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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

日本の 標準時ひょうじゅんじは、どこで どうやって つくって いるの?

日本の標準時は、どこで、どうやって作られているのか ── 小金井にある「時計の合奏」

日本標準時の生成の仕組み ── NICTのUTC(NICT)+9時間、水素メーザ・セシウム原子時計・光格子時計の役割分担と、神戸副局

分野:技術

日本の 時計の 「大もと」は、1台の 時計では ありません。東京の 小金井こがねいという まちに、原子げんし時計などが 20台あまり ならんで いて、その みんなで 「いまの 日本の 時間」を つくって います。

どうして 1台に まかせないのでしょう。どんな 時計が、どんな やくわりで はたらいて いるのでしょう。じゅんばんに しらべました。

日本の時刻の「大もと」は、1台の時計ではありません。東京都小金井市にある情報通信研究機構(NICT)に、水素メーザやセシウム原子時計などが20台あまり並び、それらを組み合わせて日本の標準時を作っています。

なぜ1台に任せないのか。それぞれの時計はどんな役を受け持つのか。時計が作る時刻がずれていないかは、どうやって確かめるのか。順に調べました。

日本標準時(JST)は、情報通信研究機構(NICT)が、自分の持つ原子時計から作る協定世界時UTC(NICT)に、9時間を足した時刻である[1]。その材料は、水素メーザ最大4台、セシウム原子時計約18台、ストロンチウム光格子時計1台で、1台の時計がそのまま標準時になるわけではない[1]。

なぜ複数の時計が要るのか。それぞれの時計は何を受け持つのか。作った時刻のずれは、どう確かめて直すのか。NICTの資料をもとに順に調べた。

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1. 日本の 時間は、小金井こがねいで つくられて います

1. 答えは東京・小金井。標準時は「UTC(NICT)+9時間」

1. 小金井のNICT本部で作られる ── JST=UTC(NICT)+9時間

日本の 標準時ひょうじゅんじを つくって いるのは、東京都 小金井こがねい市に ある 情報通信研究機構じょうほうつうしんけんきゅうきこう(NICT)という 国の 研究所けんきゅうじょです[1]。

やり方は、2だんかいです。まず、NICTの 原子げんし時計から、せかいじゅうで 使う 「UTC」に ほぼ おなじ 時間を つくります。NICTの 時計から つくった 時間に 9時間を たすと、日本の 標準時ひょうじゅんじに なります[1]。

9時間を たすのは、日本が 東経とうけい135度の 太陽に あわせて 時間を きめて いるからです。くわしい はなしは、「時差じさは どうして できたの?」の きじに あります。

では、その 「UTCに ほぼ おなじ 時間」は、どうやって つくるのでしょう。ここからが おもしろい ところです。

日本標準時(JST)を作っているのは、東京都小金井市にある情報通信研究機構(NICT)という国の研究機関です[1]。

手順は2段階です。まず、NICTが持つ原子時計から、世界共通の時刻UTCと同じ考え方で「UTC(NICT)」という時刻を作ります。それに9時間を足したものが日本標準時です[1]。9時間という差は、東経135度の太陽に合わせて時刻を決めたことから来ています。その経緯は時差の記事にあります。

では、UTC(NICT)はどう作るのか。答えは「何台もの時計を組み合わせる」です。次の章で、なぜそうするのかを見ます。

日本標準時は、NICTが所有する原子時計からUTCと同じ考え方で作るUTC(NICT)に、9時間を加えたものである。つまりJST=UTC(NICT)+9時間だ[1]。9時間の差が東経135度に由来する経緯は、時差の記事で扱っている。

これまで標準時は東京都小金井市のNICT本部だけで作られていたが、2018年6月10日からは兵庫県神戸市の副局も運用されている。神戸副局にも、セシウム原子時計や衛星を使った時刻比較システムなど、生成に必要な機能がある[1]。

本記事が知りたいのは、UTC(NICT)の作り方である。NICTによれば、使う機器は水素メーザ最大4台、セシウム原子時計約18台、ストロンチウム光格子時計1台だ[1]。なぜ1種類ではないのか。そこに設計の肝がある。

2. 1台に 頼たよらない。得意とくいが ちがう 時計を あわせる

2. 1台に頼らない ── 短い時間に強い時計と、長い時間に強い時計

2. 水素メーザは短期、セシウムは長期 ── 性質の違う時計の組み合わせ

NICTでは、水素すいそメーザという 時計と、セシウム原子げんし時計を いっしょに つかって います[1]。2つは、とくいな ことが ちがいます。

水素すいそメーザは、みじかい 時間の あいだ、ほとんど ぶれずに 時を きざみます。セシウム原子げんし時計は、ながい 時間が たっても、1秒びょうの ながさが かわりません[1]。

たとえば、みじかい きょりを きっちり はかる じょうぎと、とおくへ いっても まよわない 地図が あるようなものです。ひとつだけでは、どちらかの 弱点が のこります。2つを くみあわせると、細かいところも 長い目で見ても、よく あう 時間に なります。

NICTは、水素すいそメーザを もとに した 時間を おしえる しんごうを、べつべつの しくみで 3つ つくって います。1つが こわれても だいじょうぶな ように、そなえて いるのです。その うちの 1つが UTC(NICT)に えらばれます[2]。

でも、これだけでは まだ 足りません。時間は、ほうって おくと ずれて いくからです。

NICTでは、水素メーザとセシウム原子時計を組み合わせています。水素メーザは短い時間の安定性、セシウム原子時計は長い時間にわたる1秒の長さの変わりにくさを受け持ちます[1]。

たとえるなら、近くの距離を細かく測れるじょうぎと、遠くへ行っても迷わない地図です。片方だけでは弱点が残るので、両方を組み合わせて、細かいところも長い目で見ても正確な時刻を目指します。

さらに、NICTの資料によると、時刻の信号は、別々の水素メーザをもとにした3系統が作られていて、その1つがUTC(NICT)に選ばれます。1つが不調でも続けられるようにするためです[2]。

ところが、これだけでは足りません。原子時計を何台並べても、時刻は少しずつ、本物のUTCからずれていくのです。

NICTの説明では、水素メーザは短期の安定性を、セシウム原子時計は長期にわたる1秒の不変性を受け持ち、両者を組み合わせて使う[1]。短い時間では水素メーザが揺らぎにくく、長い時間ではセシウムが1秒の長さを保つ、という分業である。

冗長性のため、独立した水素メーザを源発振器とする時刻信号が3系統作られ、そのうち1つがUTC(NICT)として選ばれる。これに9時間の時差調整を加えたものが日本標準時になる[2]。

ここまでは「ある時点で、よく合う時刻を作る」話だ。しかし標準時には、もう1つ難しい条件がある。国際的に決まるUTCと、何年たっても合い続けなければならない。そのためには、時計の組み合わせだけでは足りなかった。

3. それでも ずれる。光ひかりの 時計が ずれを 小さくした

3. ずれを抑える最後の1台 ── 光格子時計が入った2021年

3. UTCとのずれを抑える ── 光格子時計による周波数の調整(2021年8月〜)

世界の ものさしに なる「UTC」は、ぎじゅつの 都合で、ほんとうの 数字が 出るのが 半月ほど おくれます[2]。だから 日本は、その 数字を まつ あいだ、じぶんの 時計だけで 時間を つくり つづけなければ なりません。

すると、セシウム原子げんし時計を たくさん ならべても、数か月で、UTCと 10ナノ秒びょういじょう ずれる ことが ありました。ナノ秒びょうは、10億おく分の 1秒びょうです。むかしは、UTCの 数字が とどいてから、人が 手で なおして いました[2]。

そこで 2021ねん、光格子時計ひかりこうしとけいが 日本の 標準時ひょうじゅんじを つくる しくみに くわわりました。ストロンチウムという 原子が 出す 光を ものさしに した 時計です。それまで ずれは 20ナノ秒びょうほどに なる ことが ありましたが、まえうしろ 5ナノ秒びょうより 小さく おさえられる ように なりました[2]。

5ナノ秒びょうは、光ひかりでも 1.5メートルくらいしか 進めない みじかさです。それくらい 小さな ずれまで、おさえて いるのです。

ただし、この 時計が ずっと 動いて 時間を つくって いるのでは ありません。1しゅうかんに 1〜2回、「1秒びょうの ながさ」を そっと なおす 役めです[2]。

UTCは、数字として発表されるのが半月ほど遅れます。そのため各国の研究所は、その数字を待つあいだ、自分の時計だけで時刻を保ち続けなければなりません[2]。

NICTによれば、2006年から使ってきた水素メーザと約18台のセシウム原子時計の組み合わせは、台数を増やしても、時計の周波数(1秒の刻みの速さ)が小数点以下15けた目でゆらぎました。その結果、数か月でUTCとの差が10ナノ秒(10億分の1秒)以上に広がることがあり、UTCのデータが届いてから人が手作業で調整していました[2]。

そこで、ストロンチウム原子の光を物差しにした光格子時計「NICT-Sr1」が、2021年8月から日本標準時のシステムに入りました。標準時の1秒の長さを、この時計に合わせて調整します。UTCとの差は、従来の20ナノ秒ほどから、前後5ナノ秒より小さく収まるようになりました[2]。NICTはこれを、光格子時計で国家標準時を保つ世界で初めての例だと発表しています[2]。

5ナノ秒は、光が進めるのが約1.5メートルほどという短い時間です。ただし、光格子時計は連続して動き続けるのではなく、調整は週に1〜2回です[2]。標準時は、いまも水素メーザとセシウム原子時計を中心に作られています。

UTCは数値データとして半月ほど遅れて公表されるため、実時間では配れない。各研究所は、自前の時計をUTCにできるだけ近づけておく必要がある[2]。

NICTの発表(2022年6月)によると、2006年から使ってきた水素メーザと、通常18台のセシウム原子時計の組み合わせは、周波数が15けた目でゆらぐ。そのため数か月でUTCとの差が10ナノ秒以上に広がることがあり、UTCのデータが数週間遅れで届いたあとに、人が手作業でJSTを調整していた。差は通常±20ナノ秒ほどだった[2]。

そこで、ストロンチウム光格子時計「NICT-Sr1」を使い、標準時の周波数(1秒の実効的な長さ)を光格子時計の刻みに合わせて調整することにした。JSTの周波数の計測は2021年6月に始まり、調整は同年8月から、週に1〜2回行われている。差は±5ナノ秒未満になり、従来の4分の1以下に抑えられた。NICTはこれを、光時計を基準に標準時を作る世界初の例としている[2]。

NICT-Sr1は、ストロンチウム原子の光学遷移(周波数約429 228 004 229 872.99 Hz、相対不確かさ1.9×10-16)に光を安定させ、光周波数コムで電子信号に変換する時計である[2]。運用は連続ではなく断続的で、標準時を支える主力は、現在も水素メーザとセシウム原子時計の組み合わせだ。5ナノ秒は光が約1.5メートル進む時間(3.0×108 m/s × 5×10-9 s)に当たる。

4. 止まらない ための くふう

4. 止まらないための備え ── 原器室と神戸の副局

4. 止めないための設計 ── 原器室と神戸副局

標準時ひょうじゅんじは、1秒びょうも 止まっては いけません。そのため、時計は 「原器室げんきしつ」という へやに おかれて います。おんどと しつどが きびしく ととのえられ、でんぱを さえぎる しくみも あります。停電ていでんに そなえて、じぶんで 電気を つくる そうちも あります[1]。

それでも、じしんなどで 小金井こがねいが つかえなく なったら どうするのでしょう。2018年6月10日から、兵庫ひょうご県 神戸こうべ市にも 「副局ふくきょく」が あります。もしもの ときは、神戸が 本局に なって、標準時ひょうじゅんじを つくり つづける 計画です[1]。

標準時は、止まってはいけません。そのため、水素メーザとセシウム原子時計は、温度と湿度が管理され、電磁波を遮る措置がされた「原器室」に置かれています。停電に備えて、自家発電や無停電電源装置もあります[1]。

場所の分散もしています。標準時はこれまで、小金井のNICT本部だけで作られていました。2018年6月10日からは、兵庫県神戸市に副局があります。小金井に非常事態が起きたときは、神戸を本局として、標準時の維持と供給を続ける体制です[1]。

時計を増やすことも、場所を増やすことも、「1つが止まっても、日本の時刻は止めない」ための設計だと見ることができます。

水素メーザとセシウム原子時計は、温湿度を管理し、電磁界シールドを施した「原器室」に設置されている。停電対策として、自家発電と無停電電源装置も備える[1]。

場所の冗長化も進んでいる。2018年6月10日から神戸副局が運用されており、小金井の本局に非常事態が起きた場合は、神戸を本局として標準時の維持と供給を続ける体制だ[1]。前の章の「3系統の時刻信号」とあわせると、時計・信号・場所の3つの層で冗長性を持たせた設計だと整理できる(この整理は本記事の読み取りであり、NICTの表現ではない)。

5. つくった 時間は、でんぱで とどけられる

5. 作った時刻は、電波で届けられる

5. 標準時の通報 ── 標準電波JJYと、ほかの届け方

つくった 時間は、電波でんぱに のせて 日本じゅうに とどけられます。それが 「JJY」という 標準電波ひょうじゅんでんぱです。福島ふくしま県の おおたかどや山と、佐賀さが県の はがね山の 2か所から 出ています[3]。でんぱ時計は、この でんぱを うけとって、じぶんの 時間を あわせて います。

スマホや インターネットの 時間あわせの はなしは、「せかいじゅうの 時計は、どうやって おなじ じこくに あわせて いるの?」の きじを 読んで みて ください。

作った時刻は、標準電波「JJY」で日本中に届けられます。送信所は、福島県の大鷹鳥谷山(おおたかどややま、40kHz、空中線電力50kW)と、佐賀県の羽金山(はがねやま、60kHz、同50kW)の2か所です[3]。JJYは、この電波のコールサイン(呼出符号)で、NICTの登録商標でもあります。電波時計は、この電波を受けて時刻を合わせます。

この電波や、インターネットで時刻を配る仕組みは、世界中の時計を同じ時刻に合わせる仕組みの記事で、UTCの作り方とあわせて詳しく書いています。うるう秒が入る日の動きは、電波時計とスマホのうるう秒の記事にあります。

NICTは、情報通信研究機構法に基づいて標準時を生成し、標準電波などで国内外に通報している。標準時の通報のうち、標準電波JJYは、福島県の大鷹鳥谷山(40kHz、空中線電力50kW)と佐賀県の羽金山(60kHz、50kW)の2局から送信される[3]。JJYは呼出符号で、NICTの登録商標でもある。

UTCそのものの計算(BIPMによる)と、JJYやNTPでの配り方は世界の時刻合わせの記事に、うるう秒が入る日の挙動はうるう秒の伝わり方の記事にまとめている。本記事は、その上流にあたる「日本の時刻の源をどう作るか」に絞った。

6. じぶんでも しらべて みたく なったら

6. 自分でも調べてみたくなったら

6. 自分でも調べてみたくなったら

おうちに ある 時計を 3つ くらべて みましょう。スマホの 時計、かべの 時計、でんぱ時計です。1秒びょうの ずれが あるか、ならべて 見て みます。

ずれて いた 時計は、どうして ずれたのかな。どの 時計が いちばん 日本の 標準時ひょうじゅんじに ちかそうかな。そう 考えると、小金井こがねいの 原子時計が すこし ちかく 感じられます。

家にある時計を3つ並べて、秒の表示を見比べてみましょう。スマホ、壁の時計、電波時計などです。1秒ずれている時計があれば、その時計は何を頼りに時刻を決めているのかを考えてみます。

もっと知りたいときは、NICTの「日本標準時」のページを読んでみてください。時計の台数や神戸の副局の説明は、このページがもとです。光格子時計を入れた話は、参考にした情報源のNICTの発表で読めます。

家やスマホの時計の秒表示を見比べて、何を基準に時刻を合わせているのかを調べてみる。電波時計はJJY、スマホは移動体通信網やNTPが典型的だ。

一次資料は、NICTの「日本標準時」「JJY」のページと、2022年6月の光格子時計に関する発表である[1][2][3]。NICTの発表は、水素メーザとセシウム時計の「重み付けの方法」など、UTC(NICT)を作る詳細なアルゴリズムまでは書いていない。そこを知りたければ、NICTの技術報告や論文が次の読み物になる。

しらべた ところ

参考にした情報源

参考にした情報源

出典について:NICT(情報通信研究機構)は日本標準時を作っている機関自身で、3つとも公式のページです。UTC(NICT)を作る平均化の細かい方法は、確かめられた範囲では見つかりませんでした。

  1. NICT「日本標準時の生成」。 https://www.nict.go.jp/sts/jst.html (JST=UTC(NICT)+9時間、水素メーザ最大4台・セシウム約18台・光格子1台、短期と長期の役割分担、原器室、神戸副局)
  2. NICT「The World's First Use of an Optical Lattice Clock to Keep National Standard Time」(2022年6月、英語版のプレスリリース)。 https://www.nict.go.jp/en/press/2022/06/20-1.html (3系統の時刻信号、UTCの公表の遅れ、±20ナノ秒から±5ナノ秒未満、2021年6月・8月の経緯、週1〜2回の調整、NICT-Sr1)
  3. NICT「JJY 標準電波」。 https://www.nict.go.jp/sts/jjy.html (福島と佐賀の2局、40kHzと60kHz、空中線電力50kW、JJYの呼出符号と商標)

なおした ところ

更新履歴

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