1. すじの そとにも、ほこりは いるの?
1. 光の筋の外にも、ほこりは浮かんでいるのか
1. 筋の外にもほこりはいるのか:光が当たる範囲と見える範囲
あさの へやで、光の すじを よこから 見て みましょう。すじの なかには、ほこりが ふわふわ 見えます。すじの そとは、なにも ないように 見えます。
でも、ほこりが すじの なかにだけ あつまって いる わけでは なさそうです。光が あたって いない ところの ほこりは、光らないので、見えないのだと 考えられます。
つまり、見えるか 見えないかを きめて いるのは、「そこに 光が あたって いるか」です。では、光が あたった ほこりは、どうして 目に 光を とどけるのでしょう。
朝、カーテンのすき間から日が差しこむと、細い光の筋の中で、ほこりがちらちらと光ります。筋の外は暗く、何も浮かんでいないように見えます。
ここで考えたいのは、「見えない」と「いない」は別のことだという点です。チンダル現象の説明では、光を当てたとき、微小な粒が光を散らし、光の通り道が光って見えるとされています[1]。光っているのは、ほこりに光が当たっている範囲です。筋の外のほこりは、光が当たっていないので光らず、目に入らないだけと考えるほうが自然です。
ただし、これは「光が当たった所だけ見える」という見え方の説明です。部屋のほこりを数えたわけではありません。それでも、見える範囲が光の当たり方で決まるなら、光を動かせば見えるほこりも入れかわるはずです。この点は、あとの「やってみよう」で確かめられます。
では、光が当たったほこりは、なぜ横から見ている私たちの目に光を届けるのでしょうか。
光の筋の中でほこりが見えるとき、筋の外のほこりは存在しないのだろうか。そうではなく、見えている範囲と粒のいる範囲は別だと考えるのが自然である。チンダル現象は、コロイド溶液やエーロゾルなどに光を当てたとき、微小な粒子が光を散乱し、光の通り道が一様に光って見える現象と説明される[1]。光るのは、光が通っている部分だけである。
この説明を部屋に当てはめると、窓から入った光が通る帯の中では粒が光り、帯の外では同じ粒がいても光が当たらないので暗く沈む、という見え方になる。ただし、部屋の筋の外と中でほこりの密度が実際にどう違うかを測った資料は、今回の材料の中には無い。ここで言えるのは、光の当たり方だけで説明できるという範囲までである。
この見方が正しければ、光の向きを変えると、見えるほこりも入れかわるはずだ。では、光が当たった粒は、どうして光源とは別の方向にいる観察者の目に光を送るのか。次章で、その散乱を見る。
2. ほこりは、どうして 光って 見えるの?
2. 光が当たったほこりは、なぜ横から見えるのか
2. 光が当たった粒は、なぜ横から見えるのか:散乱とチンダル現象
光は、まっすぐ すすみます。ほこりに あたらなければ、よこから 見ている 目には とどきません。
ところが、光が ほこりに あたると、光の むきが かわって、ばらばらに ちらばります。これを「さんらん」と いいます。ちらばった 光の いちぶが、よこから 見ている 目に はいります。
だから、ほこりが 小さな ライトの ように 光って 見えるのです。ただし、ほこりが 自分で 光って いるのでは ありません。光を うけて、あちこちに かえして いるだけです。
この 光りかたを、「チンダルげんしょう」と よぶ ことが あります。でも、ほこりの ばあい、この よび名は すこし ざっくりした ものです。
光はまっすぐ進みます。もしほこりが無ければ、光は筋の中を通り抜けて、横から見ている目には届きません。目に入るのは、ほこりに当たって向きを変えた光だけです。この現象を散乱といいます[1]。
つまり、ほこりは自分で光っているのではなく、当たった光の一部を、進んできた向きとは別の向きにも返す小さな中継点になっています。光の通り道が、中継点の集まりとして光って見えるのです。
この現象は、発見者の名前から「チンダル現象」と呼ばれます。ただ、チンダル効果はもともと、液体などに細かい粒が散らばったコロイドで調べられた現象です。空気中の大きめのほこりの筋は、厳密にはミー散乱として扱われるという説明もあります[2]。ほこりの筋を「チンダル現象」と呼ぶのは、見え方が似ているための慣用と考えられます。
では、なぜ同じ筋が、明るい昼の部屋ではあまり目立たないのでしょうか。
光が粒に当たると、粒は光を進行方向とは別の向きにも散らす。これが散乱である。粒がなければ光は筋の中をそのまま通り抜け、横にいる観察者の目には入らない。ほこりが光って見えるのは、ほこりが発光しているからではなく、当たった光の一部が、進行方向とは別の向きにも散乱して横の目に届くからだ[1]。
ここで呼び名に注意が要る。「チンダル現象」は、本来はコロイドを想定した用語で、空気中の大きなほこりの筋は、厳密にはミー散乱として扱う場合があるとされる[2]。ミー散乱は、光の波長と同程度か、それ以上の大きさの球状粒子による散乱である[3]。光の波長は可視光でおよそ400〜750ナノメートルである。ほこりの大きさには幅があり、波長と同程度以上の粒がミー散乱の対象になる。筋に見える粒の大きさそのものは、ここでは決めない。
では、型が違っても、筋が見える条件は変わらないのか。そこで効いてくるのが、散乱光を受け止める「背景」である。次章では、チンダル自身が書いた煙の観察を手がかりにする。
3. 光の すじは、あかるい ところでも 見えるの?
3. 同じ煙が、青にも赤っぽくも見えた:チンダルの観察
3. 同じ煙が青にも赤っぽくも見えた:チンダルの観察と、背景の明るさ
むかし、チンダルと いう 人が、けむりの はしらを 見て、ふしぎな ことを かきました。
かぜの ない日、とおくの 小屋の やねから、けむりが まっすぐ のぼって います。うしろが くらい まつばやしの ときは、けむりが 青く 見えました。うしろが あかるい 空の ときは、赤っぽく 見えたのです。
おなじ けむりでも、うしろが くらいか あかるいかで、見えかたが かわります。へやでも、くらいと 光の すじが はっきりして、あかるいと 目立ちにくく なります。
ただし、へやの あかるさと すじの くっきり さに ついて、数字で しめした しりょうは、ここでは つかって いません。
チンダルは、風のない日に、遠くの小屋の屋根から立ちのぼる煙の柱を観察したと、コトバンクの説明は伝えています。背景が暗い松林のときは、煙が散乱光によって青く見えました。背景が明るい空のときは、透過光が赤っぽく見えたといいます[1]。
同じ煙なのに、背景しだいで見え方が変わっています。この観察は、散乱光が「暗い背景の前で見える」という性質を教えてくれます[2]。
部屋の光の筋に当てはめると、光が差しこむすき間だけ残してカーテンを閉め、周りを暗くしたとき、筋が目立つ理由の説明になります。背景が暗いほど、ほこりが返したわずかな光が、周りに負けずに目に入ります。昼の明るい部屋で筋が見えにくいときは、背景の明るさに散乱光が埋もれているためと考えられます。
では、筋はどんな色に見えるのでしょうか。チンダルの煙は青く見えましたが、部屋の筋は白っぽく見えることが多いようです。その差は、粒の大きさにあります。
チンダルは、風のない日に遠くの小屋の屋根から立ちのぼる煙の柱を観察し、背景が暗い松林なら散乱光で青く、背景が明るい空なら透過光で赤っぽく見えたと書いたと、コトバンクの解説は伝えている[1]。同じ煙が、背景だけで青にも赤っぽくも見えたことになる。
この観察から、散乱光は背景が暗いときに見えるという条件が読み取れる[2]。散乱光は、もともと弱い。明るい背景の前では、その弱い光が背景の光に埋もれ、むしろ背景を通ってきた光のほうが目立つ。暗い松林では、背景が散乱光を邪魔しないので、散乱光が青く見える。
部屋の筋も同じ構造で説明できる。光の差しこむすき間だけを残して周囲を暗くすると、ほこりが返す弱い光が目に入りやすい。ただし、チンダルの煙の観察は一つの記述であり、部屋の明るさと筋の見やすさの関係を数値で調べた資料は、この記事の材料にはない。したがって、「暗いほど見えやすい」は、散乱光の性質からの説明であって、部屋の実測ではない。
ここで、煙は青く見えたのに、部屋の筋は白っぽく見えやすいのはなぜか。差を作るのは、粒の大きさと波長の関係である。
4. ほこりの すじは、どうして 白っぽいの?
4. ほこりの筋が、青でなく白っぽく見えやすいのはなぜか
4. ほこりの筋が白っぽく見えやすいのはなぜか:波長と粒の大きさの関係
けむりは 青く 見えたのに、ほこりの すじは 白っぽく 見える ことが 多いようです。ちがいは、つぶの 大きさに あります。
ほこりには、光の なみの 長さ(はちょう)より 大きい つぶも あります。そういう 大きな つぶは、どの 色の 光も、ほとんど おなじように ちらす ことが あります。いろいろな 色が まざると、白っぽく なります。
くもの 白さも、おなじ 考えかたで せつめいされます。水の つぶが 大きいので、色を えらばず ちらして、白く 見えるのです。
それから、大きな つぶは、光の すすむ むきに 近い ほうへ 強く ちらすという せいしつが あります。だから、見る 角度で すじの 明るさが かわるかも しれません。
光の波長と同じくらい、またはそれ以上の大きさの球状の粒による散乱を、ミー散乱といいます[3]。ほこりには波長より大きな粒もあり、そうした粒はミー散乱として扱われ、色の差が小さくなって白っぽく見えることがあります[2]。筋に見える粒の大きさそのものは、決まっていません。
色の差が小さいまま散ると、いろいろな色の光が混ざって返るので、白っぽく見えます。雲の水滴も、可視光の波長以上の大きさなので、ミー散乱で光をほぼ均等に散らし、白く見えると説明されます[2]。ほこりの筋が白っぽいのも、雲と同じ種類の散乱が関わっていると考えられます。
散乱の型は、光の波長と粒の相対的な大きさで決まります。波長に比べて非常に小さい粒ならレーリー散乱、ある程度以上大きくなるとミー散乱です[4]。
もう一つ、ミー散乱では、粒が大きくなるほど光が前方へ強く散乱され、側面や後方への散乱は減るとされます[3]。これを部屋に当てはめると、見る向きによって筋の明るさが変わる可能性が考えられます。ただし、室内のほこりの角度ごとの見え方を示した日本語の資料は、今回の材料にありませんでした。ここは「そうかもしれない」までにとどめます。
この白い筋は、部屋の中だけでなく、空にも現れます。
ミー散乱は、光の波長と同程度以上の大きさの球状粒子による散乱で、粒が大きくなるほど光は前方へ強く散乱され、側面や後方への散乱は減る[3]。散乱の型が波長と粒の相対的な大きさで決まる点は、光散乱の解説でも整理されている。波長に比べて十分小さい粒ならレーリー散乱、ある大きさを超えるとミー散乱である[4]。
ほこりには波長より大きな粒もあり、ここで扱うそうした大きな粒は、ミー散乱として色の差が小さく散らす[2]。可視光の各波長が近い割合で返るので、混ざって白っぽい光になることがある。雲の水滴が可視光の波長より大きく、同じくミー散乱で白く見えることも、同じ資料で述べられている。なお、気象衛星ひまわりの資料でも、波長と同程度の大きさの粒によるミー散乱が、煙などのエーロゾルの識別に使われるとされる[7]。
では、前方散乱の偏りは部屋の筋に影響するのか。理屈の上では、窓の光を正面寄りから見るほど散乱光が強いことになる。しかし、室内のほこりの粒径分布や、角度ごとの明るさを測った日本語の一次資料は、今回の材料の中に無い。理論からの推測にとどまるため、断定は避ける。
では、同じ散乱は、屋外の光の筋にも当てはまるのか。
5. 空の 光の はしらにも、ほこりは かんけい する?
5. 雲のすき間から差す光の柱にも、ほこりは関係するのか
5. 雲間の光の柱(薄明光線)では、ほこりは何をしているのか
くもの すきまから、光が はしらのように おりて くる ことが あります。NASA(ナサ)の ちきゅうを しらべる チームは、この 光の はしらの しゃしんに ついて、空気中に うかんで いた ほこりが、光の すじを はっきり 見えやすく したと せつめい して います。
へやの すじと、おなじ しくみです。ほこりが 光を ちらして、通り道を 見せて くれます。
外の 空気では、こまかい つぶは、空気中に ながく ただよいやすい ことも わかって います。ただし、これは 外の 空気の はなしです。
雲の切れ間から差す光の柱は、薄明光線と呼ばれます。NASAの地球観測所は、ある写真の光の柱について、撮影のときに大気中に浮かんでいたほこりが、光の筋をいっそうはっきり見えるようにしたと説明しています[5]。
部屋の中の筋と、空の光の柱は、規模は違っても、粒が光を散らして通り道を見せているという点でつながっています。
粒が漂い続けることも、筋が見える条件の一つです。環境省の資料によると、10マイクロメートル以下の粒は沈む速さが小さく、大気中に比較的長くとどまります[6]。ただし、これは屋外の大気の話で、室内で何分漂うかを示すものではありません。
こうして、光が当たること、光を返す粒があること、背景が暗いことが重なると、筋が見えやすくなると分かります。では、この見え方を、家の中で自分の目で確かめるには、どうすればよいでしょうか。
雲の切れ間から差す光の柱は、薄明光線と呼ばれる。NASAの地球観測所は、ある写真の光の筋について、撮影時に大気中に浮かんでいたほこりが、筋をより見えやすくしたと説明する[5]。粒が光を散らして通り道を見せるという構造は、部屋の筋と共通である。
筋が見える条件には、粒が空気中にとどまることも含まれる。環境省の資料は、10マイクロメートル以下の粒は沈降速度が小さく、大気中に比較的長期間とどまると述べる[6]。ただし、この記述は屋外の大気についてであり、室内のほこりが何分浮かぶかを示す数字ではない。部屋の筋のほこりの正体や粒径の実測値も、今回の材料には含まれていない。
ここまでの話を並べると、筋が見えやすくなるのは、光が当たること、散乱する粒があること、背景が暗いこと、が重なるときである。薄明光線も、暗い雲の影を背景に、ほこりが散乱光を返す例として読める。これらの条件は、家の中で自分の目で確かめられる。
6. おうちで、光の すじを つくって みよう
6. 光の筋の「背景」を、家で入れかえてみる
6. 筋の見え方を、背景を替えて確かめる
きょう できる こと
くらく した へやで、おうちの 人と いっしょに、かいちゅうでんとうの 光を よこから 見て みましょう。光は 人の 目には むけません。ほこりを わざと ふりまく ひつようは ありません。
光の すじを、白い かみの 前と、くろい ぬのの 前で、それぞれ 見て くらべます。どちらの ほうが すじが はっきり 見えるでしょう。光を すこし うごかすと、見える ほこりも かわります。
しらべる とき
「コトバンク」という サイトで、「チンダルげんしょう」を しらべられます。おうちの 人と いっしょに 読んで みましょう。
今日できること
夜、部屋を暗くして、家にある懐中電灯を横から見てみます。光を人の目に向けないこと、足元に気をつけることを守ってください。ほこりを舞い上げる必要はありません。
光の筋を、白い紙の前と黒い布の前でそれぞれ見て、筋の見え方を比べます。紙や布は、筋の向こう側に立てて背景にします。背景を替えると、同じ筋の見え方が変わるかどうか、チンダルの煙の観察と重ねて確かめられます。懐中電灯を少し動かすと、光る粒が入れかわるかどうかも見てみましょう。
資料を読むなら
日本語で読める資料として、コトバンクの「チンダル現象」「光散乱」の説明があります[1][4]。気象庁の気象衛星センターのページには、ミー散乱でエーロゾルを見分ける話があります[7]。
この記事は、光が当たった場所だけでほこりが見える理由を整理したものです。部屋の粒の細かな分布は、まだ手つかずです。
今日できること
夜、部屋を暗くして、家にある懐中電灯の光を横から観察する。光は人の目に向けず、足元に注意する。光の筋を、白い紙の前と黒い布の前でそれぞれ見て比べる(紙や布は筋の向こう側に立てて背景にする)。背景を替えて見え方が変わるかどうかが、チンダルの煙の観察と同じ種類の確認になる。さらに、懐中電灯を少し動かして、光る粒が入れかわるかを見れば、「見えている範囲と、いる範囲は別」という見方も確かめられる。
資料を読むなら
日本語では、コトバンクの「チンダル現象」「光散乱」の解説[1][4]、気象庁気象衛星センターのミー散乱の説明[7]が読みやすい。
残っている問いは、部屋の筋の中の粒が何で、どんな大きさ分布なのか、見る角度でどれだけ明るさが変わるのか、である。それを調べるのが次の一歩になる。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
本文で使った資料です。
- コトバンク「チンダル現象」. https://kotobank.jp/word/%E3%83%81%E3%83%B3%E3%83%80%E3%83%AB%E7%8F%BE%E8%B1%A1-98717 (チンダル現象の定義と、煙の柱の観察)
- Wikipedia, Tyndall effect. https://en.wikipedia.org/wiki/Tyndall_effect (粒の大きさと、ほこりへの使い方の注意、雲との比較)
- 3rd-in 用語集「ミー散乱」. https://pedia.3rd-in.co.jp/wiki/%E3%83%9F%E3%83%BC%E6%95%A3%E4%B9%B1 (ミー散乱と前方散乱)
- コトバンク「光散乱」. https://kotobank.jp/word/%E5%85%89%E6%95%A3%E4%B9%B1-765326 (粒の大きさと散乱の型)
- NASA Earth Observatory, Crepuscular Rays and Light Scattering. https://science.nasa.gov/earth/earth-observatory/crepuscular-rays-and-light-scattering-150090/ (薄明光線とほこり)
- 環境省, 微小粒子状物質に関する資料. https://www.env.go.jp/council/former2013/07air/y078-02/mat03.pdf (小さい粒が大気中にとどまること)
- 気象庁 気象衛星センター, バンド別画像(エーロゾル). https://www.data.jma.go.jp/mscweb/ja/prod/band_aero.html (ミー散乱とエーロゾルの識別)
なおした ところ
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