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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

すきな たべものと きらいな たべものは、どうやって できるの?

好き嫌いは、いつ、どうやって決まっていくのか

食べ物の好き嫌いの形成 ── 生得的な味覚反応、胎児期・授乳期の経験、反復接触、味覚嫌悪学習

分野:からだ

うまれたばかりの 赤ちゃんに、あまい 水と にがい 水を あげると、顔つきが ぜんぜん ちがいます。まだ 何も 食べた ことが ないのに、です。

では、すきな ものと きらいな ものは、どうやって できるのでしょう。この 記事を 読むと、うまれつきの 土台と、あとから 作られる ところ、そして きらいな ものが かわる ことも ある わけが わかります。

生まれて間もない赤ちゃんは、甘い液を口にすると表情がゆるみ、苦い液では口を開けて嫌がるような顔をします。何も食べた経験がないのに、味の好みはすでにあるように見えます。

ではその好みは、いつ、どこで変わっていくのでしょうか。おなかの中や母乳、何度も食べる慣れ、体調不良との結びつきを順に見ると、好き嫌いが「生まれつき」と「経験」の重なりであり、嫌いなものも変わりうることが分かります。

新生児は甘味とうま味に表情をゆるめ、苦味と酸味を避ける反応を示す[1]。しかし食嗜好そのものは後天的で、学習によって形づくられるとされる[2]。では、生得的な土台の上に、何がどの順で積み重なるのか。

ここでは、胎児期・授乳期の風味経験、反復接触の効果、体調不良と味の結びつきなどの経路を、査読論文・総説・農林水産省の資料から整理し、「嫌い」がなぜ固定されたものではないのかが分かるようにする。

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1. 赤ちゃんは、はじめから すきな あじが あるの?

1. 生まれたばかりでも、甘いものには顔がゆるむ

1. 新生児の味覚反応 ── 生得的な土台

うまれたばかりの 赤ちゃんは、あまい あじと、にがい あじを、ちゃんと かんじ わけて います[1]。

あまい あじや うまみの ある ものを 口に すると、口を もぐもぐ させて、顔が ゆるみます。にがい ものでは、口を あけて、いやだ という 顔を します。すっぱい ものでは、目を ほそめて、口を すぼめます。

これは 「まえに 食べた おぼえが ある」から では ありません。すきな あじと、さける あじの 土台は、うまれた ときから 体に そなわって いる、と 研究者は 考えて います[1]。

顔つきで分かる、味の区別

総説論文によると、新生児は甘味・酸味・苦味・うま味という基本の味を区別できます。甘味やうま味では口をもぐもぐさせて表情をゆるめ、苦味ではあごを開けて拒むような反応を見せ、酸味では目を細めて口をすぼめます[1]。

著者らは、甘味とうま味を好み、苦味と酸味を避けるこの傾向を、ヒトの乳児の基本的な生物学を反映したものと述べています[1]。農林水産省も、うま味をおいしいと感じるのは先天的で世界共通だと説明します[2]。

これは「好み」の記憶ではない

ただし、ここで見ているのは赤ちゃんの表情の反応です。味の記憶や、特定の食べ物への好みではありません。好き嫌いの「土台」が見えている、と考えるのが近いでしょう。

Forestell と Mennella の総説によれば、新生児は甘味・酸味・苦味・うま味を弁別できる。甘味とうま味には咀嚼様の口の動きと表情の弛緩、苦味には開口して拒むような反応、酸味には眼を細め口をすぼめる反応が見られる[1]。

著者らはこの反応を、甘味・うま味への生得的な選好と苦味・酸味の忌避が乳児の基本的な生物学を反映したものと位置づける[1]。農林水産省も、うま味をおいしいと感じる点は先天的で世界共通とする[2]。

注意すべきは、これが観察された表情の反応であって、味の記憶や特定の食物への選好ではない点だ。ここで確かなのは土台までであり、個々の食べ物の好き嫌いは、次に述べる経験で形づくられていく。

2. おなかの 中で、もう あじを まなんで いるの?

2. ニンジンジュースを飲んだお母さんの赤ちゃんは、ニンジン味に嫌そうな表情が少なかった

2. 胎児期・授乳期の風味経験 ── ニンジンジュースの研究

それでは、「すき」は ぜんぶ うまれつき なのでしょうか。じつは、そうでは ありません。

ある 研究では、おなかに 赤ちゃんが いる あいだと、ぼにゅうを あげる あいだに、お母さんに ニンジンジュースを のんで もらいました[3]。

のちに その 赤ちゃんに ニンジンあじの ごはんを あげると、ジュースを のまなかった お母さんの 赤ちゃんよりも、いやな 顔を する ことが すくなかった のです[3]。

お母さんが 食べた ものの あじは、おなかの 中や ぼにゅうを とおして、赤ちゃんに とどく ことが あるのです。ただし、食べた りょうに ちがいは ありませんでした。「すきに なった」と 言いきる ことは できません。

ニンジンの味を知っていた赤ちゃん

1990年代から2000年代にかけて、アメリカの研究者らは、妊娠の後期と授乳期にお母さんがニンジンジュースを飲んだ場合の、赤ちゃんの反応を調べました。のちに赤ちゃんがニンジン味のシリアルを食べたとき、お母さんがジュースを飲まなかった群に比べて、嫌そうな表情が少なかったと報告されています[3]。お母さんの評価でも、赤ちゃんはニンジン味をより楽しんでいるようでした[3]。

言えることと、言えないこと

一方で、食べた量や食事にかかった時間の差は、統計的に意味のある差ではありませんでした[3]。調べたのも乳児期の反応です。この研究だけで、一生の好みが決まると言うことはできません。

それでも、赤ちゃんは生まれる前から、家族が食べるものの風味にふれていて、それが最初の「なじみ」になる可能性が示されたことは、好き嫌いの見方を大きく変えました。

生得的な土台だけでは個々の食物の好みは説明できない。Mennella らの研究では、妊娠後期と授乳期にニンジンジュースを摂取した母親の乳児は、ニンジン風味のシリアルに対して、対照群より否定的な表情が少なかった。母親も、胎内でその風味を経験した乳児のほうがニンジン風味をより楽しんでいると評価した[3]。

だが、摂取量と食事時間の差は統計的に有意ではなかった[3]。表情の差は「選好の形成」の指標としては示唆的だが、行動としての摂取量の増加までは確かめられていない。報道でしばしば見られる「何倍も食べた」という言い方は、論文の結果とは一致しない。

また、評価されたのは乳児期の反応にとどまる。この結果を一生の味の好みが胎児期に決まる証拠として扱うことはできない。むしろ、風味への「なじみ」が早くから始まることを示す一例と読むのが妥当だ。

3. 食べて みないと、すきには ならないの?

3. 食べて、味わって、はじめて「好き」になる

3. 摂取経験と食嗜好 ── 見るだけでは学習は進まない

赤ちゃんは、食べものを 見ただけでは すきに なりません。口に 入れて、あじわって はじめて、すきに なって いきます[1]。

国の のうりんすいさんしょうは、「おいしい」と 思う こころは うまれつきでも、どんな 食べものが すきかは、あとから まなんで いくもの だと せつめい して います[2]。

りにゅうしょくの ころ、あじつけを うすくして、食べものの あじと かおりを じっくり けいけんすると、大人に なっても、だしの かおる りょうりを すきに なる と いわれます[2]。ただ、これは 国の せつめいで、じっけんで たしかめられた とまでは 言えません。

見るだけでは足りない

総説論文は、乳児は食べ物を見るだけでは足りず、味わって初めて好きになると述べています。早い時期の感覚の経験が、最初の数年の食べ方のパターンをつくる、とも説明されています[1]。子どもは「食べさせられたものを好きになることを学ぶ」というわけです。

離乳食と、だしの香り

農林水産省の資料は、食嗜好は後天的で、学習していくものだと説明します。そのうえで、離乳食をほとんど味つけせず、食材のうま味と香りを経験させることが、大人になってからだしの香る料理を好むことにつながる、と述べています[2]。

これは行政による啓発資料の主張です。因果関係が実験で確かめられたとまでは言えないため、「そういわれる」という強さで受け取るのが安全でしょう。

見ただけでは好みは形成されない。総説は、乳児は食物を味わって初めて好きになること、早期の感覚経験が最初の数年の食行動のパターンを形づくること、「子どもは与えられたものを好きになることを学ぶ」ことを述べる[1]。

この「学習」が家庭の食卓でどう働くかについて、農林水産省は、離乳食で味つけをほとんどせず食材のうま味と香りを経験させれば、成長後もだしの香る料理を好むことにつながるとする。逆に、濃い味つけが続くと、うま味のおいしさを経験できなくなる、とも述べる[2]。

ただし、これは行政の啓発資料の主張であり、因果が対照実験で確かめられた形では示されていない。「そうなるといわれる」にとどめて読むべき内容だ。

4. おなかが いたく なった 食べものは、なぜ いやに なる?

4. 気分が悪くなる前に食べたものを、体が覚えている

4. 味覚嫌悪学習 ── 1回で、時間がたっても成立する

すきな ものが できる だけでは ありません。きらいな ものが できる ことも あります。

食べた あとに、はきけが したり、おなかを くだしたり すると、その 食べものの あじを さける ように なる ことが あります[5]。

ネズミを つかった 昔の 研究では、その あじと、ぐあいが わるく なる ことが たった 1回 かさなっただけでも、その あいだに 時間が あいていても、この 学びが できあがる ことが あると しめされました[5]。

体が 「あの あじが あやしいぞ」と 守って くれて いるのかも しれません。でも、これは はじめて 食べる 強い あじの ときに おきやすく、いつも 食べて いる あじには おきにくい とも いわれます。

1回で、時間がたっても

食べたあとに吐き気や下痢を経験すると、その味を避けるようになる学習を、味覚嫌悪学習といいます。ガルシアらによるネズミの研究(1955年)では、たった1回の組み合わせで、しかも時間があいていても成立しうることが示されました[5]。

ヒトでも似たことがあるとされますが、動物実験の結果をそのまま人に当てはめることはできません。

どんな味でも起こるわけではない

この学習が1回で成立しやすいのは、初めての強い味のときです。食べ慣れた味では弱くなるとされます[5]。苦手な食べ物の中には、こうした体験が、本人も忘れた形で関わっているものがあるのかもしれません。

摂取後の嘔気や下痢を経験した個体がその味を避けるようになる学習は、味覚嫌悪学習(条件づけられた味覚嫌悪)と呼ばれる。Garcia らのラットの研究(1955年)では、味と不快な体調の組み合わせが1回だけで、しかも味と不調のあいだに時間のへだたりがあっても成立しうると報告された[5]。

ヒトでも類似の現象があるとされるが、二次資料の記述にとどまる。また、1回で成立しやすいのは味が初めてで強い場合であり、食べ慣れた味では成立しにくい(潜在制止)ことにも注意が必要だ。

本節の出典は百科事典的な二次資料であり、遅延時間の具体的な数値や、ヒトでの詳しい頻度までは論じられていない。因果の強さを、動物実験の知見から人にそのまま当てはめることはしない。

5. きらいな やさいは、なんかいで たべられるように なる?

5. 嫌いな野菜は、何回目で変わるのか

5. 反復接触の効果 ── 5回で量が増え、8〜10回が目安

では、きらいに なった ものは、ずっと きらいなの でしょうか。そうとは かぎりません。

同じ やさいを、たとえば 1週間に 1回ずつ、くりかえし だして みた 研究では、多くの 子が 5回ぐらいで 食べる りょうを ふやしはじめました[4]。たべられる ように なるには、ふつう 8回から 10回ぐらい ひつようだと いわれて います[4]。

2さいから 5さいごろは、はじめての 食べものを こわがる 気もちが つよく なる 時期です[4]。でも この 年れいは、あたらしい すきを 身に つけやすい 時期でも あります。

むりに 食べさせる ひつようは ありません。まわりの 人が 「いやな 顔を したから もう だめだ」と きめつけて しまう ことも、よく あるそうです[4]。

5回で量が増えはじめ、8〜10回が目安

同じ野菜を、たとえば週に1回のように同じ間隔で出し続けると、多くの子は5回ほどで食べる量が増えはじめます。一般には、8〜10回ほどの接触が必要だとされています[4]。見慣れない野菜ほど効果が大きく表れます[4]。

注意したいのは、この効果は食べさせた野菜1種類に対しては頑健でも、ほかの野菜に広がるという証拠はない点です。また、「8〜10回」はあくまで目安で、年齢や子どもの性質で変わり、2歳では回数と好みの関連が出なかった研究もあります[4]。

警戒の時期は、学びやすい時期でもある

食べ物への警戒や偏食は、2〜5歳ごろにピークを迎えます。ただしこの年齢の子どもは、新しい好みを身につけやすい時期でもあります[4]。大人は子どもの嫌そうな表情を「本当に嫌い」と受け取って、出すのをやめてしまいがちですが、表情だけでは本当の嫌悪とは限りません[4]。

反復接触の研究を整理した総説では、同じ野菜を一定の間隔(例:週1回)で繰り返し提示すると、多くの子どもで5回ほどで摂取量が増え始め、一般に8〜10回の接触が必要とされる。効果は見慣れない野菜で大きく、提示した野菜1種類に対しては頑健だが、ほかの野菜へ一般化する証拠は示されていない[4]。

この「8〜10回」は目安にすぎない。年齢や子どもの性質で変わり、2歳では接触の回数と好みの関連が見られなかった研究もある[4]。

食物ネオフォビア(新しい食べ物を避ける傾向)は2〜5歳ごろにピークを迎えるが、この時期は新しい好みを獲得しやすい時期でもある[4]。ところが大人は、子どもの表情を真の嫌悪と受け取って、提示を早くやめてしまいやすい[4]。表情は嫌悪の証拠として弱いという点が、反復接触を成り立たせるうえで重要になる。

6. じぶんの にがてを、すこしだけ しらべて みよう

6. 自分の「苦手」を、記録してみる

6. 自分の苦手な食べ物の「変化」を観察する

こうして 見て くると、すききらいは 「うまれつき」だけでも 「そだち」だけでも ありません。土台の 上に、おなかの 中、食べた かず、体の ぐあいが かさなって できて います。

だから、きらいな ものが かわる ことも ありえます。やって みるなら、こんな ふうに。

やって みよう: おうちの 人と そうだんしてから、食べられそうな 苦手な ものを ひとつ えらんで、少しだけ、日を あけて、何回か 食べて みます。ひと口で、いやなら やめて かまいません。アレルギーが ある 食べものは、ぜったいに ためさないで ください。

どの ときに、すこし ましに なった か、メモに 書いて おくと、あとで 見くらべられます。

好き嫌いは、生まれつきの土台、おなかの中や母乳での風味、食べる回数、体調不良との結びつきが重なってできていきます。その積み重ねの中で、嫌いなものは変わりうるものでもあります。

自分の苦手な食べ物を1つ選び、食べられそうなときに、少しずつ、間隔をあけて何回か口にしてみます。無理に食べる必要はなく、嫌ならやめてかまいません。家族など大人と相談して試しましょう。何回目で食べやすくなったか、あるいはならなかったかを、ノートに書いておくと、後で見くらべられます。アレルギーのある食べ物は試さないでください。

原典を読むなら、出典欄の総説論文(Forestell & Mennella 2017)がよい入口になります。

以上から、好き嫌いは生得的な味覚反応を土台に、胎児期・授乳期の風味経験、摂取による学習、不調と味の結びつき、反復接触が重なって形づくられる、と整理できる。個々の研究には限界があり、とくに量の増加や長期の好みへの影響は、条件によって変わる。

自分で確かめるなら、苦手な食べ物を1つ選び、食べられそうなときに、一定の間隔で何回か少量を試して、いつ、どの程度食べやすくなったかを記録するとよい。無理に食べる必要はなく、嫌ならやめてよい。家族など大人と相談して試す。アレルギーのある食物は試さない。

原典に当たるなら、まず Forestell & Mennella(2017, Current Nutrition Reports)の総説と、Nekitsing ら(2018)の反復接触の総説がよい。いずれも英語の資料なので、読むのは大人の手を借りてよい。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

本文で使った資料です。研究結果は、条件や対象が限られているものがあります。

  1. Forestell CA, Mennella JA. Current Nutrition Reports, 2017(乳児期の味の好みの形成に関する総説論文). https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5492973/ (新生児の味覚反応、食べて学ぶこと)
  2. 農林水産省「子どもの味覚を育てる『うま味』」 https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/oishiiwashoku/article/70/ (食嗜好は後天的で学習する、離乳食の味つけ)
  3. Mennella JA, Jagnow CP, Beauchamp GK. "Prenatal and postnatal flavor learning by human infants." Pediatrics 107(6):e88, 2001. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC1351272/ (ニンジンジュースの研究)
  4. Nekitsing C, Hetherington MM, Blundell-Birtill P. "Developing Healthy Food Preferences in Preschool Children Through Taste Exposure, Sensory Learning, and Nutrition Education." Current Obesity Reports, 2018. https://doi.org/10.1007/s13679-018-0297-8 (反復接触の回数の目安と注意点)
  5. Wikipedia "Conditioned taste aversion"(Garcia, Kimeldorf & Koelling 1955, Science を引用している解説) https://en.wikipedia.org/wiki/Conditioned_taste_aversion (味覚嫌悪学習の概要。二次資料)

なおした ところ

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