1. 氷は、つめたさを 出して いるの?
1. 氷は「冷たさ」を出しているわけではない
1. 冷えるとは、熱を失うこと ── 氷が吸い取るもの
あつい 日、コップの 水に 氷を いれました。しばらくすると、水が ひえて、氷は ちいさく なって いきます。
ここで ふしぎなのは、「つめたさ」が 氷から 水へ うつった わけでは ない、という ことです。ほんとうは、水の 中に ある ねつが、氷の ほうへ うつって いきます。
氷は、とける ときに、まわりから ねつを すいとります。だから、まわりの 水は ねつを うばわれて、ひえるのです。
では、氷が すいとる ねつは、どのくらい 大きいのでしょう。
2. 氷1gは、水1gを なん度 ひやせる?
2. 氷1gがとける熱で、水1gは何℃下がるのか
2. 融解熱と比熱の比 ── 334 J/g ÷ 4.18 J/(g·℃) ≒ 80℃
水1gの 温度を 1度 ひくく するには、およそ 4.18ジュールの ねつを とります。ジュールは、ねつの 大きさを あらわす たんいです[2]。
いっぽう、氷1gが とける ときに すいとる ねつは、およそ 334ジュール。これを 4.18で わると、およそ 80に なります。
つまり、氷1gが とける あいだに、水1gを 80度 ちかく ひやせる ぶんの ねつを すいとる、と いう ことです[2]。これは、数を わりざんして えた けいさんの 答えです。
水は、温度を かえるのに ねつが たくさん いる ものの 1つとも いわれます[3]。だから、水を ひやすのは 力が いるのですが、とける 氷は それを おぎなえる ほど 大きな ねつを すいます。
割り算で、氷の力を水の温度に直す
水1gの温度を1℃下げるには、約4.18Jの熱を取りだします。これを比熱といいます。一方、氷1gがとけるときに吸う熱は約334Jです[2]。334を4.18で割ると、およそ80になります。
つまり、氷1gがとける熱は、水1gを約80℃下げる熱に相当します。これは資料の2つの数字から計算した値で、資料にそのまま書かれている数字ではありません。
水はもともと、温度が変わりにくい
水は、地球上の物質のなかでも比熱が特に大きいグループに入ります[3]。同じ熱をもらっても温度が上がりにくく、取りだしても下がりにくい、という意味です。ですから、飲み物を冷やすには、それなりに大きな熱を吸い取る相手が必要で、とける氷がちょうどその役目を果たします。
ここで、同じ0℃でも、氷と0℃の水はまったく別物だと分かります。0℃の水も飲み物を冷やしますが、氷はとけるときにも熱を吸うため、同じ重さの冷水よりずっと多くの熱を受け取れます。では実際の飲み物では、どうなるのでしょう。
液体の水の比熱は約4.18J/(g·℃)で、0〜30℃の範囲ではほぼ一定とされる(変動は10%以内)[2]。氷(0℃)の融解熱は334J/gである[2]。334÷4.18≒79.9なので、氷1gが融ける熱は、水1gを約80℃下げる熱に相当する。この値は2つの数値から導いた計算値で、資料が直接示す数字ではない。
比熱の大きさは、水が「熱をためやすい」性質を示す。水は地球上の物質のなかで比熱容量が最大級だが、水素ガスなど水より大きいものもある[3]。この比を並べると、同じ0℃でも、氷1gが融けるときに吸う熱は、水1gの温度を約80℃下げる熱に相当する。0℃の氷と0℃の冷水は、温度が同じでも、熱の吸収余力が桁ちがいだ。
この比は、「氷の温度が0℃で、まわりが熱を渡し続ける」という理想的な場面でしか成り立たない。実際の飲み物でどう効くかを、次章で数値例にする。
3. 25度の のみものに、氷は なん g いる?
3. 25℃の飲み物200gを0℃まで冷やすと、氷は何gとけるか
3. 数値例 ── 25℃・200gの飲み物と氷100g、最終温度の見積もり
つぎに、コップの 中の 25度の のみもの 200gを、0度 まで ひやす ばあいを けいさんします。
のみものが 出す ねつは、200 × 4.18 × 25 で、およそ 20,900ジュール。これを 334で わると、およそ 63gに なります。
つまり、氷が 63gくらい とけると、のみものは 0度に ちかく なる、と いう けいさんです[2]。
もし 氷を 100g いれたら、63gくらいは とけて、のこりの 37gくらいは とけずに のこります。のみものは、0度の あたりで とまる はずです。
ただし これは、コップや まわりの 空気からの ねつを ぜんぶ むしした、かんたんな けいさんです。ほんとうは 少し ずれます。
実際の数字で計算してみます。25℃の飲み物200gを0℃まで冷やすと、飲み物が放出する熱は200×4.18×25で、約20.9kJ(約20,900J)です。これを、氷1gの融解熱334Jで割ると、約63gになります[2]。
つまり、約63gの氷がとければ、飲み物は0℃近くまで下がる計算です。氷を100g入れたなら、約37gはとけ残り、飲み物は0℃付近で止まる、という見積もりになります。
これは理想化した計算です。コップや空気から入ってくる熱、氷の最初の温度、かき混ぜ方などは考えていません。実際の氷は、思ったより早くなくなったり、残ったりします。
それでも、「25℃の飲み物200gを0℃付近まで冷やすには、約63gの氷が必要」という見当がつけば、氷を入れる量の目安になります。では、氷をいくら足しても、0℃より冷たくならないのはなぜでしょうか。
25℃・200gの飲み物を0℃にするには、200×4.18×25≒20,900J(約20.9kJ)の熱を取り除く。氷1gが吸う熱は334Jなので、必要な氷は20,900÷334≒62.6g。氷100gを入れた場合、約63gが融け、約37gが融け残る計算になる。このとき液体は約263g(飲み物200gと融けた水63g)が0℃付近に落ち着く。
ただしこの計算は、氷の初期温度が0℃、容器や空気から熱が入らない、液体が均一に混ざるという理想化を置いている。実際には、容器壁や外気から熱が入り、氷が0℃より低い温度から始まれば、融けるのに先立って氷を温める熱も要る。数値はあくまで見当である[2]。
それでも、この計算が示す方向は明確で、氷が残っている間は飲み物は0℃付近から下がらない。次章でその理由を考える。
4. 氷だけで、0度より ひくく できるの?
4. 熱いお茶に氷を足しても、0℃より冷たくならないのはなぜか
4. 融点で温度が止まる理由 ── 氷が残る間の温度と、熱いお茶での見積もり
氷が とけて いる あいだ、ふつうの 水なら 温度は 0度の あたりの ままです。氷が とける とき、のみものから もらった ねつは、水の 温度を かえるのでは なく、氷を 水に かえる ことに つかわれる からです[4]。
ですから、ふつうの 水に 近い のみものなら、氷を たくさん いれても、0度の あたりより 下には なりません。さとうや しおが たくさん とけて いる のみものは、0度より 少し ひくく なる こともあります。
では、80度の あつい お茶 200gなら どうでしょう。ひやす ために 氷が およそ 200g いります。のみものは ぜんぶで 400gちかく、0度に ちかい 水に なります。
お茶の 味が うすく なるのは、とけた 氷の 水が まざるからです。
とけている間は、0℃のまま
氷がとけているあいだ、氷と水のまざった部分は0℃のままです。熱をいくら受けても、そのあいだの熱は温度を上げるためではなく、氷を水に変えるために使われるからです。融点は物質ごとに決まった温度で、熱を多く与えても融点そのものは変わらず、とけきるまでの時間が変わるだけだと説明されています[4]。
ですから、氷を入れた飲み物は、氷が残っているあいだ、真水に近い飲み物なら0℃付近より下がりません。砂糖や塩がとけている飲み物は、凝固点が0℃より少し低くなることもあります。もっと冷たくしたいなら、食塩などで凝固点を下げる工夫が別に要ります。
熱いお茶なら、どのくらいの氷が要るか
同じ計算を、80℃のお茶200gに当てはめてみます。200×4.18×80で、約66.9kJの熱を放出します。これを334Jで割ると、約200gの氷がとけます。お茶と同じ重さの氷を入れて、ようやく0℃付近になる見積もりで、全部で約400gの液体になります。お茶を水と同じ比熱・凝固点と仮定し、容器や空気からの熱を無視した理想化計算です。
氷をたくさん入れるほど冷えるのですが、そのぶん味はうすまります。氷だけで冷やす限界が、ここに見えています。では、氷の「形」は関係するのでしょうか。
氷が融けている間、系の温度が0℃で一定になるのは、供給された熱が融解(相変化)に消費され、温度上昇に回らないためである。融点は物質ごとに決まり、加熱の強さを変えても変わらず、変わるのは状態変化にかかる時間だけだと整理される[4]。
この結果、氷が残っていれば、真水に近い飲み物は0℃付近で止まる(糖や塩を含むと凝固点が下がり、0℃未満になることもある)。0℃より下げるには、食塩などで凝固点を下げる別の仕組みが要る。
では熱いお茶の場合はどうか。80℃・200gなら、取り除く熱は200×4.18×80≒66.9kJで、必要な氷は66,900÷334≒200g。つまり、お茶と同じ重さの氷が要り、液体は約400gになって、濃さはおよそ半分になる(水と同じ比熱・凝固点とみなし、外からの熱を無視した理想化計算)。氷を足せば足すほど冷えるが、そのぶん薄まるという制約がある。次に、氷の大きさや形がどう効くのかを見る。
5. 氷の かたちで、ひえかたは かわるの?
5. 砕いた氷と大きな氷、飲み物を速く冷やすのはどちらか
5. 表面積と融解の速さ ── 同じ重さの氷で冷え方が変わる条件
氷は、おもに 水と ふれて いる ところ、つまり 表面から とけます。同じ 重さでも、こまかく くだいた 氷の ほうが、ふれる ところが 多く、はやく とけるはずです。
小学校の 研究では、表面の 広さが 同じ 氷は、とけきる 時間が ほぼ 同じに なったと ほうこくされて います[5]。
ですから、すぐに ひやしたい ときは くだいた 氷が むいて います。でも、長く ひやしたい ときには、大きな 氷の ほうが ゆっくり とけます。
氷は、おもに水と接している表面からとけていきます。同じ重さなら、砕いた氷のほうが表面積の合計が大きく、飲み物と熱をやりとりしやすいので、速くとけて、飲み物を速く冷やすと考えられます。
大阪教育大学附属天王寺小学校の研究では、水の中で氷をとかす実験で、表面積が等しい氷はとけきる時間がほぼ等しかったと報告されています[5]。一方、体積が同じでも表面積がちがうと、とけきる時間はそろいませんでした。この結果は水の中での実験で、飲み物での速さを断定するものではありません。
一方で、最終的な温度は、氷の形ではなく、氷の量で決まります。形が変えるのは、そこへたどり着く速さです。「早く冷やしたいなら砕いた氷、長く冷たくしたいなら大きな氷」という使い分けは、この考え方から出てくる目安です。
融解は固液界面で進むため、同じ質量なら表面積の大きい砕氷のほうが融けるのが速くなる傾向があると考えられ、短時間で多くの熱を吸収しやすい。ただし速さは表面積以外の条件にも左右される。大阪教育大学附属天王寺小学校の研究では、水中で氷を融かす実験で、表面積が等しいと融けきる時間がほぼ等しく、体積が等しくても表面積がちがえば時間は等しくならなかったとされる[5]。
ただしこれは水中の実験で、飲み物の中での速さを直接示す結果ではない。融解速度は、飲み物の撹拌や容器の断熱でも変わる。
整理すると、最終温度(0℃付近)は氷の量とその融解熱で決まり、氷の形は到達までの速さを変える。砕氷は速く冷やし速く融けきり、大きな塊は融解がゆっくりで、長く0℃付近を保ちやすい。これは表面積から出した目安で、別の変数も入る点に注意する。
自分でも ためして みよう
氷の「冷やす力」を自分の手で比べる
確かめ方 ── 氷と冷水で、同じ熱を奪えるか
ぬるい 水(手で さわれる ぐらい)を 同じ りょう ずつ、2つの コップに いれます。かならず、あつい お湯は つかいません。
1つには 氷を、もう 1つには 氷を とりのぞいた つめたい 水を、同じ りょうだけ いれます。氷と 水の りょうは そろえて ください。
しばらくして、どちらの コップが つめたいか、手で さわって くらべて みましょう。氷の ほうが、ひえて いる はずです。
つぎに、氷が のこって いる あいだ、コップが 0度より ひくく ならないか、かんがえて みましょう。
家にあるもので、氷の「冷やす力」を比べられます。ぬるい水(手で触れる程度の温度。熱いお湯は使わない)を、同じ量ずつ2つのコップに入れます。
1つには氷を、もう1つには、氷水から氷を取りのぞいた冷たい水を、同じ量入れます。しばらくして、どちらが冷えたかを手でさわって比べます。氷のほうが、よく冷えているはずです。同じ0℃近い温度でも、氷は熱を吸う余力が大きいからです。
気づいたら、「砕いた氷と大きな氷では、どちらが早く冷えるか」「氷を入れすぎると、味はどう変わるか」を、同じ方法で確かめてみてください。氷が溶けた水の量も、量りで測ると計算と比べられます。
確かめるには、氷水から氷を取り除いた0℃近い水と、同じ質量の氷を、同量のぬるま湯(手で触れる程度。熱いお湯は使わない)に入れて冷え方を比べるとよい。同じ0℃近くでも、氷のほうが大きく冷やすはずだ。温度計があれば、最終温度を記録できる。
この比べ方で何が分かるかを、計算の側から言いなおすと、冷水が出せる熱は「水の比熱×温度差」だけで、融解という段を持たない。たとえば0℃の冷水が飲み物から奪えるのは、温度が0℃から上がっていく分だけだ。ぬるま湯を30℃とすれば、冷水1gが奪える熱は、30℃になるまでで4.18×30=約125J。同じ1gの氷なら、融けるだけで334Jを奪い、さらに融けた水が温まる分も加わる。氷のほうがおよそ3倍以上の熱を吸える見積もりで、この差が手ざわりのちがいとして出る。
氷を砕氷にして比べれば、融ける速さの差も見える。量りで融けた水の量を測れば、本記事の見積もり(飲み物200g・25℃で約63g)と実測のずれから、容器や外気から入る熱の大きさを考えることもできる。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
出典について:融解熱は事典(Wikipedia)と大学の物理デモの資料の数値を使った。「80℃」「63g」「200g」は、それらの数値から計算した値で、資料に書かれた数字ではない。何に使ったかは、それぞれの項目の最後に書いている。
- 融解熱(Wikipedia)。https://ja.wikipedia.org/wiki/融解熱 (氷の融解熱の値について)
- Case Western Reserve University, Physics Demonstrations「Specific Heat」。https://case.edu/artsci/phys/courses/demos/specthe.htm (氷の融解熱と水の比熱の値について)
- USGS「Heat capacity of water and how it affects you at the beach」。https://www.usgs.gov/media/images/heat-capacity-water-and-how-it-affects-you-beach (水の比熱容量が大きい部類であることについて)
- 大阪府「状態変化」の資料。https://www.pref.osaka.lg.jp/documents/25639/jyotai_hoju_kai_01_1.pdf (融点で温度が一定になることについて)
- 大阪教育大学附属天王寺小学校の研究。https://f.osaka-kyoiku.ac.jp/tennoji-j/wp-content/uploads/sites/4/2020/09/38-14.pdf (氷の表面積と、とけきる時間について)
- NIST, Journal of Research of the National Bureau of Standards, vol.23 no.6(氷の融解熱 333.55 J/g)。https://nvlpubs.nist.gov/nistpubs/jres/23/jresv23n6p643_A1b.pdf (氷の融解熱の値の一次資料として)
なおした ところ
更新履歴
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