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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

火を つかわなくても、たまごの しろみは かたまるの?

火を使わなくても卵白が固まるのは、なぜだろう ── ピータンとゆで卵を比べる

熱を加えずに卵白がゲル化する条件 ── ピータンのアルカリ凝固と、加熱凝固の違い

分野:自然

たまごの しろみは、火を つかわなくても かたまる ことが あります。中国の 食べもの ピータンは、にたり やいたり せずに、ねんどを ぬって 2か月ほど おいて つくります[3]。

ゆでたまごは ねつで かたまります。では、ねつ なしで かたまる ときは、なにが はたらくのでしょう。そして、しろく ならないのは なぜでしょう。ピータンの かたまりかたと、ゆでたまごとの ちがいが わかります。

ピータンは、卵を煮ることも焼くこともなく、粘土を塗って涼しい暗い場所に置いて作られます[3]。割ると、白身は透き通った褐色のゼリー状で、黄身は暗い緑色です。

ゆで卵の白身は熱で白く固まるのに、ピータンの白身は火を使わず、しかも白くならずに固まるのはなぜでしょうか。アルカリが白身に何をするのか、熱とはどこが同じでどこが違うのかが分かります。

ピータンは、加熱の工程を持たない。粘土を塗った卵を涼しい暗所に置くだけで、白身は褐色のゼリー状になる[3]。熱で固めたゆで卵は白く濁るのに、なぜ透明感を保ったまま固まるのか。

強アルカリでの卵白のゲル化を調べた日本の論文と、加熱による変性の研究を並べると、「固まる」ことの共通点と、白く濁るかどうかの分かれ目が見えてくる。数字が出典ごとに食い違う点も扱う。

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1. ひを つかわないのに、かたまった たまご

1. 煮ても焼いてもいないのに、白身がゼリーになった卵

1. ピータンの製法 ── 加熱を含まない工程で卵白が固まる

ピータンは、あひるの たまごなどで つくります。まず、せっかいを まぜた ねんどを、からの うえから ぬります。その うえに もみがらを まぶして、すずしくて くらい ところに 2か月ほど おきます[3]。

このあいだ、なべも ひも つかいません。それでも 2か月たって わると、しろみは ちゃいろの ゼリーのように、きみは くらい みどりいろに なって います[3]。

ひを つかわないのに、どうして かたまるのでしょう。

ピータンの作り方は、見ていると拍子抜けするほど簡単です。アヒルの卵などに、石灰(や木炭)を混ぜた粘土を塗り、もみ殻をまぶして、涼しい暗い場所に置きます。期間は製法によって、20日ほどから数か月まで幅があります[3]。

この間、卵を火にかけることはありません。それでも、取り出して割ると、白身は褐色のゼリー状に固まり、黄身は暗い緑色になっています[3]。作る期間は製法によって20日ほどから数か月まで幅があるとされます。

火も湯も使わずに、卵白が固まっている。固めたのは、熱ではない何かです。それは、粘土の中の石灰が作り出すものでした。

ピータンの製法には、加熱の工程が出てこない。アヒルの卵などに、石灰や木炭を混ぜた粘土を塗り、もみ殻をまぶして、涼しい暗所に置く[3]。期間は製法によって、20日ほどから数か月まで幅がある。

それでも白身は褐色のゼリー状に、黄身は暗緑色になる[3]。熱がなくても卵白が固まるなら、固まるために必要なのは熱そのものではなく、卵白のタンパク質の状態を変える何かだと考えられる。その「何か」は、石灰が水と反応してできるアルカリである。殻の内部へアルカリが少しずつ浸みこむことで、変化が起こるとされる[3]。

では、アルカリは卵白に何をしているのか。実験室で、濃いアルカリを直接卵白に加えた研究がある。

2. アルカリが、しろみの 中の つぶを つなげる

2. 強いアルカリが、卵白のタンパク質どうしをつなげる

2. 卵白へのアルカリ添加 ── タンパク質間の相互作用とゲル化

ピータンの ねんどの せっかいは、水に とけると アルカリに なります。アルカリには つよい ものも あり、いえで ためす ものでは ありません。

むかしの 日本の けんきゅうでは、しろみに つよい アルカリを くわえると、ゼリーのように かたまる ことが しらべられました[1]。しろみの なかの たんぱくしつは、アルカリで たがいに くっつきあうと いわれます[1]。

ゆでたまごも、たんぱくしつが くっつくから かたまります。ねつ でも アルカリ でも、「たんぱくしつが つながる」ところは にて います。

この けんきゅうでは、おんどが たかいほど はやく、かたく かたまりました[1]。

石灰は水に触れるとアルカリ性の液になります。この記事では、ピータンの白身を固めるのは、殻を通って中に浸みこんだアルカリだと考えて話を進めます[3]。

1975年、日本の研究者たちが、卵白に濃い水酸化ナトリウム(強いアルカリ)を加えて、固まるかどうかを調べました。すると卵白はゲル、つまり水を含んだままゼリー状に固まりました。0〜45℃の範囲では、温度が高いほど速く固まり、固まったゲルもかたくなりました[1]。

同じ研究は、アルカリで卵白のタンパク質どうしが影響しあうことも示しています。アルカリの程度(pH)が12.5になると、コンアルブミンというタンパク質が、電気泳動という方法で調べたときの位置から消えました。pH13.0では、卵白の主成分のオボアルブミンも同じように消えています[1]。タンパク質が、ほかのタンパク質とくっついて、別のものになったと読めます。

この実験では、濃いアルカリを加えると、卵白は熱を使わずに固まりました。ただし、これは実験室の濃いアルカリでの結果で、ピータンの中で同じことが同じ速さで起きているとは限りません。家庭で試すものではありません。

日本畜産学会報46巻1号(1975)は、卵白に強アルカリを加える実験を報告している。4.5N水酸化ナトリウム液を卵白100mlに4ml加えるとゲル化し、0〜45℃の範囲では、温度が高いほど速くゲル化し、ゲルも硬くなった[1]。ピータン製造は、この性質を利用していると位置づけられる。

同研究では、pH12.5で30分処理するとコンアルブミン(オボトランスフェリン)のバンドが電気泳動で消え、pH13.0ではオボアルブミンのバンドも消えた。要旨は、アルカリ処理で卵白タンパク質どうしが相互作用すること、コンアルブミンはアルカリの影響を比較的受けやすいことを述べる[1]。バンドが消えたのは、タンパク質が互いに結びつき、元の位置に現れなくなったためと読める。

注意点が二つある。一つは、これが濃いアルカリ液による実験室の結果で、実際のピータンの内部で同じ速さ・同じpHで起きているとは限らないことだ。もう一つは、ここで確かめられたのが「アルカリで固まる」という事実であり、アルカリがタンパク質のどの結合に働くのかは、ここで紹介した要旨だけでは分からない。次に、同じ「固まる」でも、熱ではどう違うのかを見る。

3. ゆでたまごは、なぜ しろく かたまるの?

3. ゆで卵は熱で、アルカリとは別の道すじで固まる

3. 加熱凝固との対比 ── 温度と時間で変わる固まり方

ゆでたまごの しろみは、ねつで かたまります。ねつを くわえると、たんぱくしつの 形が ほどけて、たがいに くっつきます。

この ほどける おんどは、たんぱくしつごとに ちがいます。しろみの まんなかの 大きい たんぱくしつは 80℃ぐらい、べつの たんぱくしつは 60℃を すこし こえた ところから くっつき はじめると、しらべた けんきゅうが あります[5]。ただし おんどは、水の こさや はやさで かわります。

おんどだけでなく、じかんも だいじです。65℃の おゆに たまごを つけると、まんなかが おゆの おんどに ちかく なるまでに 30ぷんも かかり、そのあと 210ぷん たっても、しろみは まだ ながれる ままでした。70℃だと 30ぷんで ながれなく なりました[6]。

ねつの ときは、おんどと じかんで かたまりかたが きまります。アルカリは、ねつを つかわない べつの みちです。

卵白は、1種類のタンパク質ではなく、いくつかの混ざりものです。熱を加えると、それぞれの形がほどけて(変性)、くっつきあって固まります。

固まり始める温度はタンパク質ごとに違います。2025年の研究では、主成分のオボアルブミンの変性温度は、5%の水溶液を1分間に5℃ずつ温めた測定で約80℃、リゾチームは約77℃でした[5]。ただし、この数字は濃さ・温める速さ・pH・塩で変わります。固定値としては読まないでください。

温度だけでなく、時間も関係します。湯温65℃で卵を温めると、中心が湯に近い温度になるまでに約30分かかり、そのあと210分たっても白身は流れる状態でした。70℃では30分で流れなくなっています[6]。

つまり熱による凝固は、「何℃を超えたか」と「どれだけ置いたか」で決まります。アルカリの場合は、pHと、しみこむ時間です。きっかけは違いますが、タンパク質がほどけて、つながって、網のようになるという筋は似ています。

卵白は複数のタンパク質の混合物で、加熱による変性温度はタンパク質ごとに異なる。2025年の報告では、オボアルブミンの変性温度は5%(w/v)水溶液を5℃/分で昇温した測定で80.22℃、リゾチームは77.46℃であった[5]。ただしこれらの値は濃度・昇温速度・pH・塩によって動くので、卵の中の卵白にそのまま当てはまる固定値ではない。

固まるかどうかは、温度だけでなく保持時間にも左右される。湯温65℃で卵を温めた実験では、卵の中心が湯温近くになるまでに約30分かかり、その後210分経っても白身に流動性が残った。70℃では30分で流動性が失われた[6]。この点は、熱による固まり方が「ある温度で一斉に」ではなく、温度ごとに進み方の違う変化であることを示す。

ここで、アルカリとの比較ができる。熱では温度と時間が、アルカリではpHと浸透の時間が、進み方を決める。どちらも、折りたたまれていたタンパク質の形が崩れ、分子どうしが結びついてゲルになる点では共通する。ところが、できあがりの見た目は大きく異なる。

4. ゆでたまごは しろく、ピータンは すきとおるのは?

4. 白く濁る熱と、透き通ったまま固まるアルカリ

4. 外観の違い ── 白濁する加熱ゲルと、透明で褐色のアルカリゲル

ゆでたまごの しろみは、しろく にごります。これは、たんぱくしつが ねつで かわる ときの すがたです[2]。

いっぽう ピータンの しろみは、なまの ときのように すきとおった まま、ちゃいろの ゼリーに なります。アルカリが そとから すこしずつ しみて、なまの ままで かたまる ためと せつめいされます[2]。

ただし、どうして アルカリでは しろく にごらないのか、くわしい しくみは、この きじで つかった しりょうには かいて ありません。

ゆで卵の白身が白いのは、熱でタンパク質が変性するためです[2]。透き通っていた白身が、熱で白く変わるわけです。

ピータンは対照的です。アルカリがゆっくりと外側から浸みこみ、卵白を生のまま固めるため、透き通って、褐色を帯びたゼリーになる、と解説では説明されます[2]。

固まる目安のアルカリの程度も解説にありますが、出典によって書き方が違います。解説書はpH12以上でゲル化するとし[2]、1975年の研究ではpH12.5〜13でタンパク質の位置が変わっていました[1]。ある研究誌では、最終的に卵の内部のpHは約10で、完全にゲル化するまで約30日かかると書かれています[4]。この食い違いは、卵白の濃さ、温度、アルカリの入り方など、条件によると考えられます。

だから、「pH12で固まる」といった数字は、目安として受け止めておくのが安全です。

加熱ゲルが白濁する点は、タンパク質の変性・凝集による[2]。これに対し、アルカリで固まったピータンの卵白は、生のまま固まり、透明感を保って褐色を帯びたゼリー状になると解説される[2]。外側から少しずつアルカリが浸みこむ、という条件の違いが、見た目の違いにつながっていると説明されるが、この機構を直接述べた査読論文の本文は、ここでは扱っていない。解説記事の説明にとどまる。

固まる境のpHについても、出典間で数字が揃わない。解説はpH12以上でゲル化を示すとし[2]、1975年の論文ではpH12.5でコンアルブミン、pH13.0でオボアルブミンのバンドが消えている[1]。他方、大学生による2023年の研究報告は、過去の文献を引いて卵内部の最終的なpHを約10とし、一般的な方法では完全にゲル化するまで約30日かかると説明する。報告自身の実験で鶏卵が完全にゲル化したわけではない[4]。

これらは、実験室の卵白と、殻の内側の卵白という、条件の異なる対象の数字である。さらに最後の出典は学生誌で、査読の水準が同じではない。したがって「何pHで固まる」を一つの数字に決めず、「強いアルカリ側で固まる。具体的な閾値は条件で動く」と読むのが妥当だろう。

最終的な見た目と数字の食い違いまで見てくると、残る問いは、これを自分の目でどう見比べられるかである。

5. たまごの しろみを、じっくり みくらべよう

5. 生卵とゆで卵の白身を割って、自分の目で比べる

5. 観察と、さらに調べるときの入口

おうちの 人と いっしょに、なまの たまごを 小さい おさらに わって みましょう。しろみは、すきとおって います。

つぎに、ゆでたまごを ふたつに きって みます。しろみは、しろくて かたいです。ゆでる ときは、おゆで やけどを しないよう、大人と いっしょに して ください。

この ちがいが、ねつで かたまった すがたです。もし おみせで ピータンを みつけたら、おうちの 人と 一つ わって みると、アルカリで かたまった すがたも みられます。

ひを つかわなくても かたまる。でも すがたは ちがう。これが、たんぱくしつの ふしぎです。なぜ にごらないのか、さらに しらべたく なったら、「たまご アルカリ ピータン」を キーワードに、図書館や じどうかんで さがして みましょう。

家にある卵で、固まる前と後を見比べることができます。まず、生卵を小さな皿に割り、白身が透き通っていることを見ます。次に、ゆで卵を半分に切ります(ゆでるときはやけどに気をつけ、大人と一緒に)。白身は白く、しっかりと固まっているはずです。

この違いが「熱で固まった白身」です。もしスーパーや中華食材店でピータンを見つけたら、家の人と一つ割って見比べてみてください。同じように固まっていても、透き通った褐色のゼリーという別の見た目に出会えます。

ピータンの白身が白く濁らない理由は、この記事で使った資料の範囲では、解説の説明にとどまります。もっと知りたくなったら、国立情報学研究所のCiNii Researchなどで「卵白 アルカリ ゲル化」「ピータン」を検索してみてください。日本語の論文や調査報告が読めます。

固まる前(生)・熱で固めたもの(ゆで卵)・アルカリで固めたもの(ピータン)の3つを並べて割ると、同じ卵白でも見た目が異なることが確かめられる。生とゆで卵は家庭で用意できる(加熱時はやけどに注意)。ピータンは食材店で入手できることがある。

この記事の数字には、条件の違いと出典の水準の差がある。確かめ直すなら、まず張ほか(1975)の論文本文[1]と、日本調理科学会誌の温泉卵の研究[6]を読み、実験の条件(濃度、温度、時間)を見比べるのがよい。

残る問いは二つある。①アルカリで固まった卵白が白濁しない理由。解説の説明はあるが、機構を直接述べた論文を、この記事では扱っていない。②熱とアルカリの両方を合わせると、固まり方はどう変わるか。これも資料が不足している。この記事では答えを示せなかった問いである。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

出典について:日本の学会誌の論文、解説、百科事典、研究誌を使った。何に使ったかは、それぞれの項目の最後に書いている。

  1. 張ほか「アルカリによる卵白のゲル化について」日本畜産学会報46巻1号(1975)。https://www.jstage.jst.go.jp/article/chikusan1924/46/1/46_1_29/_article/-char/ja/ (強アルカリによる卵白のゲル化と、タンパク質の変化について。論文の要旨)
  2. ユーザーライフサイエンス「卵に含まれる物質や化学的な性質」。https://userlife.science/basics/food-chemistry/egg/2/ (加熱で白く固まる理由と、ピータンの見た目について。解説記事)
  3. Wikipedia日本語版「皮蛋」。https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9A%AE%E8%9B%8B (ピータンの作り方と見た目について。百科事典)
  4. Rice Catalyst vol.13 (2023) "Impact of Ca(OH)2 and removal of egg shell on pH and gelation of chicken and duck eggs"。https://ricecatalyst.com/volume-13/2023/12/impact-of-caoh2-and-removal-of-egg-shell-on-ph-and-gelation-of-chicken-and-duck-eggs (ピータンの熟成日数と最終pHの一例。大学生による研究誌)
  5. "The Thermodynamic and Gelation Properties of Ovalbumin and Lysozyme" (2025)。https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC12191903/ (卵白タンパク質の熱による変性温度について。英語の論文)
  6. 辰口・大「温泉卵の凝固状態への加熱温度と保持時間の影響」日本調理科学会誌52巻5号(2019)。https://www.jstage.jst.go.jp/article/cookeryscience/52/5/52_345/_article/-char/ja/ (65℃と70℃での白身の流動性について。論文の要旨)

なおした ところ

更新履歴

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