1. 来年の 花は、いつ できるの?
1. 来年の房の「もと」は、花の頃に芽の中でできはじめる
1. 花序原基の分化 ── 収穫の前年に決まる果房の準備
ぶどうの 木は、春に 新しい えだを のばして、そこに 花の ふさを つけます。その ふさの もとは、前の 年の えだの 葉の つけねに ある めの 中に ありました[1]。
しかも その もとが できはじめるのは、今年の 花が さく ころです[2]。夏の 間に、葉が お日さまの 光を よく うけると、来年 実が つきやすい めが できると いわれて います[2]。
ただし この 話は アメリカの しりょうで、日本の ぶどうでは 時期が 少し ちがう ことも あります。
さて、春に 花が さいたら、ぶどうは どうやって 実を つくるのでしょう。
2. はなが さいたら、1ぽんでも 実に なるの?
2. 1本の木でも実るのは、花が「自分の花粉」で受粉するから
2. 自家受粉 ── 両性花で、1本でも結実する
ぶどうの 花は、おしべと めしべを 1つの 花に 両方 もって います。だから 自分の 花の こなで 実が できます[1]。ちかくに ほかの 木が なくても、1ぽんで 実が なるのです[1]。
ぶどうの 花は、大ぶぶんが 自分の 花の こなで 実を むすぶと いわれて います[2]。
花が 実に なった あとの、つぶの 大きく なり かたは、ちょっと ふしぎです。
3. つぶは、どうして 一ど ゆっくりに なるの?
3. 粒の成長は、速い→ゆっくり→また進む、の三段階
3. 果粒の成長の3つの段階 ── 第1期・第2期(成長がゆるやかな時期)・第3期
ぶどうの つぶの 育ち方は、3つに わけて 考えます[3]。
はじめは、花が さいてから 60日ほどの 間です。さいぼうが ふえて、つぶが ぐんぐん 大きく なります。この ころの つぶは すっぱくて、あまさは まだ ほとんど ありません[3]。
つぎに、大きく なるのが 一ど ゆっくりに なります。この 間に、つぶの 中の たねが 育ちます[3]。まるで、つぶが ひと休みして、たねに 力を まわして いる みたいです。
この 日数は、ぶどうの しゅるいや 天気で かわる めやすです。では、ひと休みの あとは、なにが おこるのでしょう。
アメリカの大学の資料は、粒の育ちを3つの段階に分けています[3]。
第1期は、花が咲いてから約60日の間です。粒の中の細胞が分かれて数を増やし、粒は急に大きくなります。このころは酸が多く、糖はまだ少ない状態です。
第2期は、成長が一度ゆるやかになる時期で、その間に種が育ちます。外見の大きさはあまり変わらなくても、粒の中では種の準備が進んでいます。
この日数はあくまで目安で、品種や気候で変わります。そして第2期のあとに、見た目にもはっきり分かる切りかわりがやってきます。
4. 色が つくと、なにが かわるの?
4. 色づき(ベレゾン)を境に、粒は「育つ」から「熟す」へ
4. ベレゾン ── 葉緑素の分解と、糖・酸の入れかわり
つぶの 色が かわりはじめる ことを、ベレゾンと いいます[3][4]。ここから、つぶは 大きく なる よりも、あまく なる 方に かわります。
青い つぶの 緑の もとは 葉緑素と いいます。ベレゾンの あとは、この 葉緑素が こわれて、赤や むらさきの 色の もとが できて きます[4]。つぶは やわらかく なります[3]。
そして 糖が たまって、すっぱさの もとの 酸は へって いきます[3][4]。
花が さいてから ベレゾンまで、アメリカの しりょうでは 5〜7週間 ほどです[2]。日本の ぶどうでは 日数が ちがう ことも あります。
第3期は、ベレゾン(色づきの始まり)から始まります。ベレゾンは粒が「成長」から「成熟」に切りかわるときで、粒がやわらかくなり、色がつき、糖がたまり、酸が減っていきます[3][4]。
色の変化は、緑の色のもとである葉緑素が分解され、代わりに色素ができることで起こります[4]。たまる糖はブドウ糖と果糖で、酸のうち、リンゴ酸が減って、酸っぱさがやわらいでいきます[4]。
アメリカ東部の資料では、ベレゾンは開花・結実からおよそ5〜7週間後に始まり、その後4〜6週間で糖・色素・香りの成分が増え、酸が減るとされています[2]。日本の品種や気候では日数が異なります。
ひと粒の中では、そうして甘くなります。では、ひと房のなかで、甘さはどこから進むのでしょうか。
5. ふさの 上と 下で、あまさは ちがうの?
5. 房の上と下で甘さがちがうことも。白い粉は、粒を守る「ろう」
5. 房内の成熟の差と、果皮のブルーム
ぶどうは、えだに 近い ところから うれる ので、ふさの 上と 下で あまさに ちがいが 出る ことが あります[1]。
食べるとき、ふさの 上と 下の つぶを 食べくらべて みましょう。
それから、つぶの 表面に ある 白い こな。あれは よごれでは ありません。つぶの 中の 水が にげない ように、実が じぶんで 出す ろうの ような ものです[1]。
では、この あまい つぶは、いつ とれるのでしょう。にっぽんでは、はやい ものは 7月の おわりごろから、おそい ものは 11月の はじめごろまで とれます[1]。
6. たねの ない ぶどうは、たねを とったの?
6. 種なしぶどうは、種を取ったのではなく、花の頃に処理してつくる
6. ジベレリン処理による無核化 ── 研究の経緯と、年が割れる理由
たねの ない ぶどうは、たねを とりのぞいた のでは ありません。花が さく ころに、ふさに ジベレリンと いう 植物の 成長に かかわる ぶっしつを つけます。すると、たねが できなく なります[5]。
ふつうは 2回 つけます。1回で すませる 方ほうも 研究されて います[5]。デラウェアや シャインマスカットは、ふつう この しかたで たねなしに なります[5]。
もともとは、つぶが ぎゅうぎゅうに くっついて われるのを ふせぐ ため の 研究でした。やって みたら、たねが できないことが わかり、2回めに つけると、たねが ない つぶが 大きく なる ことも わかりました[6]。
はじまりは 1950年代の 後ろの ほうと いわれますが、年は しりょうに よって ちがいます。
種なしぶどうは、種をあとから取りのぞいたものではありません。開花の頃の房に、ジベレリンという植物の成長ホルモンをつける処理で、種ができなくなります。処理は通常2回で、1回で済ませる方法も開発されています。デラウェアやシャインマスカットは、この処理で種なしになります[5]。
この方法が見つかった経緯が興味深く、ねらいは別のところにありました。日本では1957年にジベレリン研究会が発足し、1958年から主産県の試験研究機関で利用が検討されました。最初のねらいは、花穂を伸ばして粒の密着をゆるめ、裂果を防ぐことでした[6]。
やってみると、開花前の処理で種なしになることが分かり、開花後にもう一度処理すると、種なしの粒が種あり並みに大きくなることも分かりました[6]。
無核化がデラウェアで確立した年は、1960年ごろとする資料もあれば、1970年ごろとする記述もあり、出典で食いちがいます。年を一つに決めず、「1950年代後半から研究された」程度に読むのが安全です。
種なしブドウは、開花期の房に植物成長調整物質であるジベレリンを付ける処理で、種子が形成されなくなったものである。処理は通常2回で、1回で済ませる方法も開発されており、デラウェアやシャインマスカットは通常この処理で無核化する[5]。
経緯は、当初のねらいと結果が異なる点が特徴的である。日本では1957年にジベレリン研究会が発足し、1958年からブドウ主産県の試験研究機関で利用が検討された。当初は花穂を伸ばして果粒の密着を緩め、裂果を防ぐことが目的だった。その過程で、開花前の処理により無核化が起こり、開花後に再度処理すると無核の果粒が有核果並みに肥大することが分かった[6]。
この二つの発見を合わせると、通常2回行う処理は役割が分かれていると整理できる。開花前後の処理では種ができなくなり、そのあとの処理では種のない粒が種あり並みの大きさまで育つ。つまり種なしぶどうは、種をなくすだけでなく、大きくするところまで人が手を添えた果実である。
なお、デラウェアで無核化が確立した年は、1960年ごろとする記述と、1970年ごろとする記述が併存し、出典間で一致しない。ここでは確定せず、「1950年代後半から研究、その後に実用化」の範囲にとどめる。
7. ぶどうを たべる とき、なにを 見て みよう?
7. ぶどうを一房食べながら、準備の長さを確かめる
7. 観察と資料 ── 房の位置・白い粉・種の有無から確かめる
ぶどうを 食べる ときに、おうちの 人と 見て みましょう。ふさの 上の つぶと 下の つぶを 食べくらべて、あまさが ちがうか たしかめます。
つぶの 表面の 白い こなは、ゆびで なでると きえます。あれが、つぶが 自分で 出して いる、水を まもる ろうです。
たねが ある ぶどうと ない ぶどうが あったら、2つを くらべて みましょう。ない ほうは、花の ころに、人が ひと手間 かけた ぶどうです。
一房を食べるとき、上の粒と下の粒で甘さが違うか、確かめてみてください。白い粉は指でこすると消えます。その下に、つやのある果皮が見えるはずです。
種のあるぶどうとないぶどうを見かけたら、売り場の表示や産地の情報を見て、品種名を調べてみると、どちらの品種がジベレリン処理で種なしになっているか分かる場合があります。
もっと気になったら、農林水産省の「こどもそうだん」や農研機構の公開資料を開くと、種なしにする処理の考え方がさらに詳しく載っています。
身近な観察としては、房の上部と下部の糖度の差、ブルームの有無、種の有無を、同じ品種で比べることができる。
原典としては、農林水産省「こどもそうだん」(種なしの仕組みの概要)、農研機構FRUIT NEWS(ジベレリン研究の経緯)、米国の大学拡張部局が公開する栽培資料(成長段階・ベレゾン)がある。日数や時期は品種・気候により異なる目安である。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
本文の参照番号に対応する資料。日数や時期は品種・気候で変わる目安で、アメリカの資料は日本の品種と厳密には異なることがある。
- Wikipedia日本語版「ブドウ」 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%96%E3%83%89%E3%82%A6 (花芽・受粉・房の甘さ・ブルーム・収穫期)
- eXtension Grapes: Annual Cycle of the Grapevine https://growables.org/information/LowChillFruit/GrapeBotanyExtOrg6.htm (花序原基・自家受粉・ベレゾンの時期)
- eXtension Grapes: Stages of Grape Berry Development https://growables.org/information/LowChillFruit/GrapeBotanyExtOrg5.htm (粒の成長の三段階)
- Wikipedia英語版「Veraison」 https://en.wikipedia.org/wiki/Veraison (ベレゾンでの色素・糖・酸の変化)
- 農林水産省 こどもそうだん「なぜ種のあるぶどうと種のないぶどうがあるのですか」 https://www.maff.go.jp/j/heya/kodomo_sodan/0208/04.html (ジベレリン処理による種なし化)
- 農研機構 FRUIT NEWS No.34 https://www.naro.go.jp/PUBLICITY_REPORT/publication/archive/files/fruit_news_no34.pdf (日本でのジベレリン利用の経緯)
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