1. びんの 中で、なにが おきて いるの?
1. 何も足していないのに、なぜ固体ができるのか
1. 何も加えていないのに固体ができる ── 糖約80%・水約20%という組成
はちみつを なめると あまいのは、糖が たくさん はいって いるからです。はちみつの およそ 8わりが ブドウ糖や かとうなどの 糖で、水は およそ 2わりしか ありません[1]。
コップの 水に さとうを いれて いくと、あるところで とけ のこりが でますね。はちみつは、その とけ のこりが でる すこし 手前まで、糖を つめこんだ 水の ような ものです。
そこで、なにかの きっかけで、とけきれなく なった 糖が、小さな つぶと なって あらわれます。それが 結晶です。白く かたまって 見えるのは、この つぶが たくさん ふえた からです[2]。
ただし、さとう水と はちみつは ぜんぶ 同じでは ありません。ちがいは、つぎの 章で 見ます。
はちみつは、ブドウ糖や果糖などの糖が約8割、水分が約2割の液体です[1]。水に砂糖をどんどん溶かしていくと、あるところで溶け残りが出ます。はちみつは、その溶けきれる量の限界に近いところまで、糖を詰めこんだ水だといえます。
こうした、溶ける量をこえて溶けている状態を「過飽和」といいます。そこへ、花粉のような小さなつぶがきっかけ(結晶核)になって、糖の細かい結晶が育ち、固体のようになる、と考えられています[2]。ただし、核の正体ははっきりしておらず、研究論文でも明確な報告はまだないとされています[2]。
つまり、固まるのは何かが加わったからではなく、もともと溶けきれないほど糖が多いからです。では、糖のなかでも、結晶になるのはどちらなのでしょうか。
はちみつは糖が約80%、水分が約20%の液体である[1]。水に対して糖が多いので、溶解できる量を超えた過飽和の状態に近い。その状態で、花粉などを結晶核にして糖の微細な結晶が成長し、全体が固体状になる、というのが現在の一般的な説明だ[2]。ただし、花粉などがきっかけになると考えられている一方で、核の正体は明確には分かっていない。この論文も、明確な報告はこれまでにないと述べている[2]。
結晶化を調べた2025年の研究では、おもに出てくるのは「ブドウ糖一水和物」(ブドウ糖が水の分子を1つ抱えた結晶)だと整理されている。糖の過飽和度が高いほど結晶化は速く進み、液の粘りが高いほど遅くなる[3]。つまり「溶けきれない度合い」と「動きにくさ」の綱引きで速さが決まる。
そうだとすれば、糖の種類によって固まりやすさがちがうはずだ。次の章で、その中身を見る。
2. ブドウ糖と かとう、どちらが かたまりやすい?
2. 結晶になりやすいのは、ブドウ糖のほう
2. 結晶になるのはブドウ糖 ── 水に対する割合が固まりやすさを左右する
はちみつの 糖には、おもに ブドウ糖と かとうが あります。この うち、かたまりやすいのは ブドウ糖の ほうです[1]。かとうは、なかなか つぶに なりません。
ですから、はちみつの 中に ブドウ糖が おおいほど、白く かたまりやすく なります。ブドウ糖が すくないと、ながい あいだ とろとろの ままです。
水の りょうも かんけい します。水が おおいと、ブドウ糖が とけられる りょうが ふえて、とろみも ひくく なります。だから、かたまりにくく なる ことも、かたまりやすく なる ことも あります。かたまりやすさは、水の りょうだけでは きまりません[3]。
はちみつの主な糖はブドウ糖と果糖で、結晶になりやすいのはブドウ糖です[1]。結晶化の研究でも、おもに出てくるのはブドウ糖の結晶だとされています[3]。果糖は結晶になりにくいので、液のほうに残りやすい糖です。
水の量も関わります。水分が多いとブドウ糖が溶けられる量が増え、液の粘りも下がるので、溶け残りは出にくくなる一方、動きやすくなって結晶が育ちやすくなる面もあります。水分だけでは固まりやすさは決まりません[3]。海外の学生向けの解説でも、ブドウ糖に対して水が少ないはちみつほど結晶しやすく、ブドウ糖に対して水が多いはちみつは結晶しにくいと整理されています[4]。
固まりやすさは、「ブドウ糖がどれだけ多いか」と「水がどれだけ少ないか」の両方で決まる、ということです。では、そのブドウ糖の量は、何で決まるのでしょうか。
はちみつの糖の主成分はブドウ糖と果糖で、ブドウ糖のほうが結晶になりやすい性質をもつ[1]。したがって、固まりやすさの第一の要因は、果糖に対するブドウ糖の比と、水に対するブドウ糖の比である[4]。
水の側から見ると、ほかの条件が同じなら、水分が多いほどブドウ糖の溶解度は上がり、粘度は下がる傾向がある[3]。溶解度の上昇は過飽和度を下げて結晶化を遅らせ、粘度の低下は分子を動きやすくして結晶化を速めうる。水分だけで速さが決まるわけではない。ブドウ糖と水の重さの比が、2.0より高いと速く完全に結晶し、1.7より低いと遅い、という目安も報告されている。ただし同じ論文のデータも、この区分にきれいには当てはまらないため、あくまで目安として扱うべきだ[3]。
要するに、ブドウ糖のほうが溶けにくく結晶しやすい。では、この比は何によって決まるのか。
3. おなじ はちみつなのに、かたまり方が ちがうのは なぜ?
3. 花によって、固まりやすさがちがう
3. 蜜源で変わる ── ナタネ・レンゲは固まりやすく、アカシアは固まりにくい
はちみつは、ミツバチが 花の みつから つくります。その みつの 糖の ぐあいは、花に よって ちがいます。
京都ふの 資料では、ブドウ糖が おおい なのはなの はちみつや、れんげの はちみつは、かたまりやすいと あります。いっぽう、かとうが おおい アカシアの はちみつは、かたまりにくいそうです[1]。
ようほう場の 解説でも、なのはなの はちみつは はやく かたまって、きめの こまかい 白い つぶに なる と 書かれて います[5]。ですから、おなじ はちみつでも、花ごとに せいかくが ちがう のです。
ブドウ糖と果糖の割合は、ミツバチが集めた花の蜜の成分で決まります[5]。そのため、はちみつの種類によって、固まりやすさがはっきり変わります。
京都府の消費者向け資料では、ブドウ糖の多いナタネ蜜やレンゲ蜜は固まりやすく、果糖の割合が高いアカシア蜜は固まりにくいと説明されています[1]。養蜂場の解説でも、ナタネ蜜は結晶が早く、きめの細かい結晶になり、アカシア蜜やマロニエ蜜は結晶しにくいとされています[5]。
同じ「はちみつ」でも、花しだいで性格がちがうのです。ここまでは「何が」固まるかの話でした。次に、「いつ」固まるかを見てみます。
ブドウ糖と果糖の比は、ミツバチが採った花の蜜の成分で決まる[5]。京都府の資料は、ブドウ糖を多く含むナタネ蜜・レンゲ蜜は固まりやすく、果糖の比率が高いアカシア蜜は固まりにくいとする[1]。養蜂場の解説も同じ傾向で、ナタネ蜜は進行が早く、きめ細かい結晶になり、アカシア蜜・マロニエ蜜は結晶しにくいとする[5]。
ここで注意したいのは、これらの説明が定性的である点だ。同じナタネ蜜でも、採れた年や場所で水分や糖の割合が少し変わるはずなので、「このはちみつは何日で固まる」と一律には言えない。
成分のほかに、固まりやすさを大きく動かす外からの条件がある。それが温度で、冷蔵庫に入れれば固まらない、という直感とは逆の結果になる。
4. れいぞうこに いれると、かたまらないの?
4. 冷蔵庫より、涼しい部屋のほうが固まりやすい
4. 固まる速さの山は10〜15℃前後 ── 低すぎても高すぎても遅い
はちみつを ながく 大じに したい とき、冷蔵庫に いれる 人も いるでしょう。ところが、かたまりやすい 温度は 13〜14℃ぐらいと いわれ、10℃より ひくいと ゆっくり に なります[1]。
つまり、しっかり ひやすより、すずしい 部屋の ほうが、かたまりやすい ことが あるのです。16℃ぐらいか、それより あつい と、かたまるのが ゆっくりに なります。あたたかい 夏の 部屋でも、はちみつの しゅるいや 日にちしだいで かたまる ことは あります[1]。
ひえすぎると、とろみが つよく なって、糖の つぶが うごきにくく なります。うごきにくい ので、つぶが そだつのも おそく なるのです[3]。
冷蔵庫に入れたら固まりにくいのでは、と思うかもしれません。でも、京都府の資料では、結晶ができやすい温度は13〜14℃ぐらいで、10℃以下ではゆっくり、16℃以上でもゆっくりになるといわれています。夏の室温でも、種類や期間によっては固まることがあります[1]。
研究論文の整理でも、結晶化がもっとも進むのは10〜15℃です。18℃をこえると、ブドウ糖の溶けきれない分が減るので遅くなり、約30℃をこえると結晶は溶けて液に戻ります。10℃より低くなると、液の粘りが増えて分子が動きにくくなり、これも遅くなります[3]。
日本の資料と論文で、数字の範囲が少しずれるのは、はちみつの種類や調べ方がちがうためと考えられます。そこで「10〜15℃前後」と幅で覚えるのがよさそうです。寒い季節の玄関や、冷える台所の棚が、固まる場所になりやすいのは、このせいかもしれません。
低温にすれば固まらない、という直感は誤りである。結晶化は、温度が低いほど過飽和度が上がって進みやすくなる一方、粘度も上がって分子が動きにくくなる。この2つの綱引きで、速さに山ができる[3]。
京都府の資料は、結晶ができやすいのは13〜14℃ぐらいで、10℃以下ではゆっくり、16℃以上でも結晶化はゆっくりになるとする。夏の室温でも、種類や期間によっては固まる[1]。2025年の研究は、最大は10〜15℃、18℃を超えるとブドウ糖の過飽和が減って遅くなり、約30℃を超えると結晶は溶けて液に戻る、と整理する。10℃より低い側は、粘度の増加が結晶の成長を妨げる[3]。
2つの資料で山の位置が少しずれるのは、対象としたはちみつの種類や条件がちがうためだろう。そのため、一つの温度を「正解」とせず、10〜15℃前後を目安にしておくのが無理のない読み方だ。この性質は、固まったはちみつを戻せるという事実にもそのままつながる。
5. かたまった はちみつは、食べても だいじょうぶ?
5. 固まったはちみつは、傷んだのだろうか
5. 結晶化は劣化なのか ── 液の部分と固体の部分のちがい
白く かたまった はちみつは、ふつうの 食べもの として つかえます。かたまっても、いたんだ わけでは ない と、解説されています[6]。ただ、えきの ところと かたい ところでは、せいぶんの わかれ方が ちがいます。
しらべた ひとが、かたまる まえと あとで せいぶんを 見くらべた 研究も あります。かたまった ところには 花粉が おおく、えきのまま のこった ところには、ほんの わずかな 金ぞくなどの せいぶんが あつまって いたそうです[2]。
ただし、すっぱい においが したり、あわが でて いたり したら、それは かたまった のとは ちがう へんかです。その ときは 食べないで、おうちの 人に そうだん しましょう[6]。
固まったはちみつは、傷んだわけではなく、そのまま食べても、戻して使ってもよいと解説されています[6]。糖がもとの液から結晶として分かれただけで、新しいものが加わったわけではありません。ただし、液の部分と固体の部分では、成分の分かれ方がちがいます。
結晶ができると、液のまま残った部分では、ブドウ糖が減って水の割合が相対的に高まります。結晶化の前後で成分を比べた研究では、固体の部分に花粉が多く、微量元素は液の部分に濃縮されていました[2]。ただし、花粉が多く見つかっても、核だとは限りません。
注意したいのは、酸っぱいにおいがしたり、泡が出たりしている場合です。これは結晶とは別の変化なので、食べずに大人に相談してください[6]。
結晶化は組成の変化であって、劣化の指標ではない。固まったはちみつは傷んだのではなく、そのまま食べてよいと、一般向けの解説は述べている[6]。ただし液状部分と固体部分では、成分の分布が異なる。
結晶化の前後で液状部分と固体部分を比べた研究では、定説どおり固体部分に花粉が多く含まれ、微量元素は液状部分に濃縮されていた[2]。結晶になるのはブドウ糖が中心なので、液に残った部分ではブドウ糖が減り、水の割合が相対的に高くなる。ただし、花粉が多く見つかっても、核だとは限らない[2]。
一方、酸っぱいにおいや泡がある場合は、結晶とは別の変化であり、食べないよう勧められている[6]。見た目が白いことだけで、安全かどうかは判断しない。
6. かたまった はちみつを、もとに もどすには?
6. 固まったはちみつを、安全に元へ戻す方法
6. 約30℃で溶ける性質を使う ── 湯煎で戻し、熱しすぎない
かたまった はちみつは、あたためると もとの とろとろに もどります。糖の つぶは、あたたかく なると、また とけて しまうからです[3]。
ようきごと、あたたかい おゆに つけて、ゆっくり まぜます。おゆは 45〜60℃ぐらいが めやすで、1キログラムの はちみつなら 30分から 1時間ほど かかると いわれます[6]。ようきが あつさに 強いか たしかめましょう。プラスチックの ようきは、あつい おゆに つけないで ください。
あつすぎると、かおりや いろが かわって しまいます[6]。ですから、ぐらぐら にえる おゆは つかいません。やけどに 気を つけて、かならず おうちの 人と いっしょに やりましょう。
結晶は約30℃を超えると溶けて液に戻るため、固まったはちみつは温めれば戻ります[3]。やり方としては、容器ごと45〜60℃くらいのお湯に浸けて、ゆっくり混ぜます。1kgで30分から1時間ほどかかる、と紹介されています[6]。先に容器の耐熱温度を確かめ、プラスチック容器は高温の湯に浸けないでください。
熱すぎると風味や色が変わります。別の養蜂場の解説でも、約60℃で沸騰させない、とされています[5]。この記事では、子どもでも安全に進めやすい湯せんだけを紹介します。
戻した直後は元の液体ですが、置き場所が10〜15℃に近いと、また白くなることがあります。このときは、次の章の観察が役に立ちます。
結晶は約30℃を超えると溶けるため、加温で液状に戻る[3]。家庭向けの解説は、容器ごと45〜60℃くらいの湯に浸けてゆっくり混ぜる方法を紹介し、1kgで30分から1時間とする。熱すぎると風味や色が変わる、との注意もある[6]。容器の耐熱温度を先に確認し、プラスチック容器は高温の湯に浸けない。養蜂場の解説は、約60℃を上限とし沸騰させない、とする[5]。
ここで、温度の幅が資料によって45〜60℃とばらつく点に注意したい。電子レンジは、子ども向けの記事として勧めない。
一度戻しても、10〜15℃前後に置けば、また結晶化が始まる可能性がある。家の瓶の置き場所を記録して比べると、この温度の影響を自分の目で観察できる。
7. うちの はちみつは、なんど くらいで かたまる?
7. 我が家のはちみつは、どこで固まるか調べる
7. 家の台所で確かめる ── 瓶のラベルと置き場所の記録
おうちの はちみつの ラベルを 見て、どんな 花の はちみつか しらべて みましょう。「アカシア」は かたまりにくく、「なのはな」や「れんげ」は かたまりやすい ことが おおいと いわれます。おいた 場所などでも かわるので、きめつけず、よそうと 本当の ようすが 合うか 見て みましょう[1]。
つぎに、はちみつを おいた 場所を 思い出します。れいぞうこ、台所の たな、げんかん。おうちの 人に 聞いて、かたまった 日と 場所を メモして みると、「すずしい ところが かたまりやすい」が 本当か たしかめられます。
火や おゆを つかう ときは、かならず おうちの 人と いっしょに して ください。
家のはちみつで、固まりやすさを調べることができます。まず、ラベルで花の種類を見ます。ナタネやレンゲは固まりやすく、アカシアは固まりにくい傾向があるといわれます。置き場所などでも変わるので、決めつけず、予想と実際が合うか見てみましょう[1]。
次に、置いた場所を記録します。冷蔵庫、台所の棚、玄関など、場所と、固まった日をメモしておくと、10〜15℃前後が固まりやすいという話と、自分の家の結果を比べられます[1][3]。
液体のままの瓶と固まった瓶が並んだら、何がちがうのか、花の種類と場所のどちらが効いているのかを、考えてみてください。結晶核の正体や、固まる速さを決める細かい条件は、研究者もまだ調べている途中です[2]。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
本文の[ ]は、下の資料の番号に対応しています。
- 京都府消費生活安全センター「紅茶にはちみつを入れると黒くなる?」 https://www.pref.kyoto.jp/shohikids/hatimitu.html (組成、ブドウ糖と果糖、蜜源、温度の目安)
- 吉垣ら「ハチミツの結晶化による液状部分と固体部分の成分比較」日本健康医学会雑誌22巻4号 https://www.jstage.jst.go.jp/article/kenkouigaku/22/4/22_KJ00009001044/_article/-char/ja/ (過飽和、結晶核の考え方、液と固体の成分比較)
- Polatidou et al. 2025, Foods 14(10):1835 https://doi.org/10.3390/foods14101835 (ブドウ糖の結晶、水分と粘度、温度による速さ)
- Physical Properties of Honey (University of Bristol web project, 2001) https://www.chm.bris.ac.uk/~paulmay/webprojects2001/wyatt/physicalproperties.htm (ブドウ糖と水の比。学生向けの解説で、補助として使用)
- あきピュア「はちみつの豆知識」 https://akipure.com/knowledge_honey/2101 (蜜源による結晶のちがい、温め方。養蜂場の解説)
- macaroni(マカロニ)編集部「はちみつが固まったら」 https://macaro-ni.jp/39218 (固まっても品質は変わらないこと、戻し方。一般向けの解説)
なおした ところ
更新履歴
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