1. みずだけで ながしても へるのに、せっけんは なぜ?
1. 水で流すだけでも減るのに、なぜ石けんを使うのか
1. 流水だけで約100分の1になるのに、石けんが必要な理由
てを みずで ながすと、ウイルスは かなり へります。じっけんでは、15びょう ながした だけで、100ぷんの 1ぐらいに なりました[1]。ただし この じっけんで つかったのは、ノロウイルスの かわりの、ネコカリシウイルスと いう ウイルスです。
それでも、せっけんを つかうと もっと へりました[1]。ノロウイルスには アルコールも あまり きかない と いわれて いて、てから おとす ことが たいせつだ と 書かれて います[5]。
では せっけんは、みずに ない どんな ちからを もって いるのでしょう。
水道の水に手をさらすだけで、ウイルスはかなり流れていきます。2006年の日本の研究では、ノロウイルスの代わりにネコカリシウイルスを使い、流水でのすすぎだけでもウイルス量が約100分の1になりました[1]。この実験に使われたのは、ノロウイルスそのものではなく代わりのウイルスです。
それでもハンドソープを使うと、減り方はさらに大きくなりました[1]。水だけでは残るものが、石けんを足すと落ちていきます。そこに石けんの役目があります。
手洗いが大切にされる理由は、ほかにもあります。広島県の手洗いのページによれば、ノロウイルスにはアルコールがあまり効かないので、手からウイルスを落とすことが大切です。ていねいに洗わないと、ウイルスは手に残ってしまいます[5]。消毒液に頼れない相手には、洗い流す方法が中心になります。
それなら石けんは、水に足りない何をもっているのでしょうか。次の章で、石けんの分子を見てみましょう。
手洗いの効果を測った日本の実験(2006年)では、ノロウイルスの代わりにネコカリシウイルスを手につけ、洗い方ごとに残るウイルスの量を比べた。その結果、流水のすすぎだけでもウイルス量は約100分の1程度に減り、ハンドソープを使うと減少はさらに強まった[1]。ネコカリシウイルスは、ノロウイルスと同じ仲間の扱いやすい代役であり、数字はそのまま人のノロウイルスの値になるわけではない。
ここで素朴な疑問が出る。水だけで2桁近く減るなら、石けんは必要なのか。答えは、水だけで残る部分があり、そこを石けんが減らすからだ。しかも相手によっては、ほかの手段が弱い。広島県の資料は、ノロウイルスにはアルコールがあまり効かないため、ていねいな手洗いで手からウイルスを落とすことが大切だと説明している[5]。アルコール消毒に頼れない場面では、洗い流す工程の質がそのまま結果を左右する。
では、石けんは水に何を足しているのか。次の章では、石けんの分子の構造から見ていく。
2. せっけんの ぶんしは、どんな かたちを して いるの?
2. 石けんの分子は、水と油の両方になじむ形をしている
2. 親水基と親油基をもつ石けんの分子が、油を水へ運ぶ
てには、あぶらの よごれが ついて います。あぶらは みずと まざりません。だから みずだけでは、おちきらない ぶぶんが のこります。
せっけんの つぶ(ぶんし)は、ひとつの つぶの なかに、みずが すきな ところと、あぶらが すきな ところを もって います。みずが すきな ところは 親水基、あぶらが すきな ところは 親油基と いいます[3]。
あぶらが すきな ところが あぶらに くっつき、みずが すきな ところが みずの ほうを むきます。こうして よごれを つつんで、みずの ほうへ はこびます[3]。
たとえば、ひとつの ぼうに、あぶらに くっつく てと、みずに くっつく てが ついて いる ところを そうぞうして みて ください。ただし ほんとうの ぶんしは、てでは ありません。「どちらにも なじむ ところが ある」と いう ことの たとえです。
でも、つつんだ だけで、よごれは てから はなれるのでしょうか。
水と油は混ざりません。手についた油の汚れが、水だけでは落ちきらない理由のひとつです。
石けんなどの界面活性剤は、1つの分子の中に、水になじみやすい部分(親水基)と、油になじみやすい部分(親油基)の両方をもっています[3]。そのため、油の汚れにくっついて包みこみ、水の側へ運ぶことができます。油と水が分かれたままでは洗い流せなかった汚れが、石けんがあいだに入ることで、水と一緒に流れる状態になります[3]。
イメージするなら、1本の棒の片方に油にくっつく手、反対側に水にくっつく手がついている姿です。ただし実際の分子は、手のある棒ではありません。「どちらの性質ももつ」ことをつかむための、たとえにすぎません。
石けんは、油脂をアルカリで化学反応させてつくる脂肪酸塩で、界面活性剤の一種です[3]。水と油の境目に働いて、油の汚れを水と一緒に洗い流しやすくします。
包まれた汚れは、手の表面から自然にはがれるのでしょうか。そこで出てくるのが、泡立ててこする動きです。
手の汚れの中には、皮膚の表面の油や食べ物の油がまじる。油は水と混ざらないので、流水だけでは油ごと汚れが手に残りやすい。これが、水だけで洗った後にも汚れが残る一因と考えられる。
この問題を解くのが、石けんなどの界面活性剤である。界面活性剤は1つの分子の中に、水になじみやすい親水基と、油になじみやすい親油基をもつ。この構造のおかげで、油汚れにくっついて包みこみ、水の側へ運んで汚れを取ることができる[3]。
石けんは油脂をアルカリで加水分解してつくる脂肪酸塩で、界面活性剤の一種にあたる。水と油の境目に働き、油汚れを水と一緒に洗い流しやすくする[3]。
ここまでは分子の側から見た話だ。実際の手洗いには、人の手の動きが加わる。泡立てて、こする。この動作は、汚れをはがす力としてどう働くのか。
3. こすって ながすと、よごれは どこへ いくの?
3. こすって流すと、汚れとウイルスはどこへ行くのか
3. 泡立てる摩擦と流水で、汚れが手から離れていく
せっけんを あわだてて、てを こすります。すると てと よごれの あいだに、ちいさな ちからが かかります。この ちからを 摩擦と いいます。
あわだてて こすると、よごれや あぶら、ばいきんが てから うきやすく なる と、アメリカの CDC(びょうきを ふせぐ やくしょ)は せつめいして います[4]。
うかんだ ものは、さいごに みずで ながします。ながれる みずが、うかんだ ものを もって いって くれます。
では、どれくらい こすれば いいのでしょう。
CDCは、20びょう いじょう こする ほうが、みじかい ときより たくさんの ばいきんを おとせる と しめして います[4]。にほんの しりょうでは、10びょう もみあらいを して、15びょう ながす、と 書かれた ものも あります[2]。しりょうごとに びょうすうが ちがうので、ひとつの かずが ぜったいと いう わけでは ありません。
こすって、ながして。じゃあ、あらいかたを かえると、のこる かずは どれくらい かわるのでしょう。
泡立てて、こする。この動きにも意味があります。アメリカのCDC(疾病予防管理センター)は、石けんの界面活性剤が皮膚から汚れや微生物を浮かせ、泡立ててこすると摩擦が生まれて、汚れ・油・微生物がさらに浮きやすくなると説明しています[4]。
浮いたものは、流水で押し流されます。石けんの分子が汚れを水の側へ運び、こする力が手から離し、流れる水が持ち去ります。この3つがそろって、手洗いの流れがつながります。
どれくらいこすればよいのでしょうか。CDCは、20秒以上こするほうが、それより短く洗うより多くの菌を落とせると示しています[4]。一方、国学院大学の資料では、実験の条件として、ハンドソープで10秒もみ洗いしたあと15秒流しています[2]。出典によって秒数がちがうのは、それぞれ別の実験や目安をもとにしているからで、どれかひとつが絶対の数字というわけではありません。
洗い方を変えると、残るウイルスの数はどのくらい変わるのでしょうか。実験の数字を見てみましょう。
分子が汚れを包めても、手に張りついた汚れが自然に離れるとは限らない。そこで、泡立ててこすることが加わる。CDCは、石けんの界面活性剤が皮膚から汚れと微生物を浮かせ、泡立ててこすると摩擦が生まれて、汚れ・油・微生物が浮きやすくなると説明している[4]。
浮いた汚れは、最後に流水で押し流される。石けんが汚れを水の側へ運ぶ、摩擦が手から離す、流れる水が持ち去る。この3段階が一続きになると、汚れが手から離れやすくなる。こすらずに流すだけの場合と比べて石けんで洗うほうが減少が強まった、という上の実験結果とも、この説明は矛盾しない。
では、どの程度こすればよいのか。CDCは、少なくとも20秒こするほうが、それより短時間より多くの菌を手から落とせると示す[4]。ところが国学院大学の資料では、実験条件として、ハンドソープで10秒もみ洗いし、流水で15秒すすいでいる[2]。秒数は出典ごとに別の実験や目安にもとづくので、数字を一つに決めて絶対視することはできない。
洗い方を変えたとき、残るウイルスの数は実際にどう変わるのか。次の章で、実験をもとにした数字を確かめる。
4. あらいかたを かさねると、ウイルスは すうこまで へるの?
4. 洗い方を重ねると、ウイルスは数個まで減るのか
4. 洗い方ごとの残存数 ── 100万個が数個になる数字の読み方
ぎょうせいの しりょうに、じっけんの かずが のって います[2]。てに ウイルスが 100まんこ ついて いた として、あらいかた ごとに のこる かずを みて みましょう。
あらわない ときは、100まんこ ぐらい。みずで 15びょう ながすと、1まんこ ぐらい。これは もとの 100ぷんの 1です。
ハンドソープで 10びょう もみあらいして、15びょう ながすと、すうひゃっこ ぐらいまで へります。これを 2かい くりかえすと、すうこ ぐらいまで へる、と 書かれて います[2]。
ただし これは、ネコカリシウイルスを つかった じっけんの かずで、しりょうに よって 「すうひゃっこ」「やく 100こ」など、書きかたが すこし ちがいます。ほんとうの てで、ほんとうの ウイルスが いつも この とおりに なるとは かぎりません。
それでも、あらいかたを かさねる ほど へる、と いう ながれは よみとれます。では おゆで あらったら、もっと おちるのでしょうか。
国学院大学の資料には、洗い方ごとに残るウイルスの数が載っています。手にウイルスが約100万個ついていたとすると、洗わない場合は約100万個のままです。流水で15秒すすぐと約1万個になります。これは、もとの約1%、つまり100分の1です。ハンドソープで10秒もみ洗いして15秒すすぐと、数百個になります。これを2回くり返すと、数個まで減ります。資料では約0.0001%と書かれています[2]。
計算で確かめてみましょう。100万個の1%は1万個です。0.0001%は100万分の1にあたります。資料では、残る数を「数個」としています。洗い方を重ねるほど、残る数が大きく減っていくことが分かります。
ただし、これはネコカリシウイルスを使った実験にもとづく数字です。資料により「数百個」「約100個」など、書きかたにばらつきもあります。実際の手洗いで残る数は、洗う時間や洗い方によって変わります。
お湯で洗えば、もっと落ちるのでしょうか。
国学院大学の資料には、洗い方ごとの残存数が示されている。手に付着したウイルスを約100万個とすると、洗わない場合は約100万個、流水15秒のすすぎで約1万個(約1%)となる。ハンドソープで10秒もみ洗いし流水で15秒すすぐと数百個、これを2回くり返すと数個(約0.0001%)まで減る[2]。
数字の桁を確かめておく。1%は100分の1であり、100万個からは1万個が残る計算になる。0.0001%は100万分の1にあたる。資料では、残る数を「数個」としている。つまり、流水だけの場合から、石けんで洗う回数を増やすにつれて、残る数が段階的に減っていく。
ただし限界も押さえておく。この数字は、元の研究(流水15秒で約100分の1)にもとづく資料の表記であり、「数百個」「約100個」など資料によって書き方にばらつきがある。しかも実験はネコカリシウイルスを用いたもので、人の手に実際に付く汚れの量や、洗う時間・こする強さの違いは反映されていない。実験条件つきの目安として読むのが適切だ。
洗い方の質が重要だとして、水の温度や乾かし方はどう影響するのか。
5. おゆで あらうと、もっと おちるの?
5. お湯で洗えばもっと落ちるのか、洗ったあとはどうするか
5. 水温と乾燥の扱い、そして手洗い教育の効果
CDCは、みずの おんどは、ばいきんを おとす ちからに えいきょうしないようだ と 書いて います[4]。おゆは はだに ふたんが かかる ことも あると いいます[4]。
あらった あとは、きれいな タオルで ふくか、しぜんに かわかします[4]。てを かわかす ことも、てあらいの いちぶです。
CDCは、てあらいを みんなで ならう とりくみで、おなかを こわす ひとが 23〜40%、かぜのような びょうきが 16〜21% へった、と しらせて います[4]。ひとりひとりの てあらいが あつまると、まちの みんなにも えいきょうが ある、と いう はなしです。
CDCによれば、水の温度は菌の除去に影響しないようです。むしろお湯は肌への刺激が強く、環境への負荷も大きいとされています[4]。冷たいと感じる日も、水で洗って問題はありません。
洗ったあとは、手をできるだけ乾かします。清潔なタオルで拭くか、自然に乾かすのがよいそうです[4]。洗う動作から乾かすところまでが、手洗いのひとまとまりです。
手洗いの効果は、地域の数字にも表れています。CDCは、地域での手洗い教育によって、下痢で病気になる人が23〜40%、かぜなど呼吸器の病気が16〜21%減ると紹介しています[4]。ただしこれは、教育プログラムを行った結果の数字で、1回の洗い方の効果ではありません。
数字を見ると、手洗いの一回一回の積み重ねが、大きな意味をもつことが分かります。
CDCは、水の温度は菌の除去に影響しないようだと述べている。温水は肌への刺激が強く、環境負荷も大きいので、勧められない[4]。冷たい水で洗っても効果が劣るわけではなく、石けんと摩擦が主役という前の章の説明とも合う。
洗い終えた後は、手をできるだけ乾かす。清潔なタオルか自然乾燥がよいとされる[4]。洗う・流す・乾かすまでが一連の手順になる。
個人の洗い方1回の効果とは別に、地域での手洗い教育がもたらす効果も報告されている。CDCは、下痢による病気が23〜40%、かぜなど呼吸器の病気が16〜21%減ると紹介する[4]。ただしこれは手洗い教育プログラムの結果であり、1回の洗い方の除去率とは別の指標である。数値の意味をはき違えないことが、出典を読む際の注意点になる。
6. いえに ある もので できる、あぶらの かんさつ
6. 台所の油で、石けんの働きを指先で感じてみる
6. 手洗いの数字を読む目と、油で試す指先の観察
いえに ある ものでも、せっけんの はたらきを かんじられます。おうちの人と いっしょに やって みてください。
サラダゆを ゆびさきに ほんの すこし つけます。まず みずだけで ながして、ぬるぬるが のこるか みます。つぎに せっけんを あわだてて、こすって ながします。ぬるぬるの のこりかたが ちがうか、くらべて みましょう。
これは あぶらが おちる ようすを みる ものです。ばいきんが おちる かずを はかる ものではありません。
やったあとは、サラダゆが ゆかに おちないように、タオルで ふいて おきましょう。
家にあるもので、石けんの働きを指先で確かめられます。おうちの人と一緒に試してみましょう。
サラダ油を指先にほんの少しつけます。まず水だけで流し、ぬるぬるがどれくらい残るかを見ます。次に石けんを泡立てて、こすってから流します。残り方に差があるか、感触で比べてみてください。
これは油の汚れが落ちる様子を見るもので、菌の数を測る実験ではありません。それでも、水だけでは残るものを石けんが助けている、というこの記事の流れを、手で感じる体験になります。
ほかにも、疑問は広がります。石けんの泡は、水だけの場合と比べてどのくらい汚れを落としやすくするのか。洗う時間は何秒が最適なのか。国や機関によって秒数がちがうのはなぜか。これらは、CDCや日本の行政機関のページを自分で読んで、考えてみる価値があります。
実験で確かめられるのは、数字の裏にある現象の一部だ。家にあるもので、石けんの働きを指先で観察できる。保護者と一緒に行うこと。
サラダ油を指先にごく少量つけ、まず流水だけで流して、ぬるぬるの残り方を見る。次に、石けんを泡立てて同じ指をこすり、流す。残り方と感触を比べる。これは油汚れが落ちる様子の観察であり、ウイルスや菌の除去率を測るものではない。
そのうえで、読み比べたい資料がある。J-STAGEの原著(感染症学雑誌)にある実験の条件、資料ごとの残存数の表記ゆれ、CDCが20秒以上と示す根拠となった研究だ。出典欄から原典にあたり、数字の意味と条件を自分の目で確かめてほしい。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
本文で使った資料の一覧です。数字は資料ごとに条件がちがうので、原典も読んでください。
- 森功次ほか「手洗いによるウイルス除去効果」ほか、感染症学雑誌 80(5)、496-500、2006. J-STAGE 要旨 (流水のすすぎで約100分の1に減った実験)
- 国学院大学・町田市・厚生労働省などの手洗い啓発資料。 国学院大学の資料(PDF) (洗い方ごとの残るウイルス数の目安)
- さいたま市 科学ナビ「界面活性剤」. さいたま市 科学ナビ (親水基・親油基と汚れの運ばれ方)
- CDC (Centers for Disease Control and Prevention) Handwashing Facts / Show Me the Science. CDC 手洗いの科学(英語) (摩擦、20秒、水温、乾燥、地域での効果)
- 広島県 手洗いのページ. 広島県 手洗い (ノロウイルスとアルコール、手洗いの大切さ)
- ライフハッカー「石けんのしくみ」. ライフハッカー (石けんとミセルの一般向け解説)
なおした ところ
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