1. 池の たまごは、どのくらいで カエルに なるの?
1. 冬の池の卵は、約2か月半でカエルになる
1. アカガエルの産卵と上陸 ── 東京の公園での観察例
カエルの なかまには、まだ さむい 冬に たまごを うむ ものが います。ニホンアカガエルは、冬ごもりから 一ど 目を さまして たまごを うみ、また 春まで ねむる と いわれます[2]。たまごの かたまりは だんご の かたちです。ヒキガエルは ひもの かたちなので、見わけられます[2]。
東京の 公園で 見た ある 年の きろくでは、2月24日に たまごから 3ミリほどの 子が とび出しました。そして 5月6日に、子ガエルが りくに あがりました[3]。およそ 70日です。
ただし、これは 1年・1か所の きろくです。日づけは めやすで、ぜんこく おなじ では ありません。
この 70日の あいだに、からだの なかでは なにが おきて いるのでしょう。
冬に産卵するカエル
カエルの産卵といえば春を思い浮かべますが、アカガエルの仲間の産卵期は、本州の平野部で1〜4月、全国では11月から翌年5月にわたると、環境省の調査マニュアルにあります[1]。ニホンアカガエルは、冬眠から一度さめて産卵し、暖かくなる5月ごろまで再び休眠すると紹介されています[2]。卵塊は団子状で、ひも状のヒキガエルと区別できます[2]。
ある池での時間割
東京の公園で観察された例では、2月24日に約3ミリの幼生が寒天質から飛び出し、3月2日には外えらが見られ、5月6日に子ガエルが上陸しました[3]。2月24日から5月6日までは、計算するとおよそ70日です。
これは1年・1か所の観察例で、日付は目安にすぎません。それでも、水の中の生きものが、2か月ほどで陸の生きものになることは伝わります。その間に体の中で何が起きているのかが、この記事の問いです。
2. しっぽが きえる のは、いちばん さいごなのは なぜ?
2. 後ろ脚が先で尾が最後なのは、部分ごとにホルモンへの反応の量がちがうから
2. 甲状腺ホルモンの濃度しきい値 ── 後ろ肢が先、尾が最後になる理由
オタマジャクシは、まず うしろあしが 生えます。つぎに まえあしが 出て、おおきく かわって、さいごに しっぽが きえます。あしが そろうと、いっきに カエルらしい すがたに なり、水から 出はじめます[3]。
この じゅんばんを きめているのは、からだの なかで ふえる「こうじょうせんホルモン」と いう ものです[4]。
からだの ぶぶんによって、ホルモンに はんのうする ために いる りょうが ちがいます。うしろあしは すこしの りょうでも そだちますが、しっぽが ちぢむには たくさんの りょうが いります[5]。ホルモンが すこしずつ ふえて いくと、さきに うしろあしが そだち、さいごに しっぽが ちぢみます。
では、その しっぽは、さいごに どうなるのでしょう。
見た目が一気に変わる順番
後ろ脚は尾の付け根から先に生え、前脚はあとから出ます。脚がそろうと一気にカエルらしい見た目になり、肺が発達して水から出はじめます。その後で、尾が消えます[3]。
順番を決めるホルモンの量
変態を進める主役は、甲状腺ホルモンです。アフリカツメガエルでは、変態の山場の始まりにこのホルモンが急に増え、少しあとにピークを迎えると報告されています[4]。
面白いのは、体の部分ごとに「反応できる量」がちがうことです。後ろ脚は低い濃度でも生えて育ちますが、尾は高い濃度にならないと縮みません[5]。ホルモンが少しずつ増えていけば、先に後ろ脚が育ち、最後に尾が消える順番になります。
この「量のものさし」は、アフリカツメガエルの研究にもとづく説明です。日本のカエルでも同じ順序で見えますが、数値までそのまま当てはめることはできません。
変態は主として甲状腺ホルモンで進む。アフリカツメガエルでは、T3が変態のクライマックス期の開始(NF58期)に急増し、NF61〜62期にピークに達する[4]。NF期はこの種の発生段階表で、日本のカエル全種に共通の番号ではない。
では、なぜ後ろ肢が先で尾が最後なのか。後ろ肢は低濃度のホルモンにも反応して生え育つが、尾は高濃度にならないと縮まない、という組織ごとの感受性のちがいで説明される[5]。そのため、ホルモン濃度が上がっていく過程で、先に後ろ肢が伸び、尾の吸収が最後に起きる。観察上も、肢がそろうと肺が発達して上陸が始まり、その後で尾が消失する[3]。
ここまでの機構は主にアフリカツメガエルの知見で、日本産各種に同じ濃度の値を当てはめることはできない。
3. しっぽは、おちるの? それとも きえるの?
3. 尾は「落ちる」のでなく、数日で体に吸収される
3. 尾の吸収 ── 細胞自身の死と、足場の分解という2つの道すじ
オタマジャクシの しっぽは、ぽろっと とれる ものでは ありません。けんきゅうでは、しっぽが からだの はばの 2ばいより 長くても、数日の うちに 体に すいこまれる と ほうこく されています[5]。これは アフリカツメガエルでの はなしです。
どうやって きえるのでしょう。ふたつの 考えが あります。ひとつは、しっぽの 小さな つぶ(さいぼう)が、ホルモンを うけて 自分で 死んで いくと いう 考えです。もうひとつは、さいぼうを ささえて いる 足場が、はたらく もの(こうそ)に とかされて、さいぼうが はがれて 死ぬ という 考えです[5]。
どちらが どれだけ はたらくのかは、まだ 研究が すすんで いる ところです。
しっぽが きえる ころ、いきの しかたも かわります。
4. ひだりの まえあしは、どこから 出てくるの?
4. 左の前脚は「えら穴」から出てくる
4. 鰓孔と前肢 ── ヤマアカガエルで見られる左右の時間差
オタマジャクシは、えらで いきを します。カエルに なると、はいで いきを します[6]。えらは いらなく なりますが、えらの あなは むだに なりません。
ヤマアカガエルでは、ひだりがわに だけ ある えらの あなから、ひだりの まえあしが さきに 出ます。そのあとで、あなは とじます[6]。みぎの まえあしは、かわを やぶって 出るので、1日ほど おくれます[6]。
つかわなく なった あなを、でぐちに する。うまい しくみだと おもいませんか。ただし、すべての カエルで ひだりが さきと は かぎりません。
さて、いきの しかたの つぎは、たべものです。
息の仕方が変わる
オタマジャクシの時期はえら呼吸で、カエルになると肺呼吸に変わります[6]。ところが、えらの出口である穴は、使われなくなるわけではありません。
穴を出口にする前脚
神奈川県立生命の星・地球博物館の報告によると、ヤマアカガエルでは、左側にだけあるえら穴から左の前脚が先に出て、その穴が閉じます。右の前脚は皮膚を破って出るため、約1日遅れます[6]。
要らなくなる穴を、前脚の出口に使っているわけです。これはヤマアカガエルでの観察で、すべてのカエルで左が先と決まっているわけではありません。
オタマジャクシはえら呼吸、カエルは肺呼吸で、変態に伴ってえらは不要になる。ヤマアカガエルでは、左側にだけあるえら穴(鰓孔)から左の前肢が先に出て、穴が閉じる。右の前肢は皮膚を破って出るため、約1日遅れる[6]。
不要になる器官の出口を、前肢の通り道に転用しているように見える。ただし報告はヤマアカガエルの観察で、全種に当てはまるとは書かれていない。
5. くさを たべる おなかから、ちがう おなかへ
5. 草食の長い腸が、肉食の短い腸になる
5. 腸管の再構築 ── 長さ約4分の1への短縮と絨毛の形成
おおくの カエルの オタマジャクシは、おもに 草を たべて いて、ながい ちょうを もって います。カエルに なると 肉を たべる ようになり、ちょうは みじかく なります[8]。
アフリカツメガエルの けんきゅうでは、ちょうの 長さが 4ぶんの 1ほどに ちぢむ と ほうこく されて います[7]。ながい ひもを、4つ おりに する ような ものです。ただし ほんとうは、ただ ちぢむ だけでなく、ちょうの 内がわも つくりかえられて、ふわふわした ひだで おおわれます[7]。
たべものが かわるから、からだの 中も かわる。では、血は どうでしょう。
6. 血の なかの「はこびや」も かわるの?
6. 血の中の酸素の運び屋も入れかわる
6. ヘモグロビンのスイッチ ── 幼生型から成体型へ
血には、さんそを からだ じゅうに はこぶ「ヘモグロビン」と いう ものが あります。ウシガエルの けんきゅうでは、カエルに なるとき、この はこびやが オタマジャクシ用から カエル用に 入れかわる と ほうこく されて います[9]。
オタマジャクシ用を もつ 赤い つぶと、カエル用を もつ 赤い つぶは、べつべつです。カエル用だけを つくる あたらしい 赤い つぶが 出てきて、オタマジャクシ用の つぶは、血から だんだん きえて いきます[9]。
はこびやの せいしつが かわる ことは、水から りくへの くらしの へんかと かんけいが あると かんがえられて います[10]。
しっぽも、ちょうも、血も。カエルは、ほんとうに なかみごと かわるのです。
赤血球ごと入れかえる
血の中で酸素を運ぶのは、赤血球に含まれるヘモグロビンです。ウシガエルの研究では、変態のあいだにオタマジャクシ型のヘモグロビンから、カエル型へ切りかわることが報告されています[9]。
2つの型は、別々の赤血球に入っています。カエル型だけをもつ新しい赤血球があらわれ、オタマジャクシ型の赤血球は、血液から消えていきます[9]。つまり、ヘモグロビンの中身だけを入れかえるのではなく、運び屋をもつ赤血球ごと世代交代しているのです。
なぜ入れかえるのか
ヘモグロビンの型が切りかわると、酸素との結びつき方の性質が変わります。この切りかわりは、水の中から陸の上へのくらしの変化と関わると説明する資料があります[10]。
7. ちかくの いけで、あしの じゅんばんを 見て みよう
7. 近くの池で、脚の順番を確かめてみよう
7. 出口 ── 観察で確かめる順序と、読んでみたい資料
近くの いけや 水たまりで、オタマジャクシを 見かけたら、じっと 見て みましょう。まず、うしろあしが 生えて いるか。まえあしは まだ 出て いないか。しっぽは どのくらい のこって いるか。
水べに 行く ときは、おうちの 人と いっしょに いきます。水に 入ったり、ふちに 近づきすぎたり しては いけません。見おわったら、オタマジャクシは その場に のこして かえります。
うしろあしが 先で、しっぽは さいごです。この じゅんばんが 見えます。ちょうや 血の へんかは 外から 見えないので、しらべた ほんや はっぴょうで 知る ことに なります。
近くの池や水たまりでオタマジャクシを見かけたら、脚が生えているか、前脚はもう出ているか、尾はどのくらい残っているかを見てみましょう。見られるのは、後ろ脚が先、尾が最後、という順番です。
水辺に行くときは、おうちの人といっしょに行き、水に入ったり、ふちに近づきすぎたりしないでください。観察したら、オタマジャクシはその場に残して帰ります。
体の外から見えるのは、脚と尾の変化だけです。その内側で、腸や血も作りかえられています。もっと知りたくなったら、えら穴から前脚が出るようすを書いた神奈川県立生命の星・地球博物館の報告[6]や、腸が約4分の1に縮むことを紹介した東京大学の発表[7]を読んでみてください。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
出典について:環境省の調査マニュアル、博物館・大学の発表、高校の観察記録、英語の総説と論文を使った。何に使ったかは、それぞれの項目の最後に書いている。
- 環境省 モニタリングサイト1000里地調査マニュアル カエル類 Ver.3.2。https://www.biodic.go.jp/moni1000/manual/6Frog_Manual(ver3.2).pdf (アカガエル類の産卵期について)
- 東京都立科学技術高校 いきもの記 Vol.21「ニホンアカガエル」。https://www.metro.ed.jp/kagakugijyutu-h/assets/科高生物記vol21ニホンアカガエル.pdf (冬の産卵と卵塊の形について)
- 東京都立科学技術高校 いきもの記 Vol.26「カエルの陸上出」(2021)。https://www.metro.ed.jp/kagakugijyutu-h/assets/科高生物記vol26カエルの陸上出.pdf (観察例の日付と、脚が出る順番について)
- Frontiers in Endocrinology (2019) Thyroid hormone and anuran metamorphosis。https://www.frontiersin.org/journals/endocrinology/articles/10.3389/fendo.2019.00143/full (甲状腺ホルモンの増え方について)
- Tail Resorption During Metamorphosis in Xenopus Tadpoles (PMC6426756)。https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6426756/ (ホルモン濃度のちがいと、尾が消える2つの考えについて)
- 神奈川県立生命の星・地球博物館『自然科学のとびら』28(3) 2022 下出・松本。https://nh.kanagawa-museum.jp/assets/icp/contents/1663045379495/simple/tobira108_2shimode_matsumoto.pdf (えら穴と前脚について)
- 東京大学理学部 2024年発表「オタマジャクシからカエルへの変態に伴う幽門括約筋形成のしくみ」。https://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/info/10555/ (腸の短縮について)
- 東京都立大学リポジトリ 岸本ほか コメント資料。https://tokyo-metro-u.repo.nii.ac.jp/record/8829/files/kishimoto_kei_comments.pdf (草食から肉食への変化について)
- Rana catesbeiana hemoglobin switch (1982, PMC346950)。https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC346950 (ヘモグロビンの切りかえについて)
- Zoological Science 33(6) Development of Erythroid Progenitors under Erythropoietin Stimulation in Xenopus laevis。https://bioone.org/journals/Zoological-Science/volume-33/issue-6/zs160040/Development-of-Erythroid-Progenitors-under-Erythropoietin-Stimulation-in-Xenopus-laevis/10.2108/zs160040.full (ヘモグロビンの型と水から陸への適応について)
なおした ところ
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