1. とりはだは、からだの どこで おきて いるの?
1. 鳥肌の正体は、毛の根についた小さな筋肉
1. 立毛筋は毛根と真皮の上層をつなぎ、縮むと毛が立つ
うでの けを よく 見て みて ください。けの ねもとには、とても ちいさな 筋肉が ついて います[1]。
この 筋肉が ぎゅっと ちぢむと、けが たちあがります。まわりの 皮膚も もりあがって、ぶつぶつに 見えます。これが とりはだです[1]。
ぶつぶつが 出る とき、けの ねもとでは、ちいさな 筋肉が はたらいて います。
毛の根を引き起こす筋肉
鳥肌は、立毛筋という筋肉が縮んで、体毛が垂直に立ち、まわりの毛穴の部分が盛り上がる現象です。立毛筋は、毛の根の外側と、皮膚の真皮の上のほうをつなぐ、細い筋肉の束です。1本の毛の根に、1〜2個ついているとされています[1]。
毛が斜めに生えているので、筋肉が縮むと、毛を引き起こすように動きます。引かれたまわりの皮膚がぷつりと持ち上がって、粒のように見えるのが鳥肌です。
2. だれが、「ちぢめ」と めいれい するの?
2. 寒さでは、交感神経が筋肉を動かす。恐怖でも鳥肌は立つ
2. 交感神経による支配 ── 寒冷ストレスと情動ストレス
この 筋肉は、じぶんの きもちでは うごかせません。「たて」と 思っても、たちません。うでの けを たてようと しても、むりです。
うごかして いるのは、体の なかの 神経の なかまの こうかんしんけいです。さむい ときに はたらいて、筋肉に ちぢむよう つたえます[2]。
こわい ときや びっくりした ときにも、けを たてる 筋肉は ちぢみます[1]。こうかんしんけいは、きけんな ときに はたらく しんけいです[3]。ただ、さむさと こわさで おなじ しくみが はたらくのかは、まだ はっきり しません。
3. けの おおい どうぶつには、なにが いいの?
3. 毛の多い動物では、毛を立てると得がある
3. 毛を立てると、動物は寒さを防ぎ、体を大きく見せる。ヒトでは名残とされる
ねこや いぬは、けが たくさん あります。さむい とき、けが たちあがると、けと けの あいだに 空気が たまります。この 空気の そうが、あたたかい ふとんの ように、ねつを にげにくく します[3]。
あいてを おどろかす ときにも、やくに たちます。けが たつと、からだが おおきく 見えるからです[3]。
ヒトの けは、うすいので、とりはだが 出ても、さむさを ふせぐ ちからは ほとんど ありません[4]。こわい ときの とりはだは、むかし からだを おおきく 見せて いた なごりでは、という かんがえが あります。ただし、はっきり きまった はなしでは ありません[4]。
4. かおには、どうして めだたないの?
4. 顔にはなぜ、鳥肌が目立たないのか
4. 顔では体毛と立毛筋が減り、鳥肌が目立ちにくい
うでや せなかには、とりはだが よく 出ます。でも、かおでは あまり 見た ことが ないと 思います。
ヒトが すすんで きた とちゅうで、かおの けが へりました。すると、けを たてる 筋肉も、しだいに よわく なった と せつめいされて います[5]。
かおにも とりはだは 出ますが、めだたない のです。
毛が減った顔
サルからヒトへの進化の途中で、顔の毛のほとんどが減り、それにともなって立毛筋も退化したと説明されています。体毛や立毛筋が少ないため、鳥肌は目立ちにくいと考えられています[5]。
そのため、顔にも鳥肌は立つものの、目立たないとされます。「絶対に立たない」のではなく、「目立たない」という書き方に注意してください。
サルからヒトへの進化の過程で、顔の体毛の大半が退化し、立毛筋も退化したとされる。体毛や立毛筋が少ないため、鳥肌は目立ちにくいと説明される[5]。顔にも鳥肌は立つが、目立たない。
体毛が減った部位ほど立毛筋の働きも目立たなくなる、という関係は、この二次資料の説明の範囲で述べている。
5. うたで とりはだが 出るのは、どうして?
5. 音楽で「ぞくぞく」するとき、脳では何が起きているか
5. 音楽でぞくぞくするとき、脳の報酬に関わる場所が動く(2001年、2011年)
すきな うたで とりはだが 出る わけは、じつは まだ、ぜんぶ わかって いません[4]。
ただ、しらべた ひとは います。すきな きょくを きいて「ぞくぞくする」と 答えた ひとに きょうりょくして もらい、脳の はたらきを しらべた けんきゅうでは、おいしい ものを たべた ときに はたらく ところと、おなじ ばしょが はたらいて いました[6]。
べつの けんきゅうでは、いちばん もりあがる ところの まえ、まって いる あいだにも、脳で ドーパミンという ものが 出ると わかりました[7]。
だから、うたが はじまる まえから、もう わくわく して いるのかも しれません。
感動の鳥肌は、まだ研究の途中
感動で鳥肌が立つ理由は、現代の科学でも全体は解明されていないとされます[4]。ただ、音楽で「背筋がぞくぞくする」感覚については、脳の研究があります。
快楽の領域が動く
2001年のBloodとZatorreの研究では、好きな曲でぞくぞくを感じるとき、心拍や呼吸の変化とともに、報酬や情動に関わる脳の領域の血流が変わることが示されました。食べ物などの快楽で働く領域と重なるとされます[6]。
待っている間にも、ドーパミン
2011年のSalimpoorらの研究では、好きな音楽の最中と、盛り上がりを待つ間の両方で、脳内にドーパミンが放出されることが報告されました。待つ間と最高の瞬間では、出る場所が違うとされています[7]。
音楽の鳥肌研究には、本人が「鳥肌が立った」と答えることと、実際に毛が立っていることは、必ずしも一致しないという指摘もあります[3]。
感動による鳥肌の理由は、現在も全容が解明されていない[4]。音楽で「ぞくぞく」(chills)を感じる状況の研究がある。
2001年、Blood と Zatorre(PNAS)は、被験者が選んだ好きな曲でchillsを感じるとき、心拍・呼吸などの変化とともに、腹側線条体・中脳・扁桃体など報酬・情動に関わる領域の脳血流が変わることを報告した。食べ物などの快楽で働く領域と重なる[6]。
2011年、Salimpoor ら(Nature Neuroscience)は、好みの音楽の聴取中と、その盛り上がりを予期している間の両方でドーパミンが放出され、予期の間と最高の瞬間とでは、関わる脳の回路が異なると報告した[7]。
なお、本人の申告する「鳥肌」と、実際に観察される立毛が一致しないという指摘もある。この点は英語版百科事典が紹介している[3]。
6. ヒトの きんにくは、ほんとうに いらないの?
6. 「名残」のはずの筋肉が、毛を生やす仕組みにかかわっていた
6. 毛包幹細胞のニッチ ── 立毛筋と交感神経(Cell、2020年)
ヒトの けは うすいので、たてる 筋肉は もう いらない のかも しれない、と 思われて きました。
ところが、2020ねんに、おもしろい ことが わかりました。マウスの けの ねもとには、あたらしい けを つくる もとの 細胞が あります。この 細胞の ちかくに、けを たてる 筋肉と 神経が いて、いっしょに はたらいて いました。マウスを ながく さむい ところに おくと、あたらしい けが はえて きたそうです[8]。
とりはだを おこす 筋肉には、ほかにも しごとが ある のかも しれません。ただ、これは マウスの はなしで、ヒトで おなじだとは まだ いえません。
2020年、Cell誌の報告
2020年8月、Cell誌に、立毛筋と交感神経が、毛をつくる幹細胞(毛包幹細胞)の居場所(ニッチ)を一緒につくっている、という論文が載りました。マウスを長く寒さにさらすと、交感神経が毛包幹細胞を活性化して、新しい毛が生えたと報告されています[8]。
名残と言い切れないかもしれない
これは、鳥肌を起こす細胞が、毛を生やす仕組みにもかかわっているという発見です。ヒトの立毛筋を「無用の名残」とだけ見てよいのか、見直す材料になります。ただしマウスでの結果で、ヒトでも同じとは書かれていません。
2020年8月、Shwartz らは Cell 誌で、立毛筋と交感神経が二成分のニッチを形成し、毛包幹細胞の活動を調節すると報告した。マウスを長期間寒冷にさらすと、交感神経が毛包幹細胞を活性化して新しい毛を生やす。鳥肌を起こす細胞が、毛の再生の仕組みにも関与するという発見である[8]。
この結果は、ヒトの立毛筋を保温・威嚇の名残とだけ位置づける見方に、一つの修正を迫る材料になる。ただしマウスの結果で、ヒトで同様とは示されていない。
じぶんでも しらべて みたく なったら
自分でも調べてみたくなったら
自分でも調べてみたくなったら
つぎに とりはだが 出たら、その ところの 皮膚が ぶつぶつして いるか、けが たって いるか、見て みましょう。なにが きっかけだったか、ことばに して みると、おもしろいですよ。
すきな うたを きく ときは、どこで ぞくぞくするか、しらべて みましょう。ぞくぞくする ところは、ひとに よって ちがうかも しれません。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
出典について:日本語の解説、百科事典、論文の要旨と紹介記事を突き合わせた。何に使ったかは項目の最後に書いている。論文は要旨や紹介記事で、研究の結論と対象を確かめる用途に使った。
- 立毛筋(Wikipedia日本語版)。https://ja.wikipedia.org/wiki/立毛筋 (立毛筋の構造、鳥肌の定義、寒さ・恐怖での収縮について)
- 日刊ゲンダイ、皮膚科医の解説記事。https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/health/347660 (不随意筋であること、交感神経の支配について)
- Goose bumps(Wikipedia英語版)。https://en.wikipedia.org/wiki/Goose_bumps (交感神経の反射、毛の多い動物での断熱と威嚇、自己申告と観察の不一致という指摘について)
- 日本気象協会 tenki.jp「寒いときに鳥肌が立つ理由」。https://tenki.jp/suppl/m_takizawa/2020/10/26/30002.html (ヒトでの保温効果、威嚇の名残説、感動の鳥肌が未解明であることについて)
- つぼみクラブ 第35回。https://www.ikyo.jp/commu/jintai/035 (顔の体毛と立毛筋の退化について)
- Blood and Zatorre, Intensely pleasurable responses to music correlate with activity in brain regions implicated in reward and emotion, PNAS 98:11818 (2001)。https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11573015/ (音楽のぞくぞくと脳の報酬・情動領域について)
- ScienceDaily「Anticipation of pleasurable music induces dopamine release」(2011、Salimpoorらの研究の紹介)。https://www.sciencedaily.com/releases/2011/01/110112111117.htm (音楽を待つ間と最中のドーパミンについて)
- Shwartz et al., Cell Types Promoting Goosebumps Form a Niche to Regulate Hair Follicle Stem Cells, Cell 182(3) (2020)。https://www.cell.com/cell/fulltext/S0092-8674(20)30808-4 (立毛筋・交感神経と毛包幹細胞のニッチについて)
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