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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

月までの きょりは、ものさしを つかわずに どうやって はかるの?

月までの距離は、物差しを使わずにどう測るのか

約38万km先の月までの距離を、物差しなしでどう測るのか

分野:技術

月までは、およそ 38まん キロメートル。この きょりを、ものさしを 1どもつかわずに、3センチメートルほどの ちがいまで はかる ことが できると、NASAの しりょうに あります[1]。

つかうのは、光です。月に むけて 光を うち、はねかえって もどって くるまでの 時間を はかります。どうして 時間で 長さが わかるのか。光も とどかない ほど とおい ところは、どう するのか。この 2つが わかります。

月までの距離は、平均でおよそ38万km。この距離を、物差しを一度も当てずに、約3cmの精度で測れるとNASAの資料は紹介しています[1]。

使うのは光です。地上から月へレーザー光を送り、はね返って戻るまでの時間を測ります。なぜ時間から長さが分かるのか。物差しも光も届かないほど遠い星までは、どう測るのか。大きさに応じて道具が替わっても、どこかでつながっていることが分かります。

月までは、平均でおよそ38万km。この距離を、地上の観測所は物差しなしに、約3cmの精度で測っているとNASAの資料は紹介している。3cmを38万kmで割ると約128億分の1になる。これは資料にある「約3cmの精度」を平均距離で割った計算値で、測定の限界値ではない[1]。

使うのは光の往復時間だ。では、なぜ時間を測ることが長さを測ることになるのか。光を往復させられない遠い場所は、どう測るのか。大きさごとに替わる測り方が、「光」と「三角形」に行きつくことが分かる。

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1. 月までの きょりは、なにを はかって わかるの?

1. 月までは、レーザー光の往復時間で測る

1. 月面の反射器に当てたレーザー光 ── 往復の所要時間が距離になる

月の 上には、光を はねかえす そうちが おいて あります。地上から 月に 光を うつと、この そうちに あたって、きた むきに そのまま もどって きます[2]。

光が いって かえって くるまでの 時間を はかれば、月までの きょりが わかります。そうちの ひとつは、1969ねんに アポロ11ごうの うちゅうひこうしが おいた ものです[1]。

光が 月まで いくのに かかる 時間は、1びょうと ちょっと。いって かえって、2.6びょうほどです。ただし 月は、だ円の みちを まわって いるので、いつも 2.6びょうでは ありません。

でも、どうして 時間を はかると 長さが わかるのでしょう。

月面には、入ってきた光を来た向きへそのまま返す反射器(コーナーキューブ)が置かれています。地上から月へレーザー光を送ると、この反射器に当たって、同じ向きに戻ってきます[2]。光が行って帰ってくるまでの時間が分かれば、距離が出ます。

反射器の一つは、1969年にアポロ11号の宇宙飛行士が月面に置いたものです。NASAの紹介資料では、この方法で地球と月の距離は約3cmの精度で求められるとされています[1]。

かかる時間は、どれくらいでしょう。地球と月の中心間の平均距離である約385,000kmを、光の速さ(秒速約299,792km)で割ると、約1.28秒です。往復で約2.6秒になります。月は楕円の軌道を回るので距離は変わり、いつも2.6秒というわけではありません。

3cmという差は、往復の時間にすると約10億分の0.2秒にあたります。この測定を続けた結果、月が年に約3.8cmずつ地球から遠ざかっていることも分かっています[1]。それにしても、なぜ「時間を測る」ことが「長さを測る」ことになるのでしょうか。

地上から月面の反射器へレーザー光を送り、戻ってくるまでの往復時間から距離を求める方法を、月レーザー測距という。反射器はコーナーキューブと呼ばれる構造で、入射した光を来た方向へ返すため、地上でその光を受けとれる[2]。1969年にアポロ11号の宇宙飛行士が置いた反射器が、その一つである[1]。

NASAの資料が示す精度は約3cmである。平均距離385,000kmで割ると約7.8×10⁻¹¹、およそ128億分の1だ。もとの「約3cm」は観測の精度であり、この割り算は、それを平均距離に対する比にしただけである[1]。

所要時間は、385,000km÷299,792km/s≒1.28秒、往復で約2.6秒になる。月は楕円軌道を回るため、この値は軌道上の位置で変わり、「いつも2.6秒」とは言えない。距離は光速×往復時間÷2で出るので、3cmの差は往復時間では約0.2ナノ秒(10億分の0.2秒)の差だ。測っているのは、ごく短い時間である。

この測定の結果、月は年に約3.8cmずつ地球から遠ざかっていることも読みとれる[1]。では、時間を測ることが、なぜ長さを測ることになるのか。答えは、1メートルの決め方にある。

2. 光の はやさで、どうして 長さが きまるの?

2. 1メートルは、光の速さで決まっている

2. 光速299 792 458 m/sという定義 ── 実際の長さは光の波長で測る

いまの 1メートルは、「光の はやさ」を きめる ことで きまって います[3]。光は 1びょうで、30まん キロメートルほど すすみます。この はやさを、きっちり きめて しまう。すると、光が すすむ 時間が わかれば、長さが きまります。

つまり、長さを はかる ことは、時間を はかる ことでも あります。

ただし、ふだんの ものを きっちり はかる ときは、光の いって かえる 時間では ありません。レーザー光の「波」を ものさしに します。光の 波の 長さを、めもりに するのです[3]。

月には、うちゅうひこうしが はんしゃそうちを おけました。でも、そんな そうちを おける ところばかりでは ありません。そこで、むかしから つかわれて きた やりかたが あります。三角形です。

光で長さが分かる理由は、1メートルの決め方にあります。現在の1メートルは、真空中の光の速さを299 792 458 m/sと定めることで決まっています[3]。速さを決めてしまえば、光が進む時間を測ることは、そのまま長さを測ることになります。

長さの測定は、見方を変えると時間の測定でもある、ということです。月までの距離を光の往復時間で出せるのは、この決まりと同じ考え方によります。

ただし、「光の速さで長さを測る」と言い切ると、少しずれます。身のまわりの長さを実際に測るときは、レーザー光の波長を長さのものさしとして使う「干渉」という手法が主に使われています[3]。定義は光の速さ、実際の測定は光の波、という二段構えです。

月には、人が反射器を置けたので、光の往復時間で測れました。しかし、そうではない場所のほうがずっと多くあります。そこで昔から使われてきたのが、三角形です。

現在のメートルは、真空中の光の速さを299 792 458 m/sと定めることで定義されている[3]。速さを固定したことで、長さと時間が一つの式で結びついた。月の測距で「時間の精度がそのまま長さの精度になる」のは、この関係による。

ここで、定義と実測は別だという点に注意が要る。長さを実際に測るには、レーザー光の波長を長さのものさしとして使う、干渉と呼ばれる手法が主に用いられる[3]。月までは「光の往復時間」、精密な長さの測定は「光の波長」と、どちらも光を使うが、見ているものが違う。

では、反射器を置けない場所や、光を往復させられないほど遠い場所は、どう測るのか。人類が長く使ってきたのは、三角形である。

3. 川の むこうの 木までの きょりは、三角形で わかるの?

3. 近づけない場所までは、三角形を作って測る

3. 基線と2つの角 ── 三角形の形が決まれば、届かない点までの距離が出る

川の むこうに、木が 1ぽん あります。川を わたらずに、木までの きょりを はかれるでしょうか。

こちらの 岸で、10メートル はなれた 2つの ばしょから、木を ながめます。それぞれの ばしょから 木を みた 角度を はかると、三角形の かたちが きまり、木までの きょりが わかります[4]。

だいじなのは、10メートルのように 長さが わかって いる 1つの へんです。これを「きせん」と いいます。角度だけでは、大きさは きまりません。きせんを ものさしで はかって、あとは 角度で つなぐのです[4]。

むかし、日本じゅうを あるいて 地図を つくった 伊能忠敬いのうただたかも、きょりと 角度を つなぎながら すすみました。山や しまは、いろいろな ばしょから みた 角度を かさねて、ずれを なおしたと いいます[5]。ふだんの 一ぽは 70センチメートルほどで、1000ぽで 700メートルほどに なります[6]。

川の向こうの木までの距離を、川を渡らずに知りたいとします。こちら側の岸で、たとえば10m離れた2点を決め、それぞれから木を見た角度を測ります。三角形は、一辺の長さと両端の角が分かると形が決まるので、木までの距離が計算できます[4]。

長さの分かっている辺を、基線といいます。角度だけでは三角形の大きさは決まらないので、基線が1本は要ります[4]。物差しで測れる短い基線から、角度だけで遠くの距離へ橋をかけるのが、三角測量です。

伊能忠敬の測量も、この考えの上にあります。距離と方位を測りながら進み(導線法)、山や島は各地から見た方向を重ねて誤差を直しました[5]。距離を測るときの一歩は約70cmで、1000歩でおよそ700mとされます[6]。歩幅の数値は、資料によって69cmとも70cmとも書かれています。

では、この三角形を、もっと大きくしたらどうなるのでしょう。2000年以上前に、地球そのものを測ろうとした人がいました。

三角測量は、三角形の一辺の長さと両端の角を測れば形が決まる、という原理で、直接行けない点までの距離を求める。長さの分かった辺を基線と呼ぶ[4]。角度だけでは相似な三角形のどれかしか決まらず、大きさは基線で与えるしかない。物差しで測れる範囲と、角度で届く範囲を、基線がつないでいる。

伊能忠敬の測量は、導線法を基本にした。出発点から見通せる次の点までの距離と方位角を測り、これを終点まで繰り返す方法である。山や島は、各地から見た方向を交会法で重ねて誤差を直し、緯度は星の高度を測って決めた[5]。歩測の一歩は約70cmとされ、1000歩で約700mになる。資料によって69cmとも70cmとも書かれる[6]。

では、基線と角度で、どこまで大きなものを測れるのか。紀元前3世紀にはすでに、地球の大きさに挑んだ例がある。

4. 地球の 大きさは、どうやって わかったの?

4. 影の角度で、地球の大きさを見積もった人がいる

4. エラトステネスの見積もり ── 約7度の角度と2都市の距離から一周を出す

今から 2200ねんくらい まえに、エラトステネスと いう 人が いました。夏の いちばん 日が たかい ひの お昼、シエネと いう まちでは 太陽が まうえに ありました。ところが、はなれた アレクサンドリアでは、太陽が 7どくらい ずれて いました[7]。

7どは、円ぜんぶ(360ど)の 50ぶんの 1ほどです。だから、2つの まちの きょりを 50ばい すれば、地球 いっしゅうの 長さに なります。こうして 地球の まわりは、4まん 6000キロメートルほどと みつもられたと、学校の しりょうに あります[7]。

いま わかっている 4まん キロメートルほどと くらべて、15パーセントほどの ちがいです。ものさしで はかったのは、2つの まちの きょりだけ。あとは 角度と かけ算でした。ただし、むかしの きょりの たんいは、本に よって 長さが ちがうので、「ぴったり」とは いえません。

紀元前3世紀ごろ、エラトステネスは、夏至の正午にシエネでは太陽が真上にあり、アレクサンドリアでは太陽が約7度ずれていることに目をつけました[7]。

7度は、円全体の360度の約50分の1です。ということは、2つの都市のあいだの距離を約50倍すれば、地球一周になります。この考え方で、一周は約46,000kmと見積もられたと、同志社中学校の資料は紹介しています。現在分かっている約40,000kmと比べて、15%ほどの差です[7]。

測った長さは、2都市の距離だけでした。あとは角度と掛け算です。ただし、当時の距離の単位(スタディア)の長さは諸説あり、見積もりの値が「ぴったり」当たったとは言えません。

地球は、三角形の大きさとして考えれば、まだ手の届くほうです。では、星までの距離は、どう測るのでしょうか。

エラトステネスは、夏至の正午にシエネでは太陽が真上、アレクサンドリアでは約7度ずれることと、2都市間の距離から、地球一周を約46,000kmと見積もったとされる[7]。7度は360度の約50分の1なので、都市間の距離(約900kmと伝わる)を約50倍すると、その値に近くなる。

現在の約40,000kmとの差は15%ほどとされる(46,000÷40,000=1.15)[7]。ただし、距離の単位スタディアの長さは諸説あり、都市間の距離も見積もりだった。結果が近かったことを「精密に測った」と読むことはできない。大事なのは、ものさしで測ったのは2都市間の距離だけで、残りは角度と比で出したという構造である。

この考えは、基線を地球上の2点から、さらに大きな天体の距離へ広げる発想につながる。では、基線を何にすれば、星までを測れるのか。

5. 星までの きょりは、なにを きせんに して はかるの?

5. 地球が太陽を回る軌道を基線にして、星の距離を測る

5. 年周視差 ── 公転軌道の半径を基線にしても、近い星で0.7秒角しかずれない

星までは、もっと とおくて、人が いって きせんを つくる ことは できません。でも、つかえる ものが あります。地球じしんが うごく みちです。

地球は 1年で、太陽の まわりを 1しゅう します。だから 半年 たつと、地球は 太陽の はんたいがわに います。この 2つの ばしょから みると、ちかくの 星は、とおくの 星を うしろに して、すこし ずれて みえます[8]。

このずれは、ものすごく ちいさいのです。いちばん ちかい 星でも、1どの 5000ぶんの 1ほど。6キロメートル はなれた ところに ある 1円玉を みた ときの 大きさくらいです。ここでは、ずれの 角度を、1円玉の みかけの 大きさと くらべています。

だから、むかしの 人には みつけられませんでした。16せいきの ティコ・ブラーエは、星が ずれて みえない ことを、地球が うごいて いない しょうこの ひとつに したと いわれます。星が おもったより ずっと とおかった ためです[8]。いまは、10おく こ いじょうの 星を この やりかたで はかる けいかくの 人工えいせい「ガイア」も あります[9]。

地球は1年かけて太陽のまわりを回るので、半年たつと、軌道の反対側にいます。このため、近い星は遠い星を背景にして、1年のあいだにわずかにずれて見えます。これが年周視差です。地球の軌道の半径(約1億4960万km)を基線とする三角測量で、星までの距離が分かります[8]。

しかし、このずれは極端に小さいのです。いちばん近い恒星のケンタウルス座α星でも、0.7秒角ほどです。1秒角は1度の3600分の1ですから、0.7秒角は約5000分の1度。直径2cmの1円玉を、約6km先に置いたときの見かけの大きさにあたります(0.7秒角から私が計算した値)。ここでは、星のずれの角度を、1円玉の見かけの大きさ(角度)と比べています。

この小ささが、昔の人を悩ませました。16世紀のティコ・ブラーエは年周視差を測れず、地動説に反対する根拠の一つにしたといわれます。実際は、星が想像よりもはるかに遠かったからでした。年周視差が初めて確かめられたのは、1838年のベッセルによる白鳥座61番星とされています[8][11]。

現在は、ESA(欧州宇宙機関)のガイア衛星が、同じ原理を10億個以上の星に適用する計画で観測しています[9]。三角形の考え方は、変わっていません。

年周視差は、地球が太陽を公転するため、近い恒星が遠方の星を背景に1年で位置をずらして見える現象である。地球の公転軌道の半径(約1億4960万km)を底辺とする三角測量で、星までの距離が出る[8]。

難しいのは、角度が極端に小さいことだ。最も近い恒星のケンタウルス座α星でも0.7秒角程度である。1秒角は1度の3600分の1なので、0.7秒角は約5000分の1度になる。直径2cmの1円玉を約6km先に置いたときの見かけの大きさに相当する(0.7秒角から計算した値)。ここでは、星のずれの角度を、1円玉の見かけの大きさ(角度)と比べている。

この小ささのため、16世紀のティコ・ブラーエは年周視差を測れなかった。星が動いて見えないのなら地球は動いていない、と考え、これを地動説に反対する根拠の一つにしたといわれる。原因は、星が想像以上に遠いことにあった。初めて確かめられたのは1838年、ベッセルによる白鳥座61番星(約10光年)とされるが、値は資料で差がある[8][11]。

ESAのガイア衛星は、同じ原理を10億個以上の星に適用する計画のミッションである[9]。基線を地球上の2点から公転軌道の半径に替えても、原理は同じ三角測量である。そして、基線そのものの精度は、最後には「物差し」の精度に行きつく。

6. いまの ものさしの めもりは、なにで できて いるの?

6. 日本の長さの標準は、光の「周波数」を数えて作られている

6. 光周波数コム ── 光の周波数を正確に測ると、波長が決まる

1メートルを きめるのは、光の はやさでした。では、光で つくった ものさしは、どんな ものでしょう。

光は、波の かたちを して います。波の 長さは、「光の はやさ」を、「1びょうに 波が なんかい くりかえすか」で わると わかります。だから、波の かいすうを ただしく かぞえれば、波の 長さが ただしく きまります[10]。

日本では、2009ねんから、この かいすうを かぞえる そうちが、長さの もとに なって います。まえの やりかたより、300ばいほど ただしく なりました[10]。

いまの 長さの めもりは、光の 波が もとに なって います。

光の速さは、波長×周波数で表せます。そこで、光の周波数(1秒間に波が何回繰り返すか)を正確に数えられれば、波長が正確に決まり、波長を物差しとして使えます[10]。

日本の長さの国家標準は、2009年7月16日から、時間の標準(協定世界時)に合わせた「光周波数コム」という装置になりました。それまでの、よう素で安定させたヘリウムネオンレーザー(1983〜2009年)より、約300倍高精度とされています[10]。

ここで、月までの測定と比べてみます。月の「約3cm」は約7.8×10⁻¹¹で、2009年まで標準だったレーザーの相対不確かさ2.1×10⁻¹¹と同じ10のマイナス11乗の桁です(月の値は資料の精度を平均距離で割った計算で、国家標準とは別の種類の数字です)。月までの距離を測る道具が、国の長さの標準に近い精度だった、とも読めます。

光の往復時間、三角形、光の波。大きさごとに道具は替わっても、近いものも遠いものも、「光」と「三角形」に支えられているのです。

光の速さは、波長と周波数の積に等しい。そのため、光の周波数を正確に測れば、波長が正確に決まる。周波数は、時間の標準に結びつけて数えられる。日本の長さの国家標準は、2009年7月16日から、協定世界時に同期した光周波数コム装置(コムは櫛)になった。従来のよう素安定化ヘリウムネオンレーザー(1983〜2009年)より約300倍高精度で、相対不確かさは2.1×10⁻¹¹から7×10⁻¹⁴へ下がった[10]。

月の測距と比べてみる。月までの約3cmは、平均距離で割って約7.8×10⁻¹¹である。従来の国家標準の相対不確かさ2.1×10⁻¹¹と同じ10⁻¹¹の桁にある。ただし、月の値は観測の精度を平均距離で割った計算値で、標準器の不確かさとは意味の違う数字なので、桁をそろえて眺めるにとどめるのが安全だ。

ここまでの流れを整理すると、近い長さは物差しや光の波、遠い場所は光の往復時間、さらに遠い星は三角形の基線を替えて測る。道具は替わるが、メートルの定義が光速に置かれたことで、光の時間と長さが一つにつながっている。

こうして見ると、「長さを測る」とは、何を基準の物差しにするかを選ぶ作業だ。では、身のまわりの長さは、何を物差しにして測れるのか。

7. じぶんの 体で、きせんを つくって みよう

7. 自分の目と歩幅を、物差しにしてみる

7. 両目の間隔と歩幅 ── 自分の体で基線を体験する

やってみよう1:うでを まっすぐ まえに のばして、おやゆびを たてます。まどの そとや へやの おくの ものに かさねて、かた目ずつ とじて みましょう。おやゆびが、ひだりみぎに ずれて みえます。りょう目の あいだが きせんです。おやゆびを かおに ちかづけると、ずれが 大きくなります。まどの そとを みる ときは、太陽を みては いけません。

やってみよう2:ろうかで 10ぽ あるいて、その 長さを ものさしで はかります。10で わると、じぶんの 一ぽの 長さが わかります。つぎに、へやの 長さを ぽすうで よそうして、ものさしで たしかめて みましょう。

月まで 光が 2.6びょうで いって かえる おはなしは、NASAの ページに のって います。もっと しりたく なったら、国立天文台の ページも ひらいて みると、星の ずれの はなしを よめます。

今日できること1:腕をまっすぐ前に伸ばして親指を立て、窓の外や部屋の奥の物に重ねます。片目ずつ閉じると、親指が左右にずれて見えます。両目の間隔が基線で、親指を顔に近づけるとずれは大きくなります。窓の外を見るときは、太陽を見ないでください。

今日できること2:廊下で10歩歩き、その長さを物差しで測って10で割ると、自分の一歩の長さが出ます。次に、部屋の長さを歩数で予想し、物差しで確かめます。伊能忠敬の一歩は約70cmとされていますが、自分の歩幅とどれくらい違うかも比べられます。

次の問いは、「1メートルの定義がなぜ光の速さに替わったのか」です。国立天文台の暦Wikiの視差の項目や、産総研の長さの標準のページには、この記事で触れなかった測り方も載っています。

確かめる方法は2つある。1つめは、腕を伸ばして親指を立て、遠くの物に重ねて片目ずつ閉じることだ。親指が背景に対してずれる。このずれが視差で、両目の間隔が基線にあたる。親指を近づけるとずれが大きくなる現象は、基線が同じなら、近い物ほど角度が大きいことの観察になる。なお、窓の外を見るときは太陽を直接見ない。

2つめは、10歩の長さを物差しで測って歩幅を出し、部屋の長さを歩数で予想して確かめることだ。伊能忠敬の一歩が約70cmとされるので、自分の歩幅との差も比べられる。

原典に当たるなら、NASAのEclipse Web Siteの「Measuring the Moon's Distance」は、約3cmの精度と年約3.8cmの遠ざかりが同じページに載っている(英語)。産総研のプレスリリース(2009年)は、2.1×10⁻¹¹から7×10⁻¹⁴への変化の出どころになる。本文の「128億分の1」は計算値なので、同じ割り算を自分でも確かめられる。

この記事では、微小な長さ(ナノメートルの世界)の測り方には踏み込んでいない。原子の並びを調べる顕微鏡などの話は、長さの標準が光の波に置かれたことと、どうつながるのかという次の問いになる。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

本文で使った資料です。一部の資料は、検索結果の要約や概要をもとに内容を読んでいます。距離や精度の割り算は、資料の値をもとにした計算です。

  1. NASA Eclipse Web Site "Measuring the Moon's Distance". https://eclipse.gsfc.nasa.gov/help/ApolloLaser.html (月レーザー測距の精度、月が遠ざかる速さ、平均距離)
  2. 国立天文台 暦Wiki「月レーザー測距」。 https://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/wiki/B7EEA5ECA1BCA5B6A1BCC2ACB5F7.html (往復時間で距離を出す、反射器が光を返す向き)
  3. 産業技術総合研究所 計量標準総合センター「長さ:メートル(m)」。 https://unit.aist.go.jp/nmij/library/mise_en_pratique/length/ (メートルの定義、干渉による実測)
  4. 広島大学 測量実習資料(三角測量・基線)。 https://home.hiroshima-u.ac.jp/sakuno/Jugyo/sokuryo/sankaku6-7.pdf (三角測量と基線の考え方)
  5. nippon.com「伊能忠敬の測量」。 https://www.nippon.com/ja/japan-topics/b07210/ (導線法、交会法、緯度の決め方)
  6. 山岡「伊能忠敬のまめ知識」。 https://www.ripro.co.jp/yamaoka/k-hanashi/inou/mameji-9.htm (一歩の長さ)
  7. 同志社中学校 博物館だより。 https://jhs.js.doshisha.ac.jp/?p=17083 (エラトステネスの見積もり)
  8. 国立天文台 暦Wiki「視差」。 https://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/wiki/BBEBBAB9.html (年周視差、ティコ・ブラーエ)
  9. ESA Gaia "Measuring stellar distances by parallax". https://sci.esa.int/web/gaia/-/53278-measuring-stellar-distances-by-parallax (視差で10億個以上の星を測る計画)
  10. 産業技術総合研究所 プレスリリース「長さの国家標準が新方式に」2009年。 https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2009/pr20090716/pr20090716.html (光周波数コム、精度の変化)
  11. ESA Gaia "Image of the week: 61 Cygni"(ベッセルによる1838年の距離測定)。 https://www.cosmos.esa.int/web/gaia/iow_20250115 (最初に距離が測られた星)

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