1. 小学生の 目は、もう おとなの 大きさ?
1. 小学生の目の長さは、もう大人と同じくらい
1. 小学生の平均眼軸長がすでに成人並み ── 近視は「目の長さ」の話
目は、ボールの ような かたちを して います。ものが 見える ときは、前から はいった 光が、うしろの 網膜に うつります。
東京の 小学生と 中学生、1400人ほどを しらべた 大学の けんきゅうが あります。前から うしろまでの 目の 長さを 眼軸長と いいます。その へいきんは、小学生で 23.41ミリ、中学生で 24.73ミリ でした[1]。小学生の 長さは、おとなと ほとんど 同じです。中学生は、それより 1ミリ ちょっと 長く なって います。
近視の 目は、この 長さが のびて います。ほとんどの 近視は、そうだと いわれます。メガネは 見え方を ととのえますが、目の 長さを かえる ものでは ありません。
前から うしろへ のびた 目の、いちばん うしろの かべは、どう なって いるのでしょう。
目はボールのような形をしていて、前から入った光は、いちばん後ろの内側にある網膜に像を結びます。この「前後の長さ」を眼軸長といいます。
慶應義塾大学が、東京の小中学生約1,400人を調べた研究があります。眼軸長の平均は、小学生が23.41mm、中学生が24.73mmでした[1]。小学生の時点で、成人の平均とほぼ同じです。中学生はそこからさらに1.3mmほど長くなっています。東京都内の調査なので、全国の値ではありません。
ほとんどの近視は、この眼軸長が正常より伸びて起こる「軸性近視」で、眼軸長が長いほど、将来目の病気が起こる頻度が高まるといわれています[1]。メガネは見え方を整えますが、眼軸長そのものを変えるものではありません。
前後に伸びた眼球の、いちばん後ろの壁はどうなっているのでしょうか。
眼球は前から入った光を、後ろの内壁の網膜に結ばせる。この前後の長さが眼軸長で、平均値は小学生23.41mm、中学生24.73mmだった。小学生の値は成人とほぼ同等で、中学生はさらに約1.3mm長い(差は24.73−23.41=1.32mm)。強度近視の割合も、小学生で4.0%(25人に1人)、中学生で11.3%(約9人に1人)と報告された[1]。東京都内の約1,400人の調査で、全国の値ではない点には注意したい。
ほとんどの近視は、眼軸長が正常より伸びる「軸性近視」だ。眼科医の解説でも、眼軸長が長いほど将来目の病気が起こる頻度が高まるといわれる。慶應の発表の要旨にも、眼軸長が長くなると黄斑変性や視神経障害といった合併症の危険性が上がる、という趣旨の記述がある[1]。
ここで、「メガネで見えること」と「目の中の状態」は別の問題だという点が出てくる。メガネは光の入り方を補い、眼球の長さそのものは変えない。では、前後に長くなった眼球の後ろ側、つまり網膜を支える壁では何が起きているのか。
2. のびた 目の うしろの かべは どうなる?
2. 伸びた目の後ろの壁は、どうなっているのか
2. 眼球の後ろの壁が引き伸ばされると、何が変わるのか ── 網膜の変化と後部ぶどう腫
目が のびると、うしろの かべに ある 網膜が 引っぱられて、うすく なる ことが あります。ひどい ときは はたらきが よわく なる ことも あると、目の おいしゃさんは せつめいして います[2]。
もっと くわしく しらべる ときは、目の おくの しゃしんを とります。かべが、うしろへ へこむ ように とび出して いる 形が 見つかる ことが あります。これは「こうぶぶどうしゅ」と よばれます。
ふうせんを ふくらませると、ゴムが うすく なって いきます。目の かべも、のびると 少し にて います。ただし 本当は、目の かべは ゴムとは ちがう つくりなので、同じ ように なるとは かぎりません。
この かわりが、どこに いちばん 大きく ひびくのでしょう。
眼球の後ろ側の壁は、内側から網膜、脈絡膜、強膜という層でできています。眼球が前後に伸びると、この壁は引き伸ばされることがあります。日本の眼科医の解説では、網膜は全体に引っ張られて薄くなることがあり、ひどい場合は「近視性網膜脈絡膜萎縮」と呼ばれる、網膜が働かない状態になると説明されています[2]。
目の奥の写真(眼底写真)を撮ると、壁そのものの変形も見つかります。眼球の後ろの壁が、へこむように後ろへ突き出した「後部ぶどう腫」です[3]。国際近視研究所(IMI)は、近視で眼軸が過度に伸びて眼底に構造の変化(後部ぶどう腫、近視性黄斑症、視神経症)が起こり、矯正した視力を失いうる状態を「病的近視」と定義しています[3]。
日本の厚生労働科学研究の報告書も、病的近視による視力の低下は、眼球が変形することで起こる黄斑部の網膜の病変や視神経の病変による、と整理しています[4]。壁が薄くなる細かい仕組みには、まだ議論の余地があり、眼球の変形から起こると考えられている、という強さで読むのが安全です。
では、変形のうち、見え方に最も響くのはどこでしょうか。
眼球の後ろ側の壁は、内側から網膜、脈絡膜、強膜が重なっている。眼球が伸びると、この壁が引き伸ばされることがある。眼科医の解説では、網膜は全体に引っ張られて薄くなることがあり、重い場合は「近視性網膜脈絡膜萎縮」と呼ばれる、網膜の機能が失われる状態になるという[2]。
壁そのものの形も変わる。眼球の後ろの壁がへこむように突き出た変形を「後部ぶどう腫」という。IMIの臨床サマリーでは、病的近視を、近視にともなう過度の眼軸の伸びが、眼底に後部ぶどう腫・近視性黄斑症・視神経症といった構造の変化を起こし、矯正視力を失いうる状態と定義している[3]。診断は眼底写真の分類(META-PM)で行われ、0(異常なし)から4(黄斑の萎縮)まであり、「びまん性脈絡膜萎縮」にあたる2以上か、後部ぶどう腫があれば病的近視とされる。新生血管、ラッカークラック、フックス斑は「プラス病変」と呼ばれ、分類上は0〜4の段階とは別に扱われるが、これがあっても病的近視と診断される[3]。
日本の厚労科研の報告書も、病的近視の定義を「びまん性萎縮以上の萎縮性変化、または後部ぶどう腫がある眼」とし、失明に至る原因は眼球変形が起こす黄斑部の網膜病変と視神経病変だとしている[4]。壁が薄くなる仕組みの細部には諸説ありうるので、「変形で引き伸ばされた結果として起こると考えられている」という強さで読むのが妥当だ。
では、変形のうち、見え方にいちばん響くのはどこか。
3. 見る 力の まんなかに ある「黄斑」
3. 中心の見え方を守る黄斑に、新しい血管ができる
3. 黄斑に新しい血管ができる ── 中心視力が落ちる道すじと見逃しやすさ
網膜の まんなかあたりに、黄斑と いう ところが あります。ここに、ふつうは ない あたらしい 血の くだが できる ことが あります。この せいで、ものの まんなかが 見えにくく なる ことが あります[4]。
目の おくが かわって しまった 近視の 人の、10人に 1人ほどに 出ると いわれます[5]。ちいさくて 見つけにくい ことも あるので、目の おいしゃさんが 気を つけて 見ます。
この 病気には、目の 中に ちゅうしゃを する ほうほうなど、ちりょうの 道が あります[3]。
でも、そもそも、強い 近視の 人は みんな こうなるのでしょうか。
網膜の中心にあたる「黄斑」は、ものの中心を見るところです。日本の報告書では、黄斑に新しい血管(近視性脈絡膜新生血管)ができることが、病的近視で中心の視力が落ちる原因として最も多いとされています[4]。
病的近視の黄斑に新生血管(MNV)ができるのは、病的近視の患者の約10%といわれ、中心視力障害の主要な原因です。加齢黄斑変性などより小さく活動性が低いことが多いため、見逃しやすいという注意も書かれています[5]。この新生血管は見逃しやすいため、眼底の検査で注意が必要だとされています。
治療も進んでいます。近視性脈絡膜新生血管には、目の中への注射(抗VEGF療法)が有効性を示し、網膜が引っ張られて起こる牽引性黄斑症には硝子体手術という方法があります[3]。
とはいえ、近視が強い人がみんなこうなるわけではありません。「強度近視」と「病的近視」は同じなのでしょうか。
壁の変形のうち視力に最も響くのは、網膜の中心にあたる黄斑だ。厚労科研の報告書は、黄斑の近視性脈絡膜新生血管(CNV)を、病的近視で中心視力が落ちる原因として最も多いものと位置づけている[4]。令和5年度の報告書では、病的近視の黄斑部新生血管(MNV)は病的近視の患者の約10%に起こり、中心視力障害の主要な原因とされる[5]。
見つけにくさにも特徴がある。近視性の新生血管は、加齢黄斑変性などより小さく、活動性が低いことが多く、見逃しやすいという[5]。つまり、見え方の自覚だけに頼らず、眼底を丁寧に調べる検査が大事になる、ということだ。
治療の道もある。IMIの臨床サマリーによれば、近視性CNVには抗VEGF療法(眼内注射)が有効性を示し、網膜が引っ張られる牽引性黄斑症には硝子体手術がある[3]。
ここで、よくある疑問に答えておきたい。強い近視の人は、みんなこうなるのか。「強度近視」と「病的近視」は同じなのか。
4. 強い 近視の 人は、みんな 病気に なる?
4. 強度近視の人は、みんな病気になるのか
4. 強度近視と病的近視は別の話 ── 分母のちがう3つの数字を並べる
いいえ、みんなでは ありません。せかいの 目の せんもんかの グループは、「強い 近視」と「目の おくが かわって しまった 近視」を、わけて かんがえて います[3]。強い 近視は、メガネの ど数の 話。目の おくが かわるのは、目の しゃしんで 見つかる 話です。
目の おくが かわる 近視は、せかいの 人の 3%ほどまでと されます。子どもでは 少なく、年を とるほど、近視が 強いほど ふえます[3]。
だから、目の 長さが のびる ことを、すこしでも おそく できると いいね、と かんがえられて います。
いいえ、同じではありません。IMI(国際近視研究所)は、病的近視を「強度近視」とはっきり区別しています[3]。強度近視は、メガネの度数が強いという話です。病的近視は、眼底に構造の変化があるかどうかの話です。
数字も、何を分母にしているかで意味が変わります。IMIによると、病的近視は、世界の人口の最大3%です。子どもや若い世代では少なく、年齢が上がるほど、度数が強いほど増えます[3]。強度近視の人だけを見ると、眼底に変化が見つかる人が50〜70%と書かれていますが、これは眼底の変化がある人の割合で、見えなくなる人の割合ではありません[3]。
久山町研究では、40歳以上の2,164人(最初は近視性黄斑症がない人)を5年追いました。この間に、約1%が新しく近視性黄斑症になっています。年齢と眼軸長が、それぞれ独立した危険因子で、眼軸長が1mm長いごとの「起こりやすさの比」(オッズ比)は2.94でした[6](数値は原著論文の要旨にあります)。
黄斑のほかにも、高度近視の合併症を複数の研究でまとめた論文では、網膜剥離や緑内障の起こりやすさが、近視でない人より高いと報告されています[7]。低〜中等度の近視でも、リスクは上がるといいます。
3つの数字は、分母がちがいます。世界の全員が分母のもの、強度近視の人が分母のもの、40歳以上の住民が分母のものです。並べて比べないほうが安全です。
では、この先、できることはあるのでしょうか。
IMIは、病的近視を「強度近視」とはっきり区別している。強度近視は屈折度数(-6.00D以上)の話で、病的近視は眼底の構造変化の話だ。強度近視なら病的近視、とはならない[3]。東京医科歯科大学の大野京子教授は、強度近視には、メガネでの矯正が難しく、緑内障や網膜剥離などの合併症をともなう病的近視に至る例が少なくないと述べている[8]。
ここで、IMIと久山町研究の3つの数字を、分母別に並べておく。1つ目は、病的近視は世界人口の最大3%(アジア人は約1〜3%、白人は約1%)という推計だ[3]。分母は世界の全員。2つ目は、強度近視の人で眼底に変化が見つかる割合が50〜70%という報告だ。分母は強度近視の人で、「見えなくなる人の割合」ではない。子どもでは病的近視は少なく、年齢と度数とともに増える[3]。3つ目は久山町研究で、2012年と2017年の検診を受けた40歳以上のうち、最初は近視性黄斑症がなかった2,164人の約1%が、5年間に新しく近視性黄斑症を発症した。年齢と眼軸長が独立した危険因子で、眼軸長1mmあたりのオッズ比は2.94(95%信頼区間2.19〜3.95)だった[6]。オッズ比は「起こりやすさの比」で、確率が2.94倍になる意味ではないので、「約2.9倍」とだけ覚えないほうがいい。
合併症の範囲も、黄斑だけではない。高度近視の合併症をまとめたメタ解析(Haarman他、2020)では、近視でない人と比べた高度近視のオッズ比が、網膜剥離で12.62、開放隅角緑内障で2.92(こちらは中等度と高度の近視をまとめた値)、後嚢下白内障で4.55、核白内障で2.87と報告された。低〜中等度の近視でも、リスクは上がるという[7]。倍率ではなくオッズ比で、調べられた集団の条件つきの数字だ。
数字を読むときの順番は、「分母は誰か」「何が起きた割合か」「どの年齢の人か」。この3つを確かめれば、数字の意味が変わる。そこで次の疑問が出る。病気の入り口の眼軸の伸びを、遅らせる手はあるのか。
5. のびるのを、おそく できる?
5. 眼軸の伸びを遅らせる、という考え方
5. 病気になる前に進みを遅らせる ── 2050年の予想と低濃度アトロピン
2050ねんには、せかいの 人の 半分ほどが 近視に なり、10人に 1人ほどが 強い 近視に なると、みこまれて います[9]。
それで、近視の すすみを おそく する ことが 大じだと いわれて います[3]。
日本では 2024ねんの 12月に、近視の すすみを おさえる ための、目に さす くすりが みとめられました。5さいから 15さいの 子ども 299人で 2ねん しらべたら、くすりを つかった 子の ほうが、近視の すすみが 少し ゆっくり でした[10]。近視が なおる くすりでは ありません。つかう かどうかは、目の おいしゃさんと そうだんします。
そとで 遊ぶ ことも、近視と かかわって います。くわしくは、近視と そと遊びの メモに 書きました。
横浜市立大学の発表資料によると、2050年には、世界の人口の約半分が近視、約10%が強度近視になると予想されています[9]。IMIは、近視の進行を抑えることが、病的近視のリスクを減らすうえで重要だとしています[3]。
日本では、2024年12月27日に、低濃度アトロピン点眼薬(0.025%)が「近視の進行抑制」を効能として薬事承認されました。5〜15歳の299人を対象にした国内の試験で、24か月後の度数の変化は、この薬で-1.006D、プラセボ(薬の成分の入っていない点眼)で-1.643Dでした。差は0.637Dです[10]。
この結果は、薬を使った子でも度数が進んだことを意味しています。近視を治す、止めるというより、進み方を遅らせたということです。薬の利用を勧める記事ではありません。使うかどうかは、眼科医との相談になります。
近視の進みと外遊びの関係は、屋外の時間と近視の記事にまとめました。
では、視力の数字だけを見ていた私たちは、これから何を見ればいいのでしょうか。
近視の人は今後さらに増えるとされる。横浜市立大学の2020年の発表資料では、2050年に世界人口の約半分が近視、約10%が強度近視になると予想されている。同資料は、強度近視が網膜剥離・黄斑下出血・緑内障・白内障・網膜変性症などの基礎疾患となり、重い視力障害を起こすことが知られていると述べる[9]。IMIは、近視の進行を抑えることが病的近視のリスクを減らすうえで重要だとしている[3]。
では、遅らせる手段は実際にあるのか。日本では2024年(令和6年)12月27日、低濃度アトロピン点眼薬(0.025%)が「近視の進行抑制」を効能・効果として薬事承認された。5〜15歳の299人が参加した国内試験では、24か月後の度数変化が本剤で-1.006D、プラセボで-1.643Dで、差は0.637Dだった[10]。
この数字の読み方には注意がいる。薬を使った群でも約1D近視が進んでいる。つまり、近視を止めるのではなく、進む速さを遅らせた結果だ。保険の扱いは別の話で、この記事は薬の使用を勧めるものではない。使うかどうかは、眼科医との相談になる。
眼軸の伸びと屋外の時間の関係は、屋外の時間と近視の記事に書いた。眼軸1mmで約3Dという屈折の原理は、眼軸の長さと近視の記事で扱っている。
進行を遅らせる手段は出てきた。では、日々の視力検査の数字から、私たちは何を読み取れるのか。
6. 目の 長さを、しらべて みよう
6. 視力の数字の先にある、眼軸長の数字
6. 視力・度数・眼軸長を分けて読む ── 検診の数字との付き合い方
学校の けんしんで、「0.7」などの 数が かえって きます。これは 目が どのくらい 見えるかを あらわす 数で、目の 長さでは ありません。見えにくい わけも、近視だけとは かぎりません[11]。
やって みよう。けんしんの 紙か、めがねを つくった ときの 紙を、おうちの 人と 見て みましょう。「しりょく」と 「ど数」は、どれでしょうか。「眼軸長」という 言葉は、のって いますか。のって いなければ、目の おいしゃさんに 聞いて みて ください。
小学生と 中学生の 目の 長さの ちがいは、1ミリ ちょっと。この 小さな ちがいが、目の おくを かえて いく ことが あるのです。
文部科学省の令和7年度の学校保健統計調査では、裸眼視力が1.0未満の人の割合は、小学校で3割を超え、中学校で6割程度、高校で7割程度でした[11]。ただし、視力が1.0未満であることは、近視とは限りません。視力、屈折度数、眼軸長は、それぞれ別の数字です。
やってみましょう。学校の検診の結果や、メガネを作ったときの検査票を、家の人と見てみます。「視力」と「度数」はどれか、「眼軸長」の数字は書いてあるかを探します。書いてなければ、眼科で聞いてみるのもよいでしょう。
小学生の23.41mmと中学生の24.73mmの差は、1.32mmです。「1mmほどの違い」と思うかもしれませんが、久山町研究では、眼軸長1mmあたりのオッズ比が2.94でした[6]。ただし対象は40歳以上の大人で、子どもに当てはめて計算するものではありません。
東京医科歯科大学の広報誌には、大野京子教授が、強度近視から合併症のある病的近視に進む例が少なくないと語る記事があります[8]。慶應義塾大学のプレスリリースと厚労科研の報告書は日本語なので、出典欄から原文に当たれます。
文部科学省の令和7年度学校保健統計調査では、裸眼視力1.0未満の者の割合は、小学校で3割を超え、中学校で6割程度、高校で7割程度だった[11]。この数字は近視の割合ではない。裸眼視力1.0未満は、近視だけが原因とは限らない。
数字を読み分けるときの整理を、ここに置く。視力は「どれだけ見えるか」。屈折度数は「メガネでどれだけ補うか」で、強度近視は-6.00D以上という基準がある。眼軸長は「眼球の長さ」で、病的近視は眼底写真に表れる構造の変化で診断される[3]。
もう1つ、検算の例を示す。慶應の調査の小学生と中学生の眼軸長の差は1.32mm。久山町研究の「1mmあたりオッズ比2.94」を使うと、「中学生は小学生より1.32mm長いから、近視性黄斑症のリスクが何倍」と計算したくなる。だが久山町研究の対象は40歳以上の2,164人で、年齢が大きく違う。この掛け算は、元の研究が想定した使い方ではないので、しない[1][6]。
読み比べるなら、慶應義塾大学のプレスリリースと厚労科研の報告書(日本語)が入口になる。IMIの臨床サマリー(英語)は、定義と数字の分母を確かめるのに向いている[3]。検診の用紙や眼科の説明で、視力・度数・眼軸長のどれが書かれているかを見るところから始められる。
しらべた ところ
参考にした情報源
参考にした情報源
出典について:慶應義塾大学・九州大学・横浜市立大学・文部科学省・厚生労働省の資料は、大学・官庁の公式発表です。厚労科研の報告書は、厚生労働科学研究費で行われた研究の報告書です。IMI(国際近視研究所)のサマリーと Haarman らのメタ解析は英語の論文で、日本語の資料で確かめられる範囲は本文に書きました。日刊ゲンダイは眼科医の解説記事、東京医科歯科大学は広報誌です。
- 慶應義塾大学「プレスリリース」(2019年8月16日、東京の小中学生約1,400人の眼軸長・近視の調査)。 https://www.keio.ac.jp/ja/press-release/20190816-1/ (眼軸長の平均、強度近視の割合、眼軸長と合併症の関係)
- 日刊ゲンダイDIGITAL「眼科医の解説」(軸性近視と眼軸長)。 https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/334581 (軸性近視の説明、網膜が引っ張られて薄くなること)
- Ohno-Matsui ほか「IMI Clinical Summary: Pathologic Myopia」(IOVS 2021、英語、国際近視研究所)。 https://myopiainstitute.org/wp-content/uploads/2021/06/2023.02.12_IMI-2021-Clinical-summary-pathologic-myopia_English-1.pdf (病的近視の定義、強度近視との区別、後部ぶどう腫、分類、世界の割合、治療、進行抑制の重要性)
- 厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患政策研究事業 分担研究報告書(大野京子ら、2018年度)。 https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/2018/182051/201811057A_upload/201811057A0007.pdf (病的近視の定義、眼球変形による黄斑部網膜病変、近視性脈絡膜新生血管が最も多い原因)
- 厚生労働科学研究費補助金 分担研究報告書(令和5年度、202310072A)。 https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/report_pdf/202310072A-buntan4_0.pdf (黄斑部新生血管の割合、見逃しやすさ)
- 九州大学プレスリリース(2020年)と Ueda ほか「Five-Year Incidence of Myopic Maculopathy in a General Japanese Population: The Hisayama Study」(JAMA Ophthalmology 2020、英語。オッズ比はこちらの要旨による)。 https://www.kyushu-u.ac.jp/f/40453/20_08_31_en.pdf / https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7317657 (40歳以上2,164人の5年間の発症、眼軸長1mmあたりのオッズ比)
- Haarman ほか「The Complications of Myopia: A Review and Meta-Analysis」(IOVS 2020、英語)。 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7401976/ (高度近視の合併症のオッズ比)
- 東京医科歯科大学広報誌 Bloom! No.28(医科歯科人 No.003、大野京子教授)。 https://www.tmd.ac.jp/files/topics/53402_ext_07_4.pdf (強度近視と病的近視、合併症)
- 横浜市立大学 記者発表資料(2020年5月18日)。 https://www.yokohama-cu.ac.jp/news/2020/dr3e64000000wbu4-att/pressrelease_meguro_20200518.pdf (強度近視と基礎疾患、2050年の予想)
- 厚生労働省 中央社会保険医療協議会 総会資料 総-3(令和8年1月9日)。 https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001629049.pdf (低濃度アトロピン点眼薬の薬事承認、国内試験の結果)
- 文部科学省「令和7年度学校保健統計調査」公表資料。 https://www.mext.go.jp/content/20260213-mxt_chousa01-000046876_1.pdf (裸眼視力1.0未満の者の割合)
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