1. 「はんぶん」が、名前に なった
1. 半紙の名前は、「半分」から来ている
1. 名前の由来:延べ紙の半分という説明と、初出の食いちがい
習字の 時間に、つくえの 上に ひろげる 白い 紙。あれが、半紙です。
じてんには、むかしの 「のべがみ」と いう 紙を、半分に 切って 使った ことから、半紙と いう 名前が ついたと 書く ものが あります[1]。ただ、この 考えを うたがう じてんも あります。
大きさは、じてんに よると、たてが 24〜26センチ、よこが 32〜35センチ ぐらいです[1]。ノートより ずっと 大きく、A4の 紙よりも ひとまわり 大きい 紙です。
では、この 半紙は、ふつうの 紙と 同じ ざいりょうで 作られて いるのでしょうか。
書道の時間に広げるあの紙
習字の時間に机の上へ広げる、薄くて白い紙が半紙です。辞典には、古くは延べ紙(小形の杉原紙)を半分に切って使ったことから、この名がついたと書くものがあります[1]。一方で、世界大百科事典はこの由来に疑問を示しています。
大きさは辞典によって少しちがい、縦およそ24〜26cm、横およそ32〜35cmとされます。日本国語大辞典は、縦八寸(24.2cm)、横一尺一寸(33.3cm)としています[1]。決まった規格が1つあるわけではなく、辞典ごとに少しずつ数字がちがう、ということです。
A4判は21cm×29.7cmなので、半紙はそれより、ひとまわり大きい紙です。
名前の由来が「半分に切った」なら、もとの紙は何で、どうやって作られたのでしょうか。
半紙の名は、辞典類では、延べ紙(小形の杉原紙)を半分に切ったことに由来すると説明するものがある一方、世界大百科事典はこの説に疑問を示す[1]。また、名前が最初に見える資料は、辞典によって扱いが分かれる。ある辞典は760年の『正倉院文書』に名称が見えるとし、別の辞典は初出を天正3年(1575年)の『多聞院日記』とする[1]。古代の寸法は推定にとどまるため、「いつ、どの大きさの紙を半分にしたのか」まで細かく言い切ることはできない。
現在の大きさも、規格ではなく辞典ごとの記述である。デジタル大辞泉は縦24〜26cm・横32〜35cm、精選版日本国語大辞典は縦八寸(24.2cm)・横一尺一寸(33.3cm)とする[1]。後者で面積を計算すると24.2×33.3で約806cm²、A4判(21.0×29.7cm)の約624cm²に対して約1.3倍になる。
名前から分かるのは「大きさの目安」までである。では、半紙は何でできていた紙なのか。
2. はじめは、コウゾで 手ですいた 紙
2. もとは、コウゾを手で漉いた和紙だった
2. 原料と製法:コウゾの手漉きから始まった紙
はじめの 半紙は、楮と いう 木の かわから とり出した せんいを つかって、人の 手で ていねいに すいた 紙でした[1]。
この 紙は、江戸時代に ひろまり、島根の 石州半紙や、福岡の やながわ半紙などが 有名に なりました[1]。
和紙は、強くて やわらかい のが とくちょうだと 書かれて います[2]。
むかしの 半紙は、まず 和紙だったのです。では、いまの 半紙も そうでしょうか。
コウゾの皮の繊維で漉く
半紙は、最初はコウゾを原料とする、手漉きの和紙でした。和紙は、コウゾ・ミツマタ・ガンピなど植物の皮の繊維を原料に、手で漉いて作る日本古来の紙です[2]。
江戸時代に広まった
半紙は江戸時代に広まり、石州半紙(島根県)や柳川半紙(福岡県)などが有名になりました[1]。世界大百科事典の「改良半紙」の項には、半紙は本来、コウゾだけで漉いたものだという説明もあります[1]。
和紙の特長は、強いこと、柔らかいこと、優美なことです[2]。その半紙が、どう変わっていったのでしょうか。
半紙は当初、コウゾを原料とする手漉きの和紙であった。世界大百科事典(改良半紙の項)は、半紙は本来、純粋にコウゾのみで漉いたものだという[1]。和紙そのものは、コウゾ・ミツマタ・ガンピなどの靭皮繊維(じんぴせんい。樹皮の内側の繊維)を原料に、手漉きで作る日本古来の紙で、強靭さ・柔軟さ・優美さが特長とされる[2]。
この手漉きの半紙は江戸時代に普及し、各地に産地ができた。島根県の石州半紙や福岡県の柳川半紙が知られる[1]。庶民の紙として広がったため、産地ごとに特色のある半紙が生まれた、と読める。
ただ、これは「もとの半紙」の話である。現在の半紙が同じ原料・製法のままかどうかは別に確かめる必要がある。
3. いまの 半紙は、きかいで 作られる
3. いまの半紙の多くは機械漉きで、パルプも混ざる
3. 明治以降の変化:改良半紙と機械漉き、原料のちがいは薄れた
めいじ時代の あとから、「かいりょう半紙」と いう 新しい 半紙が ひろまりました[1]。
いまの 半紙は、きかいで すいた ものが ふつうで、木から 作る パルプと いう ざいりょうも まぜて あると いわれます[1]。
ふつうの 紙(ようし)も、木の パルプを 使って、きかいで たくさん 作ります[2]。
つまり、ざいりょうだけを 見ると、いまの 半紙と ふつうの 紙は、にて きて います。それでも 半紙は、ふつうの 紙と ちがう 紙と して 売られて います。どこが ちがうのでしょう。
明治以降の改良半紙
明治以降は、改良半紙が広まりました。現在は、機械漉きで木材パルプなどを混ぜたものが普通になっています。事務用などに、化学パルプを原料にした機械漉きの半紙が大量に作られています[1]。
洋紙と原料が近づいた
洋紙は、木材パルプなどを機械で量産する紙です[2]。原料と作り方だけを並べると、いまの機械漉きの半紙と洋紙は、かなり近づいています。
ただし、書道用の半紙が全部パルプというわけではなく、手漉きの半紙も残っています。原料の話だけでは、ちがいを説明しきれません。残るちがいは、紙そのものの「はたらき」にありそうです。
明治以降は改良半紙が広まり、現在は機械漉きで木材パルプなどを混ぜた半紙が普通になった。とくに事務用には、化学パルプを原料とする機械漉きの半紙が大量に作られている[1]。他方、洋紙は木材パルプなどを機械で量産する紙とされる[2]。
そのため、原料と製法だけで線を引くと、機械漉きの半紙と洋紙の境目はあいまいになる。しかも、書道用の半紙がすべてパルプ入りとは言えず、手漉きの半紙も残っている。名前の由来の時代の「コウゾだけ」の半紙と、いまの「パルプ入りの半紙」を同じ名で呼べるのは、原料以外の何かが、半紙らしさに関わっているからだと考えられる。
では、半紙らしさとは何か。手がかりは、書道で使う道具、つまり墨にある。
4. 半紙は、墨を すう 紙
4. 和紙は墨に向き、ペンや印刷には向かないとされる
4. 多孔質の紙:墨書きに向く性質と、ペン書き・印刷への不向き
和紙は、紙の 表面に、小さな あなが たくさん ある 紙だと いわれます。水を よく すいます[2]。
だから、墨で 書くのには むいて います。でも、ふつうの ペンで 書いたり、いんさつ したり するのには、むきません[2]。
ペンの インクは、いきなり にじむと 字が ぼやけて しまいます。だから ふつうの 紙は、すこし にじみにくい ように できて います。
半紙は、そのぎゃくで、墨が じわっと にじむのが、いい ところなのです。
水を吸いやすい紙
和紙は、紙の中に小さなすきまがたくさんある「多孔質」の紙です。紙面は粗く、水を吸う力が強いと説明されています[2]。
墨には向き、ペンには向かない
辞典は、和紙は墨書きには適するが、一般には、インクによるペン書きや印刷には適さない、と説明しています[2]。
ペンの細い線や、印刷の細かい文字は、にじむとぼやけてしまいます。反対に、筆で太く書く墨の線は、少しにじむことで、濃さの変化が出ます。同じ「にじむ」性質が、使い方によって、長所にも短所にもなるわけです。
では、洋紙はなぜ、にじみにくいのでしょうか。
和紙は多孔質で紙面が粗く、吸水性が強い。そのため墨書きには適するが、一般にインクによるペン書き・印刷には適さないとされる[2]。ペンのインクは水が多く、紙に吸われて広がると線が太って読みにくくなる。他方、書道は筆に含ませた墨を紙に吸わせ、濃淡や線の太さの変化を作る。同じ吸水性が、一方では欠点、他方では必要な性質になる。
ここで、洋紙と半紙のちがいを、「吸うか、吸わないか」の二分法で書かないほうがよい。洋紙も水を吸うし、半紙も、墨を吸わせて広げすぎれば字がつぶれる。問題は、吸い方の「量」と「速さ」を、用途に合わせて調整してあるかどうかだ。
この調整を担うのが、紙の「サイズ」と呼ばれる処理である。
5. 「サイズ」は、大きさの ことでは ない
5. 紙の「サイズ」は、にじみを調整する薬のこと
5. サイズ剤は、ロジンやゼラチンで吸水を調整する
紙を 作る ときの「サイズ」とは、大きさの ことでは ありません。インクが にじむのを ふせぐために、紙に くわえたり ぬったり する 薬品の ことです[3]。
むかしは、まつの やにから 作った ロジンと いう ものが、よく つかわれたそうです。ゼラチンなどを ぬる やりかたも あります[3]。
この サイズの 入れかたで、紙が 水を すう つよさや、にじみかたを、かえる ことが できると、じてんには 書かれて います[3]。
つまり、ふつうの 紙と 半紙の ちがいには、「にじみを どれくらい 止めるか」の かげんが かかわって いそうです。
サイズは、にじみを調整する薬
紙の世界で「サイズ」といえば、大きさではなく、インクのにじみを防ぐために、紙を作る途中で混ぜたり、紙面に塗ったりする薬品のことです[3]。毛羽立ちを防ぐ役目もあるとされます。
ロジンとゼラチン
紙に混ぜる「内添」では、松脂から精製したロジンが歴史的によく使われてきました。紙面に塗る「外面」では、ゼラチンなどが使われます[3]。ニッポニカは、内添サイズによって、吸水性とにじみ止めを調整できると説明しています[3]。
ちがいは「にじませ方の設計」
ここまでの資料を重ねると、半紙と普通の紙のちがいは、原料の種類より、サイズの加減などによる「墨をどう受け止めるか」に関わる、と読めます。ほかに原料の処理や漉き方なども関わると考えられます。ペン書きや印刷用の紙は、にじまないように整えます。書道用の半紙は、墨が適度にしみて広がるように整えます。
ただし、どの半紙にどれだけサイズが使われているかを示す資料は、ここでは示されていません。この点は「そう読める」の範囲にとどめます。
製紙でいう「サイズ」は、インクのにじみや毛羽立ちを防ぐため、紙料に加えたり紙面に塗ったりする薬品を指す。寸法の意味ではない[3]。内添サイズでは、ニッポニカによれば吸水性とにじみ止めを調整でき、松脂から精製したロジンが歴史的に多く使われた。外面サイズ剤にはゼラチンやCMC(カルボキシメチルセルロース)などがある[3]。
前章の吸水性の話と合わせると、洋紙のペン書き・印刷適性は、サイズによってにじみを抑えた紙面に支えられていると読める。半紙は、墨を適度に吸わせ、広がらせることが前提の紙であり、にじみ止めの利かせ方が、洋紙とは別の方向に設計されている。サイズの有無ではなく、加減のちがいが一つの要因と見るのが妥当である。
ただし、半紙一般について、どの原料にどのサイズ剤をどれだけ使うかを示す資料は、今回の出典の範囲にはない。サイズの加減が半紙らしさに関わる、という整理は、辞典の説明を重ねた読み方である。この仮説は、手漉きの産地のあいだでにじみが異なるという記述が、どこまで合うかを考える手がかりになる。
6. 同じ 半紙でも、にじみは ちがう
6. 産地によっても、半紙のにじみはちがう
6. 産地差の例:西嶋の手漉き和紙と石州半紙
山梨県の にしじまと いう ところでは、手で すく 和紙を 作って います。県が、その 紙を しょうかいして います。
この 紙は、書道用の がせんしほどには にじまない けれど、ほかの さんちの 半紙と くらべると、にじみが 多いそうです。そのため、きれいな 墨の 色と 線が 出せると 書かれて います[4]。
島根県の 石州半紙は、コウゾだけで すいた 紙で、とても つよい ことが とくちょうです。国の 大切な ぶんかざいにも なって います[5]。
半紙と 言っても、さんちや 作りかたで、にじみかたも 強さも ちがうようです。
西嶋の和紙は、にじみが多め
山梨県は、西嶋の手漉き和紙について、書道用の画仙紙ほどにじまないが、他の産地の半紙と比べるとにじみが多く、きれいな墨色と線を表せる、と紹介しています。原料には、稲わら・竹・マニラ麻・故紙などが挙げられています[4]。
石州半紙は、強さが特色
島根県の石州半紙は、原料にコウゾだけを使い、流し漉きで漉きます。最大の特色は強い紙質で、国の重要無形文化財(手漉和紙)に1969年に指定されています[5]。
同じ「半紙」でも、にじみの多さも、強さも、産地や作り方によって個性があるのです。半紙とふつうの紙のちがいは一つではなく、産地や作り方によって、にじみ方や紙の強さが変わる、と見たほうが正確かもしれません。
山梨県の紹介では、西嶋の手漉き和紙は、書道用の画仙紙(がせんし)ほどにじまないが、他産地の半紙と比べるとにじみが多く、きれいな墨色と線を表せるという。原料は稲わら・竹・マニラ麻・故紙などで、コウゾ一本ではない[4]。つまり、原料が同じでなくても、「にじみの設計」が、書き手の求める表現に合えば、半紙として使われうる。この点は、前章のサイズの加減に重ねられる。
対照的に、島根県の石州半紙は、原料にコウゾだけを使い、流し漉きで漉く。最大の特色は強靭な紙質で、手漉和紙として1969年に国の重要無形文化財に指定された[5]。ここでの評価の軸は、にじみではなく強さにある。
以上から、「半紙とは何か」を一言で定義するのは難しい。名前の由来は寸法の目安、原料は時代や産地で幅があり、機械漉きのものと手漉きのものが併存する。共通項として残るのは、墨を受け止め、適度ににじませる用途に合わせて作られていることである。ただし、この共通項は出典を重ねた整理であり、メーカーごとの仕様まで確かめたものではない。
7. 家の 紙で、水を たらして くらべよう
7. 水を一滴、家にある紙で比べてみる
7. 吸水の差を、家庭の紙で観察する
家に ある 紙を 2〜3しゅるい あつめます。ノートの 紙、チラシ、ティッシュなどです。半紙が あれば、それも 使います。
新聞紙を つくえに しいて、その 上に 紙を おきます。スポイトか、スプーンで、水を 1てき たらします。
水が ひろがる はやさや、ひろがりかたを、よく 見て みましょう。ペンで 線を ひいて くらべても おもしろいです。
ちがいが 見つかったら、「なぜだろう」と 考えて みて ください。
水とペンで観察する
ノート、チラシ、コピー用紙、半紙(あれば)など、家にある紙を2〜3種類集めます。新聞紙などの上に置き、スポイトかスプーンで、水を1滴落とします。
水が広がる速さ、広がった形、裏までしみるかどうかを見比べます。半紙があれば、筆に水をふくませて線を引き、広がり方を比べると、墨のにじみに近い体験になります。水性ペンで線を引いて比べるのもよいでしょう。ふだん何気なく使っている紙が、サイズの加減などで、実はずいぶんちがうことが分かるかもしれません。
原典にあたるなら
この記事は、辞典の説明と、山梨県や文化遺産オンラインの紹介をもとにしています。紙の博物館や製紙団体の資料も、あわせて読むと、サイズや原料のくわしい話が見つかるかもしれません。
観察の手順は簡単である。ノート、チラシ、コピー用紙、半紙など、家にある紙を数種類用意し、新聞紙の上に置いて、スポイトかスプーンで水を同じ量だけ落とす。水が広がる速さと形、裏面へのしみ方、乾いたあとの輪郭を、紙ごとに記録する。水性ペンで同じ長さの線を引いて比べるのもよい。
記録のとき、「半紙は吸う、コピー用紙は吸わない」と単純に書くより、「どのくらいの時間で、どのくらい広がったか」と数字(秒数、広がった直径)で残すと、前章までの「吸水の量と速さの調整」という仮説に照らして考えやすい。紙の厚さや表と裏のちがいも結果に影響するため、同じ紙の表と裏でも試す価値がある。
この記事は、辞典(コトバンク経由のデジタル大辞泉・日本国語大辞典・ニッポニカなど)と、山梨県・文化庁(文化遺産オンライン)の紹介にもとづく。製紙の技術的な細部、とくにサイズ剤の種類や量は、紙の博物館や製紙関連団体の資料で確かめるとよい。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
本文は、ここにある資料の内容を、自分の言葉で言いかえたものです。辞典の記述は辞典ごとに少しずつ異なることがあります。
- コトバンク「半紙」(デジタル大辞泉・精選版日本国語大辞典・日本大百科全書・世界大百科事典など) https://kotobank.jp/word/%E5%8D%8A%E7%B4%99-118057 (名前の由来、大きさ、原料と製法の変化)
- コトバンク「和紙」(デジタル大辞泉・日本大百科全書・化学辞典) https://kotobank.jp/word/%E5%92%8C%E7%B4%99 (和紙と洋紙の定義、特長、墨書きとペン書きの適性)
- コトバンク「サイズ」(デジタル大辞泉・日本国語大辞典・日本大百科全書など) https://kotobank.jp/word/%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%82%BA-507842 (紙のサイズ=にじみ止めの意味、ロジン・ゼラチン)
- 山梨県「西嶋手漉和紙」 https://www.pref.yamanashi.jp/shouko/kogyo/densan/nishizima_01.html (産地によるにじみのちがい、原料)
- 文化遺産オンライン「石州半紙」 https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/288723 (石州半紙の原料、漉き方、文化財指定)
なおした ところ
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