1. ケトルは、いま のむ ぶんだけ わかす
1. 「使う分だけ、すぐ沸かす」のが電気ケトル
1. 定義 ── 使用のたびに沸かす、保温のない電気ポット
あさ、コップに 1ぱいの お茶を のみたい とき。ケトルに 水を すこし 入れて、スイッチを おせば、すぐに お湯が できます。
名古屋市の テストの しりょうでは、電気ケトルは「つかう たびに、お湯を はやく わかせる、ほおん きのうの ない 電気ポット」と せつめい されて います[2]。
つまり ケトルは、「いま つかう ぶんだけ、さっと わかす」ための どうぐです。たとえば、ポットが ずっと あたたかい おふろなら、ケトルは、入る ときに わかす おふろの ようです。
朝の一杯のための道具
朝、コーヒーを1杯だけ飲みたいとき、ケトルに必要な量の水を入れてスイッチを押せば、すぐにお湯ができます。使い終われば、そのまま電源が切れます。
名古屋市が2007年に行った商品テストの資料は、電気ケトルを「使用の都度お湯をスピーディーに沸かすことのできる、保温機能を持たないハンディタイプの電気ポット」と説明しています[2]。
ここで大事なのは、「使用の都度」という言葉です。電気ポットが「ずっと温かいお湯がある」道具だとすれば、電気ケトルは「必要になった時に、必要な分だけ」の道具です。
名古屋市の2007年の商品テストの資料は、電気ケトルを「使用の都度お湯をスピーディーに沸かすことのできる、保温機能を持たないハンディタイプの電気ポット」と整理する[2]。定義の核は、保温をしないこと、使うたびに沸かすことの2点だ。
この定義から、使い方の想定が見える。1杯分のコーヒーやカップ麺など、短時間で少量の湯がほしい場面だ。一方、一日じゅう湯を何度も使う家庭や、大人数の分をまとめて用意する場面は、保温のある電気ポットの得意分野になる。ケトルは、その逆の場面に向く道具として位置づけられる。なお、この定義は2007年時点の資料のもので、今の機種には温度設定や保温の付いたものもある(後述)。
2. ほおんが ないのは、そん なの?
2. 保温がないのは、損ではないのか
2. 保温を持たない代わりに得るもの ── 価格と速さ
ほおんが ないのは、ふべんに 思えます。でも、こくみん生活センターの テストの ニュースでは、ケトルは 電気ポットと ちがって ほおんは ないけれど、その ぶん ねだんが やすく、はやく わく と しょうかいされました[1]。
ほおんを しない ぶん、つくりも かんたんに なります。つかう ときだけ 電気を つかう ので、ずっと あたためて おく 電気が いりません。
そのかわり、わかすときに つかう 電力は、かなり 大きめです。テストされた ケトルは、900〜1300ワットほどでした[1]。大きな 電気を つかう ので、テーブルタップで ほかの 電気せいひんと いっしょに つかうのは さけるように、と あんないされて いました。
保温の代わりに得たもの
2010年の国民生活センターのテストを伝えた報道によると、電気ケトルは電気ポットと違って保温機能はないものの、その分価格は安く、素早く沸騰できます[1]。そのテストでは、保温機能がないことと、価格が安く素早く沸かせることが紹介されています。
ただしこれは、使い方が合っている場合の話です。お湯を何度も使う家庭や、一日じゅう温かいお湯がほしい場合は、保温のある電気ポットのほうが合います。電気ケトルと電気ポットは、優劣ではなく、場面で使い分ける道具です。
代わりに電気は大きい
同じテストでは、電気ケトルの消費電力は900〜1,300Wでした[1]。1,200Wを家庭の100Vで割ると12A、つまり12アンペアの電流が流れる計算です。ほかの電気製品とテーブルタップで一緒に使うことは、避けるよう案内されていました[1]。これは2010年のテスト製品の値で、今の全ての機種にあてはまる数字ではありません。
国民生活センターのテストを伝える2010年の報道は、電気ケトルを「電気ポットと違って保温機能はないが、その分価格は安く、素早く沸騰できる」と紹介する[1]。保温のための部品・制御や、保温し続ける電力が要らないことが、価格や使い方の軽さの理由と考えられるが、資料は因果の詳細までは述べていない。
そのぶん、短時間で湯を沸かすために消費電力は大きい。同テストの製品は900〜1,300W(名古屋市の2007年のテストでは900〜1,450W)だった[1][2]。100Vの家庭用電源で1,200Wなら、1200÷100=12Aが流れる。報道では、15A以上の単独コンセントを使い、テーブルタップで他の機器と同時に使うことを避けるよう案内していた[1]。
ここから、使いどころの条件が整理できる。「少量をすぐ」の場面では、保温を持たない設計が価格と速さの利点に変わる。逆に「大量を長時間」の場面では、保温のある電気ポットが向く。ただし、いずれの数値も2007〜2010年のテスト対象製品のもので、現行品の仕様は機種ごとに確かめる必要がある。
3. むかしの ケトルは、どうして おそかった?
3. 最初の電気ケトルは、なぜ10分以上もかかったのか
3. 発熱体を水の中へ ── 1891年の製品と1920年代の工夫
いちばん むかしの 電気ケトルは、1891年に アメリカの シカゴで 出されたと いわれます。ただし、だれが さいしょかは、しりょうに よって ちがう ことも あります[3]。
この ケトルは、あつく なる ぶぶんが、水の はいる ところとは べつの へやに ありました。お湯が わくまでに、10分いじょう かかった そうです[3]。
1920年代に、スワン社が 新しい くふうを かんがえました。あつく なる ぶぶんを 金ぞくの つつに 入れて、水の 中に ちょくせつ おいたのです。すると、水が はるかに はやく あたたまりました[3]。
別の部屋で温める
アメリカのNational MagLabの博物館の解説によると、世界初の電気ケトルは、1891年にシカゴのCarpenter Electric Companyが出したとされます。熱を出す部分は水とは別の部屋にあり、沸騰まで10分以上かかりました[3]。ただし最初に作ったのが誰かは資料により異なり、別の人物を挙げる説もあるため、「とされる」と書いています。
熱の元と水が別の部屋に分かれていたことが、遅さと関係していたと考えられます。
水の中に、直接置く
同じ解説によると、1920年代にスワン社が、発熱体を金属の筒に封じて水の中に直接置く方式を考えました。加熱はずっと速くなりました[3]。
温めたいものの中に、熱の元を入れてしまう。この発想の転換が、今の「すぐ沸く」ケトルの土台のひとつと考えられます。
National MagLabの博物館資料によると、世界初の電気ケトルは、1891年にシカゴのCarpenter Electric Companyが出したとされる。発熱体は水とは別の区画にあり、沸騰まで10分以上かかった[3]。熱が隔壁を通して水に伝わるため、効率が悪かったと考えるのが自然だ。ただし発明者・時期は資料により異なる説があり(別の人物を挙げるものもある)、断定は避けたい。
同資料は、1920年代にSwan社が発熱体を金属の筒に封じ、水中に直接置く方式を考えたことで、加熱がはるかに速くなったと述べる[3]。湯を沸かすために熱を水へ渡す距離を縮めた、という設計上の転換だ。
この資料からいえるのは、「使うたびにすぐ沸かす」という今の電気ケトルの性格が、最初から備わっていたのではなく、発熱体の置き方の改良を経て、実用的な速さになったということだ。なお1891年から今の製品までの間の細かな変遷(自動停止や耐熱材料など)は、このメモで使った資料の範囲には含まれない。
4. 日本で ひろまった きっかけは?
4. ティファールは、2001年に日本で電気ケトルを発売した
4. 日本市場の立ち上がり ── 2001年の発売とキャッチコピー
日本では、2001年に ティファールと いう 会社が、電気ケトルを はじめて はんばいしました。「あっというまに すぐに わく」と いう ことばで、うったそうです[4]。
ただし、これは この 会社が はじめて はんばいした 年で、日本で さいしょの 電気ケトルが この ケトルだと いう わけでは ありません。
この 「すぐに わく」と いう ことばは、ケトルの いちばんの つよみを あらわして います。
「あっという間にすぐに沸く」
BCNの市場記事によると、ティファールは2001年に日本で初めて電気ケトルを発売し、「あっという間にすぐに沸く」というキャッチコピーで、電気ケトルの市場を築いてきました[4]。
ここで言われているのは、同社が電気ケトルを発売した年であり、日本で最初の電気ケトルがこの製品だったという意味ではありません。
キャッチコピーが「速さ」だったことは、電気ケトルの一番の売りが、使う場面での待ち時間の短さだったことを示しています。
BCNの2022年の記事は、ティファールが2001年に電気ケトルを初めて発売して以来、「あっという間にすぐに沸く」のキャッチコピーで市場を築いたと述べる[4]。これは同社の発売年であり、国内初の電気ケトルがティファールだと書かれているわけではない。
この記事から読み取れるのは、日本で電気ケトルを売り込む際の価値が、まず「速さ」で語られたことだ。電気ポットが「保温」で選ばれる道具だったのに対し、電気ケトルは「待たずに使える」ことを前面に出した。
なお、日本での普及の年表(2001年以降の出荷台数や、各社の参入時期)は、このメモの資料には含まれない。2001年は、ひとつの企業の発売年という限定つきの数字として読む必要がある。
5. お茶や コーヒーに あわせて 温度を えらぶ
5. 飲み物に合わせて、温度を選ぶケトル
5. 温度設定 ── 沸かすだけの道具から、飲み物に合わせる道具へ
さいきんは、お湯の 温度を えらべる ケトルが ふえて います[4]。
ティファールの 温度せっていの タイプは 5だんかいで、日本茶、こう茶、コーヒーの ほか、ゆせんに べんりな 温度にも あわせられます。60分 ほおんできる きしゅも あります[4]。これは 1つの きしゅの はなしで、ぜんぶの ケトルに ある わけでは ありません。
むじるしりょうひんの スタッフの 記事では、目やすとして コーヒーは 90〜95度、せんちゃは 70〜80度、ぎょくろは 50〜60度と しょうかいされています[5]。これは 1つの 会社の 目やすで、すきな あじや 茶葉で かわります。
温度を設定できるタイプ
BCNの記事は、近年、温度を設定できるタイプの販売が伸びていると伝えています。ティファールの温度設定タイプは5段階で、日本茶・紅茶・コーヒーのほか、湯せんに便利な温度にも対応し、60分保温できる機種もあります[4]。これは一つの機種の仕様で、全ての電気ケトルにある機能ではありません。
飲み物ごとの温度の目安
無印良品のスタッフ記事では、温度の目安として、コーヒーは90〜95℃、煎茶は70〜80℃、玉露は50〜60℃、紅茶は100℃とされています[5]。一社の目安で、好みや茶葉によって変わります。
「沸かすだけの道具」だった電気ケトルが、飲み物に合わせて温度を選ぶ道具へと広がってきたことが分かります。
BCNの記事によると、近年は温度を設定できるタイプの販売が伸びている。ティファールの温度設定タイプは5段階で、日本茶・紅茶・コーヒーに加え、湯煎に向く温度にも対応し、60分の保温ができる機種もある[4]。一機種の仕様であり、全ての電気ケトルが持つ機能ではない。
温度の目安として、無印良品のスタッフ記事は、コーヒー90〜95℃、煎茶70〜80℃、玉露50〜60℃、紅茶100℃を挙げる[5]。一企業の目安であり、茶葉や好みによって変わる。
ここには変化がある。最初の電気ケトルは「保温を持たず、使うたびに沸かす」ことで特徴づけられていたが[2]、温度設定タイプは、沸騰させる以外の用途と、一部の機種では保温まで取り込んでいる。ただし、この資料の範囲では、普及の度合いまでは示されない。電気ケトルの「保温しない」という定義は、機種によっては当てはまらなくなりつつあるとも読める。
6. ケトルに 入れて いいのは、水だけ
6. 水以外を入れない、満水線を守る
6. 使うときの条件 ── 水だけを入れる理由と、テストで見えた限界
電気ケトルは、水を わかす どうぐです。ぎゅうにゅうや スープ、みそしるなどを 入れると、ふきこぼれたり、こわれたり する ことが あると いわれます[6]。使う ときは、おうちの せつめいしょで たしかめましょう。
水の 入れすぎも だめです。こくみん生活センターの テストでは、きまった りょうより 300ミリリットル おおく 入れたら、4つの ケトルは ゆげの 出口から、1つは 注ぎ口から お湯が ふき出しました[1]。「まんすいせん」の しるしを まもる のは、そのためです。
お湯が わいたら、じどうで 止まる しくみも あります。からだきを した ときも、テストした ぜんぶの ケトルで 止まりました[1]。それでも、たおすと お湯が 出る ものも ありました。つかう ときは、たおさない ところに おきましょう。
水以外は入れない
電気ケトルは水を沸かす道具で、牛乳・スープ・みそ汁などを入れると、吹きこぼれや故障のおそれがあります。メーカーの公式ページでは、水以外を沸かすと液体の噴き出しや湯漏れ、故障の原因になると案内されています[6]。機種によって記載は異なるため、お使いの説明書で確かめてください。
水の入れすぎと、倒れたとき
国民生活センターの2010年のテストでは、定格容量より300ml多く入れると、4銘柄は蒸気口から、1銘柄は注ぎ口から湯が噴き出しました[1]。満水線を守る理由です。
空だきをしたとき、自動で停止する機能は、テストした全製品で作動しました。一方で、給湯ロックのない2製品は、倒れたとき約470mlの湯が流れ出ました[1]。これは2010年に、7製品を調べた結果で、今の製品全体の数字ではありません。
水以外の液体について、メーカーの公式FAQは、水以外を沸かすと液体の噴き出しや湯漏れ、故障の原因になるとして、水以外を入れないよう案内している[6]。ただし、機種により記載は異なるため、使用する機種の説明書で確かめる必要がある。
国民生活センターの2010年のテストでは、定格容量より300ml多く入れると、4銘柄は蒸気口から、1銘柄は注ぎ口から湯が噴き出した[1]。満水線を守る理由は、この結果から具体的に分かる。
安全面では、空だき自動停止が全製品で作動した一方、給湯ロックのない2製品は転倒時に約470mlの湯が流れ出た[1]。ただし7製品を対象とした2010年の結果で、現行製品全体に一般化はできない。電気ケトルは「すぐ沸く」道具である分、満水線・水以外を入れないこと・置き場所の3点を守って使うことで、利点を活かせる。
7. おうちの ケトルを しらべて みよう
7. 家のケトルで確かめる3つのこと
7. 出口 ── 手元の機種で確かめられること
おうちの 人と いっしょに、ケトルを 見て みましょう。お湯が 入って いる ときや、わいた すぐあとは、さわらないで くださいね。
まず、ケトルの そこや よこに かいて ある「W(ワット)」の 数を さがします。つぎに、「まんすいせん」の しるしが どこに あるか 見て みましょう。さいごに、せつめいしょに「水いがい」の ことが どう 書いて あるか、おうちの 人と 読みます。
おうちの 100ボルトで つかう ときは、ワットの 数を 100で わると、でんりゅうの アンペアが だいたい わかります。たとえば 1200ワットなら、12アンペアです。あなたの 家の ケトルは いくつ でしょう。
家に電気ケトルがあるなら、冷めた状態で、次の3つを見てみましょう。
1つ目は、本体のラベルにある消費電力(W)です。家庭の100Vで使うときは、数字を100で割ると、流れる電流(A)のおよその値が出ます。たとえば1,200Wなら約12Aです。2つ目は、満水線と最小量の目盛りです。3つ目は、取扱説明書の「水以外を入れない」などの注意書きです。
安全のため、お湯が入っているときや沸かした直後は触らず、確かめるのは冷めてからにしてください。
これらを調べると、「自分の家のケトルは、2010年のテスト製品と比べて、どれくらいの電力で、どんな注意書きがあるのか」が見えてきます。さらに知りたくなったら、お店で売っている別のメーカーの電気ケトルや電気ポットの説明書と見くらべると、保温や温度設定の有無、消費電力のちがいが分かります。
手元の電気ケトルで、冷めた状態のとき、次の点を確かめられる。本体ラベルの消費電力(W)を100Vで割ると、流れる電流の目安(A)が出る。1,200Wなら12Aだ。次に、満水線と最小量の目盛りの位置、取扱説明書の水以外の液体についての記載を見る。安全のため、湯の入った状態や沸騰直後は触れない。
確かめた数字を、国民生活センターのテスト(2010年)での900〜1,300Wと比べると、現行品とのちがいが見える可能性がある[1]。資料は、国民生活センターの報道記事[1]、名古屋市の商品テスト[2]、National MagLabの博物館資料[3]が、それぞれ日本語・英語で読める。
電気ケトルは、保温をしない設計で、価格や速さに特徴がある道具だと読める。その上で、機種によっては温度設定や保温を足してきた。「何を捨て、何を足したか」という見方は、ほかの家電を見るときにも使える問いだ。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
出典について:国民生活センターのテストを伝える報道、名古屋市の商品テスト資料、博物館の解説、市場記事、メーカー関連の情報を使った。何に使ったかは、それぞれの項目の最後に書いている。
- 家電Watch「国民生活センター 電気ケトルのテスト結果」(2010年6月9日)。https://kaden.watch.impress.co.jp/docs/news/373127.html (保温機能がないこと、価格と速さ、消費電力、満水線、自動停止と転倒時の流出について。報道。もとの公表資料は 国民生活センター「電気ケトルの安全性」)
- 名古屋市「電気ケトルの商品テスト」(2007年)。https://www.seikatsu.city.nagoya.jp/files/anzen/file/ketol.pdf (電気ケトルの定義と消費電力の範囲について)
- National MagLab Museum「Kettle 1891」。https://nationalmaglab.org/magnet-academy/history-of-electricity-magnetism/museum/kettle-1891/ (最初期の電気ケトルと発熱体を水中に置く方式について。英語)
- BCN「電気ケトル市場」記事(2022年2月3日)。https://www.bcnretail.com/news/detail/20220203_264677.html (2001年の発売と温度設定タイプについて)
- 無印良品 スタッフ記事(電気ケトル)。https://www.muji.com/jp/ja/shop/046607/articles/muji-staff/1409171 (飲み物ごとの温度の目安について。一企業の解説)
- T-fal(ティファール)公式「製品に関するよくあるご質問(電気ケトル)」。https://www.t-fal.co.jp/consumer-services/faq/kettles/kettles/ (水以外を沸かすと噴き出しや故障の原因になることについて。機種により記載が異なる)
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