1. ESLって、なんのことなの?
1. 同じ冷蔵の牛乳で、賞味期限の目安が1週間と2週間に分かれるのはなぜか
1. ESLは「強く加熱した牛乳」ではなく、工程全体の衛生を高めた製法である
ESLは、「ながく もたせる」という いみの えいごの かしらもじです。パックの 牛乳を つくる とき、はじめから おわりまでの こうていで、ばいきんが まざる もとを へらして いる、と にゅうぎょうの だんたいは せつめいして います。
たとえば、牛乳を つめる まえの パックに、紫外線を あてて きれいに します。きかいも、あらい方や きんを ころす レベルを 上げて います。
のむ までの めやすは、ふつうの 牛乳が つくった 日から 1しゅうかん くらい、ESLが 2しゅうかん くらいです。ただし、これは めやすです。きまりの 数字では なく、メーカーごとに ちがいます。
ESLは、Extended Shelf life(賞味期限の延長)の略です。日本乳業協会は、原料乳から製品になるまでの全工程で細菌汚染の原因を減らし、充填前の牛乳パックに紫外線を当てて殺菌したり、設備や機器の洗浄・殺菌のレベルを高めたりした製法だと説明しています[1]。
この説明の中心は「工程のどこでも菌を入りにくくする」ことで、「牛乳をもっと強く熱する」とは書かれていません。賞味期限の目安は、ふつうの牛乳が製造日+1週間程度、ESL製法が+2週間程度とされます[1]。
ただし、賞味期限は各メーカーが決めるもので、製法や物流の条件で差があります。1週間と2週間は、決まりの数字ではなく目安です。紫外線は工程の一例にすぎず、期限のちがいを紫外線だけで説明することはできません。
では、殺菌した牛乳が、なぜ「殺菌のあと」に傷むのでしょうか。
日本乳業協会によれば、ESLは Extended Shelf life の略で、原料乳から製品に至る全工程で細菌汚染の原因を減らし、充填前のパックに紫外線を当てる、設備・機器の洗浄と殺菌のレベルを上げるといった手を重ねた製法である[1]。定義の主語は工程の衛生であり、加熱の温度や秒数は含まれていない。
賞味期限の目安は、ふつうの牛乳が製造日+1週間程度、ESL製法が+2週間程度、常温保存可能品が60日以上とされる[1]。ただし期限は各メーカーが独自に決めるため、製法と物流の条件で差が出る。日数は法定値ではない。紫外線は列挙された手段の一つであり、これだけで期限が倍になるとは読めない。
ここで疑問が出る。加熱で菌を減らした牛乳が、なぜ殺菌の後に傷むのか。次の章で、殺菌と充填の順序を見る。
2. ころした あとに、なにが おこるの?
2. 殺菌した牛乳が、そのあとに傷む道すじ
2. 殺菌のあと、充填までの間に何が起こりうるか
おふろで ぴかぴかに あらった 子が、そのあと どろんこの 水たまりに 入って しまったら? また よごれて しまいますね。
牛乳も すこし にて います。ねつで きんを ころしても、そのあと、つめる きかいや パックに きんが いたら、また まざる かもしれません。
だから ESLでは、ねつで ころす ところだけで なく、「ころした あとに、きんを いれない」ことを たいせつに して います。パックに 紫外線を あてるのも、その ひとつの やり方です。
ただし、日本の ESLが ねつを なんどに して いるかは、こうてきな しりょうでは しめされて いません。
牛乳の菌を減らす基本は加熱ですが、殺菌が終わった牛乳を容器に詰める段階で、機械やパックに菌が残っていれば、せっかく減らした菌がまた入ります。日持ちは、加熱の強さだけでなく、殺菌のあとをどれだけ清潔に保てるかにも左右されます。
ESLの定義が、原料乳から製品まで全工程の細菌汚染を減らすこと、充填前のパックに紫外線を当てること、設備を洗って殺菌するレベルを高めることを並べているのは[1]、この考え方と合っています。明治も、ESLは「賞味期限をさらに延ばすことを可能にした設備」で充填した牛乳だと説明しています[2]。ここで注目されているのは、加熱の条件ではなく、充填のための設備です。
なお、日本のESL牛乳の加熱条件(温度や秒数)や、どの商品がESLなのかは、業界団体の資料には示されていません。この記事でも、数字では書きません。
とはいえ、「それなら加熱をもっと強くするのが早い」という考えも出てきます。実際、強く熱して、さらに日持ちを延ばした牛乳もあります。
牛乳の菌数を下げる主な手段は加熱だが、殺菌後に充填機や容器から菌が入れば、加熱で下げた菌数はまた上がる。日持ちを決めるのは、加熱の強さと、その後の清潔さの両方である。
日本乳業協会がESLの定義に、全工程での細菌汚染の原因の低減、充填前のパックへの紫外線照射、設備・機器の洗浄と殺菌のレベル向上を並べるのは[1]、この殺菌後の道を狭める考え方と整合する。明治は、ESLを「賞味期限をさらに延ばすことを可能にした設備」で充填した牛乳と説明し[2]、ここでも焦点は加熱条件ではなく充填設備に置かれている。
注意すべきは、日本のESL牛乳の加熱条件と、どの商品がESLに当たるかが、公的・業界資料で数字として示されていない点である。記事では推測せず、設備・工程の衛生向上が定義だという範囲にとどめる。
ならば、加熱を強めて日持ちをのばす方法はないのか。実はある。それが、常温で保存できるLL牛乳である。
3. ねつを もっと つよく すると どうなるの?
3. 熱をもっと強くすると、常温で置ける牛乳になる
3. 加熱をさらに強めたLL牛乳は、UHT牛乳とどうちがうか
ふつうの 牛乳は、120〜130℃で 2〜3秒、さっきんして います。日本では、うって いる 牛乳の 9わり いじょうが、この ほうほうと いわれます。
LL牛乳は、もっと 高い 140〜150℃で 2〜3秒。そのあと、ひかりと くうきを とおさない アルミはくの はいった パックに、きんの いない ところで つめます。ひらいて いなければ、れいぞうこに いれなくても よい 品も あります。
めいじの せつめいでは、ESLは LL牛乳とは べつの ものです。ふつうの 牛乳は、つくったあと 10℃いかで ほぞんする ひつようが あります。
明治の解説によると、日本の牛乳は、乳等省令で「63℃30分、またはそれと同等以上の殺菌効果のある方法」で殺菌するよう定められています。方法は問われず、主流は120〜130℃で2〜3秒の超高温瞬間殺菌(UHT)で、市販の牛乳の9割以上を占めるとされます[2]。
UHTは、熱に強い胞子をつくる菌まで死滅させられる方法として紹介され、低温保持殺菌(63〜65℃30分)と比べて1万倍の殺菌能力があるとされます[2]。
これより熱を上げたのが、LL牛乳です。ふつうの冷蔵牛乳が120〜130℃・2〜3秒なのに対し、140〜150℃・2〜3秒で滅菌し、光や空気を通さないアルミ箔入りの紙パックに無菌状態で詰めます[1]。未開封なら常温で置けますが、明治はESLをこのLL牛乳とは別のものとして説明しています[2]。通常の牛乳は、製造後10℃以下で保存します。
では、強く熱して常温保存できるなら、全部LL牛乳にすれば済む話では、ないのでしょうか。
明治の解説によると、日本では乳等省令が牛乳の殺菌を「保持式で63℃30分、またはこれと同等以上の殺菌効果のある方法」と定めている。方法は問われず、主流は120〜130℃・2〜3秒のUHTで、市販牛乳の9割以上がこれとされる[2]。UHTは耐熱性の胞子を形成する菌を死滅させられる唯一の方法とされ、低温保持殺菌の約1万倍の殺菌能力があると説明される[2]。
この延長にあるのがLL牛乳である。要冷蔵の牛乳が120〜130℃・2〜3秒なのに対し、LLは140〜150℃・2〜3秒で滅菌し、光や空気を遮るアルミ箔入り紙パックに無菌のまま充填する[1]。未開封なら常温で保存でき、賞味期限は60日以上の常温保存可能品に分類される。通常の牛乳は製造後10℃以下で保存する。明治はESLを、UHT殺菌乳を無菌パックに詰めるLLとは別の位置に置いている[2]。
強く熱すれば日持ちがのびるなら、すべてLLにしない理由は何か。答えは味にある。
4. ねつを つよく すると、あじも かわるの?
4. 熱を強くするほど出てくる「加熱のにおい」
4. 熱を強めると風味に何が起こるか:加熱臭と酸素
おいしい おもちを やくと、おもての ほうが こげて においが 出ますね。牛乳も、あつく しすぎると、においが 出ると いわれます。
ある いんしょくの きじでは、「たかい おんどで さっきんするほど、ねつの においが つよく なる」と かかれて います。しぼりたてに ちかい あじが すきな ひとは、ひくい おんどで さっきんした 牛乳を えらぶ こともあると いいます。
めいじの せつめいでは、においの もとに なる ものは、さんそが ある ところで ねつを くわえると 出ます。そこで、ねつを くわえる まえに、さんそを 5ぶんの 1ほどに へらす つくり方を とりいれました。
つまり、ねつを 強くするほど ながく もたせやすい かわりに、あじへの ひびきも ある、という ことです。
牛乳を、酸素がある状態で加熱すると、酸化によって硫黄を含む香り成分(ジメチルサルファイドなど)ができ、好ましくない風味が出ます。明治は、殺菌の前に牛乳の中の酸素を5分の1ほどに減らす製法で、この問題に対応したと説明しています[2]。
一般に、高温で殺菌するほど加熱フレーバー(加熱臭)が強まるといわれます。生乳に近い味を求める人には、低温殺菌の牛乳や、独自の製法の牛乳を選ぶという紹介もあります[3]。
加熱を強めると菌が減って日持ちしやすくなりますが、加熱臭も強まりやすくなります。殺菌のあとの清潔さを高める方法もあります。ただし、日本のESLが風味を理由に設計されたとは確認できません。
では、海外のESLは、どんな道を使っているのでしょうか。
牛乳を酸素の存在下で加熱殺菌すると、酸化で生じる硫黄化合物(ジメチルサルファイドなど)により、好ましくない風味が現れる。明治は、殺菌前に酸素を5分の1程度に減らす製法でこれに対応した[2]。一般に、高温の殺菌ほど加熱フレーバーは強まるといわれ、生乳に近い味を求める人向けに低温殺菌牛乳などを選ぶ紹介もある[3]。後者は消費者向けの記事で、風味の感じ方は人により異なる。
加熱を強めれば菌は減り日持ちはのびやすいが、加熱臭も強まりやすい。殺菌後の清潔さを高める方法もある。ただし、日本のESLが風味を理由に設計されたとは確認できない。
では、加熱以外で菌を減らす道は、実際にあるのか。海外のESLには、その答えが複数ある。
5. 外国の ESL牛乳は、どう つくるの?
5. 海外のESLには、熱以外の道もある
5. 海外のESLの3系統:高温、ろ過、遠心分離
外国の ESL牛乳は、ふつうの れいぞう牛乳と、LLの ような ながもちの 牛乳の あいだに ある ものと せつめいされて います。つくり方は 3つ あるそうです。
1つめは、もっと 高い おんどで さっと あたためる ほうほう。2つめは、ふつうに さっきんしてから、とても 小さな あなの あいた フィルターで、きんを こしとる ほうほう。3つめは、ぐるぐる まわして、きんを とばす ほうほうです。
パックの しゅるいや、国によって、ながもちする 日数は ちがいます。日本の 2しゅうかんと、そのまま くらべる ことは できません。
スウェーデンの包装会社テトラパックの解説によると、海外のESL牛乳は、ふつうの低温殺菌(HTST)牛乳と、UHTの無菌牛乳との中間に位置づけられる冷蔵牛乳です。つくり方には3つの系統があるとされています[4]。
1つめは高温加熱で、最大135℃で0.5〜4秒ほど熱します。2つめは、いったん通常の殺菌をしてから、マイクロフィルトレーション(ろ過)で菌を減らす方法。3つめは、遠心分離(バクトフュゲーション)で菌を取り除く方法です。同じ解説は、ろ過方式は風味や栄養を保ちやすいとしています[4]。
冷蔵での日持ちも、国や方式で幅があり、ろ過方式で約35日、高温方式で20〜90日延びるなどと紹介されています[4]。これは主に海外の例で、日本の約2週間と並べて比べることはできません。
日本のESLがこの3つのどれに近いのかは、資料からは分かりません。日本の定義は、方式ではなく、工程全体の衛生という言い方で書かれているからです。
Tetra Pak の解説では、海外のESL牛乳は、通常の低温殺菌(HTST)牛乳とUHT無菌牛乳の中間に位置づけられる冷蔵牛乳で、製法は3系統に分かれるとされる[4]。①最大135℃で0.5〜4秒の高温加熱、②通常の殺菌のあとにマイクロフィルトレーション(ろ過)で菌を減らす、③遠心分離(バクトフュゲーション)で菌を除く、である。同じ解説は、ろ過方式は風味と栄養を保ちやすい、とする。
冷蔵での日持ちは、国と方式で幅がある。ろ過方式は国により約35日、高温方式は20〜90日延びる、といった記述がある[4]。ただし、これは主に海外の例で、日本の約2週間という目安と並べて優劣を言うことはできない。また、解説は牛乳の包装を扱う企業が書いたもので、自社の事業に近い立場である点は考えておく。
日本の定義が、①〜③のような方式名ではなく、工程全体の衛生向上という書き方になっている点も、海外の「ESLとは何か」と同じ土俵では比べにくい理由になる。
6. おみせで たしかめて みよう
6. 売り場のパックを見比べる
6. 売り場の表示と、原典に当たる
おみせで みてみよう
おうちの ひとと いっしょに、スーパーの 牛乳うりばへ いって みましょう。パックの うらを 見て、「ほぞんほうほう」と「いつまでか(しょうみきげん)」の ちがいを くらべます。「10℃いか」と 書いて ある もの、れいぞうこに 入れなくても よい もの、あれば 「ESL」と 書いて ある もの。ESLの もじは、メーカーによって、ない ことも あります。
おうちで
のむ とき、ひとくち ずつ あじを くらべて みましょう。ちがいが わかるかは、人によります。わからなくても だいじょうぶです。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
本文で使った資料です。
- 日本乳業協会 乳と乳製品のQ&A(牛乳の賞味期限). https://nyukyou.jp/dairyqa/2107_076_279/ (ESLの定義/賞味期限の目安/LL牛乳の温度)
- 明治 牛乳ができるまで. https://www.meiji.co.jp/meiji-shokuiku/know/lovable-milk/milk/manufacture/ (殺菌方法/UHTの割合/加熱と風味)
- ねとらぼ(ITmedia)牛乳の飲み比べ記事 2017. https://nlab.itmedia.co.jp/cont/articles/3271376/ (殺菌温度と加熱臭)
- Tetra Pak: Extended shelf life milk. https://www.tetrapak.com/en-us/insights/blog/innovation/extended-shelf-life-milk (海外のESLの製法と日持ち)
なおした ところ
更新履歴
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