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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

たかい 木や 山の たかさは、どうやって はかるの?

ものさしが届かない木や山の高さを、人はどうやって測ってきたのか

ピラミッドからエベレストまで ── 届かない高さを、人はどんな手順で測ってきたのか

分野:技術

2020ねんに、中国と ネパールが、エベレストの たかさを 8848.86メートルと はっぴょうしました[6]。ところが この すうじは、山の いちばん上に つもった 雪の たかさです。雪の したの いわの たかさは、まだ きまって いません[7]。

のぼれない ほど たかい ところの たかさを、人は どうやって はかるのでしょう。ものさしを あてる かわりに、かげ、見上げる 角度、ひくい ところからの 足しざん、えいせいを つかって、「はかれる ながさ」に おきかえて きました。その みちすじが わかります。

2020年12月、中国とネパールは、エベレストの高さを8848.86mと共同で発表しました[6]。ところがこの数字は、山頂に積もった雪の表面の高さです。雪の下の岩の高さは、雪の厚さが分からないため、まだ決まっていないとされています[7]。

では、登ることもできない高さを、人はどうやって測ってきたのでしょうか。ものさしが届かない高さを、影の長さ、見上げる角度、低い差の足し算、衛星の位置といった「測れるもの」に置きかえてきた道すじが分かります。

2020年12月8日に中国とネパールが共同発表したエベレストの標高8848.86mは、山頂に積もった雪の表面の高さである[6]。雪の下の岩の高さは、雪の厚さが分からないために確定していない[7]。世界一の山でさえ、何の面を測った値かを添えなければ、高さを正確には言えない。

では、手が届かない高さを、人はどう測ってきたのか。ピラミッドの影、木と山頂を重ねる視線、見上げる角度、低い差の積み上げ、衛星測位を順に見ると、どれも「直接は測れない高さを、測れる長さや角度に置きかえる」という同じ考え方に行きつくことが分かる。

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1. かげの ながさで、たかさが わかるの?

1. 影の長さから、ピラミッドの高さを割り出した

1. 伝承のピラミッド測量 ── 影の比で、登れない高さを測る

むかしの ギリシアに、タレスという 学者が いました。ピラミッドの たかさを、かげで はかったと つたえられて います[1]。

やり方の ひとつは、同じ 時こくに、まっすぐな ぼうを 立てる ことです。ぼうの かげと ピラミッドの かげを くらべると、ピラミッドの たかさが わかります[1]。ぼうの かげが ぼうの 2ばいの ながさなら、ピラミッドの かげも、ピラミッドの たかさの 2ばいです。たかさと かげの わりあいが、おなじに なるからです。

もうひとつの やり方は、自分の かげが 自分の せの たかさと 同じに なる 時こくを まつ ことです。その とき、ピラミッドの かげの ながさが、そのまま たかさに なります[1]。

ただし これは つたえられた はなしで、タレス 自身の ほんは のこって いません。それでも、のぼれない たかさを、はかれる ながさに おきかえた、さいしょの 形が ここに あります。では、かげが でない 日や、山では どうするのでしょう。

古代ギリシアの学者タレスは、ピラミッドの高さを影で測ったと伝えられています[1]。登るのも、てっぺんから縄を垂らすのも難しい巨大な建物を、地面に落ちた影の長さだけで測ったというのです。

伝わる方法は2通りあります。ひとつは、自分の影が身長と同じ長さになる時刻を待って、そのときのピラミッドの影を測る方法です。もうひとつは、同じ時刻に垂直な棒を立て、棒の影とピラミッドの影を比べて、相似な2つの直角三角形から割り出す方法です[1]。

影で測れるのは、同じ時刻なら太陽の光が同じ向きから差すからです。棒もピラミッドも、影の先と頭を結ぶ線の傾きが同じなので、「棒の高さ:棒の影=ピラミッドの高さ:ピラミッドの影」という比が成り立ちます。棒の影が高さの2倍なら、ピラミッドの影も高さの2倍です。

ただし、これは伝承で、タレス自身の著作は残っていません[1]。断定はできませんが、届かない高さを届く長さに置きかえる考え方の、最初の形がここに見えます。では、影が使えない山は、どうするのでしょうか。

ギリシアの哲学者タレスは、ピラミッドの高さを影で測ったと伝えられる[1]。登ることも、頂上から縄を垂らすことも難しい巨大な建造物を、地面に落ちた影の長さだけで測ったというのである。伝わる方法は2通りある。第一は、人の影が身長と同じ長さになる時刻を待ち、そのときのピラミッドの影を測る方法。第二は、同じ時刻に垂直な棒を立て、棒の影とピラミッドの影を比べて、相似な2つの直角三角形から割り出す方法である[1]。

なぜ影で測れるのか。同じ時刻なら太陽の光は同じ向きから差すため、棒もピラミッドも、影の先と頭を結ぶ線が同じ傾きになる。傾きが同じ直角三角形は、形が同じで大きさだけが違う相似になる。だから「棒の高さ:棒の影=ピラミッドの高さ:ピラミッドの影」という比が成り立ち、棒の高さと2つの影さえ測れば、残る高さは計算で出る。第一の方法は、この比が1対1になる特別な時刻を使う、ということになる。

ただし、これは伝承である。タレス自身の著作は残らないとされ[1]、本文では「伝えられる」にとどめる。それでも、ここには後の測量すべてに通じる手順が見える。測れない量を、測れる量との比に置きかえるのである。では、影ができない日や、影の先がどこか分からない山には、この手は使えるのか。

2. かげが なくても、山の たかさは はかれるの?

2. 影がなくても、木と山頂が重なる位置を探せば測れた

2. 『九章算術』の山の測り方 ── 木と山頂を重ねる視線

むかしの 中国の 数学の ほん、『きゅうしょうさんじゅつ』には、山の たかさの はかりかたが のって います[2]。

山の てまえに 木が あります。木の さきと 山の ちょうじょうが、ちょうど かさなって 見える ところまで、じぶんが うごきます。そこから 木までの きょりと、山までの きょりを はかります。あとは、三角形の 形の ひかくで、山の たかさが でます[2]。

木の たかさは、ものさしで はかれます。木までの きょりと、山までの きょりの わりあいを つかえば、山の たかさが わかります。

でも、いつも ちょうどいい 木が あるとは かぎりません。そこで、木の かわりに 「しほうのかね」と いう どうぐを つかう ことが かんがえられました。どこからでも 山の たかさが はかれるように なります[2]。

中国の古い数学書『九章算術』には、山の高さの測り方が載っています。山の手前にある木の先端と山頂が、ちょうど重なって見える位置まで動き、そこから木までの距離と山までの距離を測って、直角三角形の相似で計算します[2]。

目から木の先端、山頂へ向かう視線は、同じ1本の線です。そのため、手前の小さな直角三角形と、山をふくむ大きな直角三角形は、相似になります。手が届く木の高さは物差しで測れるので、距離の比を使えば、山の高さがおおまかに出ます。影と同じ「比」の考え方で、太陽が出ていなくても使えます。

とはいえ、ちょうどいい位置に木があるとは限りません。国立国会図書館の解説は、この比べる木の代わりに「四方矩」という器具を使えば、どこからでも山の高さが測れるようになる、と説明しています[2]。目印を自然の木から器具に変えたことで、測る場所を選ばなくなったのです。

では、器具を使って高い山を測ると、実際の値はどれくらい正確なのでしょうか。江戸時代の日本に、富士山を測った人がいます。

中国の数学書『九章算術』には、山の高さの測り方が載っている。山の手前にある木の先端と山頂が、ちょうど重なって見える位置まで動き、そこから木までの距離と山までの距離を測り、直角三角形の相似で計算する[2]。影を使わないので、太陽の位置に左右されない。

理由は影の場合と同じ形である。目から木の先端、山頂へ向かう視線は1本の同じ線なので、手前の小さな直角三角形と、山をふくむ大きな直角三角形は相似になる。手が届く木の高さは物差しで測れるから、それに距離の比をかければ山の高さがおおまかに出る。厳密には目の高さの分を補正する必要があるが、考え方の骨格はここにある。

この方法には弱点がある。重なって見える位置に、都合よく木が生えているとは限らない。国立国会図書館の解説は、比べるための木の代わりに「四方矩(しほうのかね)」という器具を使えば、どこからでも山の高さが測れるようになる、と説明する[2]。木が生えている場所を探さなくても、器具を使って山の高さを測れるようになったのである。では、見上げる角度から高い山の高さを計算すると、どんな値が出るのか。江戸時代の富士山の例を見る。

3. 見上げる 角度で、富士山ふじさんを はかると どうなる?

3. 見上げる角度で測った富士山は、いまの値と約150mちがった

3. 伊能忠敬の富士山 ── 見上げ角から出した3,928m

えど時代の 伊能忠敬いのうただたかは、日本中を あるいて 地図を つくった 人です。富士山ふじさんの たかさも、地上で はかった きょりと 方角、それに 見上げた 角度から けいさんしました[3]。

出た すうじは、3928メートルです。いま つかわれて いる 3776メートルほどと くらべると、150メートルほど ちがいます[3]。たかさの 4%ぐらいの ちがいです。

三角形の かんがえかたは、まえの 2つと 同じです。見上げる 角度と、山の てまえで はかった きょりが わかれば、たかさが けいさんできます。

どうして 150メートル ちがったのかは、くわしい ことは わかりません。それでも、歩いて はかった きょりと 角度だけで、ここまで ちかづけた ことに おどろきます。では いまの 3776メートルは、どう はかられたのでしょう。

伊能忠敬は、地図づくりのために日本中を歩いた人です。富士山の高さも、地上で測った距離と方位、見上げた角度から計算して、3,928mという値を出しました[3]。

いま使われている約3,776mは、1926年の測量がもとになった値で、2014年には3,775.51mに修正されています[3]。差は約150mで、現在の値の約4%にあたります(3,928−3,776≒152を、3,776で割った計算です)。

考え方は、木と山頂を重ねる方法と同じ直角三角形です。見上げた角度と、山の手前の水平な距離が分かれば、高さの辺が計算できます。ただ、約150mのずれがなぜ生じたかについては、参照した資料に書かれていないので、ここでは理由を決めません。

分かるのは、歩いて測った距離と見上げる角度だけで、江戸時代の人が今の値の4%以内まで富士山の高さに迫ったことです。では、いまの値はどんな方法で決められているのでしょうか。

伊能忠敬は、地図づくりのために日本各地を測った人物である。富士山の高さは、地上での距離と方位、見上げた角度から計算し、3,928mと出した[3]。いま使われている約3,776mは1926年の測量がもとで、2014年に3,775.51mへ修正された[3]。差はおよそ150mで、現在の値に対して約4%(152÷3,776≒0.040)である。

考え方は木と山頂を重ねる方法と同じ直角三角形で、見上げた角度と山の手前の水平距離から、高さにあたる辺を計算する。一方で、約150mのずれの原因については、参照した資料に記述がない。角度の測り方や基準面の取り方に原因を求めたくなるが、根拠なしの推測になるので、ここでは決めない。

確かに言えるのは、歩いて測った距離と見上げ角という、手に届く量の組み合わせだけで、約4%の範囲まで富士山に迫れたという点である。見上げ角は離れた地点から1回読めば済む手軽な量だが、手軽さの代わりに、読みの小さな差が結果へそのまま響く。この弱点を避ける方法が、現在の標高の測量に使われている。それは角度を使わず、低い差を一段ずつ足す方法である。

4. ひくい ところから、すこしずつ 足して いくの?

4. 低い差を一段ずつ足して、標高をつくる

4. 水準測量 ── 2点の差を積み上げて標高を出す

いま、日本の 土地の たかさ(ひょうこう)を きめる おもな やり方は、「すいじゅんそくりょう」です。国土地理院が おこなって います[4]。

2つの 場所に、ながい ものさし(ひょうしゃく)を 立てます。そのまんなかに、水平に しかけた きかいを おいて、2つの ものさしの めもりを 読みます。めもりの ちがいが、2つの 場所の たかさの ちがいです[4]。

これを つぎつぎに くりかえして、ちがいを 足して いきます。たかさが わかっている 場所から 出発して、足して いけば、あたらしい 場所の たかさが 出ます[4]。

かいだんに にて います。1だんの たかさは ものさしで たしかめられるので、だんの かずを かぞえれば、上の かいの たかさが わかります。ただし ほんとうの かいだんと ちがって、1だんごとの たかさは、めもりの ちがいから 出します。

この 足しざんの スタート地点が、東京の ながたちょうに ある「日本すいじゅんげんてん」で、東京わんの へいきんの 海面が ゼロの 目じるしです[5]。

いまの日本の標高は、水準測量で求められています。国土地理院の説明では、2地点に標尺(長い物差し)を立て、その中間に水準儀を水平に据えて、2つの目盛りを読みます。その差が、2地点の高低差になります[4]。

これを区間ごとにくり返し、標高の分かっている水準点から出発して高低差を足していけば、新しい点の標高が得られます[4]。階段にたとえると、1段ずつの高さは物差しで確かめられるので、段の数を数えて足せば上の階の高さが分かる、という考え方です。ただし本物の階段と違い、各区間の高低差は目盛りの読みの差で出します。

足し算の出発点が、東京都千代田区永田町にある日本水準原点で、1891年に設けられ、現在の標高は24.3900mです[5]。日本の標高は、東京湾の平均海面からの高さとして決められています[5]。

低い差を一段ずつ足す方法は、手間がかかりますが、一歩ずつ確かめながら進められます。では、人が歩いて足し算できない遠い場所の高さは、どう求めているのでしょうか。いまは、空の衛星の力も借りています。

国土地理院の水準測量(直接水準)は、角度を使わない。2地点に標尺(長い物差し)を立て、その中間に水準儀(レベル)を水平に据えて、両方の目盛りを読み、その差から高低差を求める[4]。区間ごとにこれをくり返し、標高の分かっている水準点から出発して高低差を足していくと、新しい点の標高が得られる[4]。

階段にたとえると分かりやすい。1段ずつの高さは物差しで確かめられるので、段数だけ足せば上の階の高さが出る。水準測量は、これを地面で区間の数だけくり返すものと言える。ただし本物の階段とちがい、各区間の高低差は目盛りの読みの差で決まり、足す区間が長くなるほど手間は増える。見上げ角のような一発の測定ではなく、小さな差を確かめながら積み上げるところに特徴がある。

足し算の出発点が、東京都千代田区永田町にある日本水準原点(1891年創設、現在の標高24.3900m)である[5]。日本の標高は、東京湾の平均海面(T.P.)を基準に定められているから[5]、標高とは「基準の海面からの高さを、低い差の足し算で山の上までつないだ値」と言い換えられる。では、足し算でたどり着けない、遠い場所や広い範囲の高さは、どう扱うのか。

5. 空の えいせいでも、たかさが わかるの?

5. 衛星の位置から、海面の高さを引き算する

5. 衛星測位の標高 ── 楕円体高からジオイド高を引く

いまは、空の えいせいで 場所を しらべる しくみ(GNSS)も つかわれます。ただし えいせいが おしえてくれる たかさは、そのままでは「ひょうこう」では ありません。

えいせいから 出る たかさは、地球を つるんと した たまごの ような 形に みたてた 面から はかった ものです。日本の ひょうこうは、海面を もとに して います。そこで、その ちがいを、「ジオイド」の たかさを つかって ひき、ひょうこうに なおします[4]。

国土地理院は、2025ねんの 4月1日から、きじゅんてんの ひょうこうを、えいせいの そくいを もとに した あたらしい あたいに かえたと、せつめいして います[4]。かわる たかさは 場所で ちがい、北海道の とうぶでは 40センチほど ひくくなる という しさんが あります。

あるいて 足すかわりに、そらの えいせいと ひきざんで たかさを だす。これも、「はかれる もの」に おきかえる かんがえかたです。

衛星測位(GNSS)は、そのままでは標高を教えてくれません。GNSSで得られるのは、地球を滑らかな楕円体に見立てた面からの高さ(楕円体高)です。標高を出すには、ジオイド・モデルによるジオイド高を引きます[4]。ジオイドは、平均海面を陸の下にもつなげたような面とされます。衛星から出る高さと、日本の標高の基準である海面からの高さは、別の面を基準にした数字なので、引き算でつなぐのです。

国土地理院は、2025年4月1日から、基準点の標高を衛星測位を基盤とする値に改定したと説明されています[4]。標高が下がる量は場所によって違い、試算では道東で約40cmとされています。

歩いて足す代わりに、衛星の位置と引き算で高さを求める。これも、直接は測れない高さを「測れる量」に置きかえる考え方の延長にあります。では、この「測れる量」は、人がいま建てる塔では、どれくらい細かく使われているのでしょうか。

衛星測位(GNSS)の観測値は、そのままでは標高ではない。GNSS観測で得られるのは、地球を滑らかな楕円体にみなした面からの高さ(楕円体高)で、標高を求めるには、ジオイド・モデルによるジオイド高を差し引く[4]。ジオイドは、一般に、平均海面を陸の下にもつなげた面とされる。つまり、衛星から出る高さと、標高の基準である海面からの高さは、別の面を基準にした数字であり、その差を引き算でつなぐ。

この方法は、基準点の標高にも反映された。国土地理院は2025年4月1日から、基準点の標高を衛星測位を基盤とする値へ改定したと説明される[4]。標高が下がる量は場所によって異なり、試算では道東で約40cm下がるとされる。水準測量で一歩ずつ積み上げた値と、衛星と引き算で出した値が、基準面を通して1つの体系にまとめられた、ということになる。

歩く代わりに、衛星の位置と基準面の差で高さを求める。ここでも、直接は測れない量を、測れる量に置きかえている。では、この置きかえは、いま建つ塔の鉄骨を組むときには、どれくらい細かく使われているのか。

6. 634メートルの タワーは、どれくらい きっちり 立てたの?

6. 634mのスカイツリーは、2cm以下の誤差で組み立てられた

6. 東京スカイツリー ── 634mを2cm以下の誤差で組む測量

東京スカイツリーは、2011ねん3月18日に、634メートルの たかさに なりました。そのとき、てっこつを くみたてる ときの ごさ(ずれ)は、634メートルの たかさに たいして 2センチ いかに おさえられました[8]。

わりあいに すると、およそ 3万ぶんの 1です。100メートルを はかって、ずれが 3ミリほどに なる わりあいです。

この 大きな タワーを つくる 人たちは、はしらの 2つの 点の ばしょを、きかいで はかりました。それを タブレットで けいさんして、ねじれや かたむきを なおす 数を 出しました[8]。

つくりながら はかり、けいさんし、なおす。はかる ことが、たかい ものを つくる ための ちからに なって います。では 世界一 たかい 山の たかさは、こうした やりかたで どう きめられたのでしょう。

東京スカイツリーは、2011年3月18日に高さ634mに達しました。このとき、鉄骨は634mに対して2cm以下の誤差で組み立てられたと、施工した大林組は説明しています[8]。割合にすると、2÷63,400で約0.003%、約3万分の1です。

この精度を支えたのが、柱の2点の座標を測る3次元光波測量器(トータルステーション)です。測った値をタブレットで計算し、ねじれや倒れを直す修正値を出しました[8]。高く組みながら、測って、計算して、直す流れです。

ここでは、測量は高さを一度知るための作業ではなく、作りながら使い続ける道具になっています。では、世界一高い山の高さは、こうした道具をそろえて、どう決められたのでしょうか。

東京スカイツリーは2011年3月18日に高さ634mに達し、鉄骨は634mに対して2cm以下の誤差で組み立てられた[8]。割合では2÷63,400≒0.003%、およそ3万分の1である。この数字は、完成後に測った誤差というより、組み立ての各段階で誤差を抑え続けた結果と読める。

大林組の説明では、柱の2点の座標を3次元光波測量器(トータルステーション)で測り、その値をタブレットで計算してねじれや倒れの修正値を出した[8]。測る、計算する、直す、という手順を、高く組みながら進めたということになる。

ここでは、測量は高さを知るためだけの作業ではなく、建設を導く道具になっている。影や視線から始まった「測れる量への置きかえ」は、組み立ての現場で精度を管理する仕組みにまで発展した。では、世界一高い山は、これらを合わせて、どう決められたのか。冒頭の数字に戻る。

7. エベレストの たかさは、なにの たかさ?

7. エベレストの8848.86mは、雪の上の高さだった

7. エベレスト2020 ── 雪面高8848.86mと、決まっていない岩盤高

2020ねん12月8日、中国と ネパールは、エベレストの たかさを 8848.86メートルと はっぴょう しました。まえに みとめられて いた 8848メートルより、0.86メートル たかい あたいです[6]。

はかるときには、すいじゅんそくりょうの きかいや、おもさの データ、GPSの データが つかわれました[6]。ここまで 見てきた、ひくい ところからの 足しざんや、えいせいの はかりかたが、いっしょに はたらいた わけです。

ただし この 8848.86メートルは、いちばん 上に つもった 雪の ひょうめんの たかさです。雪の したの いわの たかさは、雪の あつさが わからないので、まだ きまって いません[7]。

たかさは、「どこを はかったのか」を そえて、はじめて いみが わかります。つぎに 山の たかさを きいたら、なんの めんの たかさか、きいて みたく なりませんか。

2020年12月8日、中国とネパールは、エベレストの標高を8848.86mと共同で発表しました。それまで認められていた8848mより、0.86m高い値です[6]。測量には、水準測量や重力、GPSのデータが使われました[6]。ここまでに見てきた「低い差の積み上げ」と「衛星」が、世界一の山で一緒に使われたことになります。

ただし、この値は雪が積もった山頂の高さ、つまり雪面高です。2023年の研究は、雪の下の岩の高さは、雪の厚さが分からないために確定していないと述べています[7]。

測る面を「雪の表面」とするか「岩」とするかで、答えは変わります。0.86mの差が何によるものかは、ここでは決めません。高さは、「どの面を測った値か」を添えて、はじめて意味をもちます。

2020年12月8日、中国とネパールはエベレストの標高を8848.86mと共同発表した。従来の8848mより0.86m高い[6]。測量には水準測量・重力・GPSのデータが使われた[6]。これまで見てきた「低い差の積み上げ」「衛星」「基準面」が、世界一の山で合わさったことになる。

この値は、雪が積もった山頂の高さ(雪面高)である。2023年の研究は、雪の下の岩の高さは、雪の厚さが分からないために精密には確定していないと述べる[7]。ここで効いてくるのが、第5章で見た「基準面を添える」という考え方である。高さは、測った面(雪の表面か、岩か)と、測った基準(海面)の両方を添えなければ、比べることもできない。

0.86mの差が雪の積もり方の変化によるのか、測り方の違いによるのかは、資料からは決められない。決められないままで、数字を発表した側も、受け取る側も、何の面の高さかを区別している。「世界一高い」という言葉の中身は、この区別の上に成り立っている。

8. かげで 木の たかさを はかって みよう

8. 影を使って、近くの木や電柱の高さを測ってみよう

8. 自分の影を物差しにして、身近な高さを見積もる

はれた 日に、タレスの やり方を ためして みましょう。たいようを 見つめない ように、気を つけます。

たいらな 地面に 立って、自分の かげを 見ます。かげの ながさが、自分の せの たかさと 同じに なる 時こくを、まちます。すこしずつ かわるので、なんども 見て みましょう。

その 時こくに、近くの 木や でんしんばしらの かげの ながさを、あしの はばや まきじゃくで はかります。かげの ながさが、そのまま その ものの たかさの めやすです。

かげの さきは ぼやけるので、ぴったりの すうじには なりません。でも、「のぼれない ものの たかさ」を はかった ことに なります。車の とおる 道には 近づかないでね。

タレスの方法は、家の近くで再現できます。晴れた日に、平らな地面に立って自分の影を見て、影の長さが自分の身長と同じになる時刻を待ちます。太陽は直接見ないようにします。

その時刻に、近くの木や電柱の影の長さを、歩幅や巻き尺で測ります。影と身長が同じなら、ほぼ同じ比で影が伸びているので、影の長さがその物の高さの目安です。影の先はぼやけるので、値は目安です。

もう少し調べたいときは、国立国会図書館の「数学の歴史」第4章(和算)で、山の高さの測り方と四方矩の説明[2]が、国土地理院の水準測量のページで、標尺と水準儀の使い方[4]が読めます。同じ山の標高でも、どの面からの高さなのかを見ると、数字の見え方が少し変わってきます。

最初のタレスの方法は、家の近くで再現できる。晴れた日に平らな地面に立ち、自分の影の長さが身長と同じになる時刻を待つ。このとき太陽の光はおよそ45度で差している。その時刻に、電柱や木の影の長さを歩幅や巻き尺で測れば、影の長さがその物の高さの目安になる。影の先はぼやけるので、値は目安であり、太陽は直接見ない。道路や車に近づかない。

資料の読みどころは2つある。第一は、国立国会図書館の「数学の歴史」第4章(和算)で、『九章算術』の測り方と四方矩の説明が読めること[2]。第二は、国土地理院の水準測量のページで、標尺と水準儀を使った高低差の求め方が読めること[4]。

そのうえで、山の標高の数字を見るときは、基準にした面(海面か、楕円体か)と、測った面(雪面か、岩か)を探してみたい。その数字が何を表しているのかを問う習慣は、高さに限らず、数字を読むときの足場になる。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

出典について:公的機関の解説、大学や企業の説明、論文の要約を使った。何に使ったかは、それぞれの項目の最後に書いている。

  1. 世界史の窓「ピラミッドの高さの測定」。https://www.y-history.net/appendix/wh0102-129.html (タレスがピラミッドを影で測ったと伝えられる話について)
  2. 国立国会図書館『数学の歴史』(和算)第4章。https://www.ndl.go.jp/math/s1/c7.html (『九章算術』の山の測り方と、四方矩について)
  3. 三菱電機「3分コラム 伊能忠敬の測量」。https://www.mitsubishielectric.co.jp/business/biz-t/contents/3min-column/column063.html (伊能忠敬の富士山の値と、現在の値について)
  4. 国土地理院「水準測量」。https://www.gsi.go.jp/sokuchikijun/suijun-survey.html (水準測量の手順、衛星測位による標高と2025年の改定について)
  5. 国土地理院「よくある質問(標高の基準)」。https://www.gsi.go.jp/kohokocho/FAQ1.html (標高の基準と日本水準原点について)
  6. CNN.co.jp「エベレストの標高、8848.86メートルに」(2020年12月8日)。https://www.cnn.co.jp/fringe/35163548.html (2020年のエベレストの発表について)
  7. The Cryosphere 17, 2625 (2023)。https://tc.copernicus.org/articles/17/2625/2023/ (エベレストの値が雪面高であることについて。論文)
  8. 大林組「東京スカイツリーのつくり方」。https://www.obayashi.co.jp/solution_technology/detail/skytree18.html (鉄骨の組み立て精度と測量機器について)

なおした ところ

更新履歴

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