このサイトは、ほんの入り口です

ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

ほとんど 水の ゼリーが、どうして かたまるの?

約97%が水のゼリーは、なぜ形を保てるのか。そして、なぜ体温の近くで溶けるのか

3%のゼラチンゼリーは、なぜ形を保てるのか:三重らせんの部分的な再生と物理ゲル

分野:自然

ゼリーは、ほとんど 水で できて います。ゼラチンが 3%の ゼリーなら、のこりの およそ97%が 水です(100から 3を ひいた 計算です)。それなのに、お皿に のせても くずれません。

どうして 水が かたまった ように 見えるのでしょう。そして、あたたかい 部屋に おくと、なぜ とけて しまうのでしょう。かんたんに いうと、ひえた ゼラチンの 糸が あみを つくって 水を とじこめるので かたまり、あみの むすび目が よわいので、あたためると ほどけて とけるのです。この メモでは、ゼラチンの 糸が ひえて あみを つくる ようすと、とける わけが わかります。

ゼラチンが3%のゼリーなら、残りの約97%は水です(100から3を引いた計算です)。ほとんど水なのに、お皿の上で形を保ちます。ところが、1965年の実験では、30℃の部屋に出した3%ゼリーが38分で液体にもどりました[4]。

水が大部分のものが、なぜ固まり、なぜ溶けるのでしょうか。答えを先に言うと、冷えたゼラチンの分子どうしが網を作って水を閉じこめるので形を保ち、その網の結び目が弱いつながりなので、体温に近い温度でほどけてしまうのです。この記事では、ほどけたゼラチンの分子が冷えて網を作り直す道すじと、その網が体温の近くで溶けてしまう理由が分かります。

3%ゼラチンのゼリーは、計算上は約97%が水である。それでも形を保つのは、ゼラチン分子が冷却で部分的に三重らせんを再形成し、それが架橋点となって網目を作るためと説明される[2]。ところが、1965年の実験では、30℃の室温に置くと3%ゼリーが38分で液体になった[4]。

固体のようにふるまう網は、なぜ弱いのか。結び目が水素結合などの弱い物理結合で、温めるとほどけるからだ[2]。この記事では、ゲル化の分子の動き、濃度と時間への依存、融点が体温近くにある理由が分かる。

読み方を切り替えられます。画面の上にある「よみかた」のボタンで、小学校低学年むけ・小学校高学年むけ・中学生むけの3つの書き方に切り替わります。むずかしいと思ったら、いつでもやさしい方に戻ってください。選んだ読み方はブラウザが覚えているので、次に別の記事を開いたときも同じ読み方で始まります。

1. 30℃の 部屋に おいた ゼリーは、どうなるの?

1. 30℃の部屋に出したゼリーは、38分でどうなったのか

1. 室温30℃での融解:3%ゼリーは約38分で液体になった

1965年に、大学の 守田さんが、ゼリーを 使った じっけんを して います。ゼラチンが 3%の ゼリーを、10℃で 2時間 ひやして かためます。それを かたから 出して、30℃の 部屋に おきました[4]。

はじめの 20分ほどは、お皿に 出せる 形を たもって いました。でも、38分 たつと、ぜんぶ 水のような えきに なりました[4]。

ゼラチンの りょうが 多いほど、また ひやした 時間が 長いほど、くずれるのは おそく なりました。これは 昔の じっけん室での 数字で、いまの ゼリーの 目安では ありません。

ひやすと かたまり、あたためると えきに もどる。ゼリーの 中で、いったい 何が おきて いるのでしょう。まずは、ゼラチンの こなの 正体から 見ましょう。

1965年、金沢大学の守田良子さんが、ゼラチンゼリーの固まり方と崩れ方を調べました。3%のゼリーを10℃で2時間冷やして固め、型から出して30℃の部屋に置きます[4]。

最初の約20分は、皿に出せる形を保っていました。ところが38分たつと、完全に液体(ゾル)になっています[4]。ゼラチンの濃度が高いほど、また冷やした時間が長いほど、崩れるのは遅くなりました。

ただしこれは、1965年の実験室での値です。今のゼリーの目安ではありません。ここで大事なのは、固まったものが、少し温めただけで元の液体に戻るという性質のほうです。

固まったり溶けたりを繰り返せるゼリーの中で、何が起きているのでしょうか。手がかりは、ゼラチンの粉の正体にあります。

守田良子は1965年、ゼラチンゼリーの凝固と融解を、濃度・時間・温度を変えて調べた。3%のゼリーを10℃で2時間冷却し、型から出して30℃に置くと、約20分は供せる形を保ち、38分で完全にゾル化した[4]。濃度が高いほど、冷却時間が長いほど、崩壊は遅くなった。

ただし、この値は粉ゼラチンと蒸留水を使った1965年の実験条件のもので、現在の製品の目安ではない。ここで確かめたいのは具体的な分数ではなく、ゲルが温度だけで液体に戻る(熱可逆である)という定性的な性質のほうだ。

では、固体と液体の間を行き来できる網は、どんな材料で、どんな結びで作られているのか。まず材料から見る。

2. ゼラチンの こなは、なにから できて いるの?

2. ゼラチンの粉は、何から作られ、煮るとどうなるのか

2. 原料と前処理:コラーゲンの三重らせんがほどけてゼラチンになる

ゼラチンは、牛の ほねや ぶたの 皮などを、水で 長く にて、ぬき出した ものです[1]。もとに なるのは、体の 中に ある コラーゲンと いう たんぱくしつです。

コラーゲンは、3本の 長い くさりが、からまりあって 1本の 太い ひもに なって います。この 形を 三重らせんと いいます[2]。三つあみに にて いますが、本当は 3本が らせんの ように まきあって います。

水で にると、この 3本が ばらばらに ほどけます。ほどけた 糸が ゼラチンです[2]。

ゼラチンを とかす とき、ぐらぐらと ふっとうさせる ひつようは ありません。3%の えきを 30分いじょう わかすと、かためる 力が 大きく 下がり、60分や 90分 にた えきは、10℃で 1時間 ひやしても かたまりませんでした。5分 いないの ふっとうなら、ほとんど えいきょうは ありません[4]。

では、ほどけた 糸を ひやすと、水の 中で 何が おきるのでしょう。

ゼラチンは、牛の骨やブタの皮など、動物の骨・皮・腱を水で長く煮て、取り出したものです[1]。もとになっているのは、体の中のコラーゲンというたんぱく質です。

コラーゲンの分子は、3本の鎖がらせん状に巻き合った三重らせんで、長さは約300ナノメートルです。煮るなどして分解すると、この三重らせんは3本の鎖にほどけます。ほどけた鎖が、ゼラチンです[2]。三つ編みに似ていますが、実際には平らに編むのではなく、3本が互いに巻き付いています。

溶かすとき、沸騰させる必要はありません。3%の液を30分以上沸騰させると、固める力が大きく落ちました。60分、90分煮た液は、10℃で1時間冷やしても完全には固まりませんでした。5分以内の沸騰なら、ほとんど影響がありません[4]。

ほどけた鎖は、冷やされるとどう動くのでしょうか。

ゼラチンは、動物の骨・軟骨・皮膚・腱などを水で長時間煮沸して抽出したもので、原料にはウシの骨やブタの皮が一般に使われる[1]。出発点はコラーゲンで、3本のポリペプチド鎖が三重らせんを作った、長さ約300nmの分子である。加水分解でこの三重らせんが3本の鎖に分かれたものがゼラチンだ[2]。

溶解の条件にも幅がある。3%の液を30分以上沸騰させるとゲル化力が大きく低下し、60分・90分では10℃・1時間では完全には凝固しなかった。一方、5分以内ならほぼ影響はない[4]。この実験は、なぜ低下するのかまでは説明していないので、ここでは「過熱は避けたほうがよい」という観察にとどめる。

では、ほどけた3本の鎖が、冷却で再び秩序を作るとき、何が起きているのか。

3. ひやすと、ほどけた 糸は どんな あみに なるの?

3. 冷やすと、ほどけた鎖はどんな網を作るのか

3. ゾル‐ゲル転移:コイルから三重らせんへ、架橋点と部分的な再生

ゼラチンの えきが あつい うちは、糸の ような 分子が、1本ずつ ばらばらに ういて います。ひえて くると、糸は からまった 形に なり、1本の らせんに なり、やがて ところどころで 3本が 三重らせんを つくります[2]。

この 三重らせんが、あみの むすび目に なります。むすび目が つながって、水の 中に 大きな あみが できると、えきは 形を たもち、ゼリーと して かたまります。あみの おかげで、ゼリーに 力と ねばりも 生まれます[2]。

ゼリーの あみは、目に 見えません。スポンジが 水を すって ふくらむ 形が、少し にて います。ただし ゼリーの あみは、分子で できて います。

この 三重らせんは、もとの コラーゲンの 三重らせんが、ぜんぶ きれいに もどった ものでは ありません。「ぶぶんてきに」もどった ものと せつめいされて います[2]。日本の ぐんまだいがくの 研究者も、同じ せつめいを して います[3]。

水が 97%も あるのに、のこりの 3%だけで あみが できる のでしょうか。

ゼラチンの液が熱いうち(約50℃を超えるとき)は、分子が1本ずつ散らばっています。冷えるにつれて、からまったコイル状になり、1本のらせんになり、さらに3本が組んだ三重らせんへと進みます[2]。

この三重らせんが、網の結び目になります。結び目で分子どうしがつながると、液全体に広がる巨大な網目ができ、液体が形を保つようになります。強さと弾力が生まれるのも、この結び目のおかげです[2]。固まりはじめる温度(ゲル化点)は約30℃とされますが、これは典型的な値で、濃度や種類で変わります。

注意したいのは、できる三重らせんが、元のコラーゲンのらせんの「部分的な」再生だという点です[2]。きれいに元どおりになるわけではありません。群馬大学の研究者の発表でも、高温ではばらばらのコイル、低温ではコラーゲンに似た三重らせんが部分的にでき、それが架橋領域になって網目になる、と説明されています[3]。

網目の隙間には、水が閉じ込められます。ゼラチンが3%なら、残りの約97%が水という計算です。ゼラチンの量がもっと少なければ、網はできるのでしょうか。

ゼラチン水溶液は、高温(約50℃超)では分子が個々に散らばったゾルである。冷却するとコイル状の分子が1本鎖のらせんを経て三重らせんへ進み、一本鎖から三重らせんへの転移がゾル‐ゲル転移を駆動する[2]。三重らせんは網目をつなぐ接合領域(ジャンクションゾーン)となり、強度と弾性を与える。ゲル化点は約30℃と記されるが、これは典型的な値で、濃度や種類で変わる。

ここで押さえるべきは、この三重らせんが元のコラーゲンの状態の「部分的な再生」である点だ。結び目を作る結合は、水素結合やファンデルワールス力のような弱い物理結合のため、ゲル化は熱で可逆になる[2]。群馬大の槇靖幸も、高温ではランダムコイル、低温ではコラーゲン様の三重らせんを部分的に形成して架橋領域となり、巨視的な網目構造(ゲル)をなすと説明している[3]。

ゼラチンは約1〜50%の濃度でゲルを作れるとされ、それより薄いと網を支える分子が足りない[2]。3%ゼリーでは、残りの約97%が水という単純な計算になる。この下限は理論上の目安で、実際の家庭用の濃度では別の問題が現れる。

では、濃度が薄いと、実際にどこまで固まらなくなるのか。また、固まったあとの時間は何を変えるのか。

4. うすすぎると かたまらない? かたまったあとも かわるの?

4. 濃度が薄いとどうなるのか、固まったあとも硬くなり続けるのか

4. 濃度の閾値と、エイジング:固まったあとも続く硬化

守田さんは、ゼラチンの りょうを かえて、れいぞうこで ひやして みました。10℃で 30分 たった とき、2%は かたまりませんでした。3%は、ふちが かたまりかけて いる ところ。4%より 多いと、いちおう かたまって いました[4]。

1時間 たつと、かたまって いなかったのは 2%だけでした[4]。ふつうの ゼリーには、3%くらいを 使う そうです。ただし これも 1965年の じっけんの 数字で、いまの せいひんの 目安とは かぎりません。

かたまったあとも、ゼリーは 少しずつ かたく なります。4時間 くらいまでは、ほぼ 同じ はやさで かたく なり、5時間目からは ほんの 少しに なりました。24時間 たっても、少し ふえました[4]。3%の ゼリーで、かたさの 数字は、2時間で 19、24時間で 60でした。3倍くらいです。

ぐんまだいがくの 研究でも、ゼラチンの ゼリーは、かたまる 温度より ひくい ところに おくと、かたさが ずっと ふえつづける ことが 知られて いると 書かれて います[3]。

では、かたまった ゼリーは、どうして 体温の ちかくで とけて しまうのでしょう。

守田さんは、ゼラチンの濃度を変えて、10℃の冷蔵庫でどれくらいで固まるかも調べています。30分後、2%は固まらず、3%はようやくふちが固まりかけ、4%以上は一応固まっていました。1時間後には、固まっていなかったのは2%だけでした[4]。ふつうのゼリーには、3%程度を使うとされます。

前の章で、ゼラチンは約1%からゲルを作れるとされると書きました。ところが、この実験で2%は固まりませんでした。1%は、網を作るのに必要な分子数の理論上の目安で、実際の条件では、もう少し多くないと固まらないということです[2][4]。ただし、これは粉ゼラチンと蒸留水を使った1965年の実験値で、今の製品の目安ではありません。

固まったあとも、ゼリーは変わり続けます。硬さは、冷やしはじめて4時間くらいまでほぼ一定の速さで増え、5時間目からは増え方がごくわずかになりました。24時間後でも、少し増えています。3%のゼリーの硬さの指標は、2時間で19、24時間で60でした[4]。約3倍です。

群馬大学の資料でも、ゲル化点より低い温度で保存すると、弾性率が時間とともに増え続ける(エイジング)ことが知られていて、一種の非平衡状態と考えられている、とされています[3]。

こうしてできた網は、意外にもろい結びでできています。その結びが、体温の近くで解ける理由を見てみましょう。

濃度への依存は、1965年の実験で具体的に出ている。10℃の冷蔵庫に入れて30分後、2%は凝固せず、3%はようやく周囲が固まりかけ、4%以上は一応凝固した。1時間後に凝固していなかったのは2%だけで、ふつうゼリーには3%程度が使われる[4]。

前節では、ゼラチンが約1〜50%でゲルを作れるとされることを述べた[2]。この下限1%は網を支える分子数の理論的な目安であり、実験で2%が固まらなかったことと矛盾しない。条件(粉ゼラチン、蒸留水、10℃)が理論の前提と異なるためで、現在の製品の濃度の目安にはならない。

凝固後の変化も、実験で追える。硬度は冷却開始後およそ4時間までほぼ同じ速度で増加し、5時間目からはごくわずかになる。ただし24時間後も少し増える。3%ゼリーの硬度の指標は2時間で19、24時間で60で、約3倍になった[4]。

槇の発表要旨も、ゲル化点以下で保存すると弾性率が時間とともに増加し続けるエイジングが知られ、一種の非平衡状態と考えられていることを述べる[3]。網は一度できて終わりではなく、時間をかけて組み直されている、と読める。ただし、この要旨は仕組みの詳細まで述べておらず、前述の実験の「硬くなる」現象の説明としては、あくまで関連づけである。

では、これほど時間をかけて硬くなる網が、なぜ30℃で簡単に崩れるのか。

5. ゼリーは なぜ、口の 中で とけるの?

5. ゼリーの網は、なぜ体温の近くで溶けるのか

5. 融点30℃と、物理結合の可逆性:口の中で溶ける理由と原料による差

あみの むすび目に なって いる むすびつきは、すいそけつごうなどの、よわい むすびつきです。かたい くっつき方では ありません。だから、あたためると むすび目が ほどけて、ゼリーは えきに もどります[2]。もう一度 ひやせば、また かたまります。

ある 研究所が 同じ きまりの やり方(JIS)で はかった ところ、牛の ゼラチンの ゼリーが とける 温度は 30℃、さけの 皮から とった ゼラチンは 19℃ でした[5]。もとに する どうぶつや さかなで、とける 温度は ちがいます。

牛の ゼラチンの ゼリーは、体温より ひくい 温度で とける ので、口に 入れると、したの 上で とけます。グミが とけるのも 同じ 理由だと せつめいされて います[6]。ゼリーの つるんと した 口あたりは、とける 温度が 体温より ひくい ことと、つながって いるのです。

北海道の 研究所には、さけの 皮の ゼラチンを、お年よりの 食事に 生かす 研究が あります。とける 温度が ひくいと、口の 中で すぐ えきに なります。のみこみにくさの ある 人が 食べる ときには、形や せいしつへの はいりょが 大切に なるので、食べやすい ゼリーに する くふうが 進められて います[5]。

この つぎは、ゼリーを 自分で かんさつして みましょう。

網の結び目になっているのは、水素結合やファンデルワールス力のような、弱い物理結合です[2]。共有結合のような強いつながりではないため、温めると結び目がほどけて、液体に戻ります。冷やせば、また網ができます。冒頭の実験で、30℃で38分ののちにゼリーが液体になったのは、この性質のせいと考えられます。

溶ける温度は、原料でも変わります。北海道の研究所がJIS(日本産業規格)の方法で測ったところ、牛由来のゼラチンのゲルは30℃、鮭の皮のゼラチンは19℃で溶けました[5]。19℃なら、室温でも溶ける水準です。ただし、条件が変われば値も変わります。

多くのゼラチンで、溶ける温度は体温より低くなっています。そのため口に入れると、舌の上で溶けて、独特の感触になります。グミが舌の上で溶けるのも同じ理由と説明されています[6]。

北海道の研究所は、鮭の皮のゼラチンを、お年寄り向けの食品に使う研究を報告しています。融点が低いと、口の中で短時間に液体になります。飲みこみにくさのある人が食べる場合には、形や性質への配慮が必要なため、食べやすい性質に整える工夫が進められています[5]。

弱い結びの網が、手の中や口の中で、すっと解ける。その様子は、家でも観察できそうです。

網の結び目をつなぐのは、水素結合やファンデルワールス力のような弱い物理結合である[2]。結合エネルギーが小さいため、温度を上げるとジャンクションが解離し、ゾルに戻る。冷却すれば再びゲル化する。ゲル化と融解が熱で行き来できる、熱可逆性である。1章の38分での崩壊は、この性質の現れだと考えられる。

融点は原料で異なる。北海道立食品加工研究センターの報告では、牛由来のゼラチンゲルの融点が30℃、鮭皮ゼラチンは19℃であった[5]。後者は室温でも液化しうる水準だ。ただしJIS K6503の方法での測定値で、条件を変えれば変わる。

多くのゼラチンで融点が体温より低いため、口に入ると溶け、独特の口あたりを生む。グミが舌の上で溶けるのも同じ理由とされる[6]。融点の低さが利点にも課題にもなる点は、高齢者用の食品の研究にも表れる。鮭皮ゼラチンは融点が低く、口中で短時間に液状になる。この性質は、嚥下に配慮が必要な人向けの食品設計で検討され、改質の対象になっている[5]。

ここまで読んだ流れは、「冷却で部分的に再生する三重らせん」「約97%が水でも網が保たれる」「その結合は弱く、融点が体温の近く」と整理できる。では、これを自分の手で確かめるには、どうすればいいか。

6. 食べる 前に、ゼリーを 見くらべて みよう

6. ゼリーが溶ける感じを、食べながら確かめる

6. 市販ゼリーの観察と、原典の読みどころ

家に ゼラチンで 作った ゼリーが あれば、ゼリーの ふくろの うらの ひょうじを 見て、「ゼラチン」と 書いて あるか 見て ください。

食べる ときに、ひえた ままの 一口と、お皿に のせて 少し おいた 一口を、くらべて みます。さわった かんじや、口の 中での とけ方が ちがうかも しれません。ただし、部屋の 温度が 30℃より ひくいと、お皿の 上では くずれない ことも あります。

くらべたら、気づいた ことを メモして みましょう。

家に、ゼラチンで作ったゼリーがあれば、パッケージの原材料表示に「ゼラチン」と書かれているかを確かめます。食べる前に、冷たいままの一口と、皿にのせてしばらく置いた一口を比べ、舌の上で溶ける感じや、スプーンですくったときの崩れ方を見ます。部屋が30℃より低ければ、皿の上では崩れないこともあり、それも1つの結果です。

比べた感想や、置いた時間をメモしておくと、あとで粉ゼラチンのゼリーなどと比べられます。

原典を読みたい人には、ゼラチンの分子の動きをまとめた論文(出典2、英語)と、1965年の守田良子さんの実験をまとめた日本語の紀要(出典4)が出発点になります。紀要は、濃度や冷やす時間を変えた表があり、数字を読むだけでも流れが追えます。

観察の道すじはこうだ。ゼラチンを使っている市販ゼリー(原材料表示に「ゼラチン」とあるもの)で、冷たいままの一口と、皿に出してしばらく置いた一口を比べ、舌の上での溶け方と崩れ方を記録する。部屋が30℃より低ければ、皿の上で崩れないこともあり、1965年の実験条件(10℃で冷却、30℃で放置)との違いとして比べる材料になる。これは簡易的な観察で、融点を測る実験ではない。

原典は、ゲル化の分子機構ならParker & Poveyの超音波研究(出典2、arXiv、英語)、日本語なら槇靖幸の発表要旨(出典3)と守田良子の紀要(出典4)が出発点になる。特に守田の論文は、濃度・冷却時間・沸騰時間と凝固の関係が表で示され、1つの数字が「どの条件の値か」を読み分ける練習になる。

残る問いもある。ゼラチンのゲルでは、ゲル化する温度と融ける温度に差(ヒステリシス)がある、とされる。その差の大きさは、本稿の資料の範囲では数値として示せない。原典で確かめる価値がある。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

数字・用語は下の資料にある内容をまとめたものです。1965年の実験値は、当時の条件(粉ゼラチン・蒸留水)での値で、今の製品の目安ではありません。

  1. コトバンク「ゼラチン」(日本大百科全書ほか) https://kotobank.jp/word/%E3%82%BC%E3%83%A9%E3%83%81%E3%83%B3-87734 (ゼラチンの原料と作り方)
  2. Parker & Povey, Ultrasonic study of the gelation of gelatin (Leeds大, arXiv) https://arxiv.org/pdf/1010.5971 (三重らせんと網目、可逆性、濃度範囲)
  3. 槇靖幸(群馬大)「真空紫外円二色性を利用したゼラチンのエイジングの観察」SPring-8利用者懇談会ほか 発表要旨 https://support.spring8.or.jp/Doc_workshop/PDF_20130729/4-maki.pdf (架橋領域とエイジング)
  4. 守田良子「特性ある食品の調理に関する研究(第1報)ゼラチンゼリーについて」金沢大学教育学部紀要13号(1965) https://kanazawa-u.repo.nii.ac.jp/record/5251/files/AN00044160-13-005.pdf (濃度・時間・加熱・融解の実験値)
  5. 清水・柿本「鮭皮ゼラチンの高齢者用食品への応用」北海道立食品加工研究センター報告 No.8(2009) https://www.hro.or.jp/upload/29223/0810.pdf (牛由来と鮭皮ゼラチンの融点)
  6. Scientific American "Make Mouthwatering Candy Melt" https://www.scientificamerican.com/article/make-mouthwatering-candy-melt (口の中で溶ける理由。二次資料)

なおした ところ

更新履歴

更新履歴(改版の記録)

  •  初版を公開。

このサイトでは、公開した記事の本文は原則として書き直しません。誤りが見つかったときや、内容が古くなったときだけ手を入れ、その理由をこの欄に残します。