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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

さむい ときも こわい ときも、どうして とりはだが たつの?

寒さでも恐怖でも音楽でも鳥肌が立つのはなぜか、毛の少ない人にその仕組みが残っている理由

鳥肌の仕組みと立毛筋 ── 交感神経の指令、保温・威嚇の名残説、毛包幹細胞との関係(2020年)

分野:からだ

さむい あさ、うでに ぶつぶつが 出ました。こわい おはなしを きいた ときも、すきな うたに ぐっと きた ときも、おなじ ぶつぶつが 出る ことが あります。

ぜんぶ おなじ「とりはだ」です。どうして、ちがう ことで おなじ ことが おきるのでしょうか。いっしょに たどって みましょう。

冷たい風に吹かれたとき、怖い話を聞いたとき、好きな曲がサビに入ったとき。きっかけはまるで違うのに、体には同じ鳥肌が立つことがあります。

鳥肌をつくる小さな筋肉の仕組みと、毛の少ない人にその筋肉が残っている理由を、日本語の解説や論文の紹介記事を突き合わせて見ていきます。まだ分かっていないことも、そのまま書きます。

鳥肌は、毛根につく立毛筋が縮み、体毛が立って周囲の毛孔部が盛り上がる現象である[1]。寒さでも恐怖でも起き、感動や音楽でも起きるとされる[1][4]。

このメモでは、立毛筋の構造と神経支配、毛の多い動物での役割と「ヒトでは名残」とする説、顔で目立たない理由、音楽で起きる「ぞくぞく」の脳の研究、2020年に報告された毛包幹細胞との関係を、複数の資料をつき合わせて整理する。ただし、マウスの結果をヒトに当てはめてはいない。

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1. とりはだは、からだの どこで おきて いるの?

1. 鳥肌の正体は、毛の根についた小さな筋肉

1. 立毛筋は毛根と真皮の上層をつなぎ、縮むと毛が立つ

うでの けを よく 見て みて ください。けの ねもとには、とても ちいさな 筋肉きんにくが ついて います[1]。

この 筋肉きんにくが ぎゅっと ちぢむと、けが たちあがります。まわりの 皮膚ひふも もりあがって、ぶつぶつに 見えます。これが とりはだです[1]。

ぶつぶつが 出る とき、けの ねもとでは、ちいさな 筋肉きんにくが はたらいて います。

毛の根を引き起こす筋肉

鳥肌は、立毛筋という筋肉が縮んで、体毛が垂直に立ち、まわりの毛穴の部分が盛り上がる現象です。立毛筋は、毛の根の外側と、皮膚の真皮の上のほうをつなぐ、細い筋肉の束です。1本の毛の根に、1〜2個ついているとされています[1]。

毛が斜めに生えているので、筋肉が縮むと、毛を引き起こすように動きます。引かれたまわりの皮膚がぷつりと持ち上がって、粒のように見えるのが鳥肌です。

立毛筋は、外毛根鞘と真皮上層の間に存在する平滑筋束で、1本の毛根に1〜2個つく。これが収縮すると体毛が垂直方向に立ち、周囲の毛孔部が隆起する。この現象が鳥肌である[1]。

立毛筋は平滑筋で、自分の意思では動かせない不随意筋である[2]。鼻毛・眉毛・まつ毛などを除き、ほとんどの体毛に立毛筋があるとされる[1]。

2. だれが、「ちぢめ」と めいれい するの?

2. 寒さでは、交感神経が筋肉を動かす。恐怖でも鳥肌は立つ

2. 交感神経による支配 ── 寒冷ストレスと情動ストレス

この 筋肉きんにくは、じぶんの きもちでは うごかせません。「たて」と 思っても、たちません。うでの けを たてようと しても、むりです。

うごかして いるのは、体の なかの 神経しんけいの なかまの こうかんしんけいです。さむい ときに はたらいて、筋肉きんにくに ちぢむよう つたえます[2]。

こわい ときや びっくりした ときにも、けを たてる 筋肉きんにくは ちぢみます[1]。こうかんしんけいは、きけんな ときに はたらく しんけいです[3]。ただ、さむさと こわさで おなじ しくみが はたらくのかは、まだ はっきり しません。

自分の意思では動かせない

立毛筋は、自分の意思で動かせない不随意筋です。動かしているのは、交感神経という神経で、寒いと活発に働いて筋肉を縮めるよう指令を送るそうです[2]。

寒さと、恐怖と、驚き

鳥肌のきっかけは、寒さだけではありません。恐怖や驚きといった、心の動きによるストレスでも、立毛筋は縮みます[1]。交感神経は、危険なときに「闘うか逃げるか」を決めて動く反応の、多くを担う神経だと説明されています[3]。

寒さと恐怖は、まるで別の出来事です。寒さでは交感神経が立毛筋にかかわるとされますが、恐怖でも同じ仕組みで鳥肌が立つのかどうかは、はっきり分かっていません。

立毛筋はアドレナリン作動性の交感神経に支配されるとする皮膚科医の説明がある[2]。ただし、神経伝達物質の種類は資料により表現が異なるため、ここでは交感神経の指令と書くにとどめる。寒冷刺激で交感神経が活発になり、立毛筋が収縮する[2]。

誘因は寒冷ストレスに限らず、恐怖・驚きなどの情動ストレスでも収縮が起きる[1]。交感神経系は、闘争・逃走反応(fight-or-flight)の多くを担い、鳥肌の反射もその神経系が始動させるとされる[3]。ただし、恐怖での鳥肌が寒冷時と同じ経路かどうかは、資料上はっきりしない[4]。

3. けの おおい どうぶつには、なにが いいの?

3. 毛の多い動物では、毛を立てると得がある

3. 毛を立てると、動物は寒さを防ぎ、体を大きく見せる。ヒトでは名残とされる

ねこや いぬは、けが たくさん あります。さむい とき、けが たちあがると、けと けの あいだに 空気が たまります。この 空気の そうが、あたたかい ふとんの ように、ねつを にげにくく します[3]。

あいてを おどろかす ときにも、やくに たちます。けが たつと、からだが おおきく 見えるからです[3]。

ヒトの けは、うすいので、とりはだが 出ても、さむさを ふせぐ ちからは ほとんど ありません[4]。こわい ときの とりはだは、むかし からだを おおきく 見せて いた なごりでは、という かんがえが あります。ただし、はっきり きまった はなしでは ありません[4]。

ふくらんだ毛が空気の層をつくる

毛の多い動物が寒さで毛を立てると、毛と毛の間に空気がためられて、熱が逃げにくい層になります。また、毛が立つと体が大きく見えるので、敵を威嚇する効果もあります[3]。動物にとって、鳥肌は役に立つ体の反応です。

ヒトの鳥肌は、役割が薄れたもの?

ヒトの体毛は薄く、毛を立てても冷えを防ぐ助けにはほとんどなりません。恐怖で鳥肌が立つのは、体を大きく見せて相手を威嚇していた頃の名残ではないか、という説が有力視されています[4]。

ただし、これは「そう考えられている」という段階です。次の章で見るように、ヒトの立毛筋が本当に無用なのかどうかは、研究が動いています。

毛の多い動物では、立毛によって毛の間に空気が捕捉され、断熱層ができる。あわせて、体を大きく見せて敵を威嚇する働きもある[3]。

ヒトでは、体毛が退化しているため、毛を立てても保温効果は実質ない。恐怖時の鳥肌は、体を大きく見せて威嚇していた名残とする説が有力視されている[4]。「有力視される」は仮説の段階を指し、確定した結論ではない。

4. かおには、どうして めだたないの?

4. 顔にはなぜ、鳥肌が目立たないのか

4. 顔では体毛と立毛筋が減り、鳥肌が目立ちにくい

うでや せなかには、とりはだが よく 出ます。でも、かおでは あまり 見た ことが ないと 思います。

ヒトが すすんで きた とちゅうで、かおの けが へりました。すると、けを たてる 筋肉きんにくも、しだいに よわく なった と せつめいされて います[5]。

かおにも とりはだは 出ますが、めだたない のです。

毛が減った顔

サルからヒトへの進化の途中で、顔の毛のほとんどが減り、それにともなって立毛筋も退化したと説明されています。体毛や立毛筋が少ないため、鳥肌は目立ちにくいと考えられています[5]。

そのため、顔にも鳥肌は立つものの、目立たないとされます。「絶対に立たない」のではなく、「目立たない」という書き方に注意してください。

サルからヒトへの進化の過程で、顔の体毛の大半が退化し、立毛筋も退化したとされる。体毛や立毛筋が少ないため、鳥肌は目立ちにくいと説明される[5]。顔にも鳥肌は立つが、目立たない。

体毛が減った部位ほど立毛筋の働きも目立たなくなる、という関係は、この二次資料の説明の範囲で述べている。

5. うたで とりはだが 出るのは、どうして?

5. 音楽で「ぞくぞく」するとき、脳では何が起きているか

5. 音楽でぞくぞくするとき、脳の報酬に関わる場所が動く(2001年、2011年)

すきな うたで とりはだが 出る わけは、じつは まだ、ぜんぶ わかって いません[4]。

ただ、しらべた ひとは います。すきな きょくを きいて「ぞくぞくする」と 答えた ひとに きょうりょくして もらい、脳のうの はたらきを しらべた けんきゅうでは、おいしい ものを たべた ときに はたらく ところと、おなじ ばしょが はたらいて いました[6]。

べつの けんきゅうでは、いちばん もりあがる ところの まえ、まって いる あいだにも、脳のうで ドーパミンという ものが 出ると わかりました[7]。

だから、うたが はじまる まえから、もう わくわく して いるのかも しれません。

感動の鳥肌は、まだ研究の途中

感動で鳥肌が立つ理由は、現代の科学でも全体は解明されていないとされます[4]。ただ、音楽で「背筋がぞくぞくする」感覚については、脳の研究があります。

快楽の領域が動く

2001年のBloodとZatorreの研究では、好きな曲でぞくぞくを感じるとき、心拍や呼吸の変化とともに、報酬や情動に関わる脳の領域の血流が変わることが示されました。食べ物などの快楽で働く領域と重なるとされます[6]。

待っている間にも、ドーパミン

2011年のSalimpoorらの研究では、好きな音楽の最中と、盛り上がりを待つ間の両方で、脳内にドーパミンが放出されることが報告されました。待つ間と最高の瞬間では、出る場所が違うとされています[7]。

音楽の鳥肌研究には、本人が「鳥肌が立った」と答えることと、実際に毛が立っていることは、必ずしも一致しないという指摘もあります[3]。

感動による鳥肌の理由は、現在も全容が解明されていない[4]。音楽で「ぞくぞく」(chills)を感じる状況の研究がある。

2001年、Blood と Zatorre(PNAS)は、被験者が選んだ好きな曲でchillsを感じるとき、心拍・呼吸などの変化とともに、腹側線条体・中脳・扁桃体など報酬・情動に関わる領域の脳血流が変わることを報告した。食べ物などの快楽で働く領域と重なる[6]。

2011年、Salimpoor ら(Nature Neuroscience)は、好みの音楽の聴取中と、その盛り上がりを予期している間の両方でドーパミンが放出され、予期の間と最高の瞬間とでは、関わる脳の回路が異なると報告した[7]。

なお、本人の申告する「鳥肌」と、実際に観察される立毛が一致しないという指摘もある。この点は英語版百科事典が紹介している[3]。

6. ヒトの きんにくは、ほんとうに いらないの?

6. 「名残」のはずの筋肉が、毛を生やす仕組みにかかわっていた

6. 毛包幹細胞のニッチ ── 立毛筋と交感神経(Cell、2020年)

ヒトの けは うすいので、たてる 筋肉きんにくは もう いらない のかも しれない、と 思われて きました。

ところが、2020ねんに、おもしろい ことが わかりました。マウスの けの ねもとには、あたらしい けを つくる もとの 細胞さいぼうが あります。この 細胞さいぼうの ちかくに、けを たてる 筋肉きんにくと 神経しんけいが いて、いっしょに はたらいて いました。マウスを ながく さむい ところに おくと、あたらしい けが はえて きたそうです[8]。

とりはだを おこす 筋肉きんにくには、ほかにも しごとが ある のかも しれません。ただ、これは マウスの はなしで、ヒトで おなじだとは まだ いえません。

2020年、Cell誌の報告

2020年8月、Cell誌に、立毛筋と交感神経が、毛をつくる幹細胞(毛包幹細胞)の居場所(ニッチ)を一緒につくっている、という論文が載りました。マウスを長く寒さにさらすと、交感神経が毛包幹細胞を活性化して、新しい毛が生えたと報告されています[8]。

名残と言い切れないかもしれない

これは、鳥肌を起こす細胞が、毛を生やす仕組みにもかかわっているという発見です。ヒトの立毛筋を「無用の名残」とだけ見てよいのか、見直す材料になります。ただしマウスでの結果で、ヒトでも同じとは書かれていません。

2020年8月、Shwartz らは Cell 誌で、立毛筋と交感神経が二成分のニッチを形成し、毛包幹細胞の活動を調節すると報告した。マウスを長期間寒冷にさらすと、交感神経が毛包幹細胞を活性化して新しい毛を生やす。鳥肌を起こす細胞が、毛の再生の仕組みにも関与するという発見である[8]。

この結果は、ヒトの立毛筋を保温・威嚇の名残とだけ位置づける見方に、一つの修正を迫る材料になる。ただしマウスの結果で、ヒトで同様とは示されていない。

じぶんでも しらべて みたく なったら

自分でも調べてみたくなったら

自分でも調べてみたくなったら

つぎに とりはだが 出たら、その ところの 皮膚ひふが ぶつぶつして いるか、けが たって いるか、見て みましょう。なにが きっかけだったか、ことばに して みると、おもしろいですよ。

すきな うたを きく ときは、どこで ぞくぞくするか、しらべて みましょう。ぞくぞくする ところは、ひとに よって ちがうかも しれません。

今日できること:鳥肌が立ったら、その場所の皮膚がぶつぶつしているか、毛が立っているかを見て、そのときの状況を言葉にしてみます。寒さなのか、怖さなのか、音楽なのか。同じ見た目でも、きっかけはさまざまだと実感できるかもしれません。

資料を読むなら:日本語では、tenki.jp の解説[4]が読みやすいです。立毛筋の構造は、Wikipedia日本語版の解説[1]でも確かめられます。

日本語では、日本気象協会 tenki.jp の解説[4]と、立毛筋の百科事典的な説明[1]が入口になる。一次資料は英語で、2020年のCell論文[8]、2001年のPNAS論文[6]、2011年のNature Neuroscience論文は、PubMedで抄録を読める。

調べる際の論点は3つある。鳥肌は本当にヒトで名残なのか。感動の鳥肌で立毛筋の収縮が実際に起きているのか。マウスの毛包幹細胞との関係はヒトにも当てはまるのか。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

出典について:日本語の解説、百科事典、論文の要旨と紹介記事を突き合わせた。何に使ったかは項目の最後に書いている。論文は要旨や紹介記事で、研究の結論と対象を確かめる用途に使った。

  1. 立毛筋(Wikipedia日本語版)。https://ja.wikipedia.org/wiki/立毛筋 (立毛筋の構造、鳥肌の定義、寒さ・恐怖での収縮について)
  2. 日刊ゲンダイ、皮膚科医の解説記事。https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/health/347660 (不随意筋であること、交感神経の支配について)
  3. Goose bumps(Wikipedia英語版)。https://en.wikipedia.org/wiki/Goose_bumps (交感神経の反射、毛の多い動物での断熱と威嚇、自己申告と観察の不一致という指摘について)
  4. 日本気象協会 tenki.jp「寒いときに鳥肌が立つ理由」。https://tenki.jp/suppl/m_takizawa/2020/10/26/30002.html (ヒトでの保温効果、威嚇の名残説、感動の鳥肌が未解明であることについて)
  5. つぼみクラブ 第35回。https://www.ikyo.jp/commu/jintai/035 (顔の体毛と立毛筋の退化について)
  6. Blood and Zatorre, Intensely pleasurable responses to music correlate with activity in brain regions implicated in reward and emotion, PNAS 98:11818 (2001)。https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11573015/ (音楽のぞくぞくと脳の報酬・情動領域について)
  7. ScienceDaily「Anticipation of pleasurable music induces dopamine release」(2011、Salimpoorらの研究の紹介)。https://www.sciencedaily.com/releases/2011/01/110112111117.htm (音楽を待つ間と最中のドーパミンについて)
  8. Shwartz et al., Cell Types Promoting Goosebumps Form a Niche to Regulate Hair Follicle Stem Cells, Cell 182(3) (2020)。https://www.cell.com/cell/fulltext/S0092-8674(20)30808-4 (立毛筋・交感神経と毛包幹細胞のニッチについて)

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