1. 60ぷんは、つづけて うごく じかんなの?
1. 60分は、続けて運動する時間ではなく「合計」
1. 60分は連続した運動ではなく、生活全体を足し合わせた「合計」である
あさ、ようちえんまで あるく。こうえんで おにごっこを する。いえに かえって、おてつだいで ものを はこぶ。ぜんぶ、「体を うごかした じかん」です。
くにの きまりは、ようちえんや ほいくしょだけで なく、いえや まちでの うごきも ぜんぶ たして、まいにち 合計で 60ぷん いじょうが よいと 言って います。「あそびを なかまに」と いう ことも、かいて あります。
だから、60ぷん つづけて がんばる ひつようは ありません。5ふん、10ぷんの うごきを あつめても、60ぷんに なります。
朝、園まで歩く。昼は園庭で鬼ごっこ。夕方は公園でブランコをこぐ。家に帰って、お手伝いで荷物を運ぶ。こうした動きは、すべて「体を動かした時間」に入ります。
指針の文面は、幼稚園や保育所などに限らず、家庭や地域での活動も含めた一日の生活全体の身体活動を合わせて、さまざまな遊びを中心に、毎日合計60分以上、楽しく体を動かすことが望ましい、という内容です[1]。ポイントは「合計」と「遊びが中心」の2つです。
ですから、60分を一度に使い切る必要はありません。5分の鬼ごっこと10分の散歩を重ねていくイメージです。ところが、そもそもなぜ「60分」だったのでしょうか。
朝は園まで歩き、昼は園庭で鬼ごっこをし、夕方は公園でブランコをこぎ、家では荷物を運ぶ手伝いをする。これらはどれも、指針でいう「体を動かす」時間に入りうる。
指針は、幼稚園・保育所などに限らず家庭や地域での活動も含めた一日の生活全体の身体活動を合わせて、幼児が様々な遊びを中心に、毎日合計60分以上、楽しく体を動かすことが望ましいとする[1]。ここで注目すべきは、「合計」が時間の使い方を縛っていないことだ。数える対象が園の時間に限られないので、園以外の時間の動きも、合計に含まれる。同時に「遊びを中心に」という語が、数字を運動の訓練時間と読むことを防いでいる。
では、この60分という数字そのものは、どのようにして選ばれたのか。次の章で、指針が挙げている根拠を見る。
2. どうして 60ぷんに なったの?
2. 「60分」が目安に置かれた理由
2. 60分の根拠は、外遊びの調査にあった
くにが しらべた ところ、そとで あそぶ じかんが 長い ようじほど、体の ちからが 高い かたむきが 見られました。ところが、4わりを こえる ようじは、そと あそびが 1にちに 1じかん(60ぷん)より みじかかったのです。
そこで、「まいにち 60ぷんは うごこう」と いう めやすが おかれました。たくさんの ようじが じっこうできそうな じかんとして えらばれた、と 読めます。
指針が理由として挙げているのは、文部科学省の調査です。調査では、外遊びの時間が多い幼児ほど体力が高い傾向が見られた一方で、4割を超える幼児は、外遊びが一日1時間(60分)未満でした[1]。
ここで気をつけたいのは、「4割超」が、外遊びが60分に届かなかった子の割合だということです。60分を達成した子の割合ではありません。調査の見かたを取りちがえると、60分の意味まで変わってしまいます。
つまり60分は、外遊びの多い幼児ほど体力が高い傾向が見られ、しかも4割を超える幼児が1時間に届いていない、という現状から置かれた目安です。この調査は、外遊びが体力を高めたと言い切るものではありません。
指針が60分の根拠として挙げるのは、文部科学省の調査である。調査では外遊びの時間が多い幼児ほど体力が高い傾向が見られ、しかも4割を超える幼児の外遊びが一日1時間(60分)未満だったため、毎日合計60分以上を目安とした[1]。
この「4割超」は、外遊びが60分に満たない幼児の割合である。60分を達成した割合はここからは読み取れず、全国の幼児が60分を満たす割合は、別の公的な全国値が必要になる。また、外遊びと体力の「傾向」は、遊ぶ時間が体力を高めたという因果を示すものではない。
したがって、60分は、外遊びが1時間に届かない幼児が多いという現状を踏まえて置かれた基準と読める。では、60分の中身は何でもよいのか。指針は動きの「種類」に注目している。
3. おなじ うごきばかりじゃ だめなの?
3. 同じ運動より「いろいろな動き」が大切なのはなぜか
3. 特定の運動より、多様な動きを含む遊びが重視される理由
みなさんは、すべり台、ブランコ、かけっこ、ボールなげで、どんな 体の つかいかたを して いますか。
くにの きまりでは、ようじの 動きを 3つに わけて います。ひとつめは、たったり、すわったり、まわったり、ぶらさがったり する、体の バランスを とる うごき。ふたつめは、あるく、はしる、とぶ、のぼる、すべるなど、体を いどうさせる うごき。みっつめは、もつ、なげる、とる、ける、こぐなど、ものを あやつる うごき。
ようじの ころは、しんけいの はたらきが ぐんぐん のびる じきと されて います。タイミングを あわせたり、ちからを かげんしたり する ちからが、ぐんと 上がるのです。いろいろな あそびの 中で、いろいろな うごきを すると、その ちからが そだちやすいと 考えられて います。
公園の遊びを思い浮かべてください。ブランコは立ってこいだり座ってこいだり、鬼ごっこは走って曲がって逃げ、ボール遊びは投げて捕って蹴ります。実は遊びの中には、さまざまな動きが混ざっています。
指針は、幼児の基本的な動きを3つに整理しています[1]。体のバランスをとる動き(立つ・座る・回る・ぶら下がるなど)、体を移動する動き(歩く・走る・跳ぶ・登る・すべるなど)、用具などを操作する動き(持つ・投げる・捕る・蹴る・こぐなど)です。
指針は、幼児期は神経機能の発達が著しく、タイミングよく動いたり、力の加減をコントロールしたりする運動調整の力が目立って伸びる時期だとしています[1]。そのため、特定の運動を続けるよりも、多様な動きを含む遊びのほうが、その力を育てやすいという考え方が示されています。早く結果を求めず、小学校以降に運動やスポーツを楽しむ土台を育てることが重視されている、という内容です。
指針は、幼児の基本的な動きを3つに整理している[1]。体のバランスをとる動き(立つ・座る・回る・ぶら下がる)、体を移動する動き(歩く・走る・跳ぶ・登る・すべる)、用具などを操作する動き(持つ・投げる・捕る・蹴る・こぐ)である。公園の遊びは、これらが一つの遊びの中に混ざる。たとえば鬼ごっこは、走る・曲がる・逃げるが連続する。
この整理の背景には、幼児期の発達の特徴がある。指針は、幼児期は神経機能の発達が著しく、タイミングよく動く、力の加減をコントロールするなど、運動を調整する能力が顕著に向上する時期だとする[1]。さらに指針は、特定の運動を続けるより、多様な動きを含む遊びのほうがこの調整力を育てやすいと考え、早急な結果を求めず、小学校以降に運動やスポーツを楽しむ基盤を育てることを重視していると要約される。ただしこの要約は指針の原文をそのまま引いたものではなく、断定はできない。
この考え方に立つと、60分の「中身」は単一の運動時間ではなく、動きの種類が広がる遊びの積み重ねになる。では、海外の指針にある「60分」は、これと同じものなのか。
4. せかいの 「60ぷん」は おなじ かぞえかた?
4. WHOの「60分」は、日本の「60分」と同じ数え方か
4. WHOの5歳未満ガイドラインの「60分」は、数える対象が日本とちがう
せかいの 国ぐにが あつまる 「WHO」と いう そしきも、2019ねん 4がつに、5さい みまんの 子の ために、体の うごかしかたの きまりを だしました。
3さい・4さいの 子は、どんな つよさでも 合計 180ぷん いじょう うごき、その うち 60ぷんは、すこし きつい くらいの つよさで うごく ことが よいと されました。
ここにも 「60ぷん」が 出てきます。でも、日本の 60ぷんは つよさを きめて いません。WHOの 60ぷんは、180ぷんの 中の つよい うごきの ぶぶんです。おなじ 数でも、かぞえて いる ものが ちがいます。
WHO(世界保健機関)は2019年4月2日に、5歳未満の子どもの身体活動・座っている時間・睡眠についてのガイドラインを公表しました[4]。3〜4歳については、強さを問わず合計180分以上、体を動かす。そのうち少なくとも60分は、中くらいから強い強さの活動を行う、という内容です。1〜2歳は、強さを問わず180分以上です[4]。
数字だけ見ると、日本の60分とWHOの60分は同じに見えます。けれども、日本の60分は強さを指定せず、一日の生活全体を足した合計です。WHOの60分は、180分という大きな枠の中の「中〜高強度」の部分で、数える対象がちがいます。
WHOの担当者は、「子どもに遊びを取り戻す必要がある」と述べたと伝えられています[3]。
WHOは2019年4月2日、5歳未満の身体活動・座位行動・睡眠のガイドラインを公表した[4]。3〜4歳は、強さを問わず一日にわたり合計180分以上の身体活動を行い、そのうち少なくとも60分は中〜高強度とする。1〜2歳は強さを問わず180分以上である[4]。
数字だけを並べると、日本の「合計60分以上」とWHOの「60分」は一致して見える。だが、日本の60分は強さを指定せず、一日の生活全体を足した合計である。WHOの60分は、180分という広い枠の中の中〜高強度の部分だけを数える。両者を比べるなら、日本の60分は、WHOの180分に近い広さの数え方だと見たほうが誤解が少ない。
ただし、年齢の区分も対象国もちがうため、どちらが厳しいかは単純には言えない。また、数値はWHOの刊行物ページに基づく。PAHO(汎米保健機構)の紹介記事では、担当者の発言が、「子どもに遊びを取り戻す必要がある」という趣旨で紹介されている[3]。
こう見ると、国ごとの「60分」は、数え方の約束ごとまで確かめないと比べられないことが分かる。では、この数字を、自分の生活に置き直してみるとどうなるのか。
5. きょうの うごきを かぞえて みよう
5. 自分の一日の「動き」を数えてみる
5. 一日の動きを自分で数え、原典に当たる
きょう できる こと
あさから ばんまでに、体を うごかした ことを、おうちの ひとと いっしょに おもい出して みましょう。あるいた、はしった、ものを はこんだ、ボールを なげた。みじかい うごきも、たして かまいません。
さいごに、3つの うごき(たつ・いどう・ものを つかう)の どれが 多かったか、見て みましょう。ぜんぶ たして 60ぷんより 多いか すくないかは、きめつけなくて いいです。
しらべる とき
くにの 「ようじきうんどうししん」は、もんぶかがくしょうの ホームページで 読めます。おうちの ひとと 見て みましょう。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
本文で使った資料です。
- 文部科学省 幼児期運動指針 https://www.mext.go.jp/a_menu/sports/undousisin/1319771.htm (60分の文面・根拠・基本的な動き)
- 文部科学省 幼児期運動指針の策定について(通知) https://www.mext.go.jp/a_menu/sports/undousisin/1319192.htm (策定の時期)
- PAHO/WHO 5歳未満のガイドライン紹介 https://www.paho.org/en/news/24-4-2019-grow-healthy-children-need-sit-less-and-play-more (WHO担当者の発言)
- WHO Guidelines on physical activity, sedentary behaviour and sleep for children under 5 years of age https://www.who.int/publications/i/item/9789241550536 (WHOの公表日と3〜4歳の目安)
なおした ところ
更新履歴
更新履歴(改版の記録)
- 初版を公開。
このサイトでは、公開した記事の本文は原則として書き直しません。誤りが見つかったときや、内容が古くなったときだけ手を入れ、その理由をこの欄に残します。