1. 「おされると とける」って ほんとうなの?
1. 「刃の圧力で氷がとける」は、どこまで正しいのか
1. 圧力融解説 ── 466気圧でも融点は−3.5℃までしか下がらない
むかしから 聞く こたえが あります。「スケートぐつの 下の 細い 金ぞくの 板が 氷を ぎゅっと おして、おされた ところが とけるから、すべる」と いう ものです。1800年代に 出された この 考えは、長いあいだ しんじられて きました[2]。
たしかに 氷は、おされると、0℃より 少し ひくい 温度でも とけるように なります。でも、その かわりかたは とても 小さいのです。ある 計算では、刃の 下に 466きあつの 圧力が かかった としても、氷が とける 温度は マイナス3.5℃くらいまでしか 下がりません[2]。
この 466きあつは、計算で 出した 一つの れいです。じっさいの スケートで いつも この 数に なる という 意味では ありません。
スケート靴の刃は細く、体重がその狭い面にかかります。氷は強く押されると、0℃より低い温度でもとけるようになります。「だから刃の下の氷がとけて水の膜ができ、滑る」という圧力融解説は、19世紀に出され、長く信じられてきました[2]。
ところが計算してみると、とけはじめる温度の下がり方は小さいのです。Physics Today の解説に載っている計算例では、刃の下に466気圧がかかったとしても、氷の融点はマイナス3.5℃ほどにしか下がりません[2]。466気圧は計算上の一例で、現実のスケートがいつもその圧力になるという意味ではありません。
押されてとけるだけで足りるのは、氷がマイナス3.5℃より暖かいときまでです。それより冷たい氷の上で、人はどう滑っているのでしょうか。
スケートの刃は幅が狭く、体重が小さな面積に集中する。氷は圧力を受けると融点が下がるので、刃の下の氷がとけて水の膜ができ、それが潤滑する、というのが圧力融解説である。この説は19世紀に出され、長く信じられた[2]。
問題は、融点がどれだけ下がるかである。Physics Today の解説が紹介する Joly の計算では、刃の下で466気圧という大きな圧力を見込んでも、氷の融点はマイナス3.5℃ほどにしか下がらない[2]。この466気圧は計算の一例であり、実際の刃の圧力と同一視はできない。だが、数百気圧でもこの程度なら、圧力だけで氷が広い温度範囲でとけるとは考えにくい。
では、氷の温度がマイナス3.5℃を大きく下回るとき、この説は何を説明できるのか。次の事実が、説の限界をはっきりさせる。
2. マイナス30℃でも すべるのは、なぜ?
2. マイナス30℃でも滑れる氷に、圧力説は合わない
2. 競技の氷温やマイナス30℃の気候でも滑れる ── 圧力融解説では説明できない
スケートの 氷は、フィギュアスケートでは およそ マイナス5.5℃、アイスホッケーでは およそ マイナス9℃が このまれる と 言われます[2]。さらに、マイナス30℃の 寒い 土地でも、人は スケートを して います[2]。
刃の 力で とけるのなら、マイナス3.5℃より 寒い 氷では すべれない はずです。ですから 「おす 力だけでは、説明が つかない」と 考えられる ように なりました[2]。
では、氷の 上には、もともと 何かが あるのでしょうか。手がかりは、氷が すべる ことでは なくて、氷と 氷が くっつく ことでした。
スケート選手が好む氷の温度は、フィギュアスケートでおよそマイナス5.5℃、アイスホッケーでおよそマイナス9℃とされます[2]。どちらも、先ほどの計算例(マイナス3.5℃)より冷たい氷です。さらに、マイナス30℃の気候でもスケートはできます[2]。
圧力でとける温度の範囲より冷たい氷でも滑れるのなら、滑る理由は圧力だけではない、と読めます。
次の手がかりは、滑ることではなく、氷のかけらがくっつくという、別の現象でした。
Physics Today の解説は、スケート選手が好む氷の温度として、フィギュアスケートでおよそマイナス5.5℃、アイスホッケーでおよそマイナス9℃を挙げ、マイナス30℃の気候でもスケートは可能だと述べる[2]。圧力融解で氷の融点が下がるのは、前節の計算例ではマイナス3.5℃までである。これより冷たい氷の上で滑れる以上、圧力融解だけでは説明が足りない。
ここで、圧力説が「間違っている」のではなく、「これだけでは足りない」と読むのが資料に沿った理解である。では、圧力を加えなくても氷の表面に液体の層があるとしたらどうか。この発想の出発点は、氷のかけらどうしがくっつくという、滑ることとは別の現象だった。
3. 氷の 表面には、はじめから 水の まくが ある?
3. 氷の表面は、凍っていても水の膜でおおわれている
3. 表面融解の発想と直接測定 ── 1850年のファラデーから1987年へ
氷と 氷を おしつけると、くっつく ことが あります。1850年、科学者の ファラデーは、これを 手がかりに 「氷の 表面は、0℃より 寒くても、いつも うすい 水の まくで おおわれて いる」と 考えました[1]。
それから 長い ときが たって、1987年に、北海道大学の 研究チームが、レーザーの 光を 使って 氷の 表面を しらべました。すると、0℃より ひくい 温度でも、表面に 水の そうが ある ことが はっきり 分かりました。氷の ようすに よっては、マイナス100℃でも 見つかった そうです[1]。
この 水の そうは、とても うすいのです。ある はかった けっかでは、やく12ナノメートル(マイナス24℃)から やく70ナノメートル(マイナス0.7℃)でした[2]。1ナノメートルは、1ミリの 百万分の 1です。かみの毛の 太さを 0.1ミリと すると、70ナノメートルは その 1400分の 1ほどです。
ただし、はかりかたや 考え方に よって、うすさの 見つもりは 100ばい いじょうも ちがう ことが あり、きまった 数は ありません[6]。
うすさは 温度で かわり、寒いほど うすく なります。パウダースノーで 雪玉が つくりにくいのは、寒くて 水の そうが うすいから、と 説明されて います[1]。氷が くっつく のも、はさまれた 水の そうが また こおる ためです[1]。
それに、とけやすく なる のは 氷だけでは ありません。金ぞくも、とける 温度の 近くでは 表面に うすい えきたいの まくが できて、氷のように つるつるに なる はずと 言われます[1]。ふつうの くらしでは、なかなか ためせませんが。
でも、水の まくが ある ことは 分かっても、「それは どうやって できるのか」は、まだ 分かりません。
1850年、ファラデーは、氷のかけらを押し合わせるとくっつく現象に注目しました。ここから、氷の表面は0℃より低くても、いつも薄い水の膜でおおわれているのではないか、と考えました[1]。氷どうしがくっつくのも、雪玉が固まるのも、はさまれた水の層がもう一度凍るためだと説明されます[1]。
この考えが実験で直接確かめられたのは、1987年です。北海道大学低温科学研究所の古川義純さんらのチームが、レーザー光の反射を使う偏光解析という方法で氷の表面を調べ、融点以下でも水の層があることを確かめました。氷の状態によっては、マイナス100℃でも水の層が見つかっています[1]。
水の層の厚さは温度で変わり、寒いほど薄くなります[1]。原子間力顕微鏡による測定では、約12ナノメートル(マイナス24℃)から約70ナノメートル(マイナス0.7℃)という値が出ました[2]。1ナノメートルは100万分の1ミリです。髪の毛の太さを0.1ミリとすると、70ナノメートルはその約1400分の1にあたります。ただし、測り方や解釈によって厚さの見積もりが2けた以上ちがう報告もあり、決まった値はありません[6]。
パウダースノーで雪玉が作りにくいのは、気温が低くて表面の水の層が薄いためだと説明されます[1]。また、表面がとける現象は氷だけのものではなく、金属でも融点の近くでは表面に液体の薄い膜ができ、氷のようにつるつるになるはずだと、同じ解説は述べています[1]。
水の層があることは、これで確かめられました。残る問いは、その層がどうやってできるのか、です。
氷の表面は、0℃以下でも常に薄い水膜でおおわれている。このアイデアは、1850年にファラデーが提唱した。手がかりは、氷のかけらを接触させるとくっつく現象だった[1]。氷どうしのくっつきも雪玉が固まるのも、はさまれた水の層が再び凍るためと説明される[1]。この表面の液体のような層を、擬似液体層と呼び、表面融解という現象の結果として考える。
では、この層は本当にあるのか。1987年、北海道大学低温科学研究所の古川義純らのチームは、レーザー光の反射を利用した偏光解析という測定で氷結晶の表面を調べ、融点以下でも水の層が存在することを直接確かめた。氷結晶の状態によっては、マイナス100℃でも水の層が検出されている[1]。
層の厚さは温度に依存し、低温ほど薄い[1]。原子間力顕微鏡による測定では、液体のような層の厚さは約12ナノメートル(マイナス24℃)から約70ナノメートル(マイナス0.7℃)だった。この測定をもとに、表面の融解は約マイナス33℃から始まると推定されている[2]。70ナノメートルは、髪の毛の太さを0.1ミリとすると約1400分の1に当たる。もっとも、同じ層の厚さを見積もる値は、測定法や解釈によって2桁以上ばらつくと総説は述べており、固定した値として覚えるべきではない[6]。
この層の厚さの温度変化は、身近な現象と結びつく。パウダースノーで雪玉が作りにくいのは、低温で表面の水の層が薄いためだと説明される[1]。表面融解は氷に限らず、どんな物質でも起こる。金属も融点付近では表面に液体の薄膜ができ、氷のようにつるつる滑る状態になるはずだ、と同じ解説は述べる[1]。
ここまでで分かったのは、層の存在と、その厚さが温度で変わることである。層が滑りやすさを生むという筋は通るが、層はもともと平衡状態でできているのか、滑ることでできるのかという問いが残った。
4. すべる ときの ねつで できるの? マイナス7℃の ふしぎ
4. 水の膜は、滑るときの摩擦熱でできるのか
4. 摩擦熱説と2018年の報告 ── 摩擦が最小になるマイナス7℃
もう 一つの 考えは、摩擦の ねつです。冬に 手と 手を こすり合わせると あたたかく なります。それと にて、スケートが すべる とき、氷と 刃が こすれて 出る ねつが、氷の 表面を とかす、という 考えです。ただし 本当は、氷の 上の ほんの 小さな 一点で 起きる ことなので、手を こする ほど 分かりやすい 話では ありません。
ある 研究では、はやく 動くほど 氷の 温度が 上がる ようすが、その 場所だけの 摩擦の ねつで あたたまる ことと 合っていました[2]。
2018年には、アムステルダム大学などの 研究チームが、摩擦の 大きさを 調べて 発表しました[3]。おもしろいのは、摩擦が いちばん 小さく なるのが、マイナス7℃の ときだった ことです[3]。スピードスケートの リンクでも、氷の 温度を マイナス7℃に する ことが あると 書かれて います[3]。
では、もっと あたたかい 氷は? マイナス7℃から 0℃の ときは 氷が やわらかく、物が ふかく くいこむので、かえって すべりにくく なるそうです[3]。
さらに この 研究は、氷の 表面に ある 水の ぶんしの 動きやすさに 目を 向けます。小さな 玉が ころがる ように 動く ぶんしが いて、その 動きやすさが すべりやすさの わけだ、と いう 見方です[3]。
水の層は、もともとあるのか、滑ることでできるのか。もう一つの有力な説が、摩擦熱です。氷の上で物が速く動くと、触れた点が局所的に温まります。Colbeck らの実験では、速度が上がると氷の温度が上がる様子が、局所的な摩擦熱による加熱と合っていたとされます[2]。
2018年には、アムステルダム大学とマックスプランク高分子研究所のチームが、氷の上の摩擦を調べ、表面の水分子の動きやすさが滑りやすさに関係すると報告しました[3]。この研究で目を引くのは、摩擦が最も小さくなる温度がマイナス7℃だったことです。速度スケートのリンクの氷も、同じマイナス7℃にする例があるといいます[3]。
では、もっと暖かい氷はどうなるのでしょうか。マイナス7℃から0℃の間では氷がやわらかく、物が深くくいこむため、かえって滑りにくくなる、と説明されています[3]。
この研究は、水の「膜」というより、表面の水の分子の動きやすさに注目します。水素結合が2本だけでつながった表面の分子は、熱による振動で小さな球のように転がるように動けます。この動きやすさが、氷の滑りやすさの原因だという説明です[3]。
ところが、2025年に、また別の答えが出されました。
水の層がもともと存在するなら、層は滑る前から平衡状態として成り立っていることになる。これに対し、摩擦熱説は、滑ることで局所的に熱が生まれ、その熱が表面をとかすと考える。Colbeck らの実験では、速度が上がると氷の温度が上がる様子が、局所的な摩擦による加熱と一致した[2]。
2018年、アムステルダム大学とマックスプランク高分子研究所のチームは、氷の上の摩擦を調べ、表面の水分子の移動性が滑りやすさに関係すると報告した[3]。この研究で目を引くのは、摩擦が最小になる温度がマイナス7℃だった点である。速度スケートのリンクの氷温も同じマイナス7℃にする例があるという[3]。ただし、競技の氷温がいつもこの値だという意味ではない。一例として挙げられている。
マイナス7℃より暖かい側、すなわちマイナス7℃から0℃の間では、氷がやわらかくなり、物が深くくいこむ。そのため滑りにくくなる、と報告は説明する[3]。逆に、冷たすぎても摩擦熱が足りない、という筋で読めるが、この点を直接述べた記述は今回の資料に無いので、筆者の読み方にとどまる。
同じ研究は、氷の表面の水分子の動きやすさにも注目する。表面で水素結合が2本だけでつながった水分子は、熱による振動で小さな球のように転がるように動き、この高い移動性が滑りやすさの原因だという[3]。ここでは、水の「膜」という見方より、個々の分子の動きやすさが主役になっている。
ここまでを整理すると、圧力融解説は「融点が下がる」を、表面融解は「層がもともとある」を、摩擦熱説は「滑ると熱が出る」を、それぞれ原因の候補にしている。ところが2025年、これらのどれでもない答えが出された。
5. 2025年の 新しい 考えと、まだ きまって いない こたえ
5. 2025年の新説と、今も決まっていない答え
5. 双極子説(2025年)と、決着していない議論
2025年に、ザールラント大学の 研究チームは、また ちがう 考えを 発表しました。「おす 力も 摩擦も、あまり 大切では ない」と いうのです[4]。
氷の ぶんしは、電気の プラスと マイナスが かたよった 向きを もって います。ふれて きた ものの 表面と、氷の ぶんしが、電気の 力で たがいに ひき合うと、氷の 結晶が みだれて、えきたいの ような うすい そうに なる、と いう 考えです。コンピューターの シミュレーションで しらべた 結果で、まだ 一つの 考えです[4]。
では、これで 決まりでしょうか。そうでは ありません。2025年12月の クォンタ マガジンの 記事に よると、研究する 人たちは 「うすい 水のような そうが ある」ことには 同じ 見方を して います。けれど、その できかたには いくつもの 考えが あり、新しい 考えにも、ほかの 人から 反対や ちがう 見方が 出て います[5]。
氷は、見なれた ものなのに、まだ 分からない ことが あるのです。
2025年、ザールラント大学のミューザーさんたちは、圧力も摩擦もそれほど重要ではないと発表しました[4]。水の分子は電気的に偏っていて、向き(双極子)を持っています。研究チームのシミュレーションでは、触れた物の表面の双極子と氷の分子の双極子が引き合い、滑るにつれて分子どうしの結びつきが組み替わって結晶が乱れ、液体のような層ができます。これが新しい説明で、まだ仮説の段階です[4]。
これで決まりかというと、そうではありません。2025年12月の Quanta Magazine の記事によれば、研究者たちは「薄い水のような層がある」ことには同意しているものの、その成り立ちには複数の仮説があり、新説にも別の研究者から異論や別の見方が出ています[5]。
圧力、摩擦熱、表面の分子の動き、電気的な向き。答えが入れかわってきても、融点に近い氷の表面に水のような層があることは、多くの研究者が認めています。入れかわってきたのは、その層が「なぜできるか」のほうです。
見なれた氷なのに、まだ決着していない問いが残っている。そこが、この話のおもしろさだと言えます。
2025年、ザールラント大学のミューザーらは、氷の上の薄い液体層の形成に、圧力も摩擦も特に重要な役割を果たしていないと発表した[4]。彼らの考えでは、水の分子には電気的な偏りがあり、その向きを双極子という。シミュレーションでは、接触面と氷表面の双極子が引き合い、滑るにつれて結合が組み替わって結晶が乱れ、非晶質の層ができた。これは仮説とシミュレーションの結果である[4]。
これを受けて、決着したと見るのは早い。2025年12月の Quanta Magazine は、研究者が「薄い水のような層が存在する」ことには同意しているものの、その成り立ちには複数の仮説が並び、新説にも他の研究者から異論や別の見方が出ていると伝える[5]。
ここで、各説が答えようとした問いを並べると、ちがいが見える。圧力融解説は、刃の圧力で融点が下がるかどうか。表面融解説は、押さなくても層がもともとあるのではないか。摩擦熱説は、滑ること自体が熱を生んで層をつくるのではないか。分子の動きに注目する報告は、層というより個々の分子が動きやすいことが滑りの原因ではないか。双極子説は、層は圧力でも摩擦でもなく、接する面と分子の電気的な向きの相互作用でできるのではないか。これは筆者の整理であり、各研究が互いを完全に否定しているわけではない。
融点近くの表面に薄い液体のような層があることには広い合意がある。ただし、その層が滑りにどう関わるか、極低温でどう説明するかは議論中で、入れかわり続けているのは層の成因の説明のほうだ。しかも層の厚さの見積もりさえ、測定法によって2桁以上ちがう[6]。見なれた氷の滑りやすさに、まだ決着していない問いが残っている。
6. 氷を 2つ くっつけて、ふしぎを ためして みよう
6. 氷を二つ押しつけて、ファラデーの手がかりを試す
6. 氷のかけらを押し合わせる観察と、資料の入口
ファラデーの 手がかりを、おうちで ためして みましょう。れいぞうこの 氷を 2こ、お皿の 上に 出します。たいらな めんどうしを、かるく おしつけて 10びょう ほど 待ちます。くっついたか、はなして みます。
くっつく ときは、はさまれた 水が また こおった ためと 考えられます[1]。氷の 温度や、ぬれ方で けっかは かわりますから、くっつかなくても しっぱいでは ありません。出した ばかりの 氷と、少し 時間が たってから くっつけた 氷を、くらべて みると おもしろいでしょう。
氷は とても つめたいので、長く にぎらないで ください。手が いたく なる ことが あります。
氷が すべる わけの 本は、書かれた 年に よって こたえが ちがう かもしれません。見つけたら、いつ 書かれた ものかも 見て、どの 考えが のって いるか 見くらべて みて ください。
ファラデーの手がかりを、家で試せます。冷凍庫の氷を2個、皿の上に出します。平らな面どうしを軽く押しつけて10秒ほど待ち、そっとはなして、くっついたかどうかを見ます。
くっついたときは、はさまれた水がもう一度凍ったためと説明されます[1]。氷の温度や表面のぬれ方で結果は変わるので、くっつかなくても失敗ではありません。出してすぐの氷と、しばらく置いて表面がぬれた氷とで、くらべてみるのも一つの方法です。氷は冷たいので、長く握らないでください。
図書室や図書館で、氷の滑りやすさについて書かれた日本語の本や記事を見つけたら、それが何年に書かれたものか、圧力説・表面の水の層・摩擦熱・分子の動き・電気的な向きのどれを紹介しているかに注目すると、答えが入れかわってきた歴史が、自分の目で見えてきます。
観察としては、冷凍庫から出した氷を2個、皿の上で平らな面どうしを押し合わせ、10秒ほどで離れずに持ち上がるかを見る。くっつけば、はさまれた水が再び凍ったためと説明される[1]。氷の温度や表面のぬれ具合で結果が変わるため、出してすぐの氷と、時間を置いて表面がぬれた氷を比べるとよい。長く握ると冷たさで手が痛くなるので注意する。
資料を読むなら、表面融解と直接測定は北海道大学低温科学研究所の古川義純の解説[1]、圧力融解説の計算と諸説の概観は Physics Today の解説[2]、2018年の摩擦熱の報告は Max Planck Society 提供の記事[3]、2025年の双極子説はザールラント大学の発表[4]、その後の議論は Quanta Magazine[5]が入口になる。各資料が書かれた年と、そこで「確かな点」とされている部分、「仮説」とされている部分を分けて読むと、答えが入れかわってきた理由が見えてくる。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
出典について:大学・研究機関の解説と発表、科学誌と科学ニュースの記事、総説を使いました。
- 北海道大学低温科学研究所 OriOri vol.28 古川義純「雪氷学のトビラ」。 https://www2.lowtem.hokudai.ac.jp/pdf/04oriori28.pdf (ファラデーの考え、1987年の直接測定、層の厚さと雪玉、金属の表面融解について)
- Physics Today, "Why is ice slippery?"。 https://physicstoday.aip.org/features/why-is-ice-slippery (圧力融解説の計算例、競技の氷温、層の厚さの測定、摩擦熱の実験について)
- phys.org, "The slipperiness of ice explained"(Max Planck Society 提供)、2018年。 https://phys.org/news/2018-05-slipperiness-ice.html (2018年の摩擦熱の報告と、マイナス7℃、分子の動きやすさについて)
- ザールラント大学ニュース(2025年8月29日)"Why we slip on ice"。 https://www.uni-saarland.de/en/news/why-we-slip-on-ice-physicists-challenge-centuries-old-assumptions-39295 (2025年の双極子説について)
- Quanta Magazine, "Why Is Ice Slippery?"、2025年12月。 https://www.quantamagazine.org/why-is-ice-slippery-a-new-hypothesis-slides-into-the-chat-20251208/ (層があることへの同意と、成り立ちをめぐる議論について)
- "Key Physics of Ice Premelting"(arXiv 総説)。 https://arxiv.org/html/2509.13221v1 (層の厚さの見積もりが測定法で大きくちがうことについて)
なおした ところ
更新履歴
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