1. 球根を 一まい ずつ はがすと、なにが 出て くるの?
1. 球根を1枚ずつはがすと、何が出てくるのか
1. 球根の正体は葉の集まり ── 鱗茎と、はがれやすい鱗片
ゆりの 球根は、にんにくの ように 小さな かけらが 重なって できて います。この かけらを 鱗片と いいます。
じつは、この 鱗片は、葉が あつく 形を かえた ものです[1]。地面の 下に、葉が 重なって かくれて いる のです。ゆりの 球根は、ぜんたいを 鱗茎とも よびます。
ゆりの 球根には、玉ねぎの ような かたい 皮が ありません。そのため かわきやすく、鱗片も はがれやすいと いわれます[1]。
はがれた 鱗片は、すてなくても だいじょうぶ。土に さすと、切り口に 新しい 球根が できる ことが あります[2]。葉の かけらが、ひとつの 小さな 体に なる のです。
では、この 球根から、根は どこに 出るのでしょう。
ユリの球根は、形の上では鱗茎(りんけい)と呼ばれます。茎が変化した部分に、葉が変化して厚くなった鱗片が重なっています[1]。花芽そのものではなく、厚くなった葉が重なって養分をためている姿だと考えるとイメージしやすくなります。
タマネギのような乾いた皮(球皮)がないため、乾燥しやすく、鱗片ははがれやすいとされます[1]。この性質は、ふやし方にも使われます。フロリダ大学の資料では、鱗片は変形した葉で、はずして置くと切り口に新しい球根ができると説明されています[2]。
葉の一部から、新しい植物の体ができる。ここが、ユリの球根の一番ふしぎなところです。では、この球根はどこから根を出し、どう土に根づくのでしょうか。
2. 球根の 上にも 根が あるのは、なぜ?
2. 球根は、上と下の両方から根を出すのはなぜか
2. 上根と下根の役割 ── 浅植えの球根が自分で深く潜る条件と限界
ゆりの 根は、球根の 下だけでなく、上からも 出ます。上に 出る 根を 上根(うわね)、下の 根を 下根(したね)と いいます[1]。
下根は、球根を しっかり ささえる 根で、2〜3年 生きると いわれます。上根は、水や 養分を すいとって、茎を ぐらつかない ように します。上根は 1年で かれると いわれます[1]。
もっと ふしぎな 話が あります。球根が あさく 植えられて いると、根が 球根を 土の 深い ところへ ひっぱりこむ ことが あります[3][4]。
ある 実験では、青い 光が きっかけに なる ことも ありました[4]。ただし、イースターリリーという 1つの ゆりを、人が つくった 土で 調べた はなしです。ぜんぶの ゆりが おなじ 深さまで もぐる わけでは ありません。
地面の 下では、根が 球根を 土の 中へ ひっぱって いる ことが あるのです。では、寒い 冬の あいだ、球根は なにを して いるのでしょう。
ユリの根は、役割の異なる2種類に分かれます。球根の下から出る下根は、球根を支え、一般的な説明では2〜3年生きるとされます。球根の上の地下茎に出る上根は、水や養分を吸い、茎を安定させ、1年で枯れるとされます[1]。
アメリカのユリの栽培家の解説では、上根は地表近くの養分を吸う根で、球根の底の根は球根を固定し、ゆるい土では植えた深さより球根を引き下げることがあるとされています[3]。
この引き下げる働きは、研究の紹介記事(ScienceDaily)でも取り上げられています。浅く植えた球根が、収縮根(しゅうしゅくこん)という根の働きで深いところへ引き込まれ、青い光が引き金になる実験が報告されました。深く植えると働きが弱まり、イースターリリー'Nelly White'では、バーミキュライトの中で約15cmで止まりました[4]。1品種・人工の土での結果なので、ほかのユリにそのまま当てはまる深さではありません。
地面の下では、根が球根を土の中へ引き下げることがあります。では、その球根は寒い冬をどう過ごすのでしょうか。
ユリの根は、上根と下根(茎根)に分かれる。下根は球根を支えて、一般的な説明では2〜3年生き、上根は水と養分の吸収と茎の安定を担い、1年で枯れるとされる[1]。
役割の分担は、アメリカの栽培家の解説にも見える。球根の上の地下茎に出る根(stem roots)は地表近くで養分を吸う。一方、球根の底の根(basal roots)は球根を固定し、土がゆるいと植えた深さより球根を引き下げることがある[3]。つまり、浅く植えた球根は、土の条件によって根に引き下げられることがある。
この引き下げは収縮根(contractile roots)によるとされ、ヒガンバナ類やユリ類で、浅植えの球根が深いところへ引き込まれる現象が確かめられている。研究紹介(ScienceDaily)によると、青い光が引き金になる実験があり、植え付けが深いと効果は弱まって、バーミキュライト中で約15cmで止まった(イースターリリー'Nelly White')[4]。ただし1品種を人工の土で調べた結果であり、すべてのユリが約15cmで止まるとは言えない。
根の仕事は、いつでも続くわけではない。次は、寒い季節に球根が何をしているのかを見る。
3. 冬の あいだ、球根は ねて いるの?
3. 冬の球根は、ただ眠っているだけなのか
3. 休眠と花芽 ── 低温を経て、いつ花になる準備が整うか
ゆりは、寒い 冬の あいだ、休眠と いう ねむりの ような じょうたいに なります。あたたかい 季節に なると 育って、花を さかせます[1]。
ゆりの 花芽は、春ごろに できるのが ふつうです。そして、はつ夏から 秋にかけて 花が さきます[1]。さく 時期は ゆりに よって ちがい、東京の まわりでは 5月に さく ゆりも あれば、8月に さく ゆりも あります[1]。
でも、花芽が できる 時期も ゆりに よって ちがいます。東北の ある 県の 研究では、ヒメサユリから 生まれた 品種は、9月の 新しい 球根の 中で 花芽が できたと つたえられて います[5]。
この 研究では、7月に ほった 新しい 球根を、5〜13℃の ひんやり した 場所に 8週間 おくと、休眠が さめて 芽が 出て、花が さきました[5]。これは その 品種の 場合です。
さむさを すごした ことで、球根の 中で、花の 用意が 進んで いる ようです。でも、花が さくと、球根は どうなるのでしょう。
ユリは、寒い時期は休眠し、暖かい季節に育って花を咲かせます[1]。一般には春に花芽ができ、初夏から秋に咲きます。開花期は種類で違い、寒冷地型のオトメユリなどは東京周辺で5月、暖地型のカノコユリなどは8月です[1]。
花芽ができる時期も一定ではありません。宮城県の品種育成の研究では、ヒメサユリの性質を受けついだ品種は、芽が出る前の9月に、新しい球根の中で花芽が分化していました。7月に掘り上げた新球根を5〜13℃で8週間貯蔵すると、休眠が覚めて芽を出し、開花しました[5]。ある交雑品種での結果で、すべてのユリの時期ではありません。
冬の球根は、動かないだけではなく、次の季節の準備を内側で進めていると読めます。では、花が咲くとき、球根は何を使っているのでしょうか。
ユリは低温期は休眠し、暖かい季節に生育・開花する。花芽分化は一般に春で、開花は初夏〜秋である。ただし開花期は気候型で異なり、寒冷地型のオトメユリなどは東京周辺で5月、暖地型のカノコユリなどは8月に咲く[1]。
では、休眠は何のためにあるのか。宮城県農業・園芸総合研究所の報告によれば、ヒメサユリの性質を導入した品種では、萌芽前の9月に新球根の内部で花芽が分化し、7月に掘り上げた新球根を5〜13℃で8週間貯蔵すると、休眠が覚めて萌芽し開花した[5]。つまり、一定の低温を経ることが、休眠を終えるための条件になりうる。
この報告は特定の交雑品種の結果であり、花芽分化の時期や休眠の深さは種によって異なる。そのため「ユリは9月に花芽ができる」とは一般化できない。冬の球根は、外から見えない所で花への準備を進めていることになる。では、その花が咲いた球根は、どうなるのか。
4. 花を さかせると、球根は つかれるの?
4. 花を咲かせると、球根の力はどうなるのか
4. 花か球根か ── 食用ユリの摘蕾から分かる、株の力の使い道
食べる ための ゆり(食用ゆり)を 育てる 人は、夏に 花が さく 前の、小さな つぼみを つみとります[6]。
どうしてでしょう。花が さくと、ゆりは ちからを つかって しまいます。そのため、球根を 大きく したいときは、つぼみを とって、ちからを 球根に のこす のです[6]。
11月ごろ、球根を ほり上げて、鱗片を 一まい ずつ はがして 使います[6]。
これは 食べるための ゆりの 育て方です。庭の ゆりでも、花を さかせる ことには 意味が あります。でも、花を さかせる ことと、球根を 太らせる ことは、おなじ ちからを わけあって いる、という 見方が できます。
では、もっと はじめから 見て、たねから 花まで どれくらい かかるのでしょう。
家庭園芸向けの栽培解説(コメリ)では、食用ユリは7〜8月に花が咲くと株の力が消耗するとされます。そのため、球根を大きくするために、つぼみが小さいうちに摘み取ります。収穫は11月ごろで、球根を掘り上げ、鱗片を1枚ずつはがして使います[6]。
花を咲かせることと、球根を大きくすることは、同じ株の力を取りあう関係にあると読めます。食用ユリは、花より球根を目的とした育て方です。観賞用のユリでは目的が違います。
毎年の花は、株が力をたくわえた結果でもあります。では、その球根は最初にどうやってできるのでしょうか。種から花までを見てみます。
家庭園芸向けの栽培解説(コメリ)によれば、食用ユリは7〜8月に花を咲かせると株の力が消耗するため、球根を肥大させる目的で、つぼみが小さいうちに摘蕾(てきらい)する。収穫は11月ごろに球根を掘り上げて行い、鱗片を1枚ずつはがして使う[6]。
この栽培法が前提としているのは、花を咲かせることと、球根を太らせることが、同じ株の力を取りあうという見方である。花を咲かせないという選択が、球根という収穫物の大きさにつながる。
ただし、これは食用ユリを球根のために育てる場合の説明であり、鑑賞用の栽培にそのまま当てはまるとは言えない。この記事の範囲では、花後の葉が新球根を太らせる仕組みを直接説明する資料は扱っていない。では、そもそも球根はどのくらいの時間をかけて、花を咲かせる大きさに育つのか。
5. たねから 花が さくまで、なん年 かかるの?
5. 種をまいてから花が咲くまで、何年かかるのか
5. 種から開花まで5年前後 ── ヤマユリが花を咲かせるまでの年数
ヤマユリは、たねを まいてから 花が さくまで、はやくて 5年、ふつうは 6〜7年 かかると いわれます[7]。川崎市 麻生区の なえを そだてる ための しりょうでは、地面の 上に 芽が 出るまで 1年半、花が さくまで 4〜5年と されます[7]。
数字が 少し ちがうのは、育つ ところや 数え方が ちがうから と 考えられます。どちらも 5年 ほどは かかる、と おぼえて おくと いいでしょう。
ですから、毎年 さく ヤマユリの 花は、小さな たねから 長い 年月を かけて 育った 球根が、また 次の 夏に さかせた ものです。
5年も かけて 育った 球根だと 思うと、ゆりの 花を 見る 目が 少し かわりませんか。
ヤマユリは、種から花が咲くまで早くても5年、通常は6〜7年かかるとされます(神奈川県の観光機関の説明)。川崎市麻生区の育苗資料では、種をまいて地上に芽が出るまで1年半、花を咲かせるまで最低4〜5年とされています[7]。出典で数字が違うため、「5年前後かそれ以上」と幅で見るのが安全です。
この長さは、球根が花を咲かせられる大きさになるまでの時間でもあります。毎年の花は、何年もかけて育った球根の積み重ねの結果です。
ここでの数字は、ヤマユリの場合です。ほかのユリの年数は、この記事の資料からは言えません。
ヤマユリは、種子から開花するまで早くても5年、通常は6〜7年かかるとされる(神奈川県の観光機関の説明)。川崎市麻生区の育苗資料では、播種から地上に芽が出るまで1年半、開花まで最低4〜5年とされる[7]。神奈川県の説明は5〜7年、川崎市の資料は4〜5年で数字は一致しないため、「5年前後かそれ以上」と幅で捉えるのが妥当である。
ここでの年数はヤマユリの例であり、ほかのユリに当てはまるとは限らない。毎年咲く花は、種から数えれば5年前後の時間の先にある。
6. 球根を 見かけたら、なにを たしかめる?
6. ユリの球根と花を見かけたら、確かめたいこと
6. 鱗片の枚数と根の位置を、自分の目で確かめる
やってみよう。おうちに 玉ねぎが あれば、おうちの 人と いっしょに 半分に 切って もらい、中を 見て みましょう。
うすい 層が 重なって います。ゆりの 鱗片も、こんな ふうに 重なって いました。層の 数を かぞえて、外がわと 中がわで 形や 厚みが ちがうか、くらべて みましょう。
これは 葉が かわった もの。そう 思って 見ると、地面の 下で、葉が 重なって いる ようすを 思いうかべられます。
もっと 知りたく なったら、本や 図かんの ゆりの ページを、おうちの 人と 見て みましょう。球根の 絵も のって いる はずです。
やってみよう。台所のタマネギを、家族に頼んで縦半分に切ってもらい、断面を見てみましょう。薄い層が重なっているようすを、この記事で読んだユリの鱗片の重なりと比べます。外側と内側で厚みや形が違うか、乾いた皮(球皮)があるかも見てみます。
食用のゆり根が手に入る機会があれば、鱗片の数を数えて、タマネギと比べてもよいでしょう。上根と下根が球根のどこから出ているかは、記事の説明を読み返しながら考えてみてください。
この記事では、球根が引き下げられる実験や、花芽ができる時期の研究は、特定の種類での報告でした。ほかのユリではどうなのか、は、読み終えたあとの自分の問いとして残しておけます。
この記事の内容は、観察と文献の2つで確かめられる。観察では、台所のタマネギを切って層の重なりと球皮の有無を見ておき、食用のゆり根を入手できたときは、鱗片の枚数・大きさの分布・球皮の有無を比べる。球皮がなく鱗片がはがれやすいという構造[1]が、実物で確認できる。
文献では、出典欄の資料を比べるとよい。上根・下根の寿命については一般的な説明にとどまり[1]、収縮根の実験は1品種・人工の土での結果[4]である。休眠打破の温度も特定の品種の値[5]であり、ヤマユリの種から開花までの年数は、資料によって4〜7年と幅がある[7]。数字が一般化できる範囲を見分けることが、読み比べの練習になる。
この記事の範囲では分からないことも残る。開花後の葉が新球根を太らせる過程は、別の資料で確かめたい。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
出典について:球根の構造・根・開花期は事典(ニッポニカ)、鱗片の繁殖と根の働きは大学・栽培家・報道資料、休眠と花芽は県の研究報告、食用ユリの栽培と種から開花までの年数は園芸・観光機関の説明を使った。一部は一品種・一地域の結果で、すべてのユリに当てはまるとは限らない。
- 日本大百科全書(ニッポニカ)「ユリ」(コトバンク)。https://kotobank.jp/word/%E3%83%A6%E3%83%AA-652410 (鱗茎の構造、上根・下根、休眠と開花期)
- UF/IFAS Non-tunicate bulbs(フロリダ大学)。https://propg.ifas.ufl.edu/07-geophytes/01-bulbs/07-geophytes-nontunicate.html (鱗片は葉の変形、切り口から新しい球根)
- B&D Lilies "Lily bulb roots"。https://www.bdlilies.com/roots.html (茎根と底の根の役割。栽培家の解説)
- ScienceDaily "'Smart' Flower Bulbs Pull Themselves To Deeper Ground"(2007)。https://www.sciencedaily.com/releases/2007/12/071203094826.htm (収縮根の実験。1品種・人工の土での結果)
- 宮城県農業・園芸総合研究所 研究報告 第70号(2002)。https://www.pref.miyagi.jp/soshiki/res_center/no70.html (花芽分化の時期と休眠が覚める条件。特定の品種の結果)
- コメリ ハウツー「食用ユリのつくり方」。https://www.komeri.com/contents/howto/html/04040.html (摘蕾と収穫)
- 神奈川県観光協会 ヤマユリ/川崎市麻生区ヤマユリ育苗資料。https://kanagawa-kankou.or.jp/features/flower109 (種から開花までの年数)
なおした ところ
更新履歴
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