役割は小さく、余分な熱は主にパンティングとよだれで逃がす、という説明もあります[1]。

体じゅうにある腺は、冷やすためのものではない

毛穴につながる腺(アポクリン腺)は体じゅうにありますが、体を冷やすためには使われないと、獣医師が書いた解説にあります[3]。足の腺は緊張したときや暑いときに湿り、足あとがつくことがあるそうです。ただし、これで暑さをしのげるわけではなく、主役はほかにあります。

MSDマニュアルは、犬の足に汗腺があり体温調節に小さな役割を持つ可能性を述べたうえで、余分な熱の放出は主にパンティングとよだれによると説明する[1]。コーネル大学獣医学部の資料も、犬の汗腺は足にしかなく、冷却はパンティングに頼ると述べる[2]。

体全体の毛穴につながるアポクリン腺は、体温調節には使われず、においなどの役割を持つとされる。足のメロクリン(エクリン)腺は、緊張や暑さで湿り、足あとを残すことがある[3]。ただし呼び方は資料によって揺れる。足の汗は「少しは冷やす」程度で、放熱の主役はパンティングである。

2. はあはあ は、水を くうきに わたす こと

2. 「はあはあ」は水を空気に渡す作業

2. パンティングによる蒸発 ── 舌・鼻の通り道・肺の内側

プールの あと、ぬれた からだに かぜが あたると、ひやっと しませんか。みずが かわく とき、まわりの ねつを もって いくからです。

いぬの はあはあ も、これに にて います。いぬは くうきを すばやく すって はきます。その とき、した や はなの おくの しめった ところから、みずが くうきに うつって いきます[4]。

みずが くうきに うつる とき、いぬの からだの ねつも いっしょに もって いかれる、という わけです。ただし ほんとうは、ぬれた ところが かわく ときの はたらきで、いぬが ねつを 「はいて」 いるのでは ありません。

ぬれたところから水が空気へ

水が蒸発するとき、まわりから熱をうばいます。ぬれた手に風が当たると冷たく感じるのと同じ原理です。犬はこれを、汗の代わりに口や鼻の湿った面で行います。

パンティングのとき犬は、空気をすばやく吸い込み、湿らせ、吐き出します。水分は舌、鼻の通り道、肺の内側の湿った面から蒸発すると説明されています[4]。獣医向けの資料でも、蒸発は主に上気道(鼻から気管までの空気の通り道)の湿った粘膜からで、舌の表面からの蒸発も犬の体温調節の最も重要な方法のひとつとされています[5]。

AKCの解説では、パンティング中の犬は空気を素早く吸い込んで湿らせ、吐き出し、舌・鼻腔・肺の内側の粘膜から水分が蒸発するとされる[4]。獣医師向けの資料は、蒸発は主に上気道の湿った粘膜からの水分喪失で起こり、舌表面からの蒸発と合わせて、犬の体温調節の最も重要な手段のひとつだと述べる[5]。

原理は汗と同じ気化熱による放熱で、汗腺の代わりに呼吸器の粘膜を蒸発面に使っている、と整理できる。

3. はやくて あさい いき

3. 息の回数は増やし、1回の量は減らす

3. パンティングの定義 ── 呼吸数の増加と一回換気量の減少

はあはあ は、ふつうの いきとは ちがいます。いきの かいすうを ふやして、ひとかいの いきの りょうを へらす、と せつめいされて います[6]。

ゆっくり ふかく すう かわりに、はやく あさく すって はく。そうして、くちや はなの ぬれた ところに くうきを たくさん あてるのです。

速く、浅く

生理学者ロバーツホーの論文の抄録は、パンティングを「呼吸の回数を増やし、1回に出入りする息の量(一回換気量)を減らす、制御された呼吸」と説明しています[6]。目的は、上気道の換気を増やして、蒸発による放熱を増やすことです。

深く吸うのではなく、浅い呼吸を何度も繰り返すことで、湿った通り道に空気を当て続けます。呼吸の具体的な回数は、今回の資料では確かめられなかったので書きません。

Robertshaw(2006)の抄録は、パンティングを「呼吸数の制御された増加であり、一回換気量の減少を伴う」ものと定義し、その目的を上気道の換気を増やして蒸発による放熱を増すことに置く[6]。肺の奥まで空気を入れ替える換気(ガス交換)を抑え、蒸発面である上気道に空気を流す方向に呼吸を切り替える、と読める。

ここでの記述は、この論文の抄録に基づく。

4. はなと くちの つかいわけ

4. 鼻と口を、暑さに応じて使い分ける

4. 3つのパンティングの型(Goldberg et al., 1981)と選択的脳冷却

いぬは くちだけで いきを して いるのでは ありません。はなも つかいます。

1981ねんの けんきゅうでは、3とうの いぬを しらべました。あつさが つよく なる ほど、いきの とおりみちが かわると ほうこく されて います[7]。

はじめは はなから すって はなから はく。もっと あつく なると、はなから すって、はなと くちから はく。さらに あつい ときは、はなと くちの りょうほうから すって はきます。

暑さが強いほど、通り道が変わる

1981年の研究では、3頭の犬を調べ、蒸発による放熱の必要が増えるにつれて、3つのパンティングの型が見られたと報告されています[7]。

型は、鼻から吸って鼻から吐く、鼻から吸って鼻と口から吐く、鼻と口から吸って鼻と口から吐く、の順に変わります。この研究で報告された型では、どれも鼻が使われています。

鼻の中で頭を冷やす?

先ほどの論文の抄録は、鼻の内側で熱がやりとりされ、頭の中の血管を通じて脳を選んで冷やす仕組み(選択的脳冷却)にも触れています[6]。ただ、犬でこれがどこまで働いているのかは、参照した資料では分かりませんでした。

Goldberg, Langman & Taylor(1981)は、呼吸による蒸発の要求が高まるにつれ、3つのパンティング型が現れたと報告した(実験は3頭)。鼻吸気・鼻呼気、鼻吸気・鼻口呼気、鼻口吸気・鼻口呼気の順である[7]。この実験で報告された3型では、鼻を使う型から、鼻と口を使う型へと移っている。

また、Robertshaw(2006)の抄録は、パンティングに伴う熱交換の多くが鼻の内側の上皮で起こり、向流熱交換を通じた選択的脳冷却が生じうることを述べる[6]。ただし犬での実際の効果の大きさは、この抄録の範囲では不明であり、断定は避ける。

5. はあはあ にも、にがてな ことが ある

5. 効くけれど、代償と限界がある

5. パンティングの限界 ── 湿度・呼吸筋の熱・蒸発面の小ささ

はあはあ は、いつでも よく きく わけでは ありません。しめった くうきの ひは、みずが かわきにくく なります。すると、ねつも にげにくく なります[8][5]。

はあはあ すると、いきを する きんにくも はたらきます。その きんにくが ねつを だす、と せつめいする しりょうも あります[8]。

くちや したは ひろい ところでは ないので、あまり こうりつが よい やりかたとは いえない、という かいせつも あります[10]。

湿度が高いと弱い

獣医向けの資料は、湿度が高く蒸発が減る環境では、パンティングは熱を逃がす力が落ちると説明しています[8]。別の資料も、周囲の湿度が高いと効率が下がり、熱中症の危険が増すと書いています[5]。ぬれた洗たく物が、湿った日には乾きにくいのと同じ考え方です。

ほかの弱点

パンティングは呼吸の筋肉を動かすので、それ自体が熱をつくる、という説明があります[8]。熱の量については、資料に数字がないため書きません。

日本の獣医師系の解説記事は、口や舌は面積が小さいため、あまり効率のよい方法とはいえない、と述べています[10]。ペット向けメディアの見解なので、参考として読んでください。

獣医師向けの資料は、高湿度で蒸発が減る環境ではパンティングによる熱放散が無効になりうると述べ[8]、別の解説も、高い周囲湿度で効率が下がり熱中症のリスクが増すとする[5]。蒸発による放熱である以上、空気が水蒸気で飽和に近づくほど効きにくい。人の汗と同じ原理である。

コストとして、パンティングは呼吸筋を動かすためそれ自体が熱を生む、と説明する資料がある[8]。ただし引用元の一節は蒸発の記述が中心で、熱量の大きさは示されておらず、効果に比べて大きいとも小さいとも言えない。

さらに、日本の獣医師系解説は、口と舌の粘膜は面積が小さく、効率のよい方法とはいえないとする[10]。これはペット媒体の見解であり、一次資料ではない点に注意する。

6. はなの みじかい いぬと、さんぽの じかん

6. 鼻の短い犬と、散歩の時間帯

6. 短頭種のリスクと、環境省の散歩の呼びかけ

はなの みじかい いぬは、くうきの とおりみちが せまく なりやすいと いわれます[5]。はあはあ が うまく できず、ねっちゅうしょうに なりやすいそうです。

かんきょうしょうは、さんぽを あさ はやくや よるなどの、すずしい じかんに するよう よびかけて います[9]。いぬは け が おおくて、じめんの ねつも うけやすいからです。

やってみよう。 りょうてに、みずを ちょっとだけ つけます。ひとつは ゆっくり ふーっ、もうひとつは はやく はっはっ と ふいて、どちらが ひやっと するか くらべます。

鼻の短い犬は苦手

鼻の短い犬種(短頭種)は、上気道が部分的にふさがれているため体温調節が苦手で、熱中症のリスクが高いと、獣医向けの資料に書かれています[5]。

数字で見る体温

アメリカの獣医大学は、犬の平熱を華氏100.5〜102.5度としています。摂氏に直すと約38.1〜39.2℃です。体温調節ができず、体温が華氏105度(約40.6℃)以上に上がると、熱中症につながると説明されています[2]。資料の値は華氏で、℃は換算した値です。

散歩の時間を選ぶ

環境省は、犬や猫は密な毛におおわれて体温調整が得意ではなく、人より体高が低いため地面の熱も受けやすいとして、散歩は早朝や夜の涼しい時間にと呼びかけています[9]。

やってみよう:両手に水を少しつけ、片方はゆっくり、もう片方は速く息を吹きかけて、どちらが冷たく感じるかくらべてみましょう。

Today's Veterinary Practiceは、短頭種は部分的な上気道閉塞により体温調節能力が限られ、熱中症のリスクが特に高いと述べる[5]。

コーネル大学獣医学部の資料では、犬の平熱は華氏100.5〜102.5度で、体温調節ができず体温が105度以上に上がると熱中症につながると説明される[2]。℃換算((F−32)×5/9)では平熱が約38.1〜39.2℃、105度は約40.6℃にあたる。℃は換算した値である。

環境省の報道発表は、犬や猫は密な毛におおわれ体温調整が得意でなく、人より体高が低く地面の熱を受けやすいとして、散歩は早朝や夜の涼しい時間帯にと呼びかけている[9]。この発表にパンティングの説明はなく、仕組みの出典には使えないが、時間帯の助言としては上の仕組みと整合する。

自分でも しらべて みたく なったら

自分でも調べてみたくなったら

自分でも調べてみたくなったら

さんぽで いぬを 見かけたら、とおくから そっと 見て みましょう。したの だし かたや、はなと くちの うごきに、ちがいが あるかもしれません。さわったり、ちかづきすぎたり しては いけません。

しらべるなら、「かんきょうしょう」の ペットの ねっちゅうしょうの ページが、日本語で 読めます。

今日できること:散歩中の犬を、少し離れたところからそっと観察してみましょう。舌の出し方や、口の開き方が、暑さや動きでどう変わるか見てみます。近づいたり、さわったりはしません。

公式情報:環境省の「防ごう!ペットの熱中症」は日本語で読めます。この記事は獣医療の助言ではないので、愛犬の体調は獣医師に相談してください。

環境省の報道発表[9]は日本語で読める。日本語の資料で、まず散歩の時間帯など暮らしの助言を確かめ、仕組みの部分はMSDマニュアル[1]やコーネル大学の資料[2]で読み比べるとよい。3型の観察[7]と定義[6]は論文の抄録が公開されている。

この記事は獣医療の助言ではない。愛犬の体調や熱中症が疑われる症状は、獣医師に相談すること。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

出典について:獣医学の教科書的資料、獣医大学・獣医師向けの資料、論文の抄録、環境省の発表を使った。何に使ったかは、それぞれの項目の最後に書いている。

  1. MSD Veterinary Manual「Structure of the Skin in Dogs」。https://www.msdvetmanual.com/dog-owners/skin-disorders-of-dogs/structure-of-the-skin-in-dogs (足の汗腺と、パンティングが主な放熱手段であることについて)
  2. Cornell University College of Veterinary Medicine「Heatstroke」。https://www.vet.cornell.edu/departments-centers-and-institutes/riney-canine-health-center/canine-health-information/heatstroke-medical-emergency (汗腺が足だけであること、犬の平熱と熱中症の体温について)
  3. PetMD「Do Dogs Sweat?」(獣医師執筆・監修、2023年)。https://www.petmd.com/dog/general-health/do-dogs-sweat (体じゅうの腺と足の腺の役割の違いについて)
  4. American Kennel Club「Do Dogs Sweat?」。https://www.akc.org/expert-advice/health/do-dogs-sweat/ (パンティング中に水分が蒸発する場所について)
  5. Today's Veterinary Practice「Heatstroke in Dogs」。https://todaysveterinarypractice.com/emergency-medicine-critical-care/todays-technician-heatstroke-in-dogs/ (蒸発の場所、湿度への弱さ、短頭種のリスクについて)
  6. Robertshaw D. (2006) J Appl Physiol 抄録。https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16675613/ (パンティングの定義と鼻での熱交換について。抄録のみ)
  7. Goldberg MB, Langman VA, Taylor CR (1981) Respiration Physiology 抄録。https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/7280382/ (3つのパンティングの型について。抄録のみ)
  8. dvm360「Heatstroke in dogs (Proceedings)」。https://www.dvm360.com/view/heatstroke-dogs-proceedings (湿度が高いときの限界と、呼吸筋の熱について)
  9. 環境省 報道発表「防ごう!ペットの熱中症」。https://www.env.go.jp/press/press_05067.html (散歩の時間帯の呼びかけについて)
  10. ペトコト「犬にも汗腺がある?」。https://petokoto.com/articles/3454 (口と舌の面積が小さいことについて。ペット媒体の見解)

なおした ところ

更新履歴

更新履歴(改版の記録)

  •  初版を公開。

このサイトでは、公開した記事の本文は原則として書き直しません。誤りが見つかったときや、内容が古くなったときだけ手を入れ、その理由をこの欄に残します。