1. モールの「じょうけん」に、イベントが 入って いる?
1. 「店が10軒以上」だけでは足りない ── SCの条件に入っているもの
1. SC取扱い基準の4条件と「共同活動」の位置づけ
日本ショッピングセンターきょうかいは、モールを「ひとつの けいかくで つくられ、うんえいされる、おみせの あつまり」と 考えて います[1]。
きまりには、おみせの 数や ひろさの ほかに、「みんなで イベントや せんでんを して いる こと」が あります[1]。ひとつの おみせが かって に ひらく ものでは なく、モールの なかまで ひらく もの、という 考えかたです。
ふだん 行く モールで、おみせの 前の ポスターや、ひろばの ステージを 見た ことは ありませんか。それも モールの しごとの 一つです。
では、そもそも モールには、どんな おみせが どれくらい 入って いるのでしょう。
協会が決めている4つの条件
日本ショッピングセンター協会は、SCを「一つの単位として計画、開発、所有、管理運営される商業・サービス施設の集合体で、駐車場を備えるもの」と定義しています[1]。個々の店の寄せ集めではなく、全体がひとつのものとして運営される、という考え方です。
この定義にそって、SCとして数える基準が4つあります。2025年1月1日の改定版では、小売の店舗面積が1,000平方メートル以上、テナントが10店舗以上、いちばん大きい店が全体の面積の約80%を超えないこと、そして広告宣伝や共同催事などの共同活動を行っていることです[1]。面積の条件は以前は1,500平方メートルだったので、古い資料の数字とは食いちがいます。
イベントは「おまけ」ではなく条件
4つ目の条件は、店の数や広さとちがって、売り場の外の活動です。全体がひとつの単位として運営される、という定義と並べて読むと、店が一緒に宣伝をしたりイベントを開いたりすることまで含めて、ひとつの施設なのだと読めます。これは協会自身の説明ではなく、この記事の読み方です。
では、この「ひとつの施設」の中身は、実際にどんな店でできているのでしょうか。
協会はSCを、「一つの単位として計画、開発、所有、管理運営される商業・サービス施設の集合体で、駐車場を備えるもの」と定義する[1]。ここで注目したいのは、「集合体」である一方で、「一つの単位」として計画から管理運営までが貫かれている点だ。店が並ぶことと、全体が一体で運営されることは、別の話として扱われている。
この定義を具体化するのが取扱い基準で、2025年1月1日改定版は、小売店舗面積1,000m²以上、テナント10店舗以上、最大の店舗が全体面積の約80%を超えない、広告宣伝・共同催事等の共同活動を行う、の4つを挙げる[1]。面積条件は旧基準で1,500m²だったため、古い資料と数字が合わないことがある。改定の理由は、ここで使った資料には書かれていない。
4つの条件のうち、はじめの3つは店の数と広さに関わる。4つ目だけが、売り場の外の活動だ。「一つの単位として……管理運営される」という定義と並べると、共同の宣伝やイベントは、その運営の中身として位置づけられていると読める。ただしこれは、定義と基準を並べたうえでの読み方であり、協会自身の説明ではない。
ではその「一つの単位」は、どんな店でできているのか。施設数と店舗数のデータから見る。
2. モールの おみせの 4わりは、たべものと サービス
2. 店の約4割は、物を売らない店
2. 2025年末のテナント構成 ── 物販61.0%、飲食18.2%、サービス20.8%
日本には、モールのような 大きな しせつが、3,013 か所 あります。ぜんぶの おみせを あわせると、164,545 みせです[2]。ひとつの モールに、へいきんで 55みせ ほど 入って いる 計算です。
しゅるいが わかる おみせを わけると、ものを うる おみせが 61%、たべものの おみせが 18.2%、サービスの おみせが 20.8%です[2]。サービスの おみせは、たとえば かみを きる おみせや、くつの しゅうりを する おみせです。
たべものと サービスを たすと、39%。ものを うる だけでは ない おみせが、4わり ちかく あるのです。
ただし これは おみせの 数の わりあいで、いくら うれたかの はなしでは ありません。
1つのモールに55店、その約4割は
協会の統計では、2025年末のSCは3,013施設で、テナントは合わせて164,545店でした。割り算をすると、1施設あたり平均約55店です[2]。
業種が分かる店の内訳は、物販が61.0%、飲食が18.2%、サービスが20.8%です[2]。飲食とサービスを足すと39.0%になり、約4割にあたります。平均の55店のモールなら、約21店が、食べ物の店かサービスの店という計算です。
サービスの店には、美容室や靴の修理店のような、物ではなく手間や時間を売る店が含まれます。モールには、物を売る店だけでなく、飲食店やサービスの店も入っています。ここで示した割合は、店の数にもとづくもので、売上の割合ではありません。
大きな店も小さな店も、飲食店も美容室も、ひとつの建物に入ります。それなら、バラバラな店の集まりを、誰がどうやってひとつの場所として見せているのでしょうか。
協会の統計(2025年末)によれば、SCは3,013施設、テナントは合計164,545店で、1施設あたり平均は約55店である[2]。164,545÷3,013を計算すると約54.6なので、資料の「平均55店」と合う。なお施設数は年によって動き、集計の基準も改定されているので、年のちがう数字は単純には比べられない。
業種が判明しているテナントの業種別割合は、物販(小売)61.0%、飲食18.2%、サービス20.8%である[2]。3つを足すと100.0%になる。飲食とサービスを足すと39.0%で、店の約4割は物を売る店ではない。平均の55店に当てはめれば約21店で、これは単純な掛け算による目安であり、個々のSCがそうなっているという意味ではない。また、この割合は店舗数ベースで、売上高ベースではないから、「売上の4割が飲食とサービス」とは読めない。
この構成は、1の定義と合わせて読むと意味を持つ。物販・飲食・サービスが一つの施設に混ざるとき、店ごとの客層も営業時間もばらばらになる。それを全体として運営する必要がある、ということになる。では、その運営の一つとして実際に何が行われているのか。次はイベントを見る。
3. モールの イベントは、どんな ものが あるの?
3. キャラクターショーから謎解きまで ── 店の外で開かれること
3. 「モノ」から「コト」へ ── 集客メディアが挙げるイベントの型と企画の絞り方
モールの イベントには、いろいろな ものが あると いわれます。キャラクターの ショー、バルーンや ジャグリングの 大どうげい、ふくらませた あそびどうぐ、てづくりを する こうさく、なぞとき、きょうりゅうの てんじ、などです[3]。
モールの 中を あるいて スタンプを あつめる 「ウォークラリー」や、ホールの えんげいの イベントを ひらく 大きな モールも あると いわれます[3]。おみせで ものを かう だけでは ない 「ことを たのしむ」 しゅるいの イベントです。
これを 考える 人は、「だれに、なにを たのしんで もらうか」を、ひとつか ふたつに しぼる ことが たいせつだと いわれます[3]。
「モノ」より「コト」
SCの集客方法を紹介した記事(2020年)によれば、イオンモールは「モノ」ではなく「コト」に注目し、体験を中心にしたモールづくりに取り組んでいるといわれます。例として、モール内のウォークラリーやホールでの演芸イベントが挙げられています[3]。この記事は集客を扱うメディアのもので、モール側の公式な発表ではありません。
どんなイベントがあるか
同じ記事は、SCのイベント例として、キャラクターショー、バルーンやジャグリングの大道芸、空気で膨らませる遊具、ワークショップ、謎解き、恐竜展のような展示を挙げています[3]。どれも、買い物をしなくても楽しめる内容です。
企画は「誰に、何のため」から
イベントを考えるときに大切なのは、目的と、ターゲット(来てほしい人)を、1つか2つにしぼることだと記事は説明しています[3]。恐竜展なら家族連れ、謎解きなら友だち同士というように、同じモールでも日によって来てほしい人が変わります。
ここまでは、今のモールの話です。では、日本の最初のモールは、どんな場所として始まったのでしょうか。
集客メディアの記事(2020年)は、イオンモールが「モノ」ではなく「コト」に注目し、モール内のウォークラリーやホールでの演芸イベントなどに取り組んでいるとする[3]。ただし、これはモール運営会社自身の発表ではなく、集客を扱うメディアが事業者の動きを紹介した記事である。イオン1社の例でもあるため、全SCに共通する傾向として読むことはできない。
同じ記事は、SCのイベント例として、キャラクターショー、バルーン・ジャグリングなどの大道芸、エアー遊具、ワークショップ、謎解き、恐竜イベントなどの展示会を挙げ、企画で大切なのは「目的」と「ターゲット」を1〜2個に絞ることだと述べる[3]。
1の基準と合わせて読むと、これらのイベントは、店ごとの販促とは別に、施設全体の側で企画されるものにあたる。「共同催事」という言葉がSCの基準に入っている背景には、こうした活動があると読むのが自然だが、基準の文面自体はイベントの種類まで定めていない。なお、運営会社(デベロッパー)の具体的な仕事内容は、ここで使った資料では裏づけが取れていないので、触れない。
では、こうした「全体で運営する」形のモールは、日本でいつ、どんな場所に最初に現れたのか。
4. 日本の さいしょの モールは、どこに できたの?
4. 日本の本格的な郊外型SCは、二子玉川から始まった
4. 玉川高島屋S・C ── 宅地開発とマイカーの時代に開いた郊外型SC
日本で さいしょの、まちの そとの モールと いわれるのは、1969ねん 11月11日に ひらいた 「玉川たかしまやS・C」です。ばしょは、二子玉川の えきの 前でした[4]。
はじめから、玉川たかしまやと、125 の せんもんてんが そろって いました[4]。いまの モール 1つぶんの へいきんは 55みせ ほどですから、その 2ばいを こえる 数です。
このころ、まちの そとには 家が ふえ、じどうしゃを もつ 人も ふえて いました。ひらいた ときの ことばは、「日本の ゆたかな こうがいの まくあけです」でした[4]。
それから 50ねん あまり。いま 日本の モールは 3,013 か所です[2]。
1969年11月11日、二子玉川駅前
日本で初めての本格的な郊外型SCとされるのは、1969年(昭和44年)11月11日に、東急田園都市線の二子玉川駅前で開業した玉川高島屋S・Cです[4]。「日本初のSC」とまでは言い切れませんが、「本格的な郊外型として日本初」と紹介されています。開業時は、玉川高島屋と125の専門店でスタートしました[4]。
2025年末の平均は1施設あたり約55店なので、開業時の125店は、その2倍を超える大きさです。
家が増え、車が増えた時代に
高島屋の紹介によれば、開業の背景には、首都圏の郊外で宅地開発が進んだことと、マイカーが広まり始めたことがありました。開業時のキャッチコピーは「日本の豊かな郊外の幕開けです」でした[4]。駅から近く、車でも来られる場所に、店をまとめて計画する。協会の定義にある「駐車場を備えるもの」という言葉も、この時代の背景と並べて読むと意味が見えてきます[1]。
それから半世紀あまりで、日本のSCは2025年末に3,013施設になりました[2]。ただし開業当時の資料と今の協会の基準はつくられた時期がちがうので、1969年のSCが今の基準を満たしていたかどうかは分かりません。
日本で初めての本格的郊外型SCとされるのは、1969年(昭和44年)11月11日に東急田園都市線・二子玉川駅前で開業した玉川高島屋S・Cで、玉川高島屋と125の専門店でスタートした[4]。この情報は高島屋の創業周年企画の紹介記事(PR)にもとづく二次的なもので、高島屋や協会の沿革の一次資料では確かめられていない。そのため「日本で初めてとされる」と書くにとどめ、「日本初のSC」とは断定しない。
なぜ郊外だったのか。同じ紹介は、首都圏郊外の宅地開発とマイカーブームの到来を受けて、「日本の豊かな郊外の幕開けです」をキャッチコピーに開業したと述べる[4]。人が住む場所が駅から離れた郊外に広がり、車で出かける人が増えたことが背景にある、という説明だ。協会の定義が駐車場を要件に含めているのも、この時代の流れと同じ方向にある[1]。ただし、1969年の開業とこの定義の間にどんな経緯があったかは、ここで使った資料では分からない。
開業時の125店は、2025年末の平均約55店[2]の2倍以上で、最初から大きな規模だった。2倍という比は、年代のちがう2つの数字を割っただけの目安である。日本のSCは2025年末には3,013施設になった。大きな店を核に、専門店を組みあわせて計画する形が、半世紀かけて広がったことになる。
こうして広がった施設は、店とイベントのほかに、もう一つ役目を持ちはじめている。地域との関係だ。
5. モールは、まちの ための ばしょにも なる
5. 買い物の場所から、地域の備えの拠点へ
5. 防災協定にみる、SCの地域拠点としての側面
イオンモールは、日本中の モールで、まちの やくしょと 「そなえるための やくそく」を して いると 発表して います[5]。大きな じしんや 大雨が きた とき、ちかくの 人が あつまれる ばしょの 一つに なる、という やくそくです。
2023ねん 6月1日には、イオンの なかまの 会社 9しゃと、「大きな さいがいの ときに たすけあう やくそく」も しました[5]。ふだんは しょうぼうの くんれんや、そなえを まなぶ イベントも ひらいて います[5]。
これは イオンモールの 1社の ばあいで、ぜんぶの モールが 同じ わけでは ありません。
全国のモールと行政の協定
イオンモールは、全国のモールで地方行政と防災活動への協力に関する協定を結び、地域の防災拠点としての役割を担っていると発表しています[5]。2023年6月1日には、イオングループの企業9社と、大規模災害時の協力に関する協定も結びました。ふだんから、消防訓練や防災体験のイベントも行っています[5]。
これは、あくまでイオンモール1社の取り組みです。ほかのモール運営会社が同じことをしているとは、ここでは言えません。
それでも、モール全体で協定を結ぶ例はあります。1の定義にあった「一つの単位として運営される」施設だから、ほかの店や企業とまとめて協力できるのだと考えられます。これは資料の記述から導いたこの記事の見立てで、資料自身が理由を説明しているわけではありません。
イオンモールの公式ニュースは、全国のモールで地方行政と防災活動への協力に関する協定を締結し、地域の防災拠点としての役割を担うと述べる[5]。2023年6月1日にはイオングループ企業9社と大規模災害時の協力に関する協定書も結んだ。消防訓練や防災体験イベントも行うという[5]。
この記述は、事業者自身の公表であり、一次資料にあたる。ただし対象はイオンモール1社だけで、日本のSC全体の傾向を示すものではない。協会の基準の文面にも、防災協定のことは書かれていない[1]。
1で見た「一つの単位として管理運営される」という性格は、複数の店・企業をまとめて協定の相手にする場面で、実際に働いていると考えられる。これは資料の記述から導いた見立てで、資料自身がその因果を説明しているわけではない。モールが「店の集合」ではなく「運営される単位」として扱われていることは、販促のイベントだけでなく、こうした地域との約束にも表れている、と読める。
6. 近くの モールで、さがして みよう
6. 近くのモールで、「誰が決めたのか」を探してみる
6. 確かめ方 ── 身近なSCで「共同活動」の跡を探し、原典にあたる
おうちの 人と 近くの モールへ 行く ときに、ためして みましょう。
まず、おみせの ようすを 見ます。ものを うる おみせ、たべものの おみせ、サービスの おみせを、モールの あんない ばんで、いろ分けして 見て みましょう。ぜんぶで なんみせ あるか 数えられたら、18.2%や 20.8%と くらべて みるのも おもしろいです。
つぎに、イベントです。ひろばや ホールに、ポスターや ステージが ありませんか。おみせの 一つ一つの ポスターでは なく、モール 全たいの おしらせなら、「みんなで して いる こと」の 見つけ ものです。
ひとりで モールの 中を うろうろしないで、かならず おとなと 一しょに 行きましょう。
案内板で「店の種類」を数えてみる
モールの入口や各階にある案内板は、運営側が全体を見て作ったものです。そこに載っている店を、物販・飲食・サービスに分けて数えると、協会の統計にある61.0%、18.2%、20.8%と比べられます。ただし統計は全国の平均で、1つのモールでずれるのはふつうです。飲食とサービスを足して約4割になるのか、ならないのか、それ自体が、そのモールの特徴の見つけ方になります。
イベントの告知を探す
店ごとの広告ではなく、モール全体のお知らせとして出ているイベントを探してみてください。ポスター、館内放送、ホームページのどこに出ているのか。誰向けに、いつ開かれているのか。企画で大切な「目的」と「ターゲット」が読みとれるかもしれません[3]。
もっと知りたくなったら、日本ショッピングセンター協会のSCの定義のページ[1]と、SC概況のデータ[2]が、原典です。家族と一緒に確かめる場合は、混んでいる時間や通路でのメモの取り方に気をつけてください。
身近なSCで確かめる方法は、2つある。1つは店の種類の割合だ。館内案内図を見て、店を物販・飲食・サービスに分け、協会の統計値(61.0%、18.2%、20.8%)[2]と比べる。数は全国平均なので、一致しなくてよい。ずれ方に、そのSCの個性が出る。
もう1つは、「共同催事」にあたるものを探すことだ。個別の店の販促でなく、施設全体の名前で出ているイベントの告知を見つけ、誰向けで、何のためかを推測してみる。目的とターゲットを絞るという考え方[3]と照らすと、読み取れることがある。
資料としては、日本ショッピングセンター協会の「SCの定義」と「SC概況データ」[1][2]が原典だ。SC取扱い基準の改定(2025年1月)や施設数の年ごとの動きは、公式サイトで最新版を確かめられる。玉川高島屋S・Cの沿革は、この記事では二次資料にもとづいたので、高島屋や協会の沿革で確かめる余地がある[4]。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
施設のデータと条件は協会の公式サイトで、年によって変わります。数字は2025年末時点のものです。
- 日本ショッピングセンター協会「SCの定義」。https://www.jcsc.or.jp/sc_data/data/definition (SCの定義と取扱い基準4条件について)
- 日本ショッピングセンター協会「SC概況データ」。https://www.jcsc.or.jp/sc_data/data/overview (施設数・店舗数・業種別割合について)
- キャククル「SC・商業施設の集客術」(2020年)。https://www.shopowner-support.net/attracting_customers/retail/shoppingcenter/ (イベントの例と企画の考え方について。集客メディアの記事)
- 高島屋 創業190周年記念展の紹介(PR)。https://digitalpr.jp/r/45688 (玉川高島屋S・Cの開業について。二次資料)
- イオンモール ニュース(防災の取り組み)。https://www.aeonmall.com/news/index/8425 (防災協定と防災イベントについて。イオンモール1社の例)
なおした ところ
更新履歴
更新履歴(改版の記録)
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