1. てちょうが 3さつ あると、なにが こまるの?
1. 手帳が何冊もあると、何が困るのか
1. 複数の手帳が招く困りごと ── 同じ成分の薬が重なるおそれ
たとえば、かぜで 近所の 病院へ いき、べつの 日に、ひざが いたくて ちがう 病院にも いった と します。くすりは、それぞれ ちがう やっきょくで もらいました。
お薬てちょうは、やっきょくで むりょうで くばられて います[3]。だから、やっきょくごとに もらうと、てちょうは 2さつ、3さつと ふえて いきます。
てちょうが なんさつも あると、いま のんで いる くすりを たしかめるのが むずかしく なります[1]。ちがう 病院に かかって いると、おなじ せいぶんの くすりが、知らないうちに 出て しまう おそれも あると、えどがわくは 書いて います[1]。
たとえるなら、くすりの「ちず」が やぶれて、3まいに ばらばらに なった ような ものです。ただし 本当の 紙の ちずでは なく、のんだ くすりの きろくの ことです。
では、1さつに あつまって いると、くすりを 出す 人には なにが 見えるのでしょう。
かぜで近所の内科に行き、別の日にひざの痛みで整形外科にも行ったとします。薬をもらった薬局も2か所です。お薬手帳は薬局で無料で配られているので[3]、薬局ごとにもらうと、手帳は2冊、3冊と増えていきます。
江戸川区は、手帳が何冊もあると、飲んでいる薬のチェックが難しくなると説明しています[1]。同じ時期に複数の医療機関にかかっていると、意図せず別の医療機関から同じ成分の薬を出されるおそれがあるとも書かれています[1]。
手帳が分かれていると、どの手帳にも「飲んでいる薬の一部」しか載っていません。薬の地図が3枚に破れて、1枚ずつ別の場所にしまってあるような状態です。ただし、これはたとえで、実際には薬の記録が分かれているということです。
では、1冊にそろっていると、薬を出す側には何が見えるのでしょうか。
薬を出す側が、患者の飲んでいる薬を知る手がかりは、診察での聞き取りと、手帳の記録である。ところが手帳が薬局ごとに作られると、どの冊子にも服用中の薬の一部しか載らない。江戸川区は、手帳が何冊もあると飲んでいる薬のチェックが難しくなり、同じ時期に複数の医療機関にかかっている場合は、意図せず別の医療機関から同じ成分の薬を処方されるおそれがあると説明している[1]。
手帳が増えやすい背景として、薬局では手帳が無料で配られていることがある[3]。港区は、そのうえで「薬局ごとに持たず1冊にまとめる」ことを勧めている[3]。つまり、手帳が複数あること自体が問題なのではなく、記録が分散して全体が見えなくなる点が、資料の挙げる困りごとである。
たとえるなら、薬の全体像を描いた地図が何枚にも破れ、それぞれ別の場所にしまわれている状態に近い。ただしこれは筆者のたとえで、資料にある表現ではない。
では、記録が1冊にそろっているとき、薬を出す側は何を確かめられるのか。
2. 1さつだと、くすりを 出す 人には なにが 見えるの?
2. 1冊にそろうと、薬を出す側に何が見えるのか
2. 1冊の記録が使われる場面 ── 飲み合わせの確認と服用歴の管理
お薬てちょうは、のんで いる くすりを 書いて おく てちょうです。わるい のみあわせや、くすりの ふくさようを ふせぐ ために やくだつと、港区は しょうかいして います[3]。
くすりの くみあわせに よっては、いっしょに つかうと、からだに よくない えいきょうが 出る ことが あります。これを のみあわせと いいます。てちょうが 1さつに そろって いれば、いま のんで いる くすりが 1か所で 見えます。
広島県も、いしゃや やっきょくに 見せる てちょうを 1人 1さつに すると、くすりを のんだ きろくを きちんと まとめられる と しています[2]。
この てちょうは、2000ねんの せいどの かいていから、きまりの ある ものに なった と いわれて います[4]。それより まえから、てちょうを つかう 人は ふえて いたと いわれます。
港区は、お薬手帳を、使っている薬を記録する手帳で、良くない飲み合わせや副作用を防ぐのに役立つものと説明しています[3]。薬の組み合わせによっては、一緒に使うと体に良くない影響が出ることがあります。これを飲み合わせといいます。
広島県は、医療機関や薬局で見せる手帳を1人1冊にまとめると、薬の服用歴を適切に管理できるとしています[2]。1冊の中に、複数の病院でもらった薬が時間の順に並んでいれば、全体を一度に見渡せるからです。
お薬手帳が制度として位置づけられたのは、2000年の制度改定からだとされています。それ以前から、記入を望む患者に薬剤の情報を提供する仕組みなどを通じて、利用が広がっていたとも言われます[4]。
ここまでは日常の診察や調剤での話です。では、病院や薬局が使えなくなるような災害のとき、手帳はどう働いたのでしょうか。
手帳を1冊にまとめる根拠は、薬を出す側が、服用中の薬の全体を一度に見渡せることにある。港区は、お薬手帳を、使っている薬を記録し、良くない飲み合わせや副作用を防ぐのに役立つ手帳と説明している[3]。広島県は、医療機関や薬局で見せる手帳を1人1冊にまとめると、薬の服用歴を適切に管理できるとしている[2]。
ここで注意したいのは、これらの資料が示しているのは「1冊にそろえる利点」の説明であって、1冊にしたことでどれだけ副作用が減ったかを示す数字ではないことである。今回読んだ自治体の資料には、そうした件数は載っていなかった。
制度面では、お薬手帳は2000年の制度改定から制度化されたとされる。それ以前から、記入を望む患者への薬剤情報の提供に対する算定などを通じて、利用が広がっていたという[4]。ただしこの説明は民間の解説サイトのもので、制度の原文には当たっていない。
日常の診察では、手帳は飲み合わせの確認に使われる。では、診療所も薬局も通常どおりには動かない災害の場面で、手帳はどう働いたのか。
3. じしんの あと、てちょうは どう やくだったの?
3. 大きな地震のあと、手帳はどう役に立ったのか
3. 震災時の事例 ── 特例の適用と、システム復旧前の調剤
1995ねんの はんしん・あわじ だいしんさいでは、お薬てちょうが あれば、しょほうせん なしで くすりを もらえる ことが ある、という とくべつな あつかいが ありました[4]。
くわしい きろくを もって いる 人と もって いない 人では、出せる くすりに ちがいが 出た とも いわれます[4]。いつでも しょほうせんが いらない わけでは なく、「もらえる ばあいが ある」と いう ことです。
名古屋市は、ひがしにほん だいしんさいで、てちょうを もって いた 人が、コンピューターが なおる まえでも、いつもと おなじ くすりを もらえた れいが ある と しょうかいして います[5]。
名古屋市は、てちょうを おなじ ばしょに しまい、でかける ときは もちあるく ように すすめて います[5]。いざと いう とき、てちょうの おき場所が きまって いないと、さがすのが たいへんです。
まとめて 1さつ、きめた ばしょ。さいがいの ときの ために、ふだんから できる そなえです。
1995年の阪神・淡路大震災では、お薬手帳があれば処方箋なしで薬を受け取れる場合がある、という特例が適用されたと伝えられます[4]。詳しい薬歴を持つ人と持たない人で、出せる薬に差が出たことから、災害への備えとして知られるようになったとされます[4]。いつでも処方箋なしで出せるわけではなく、「場合がある」という点には注意が必要です。
名古屋市の防災の案内は、東日本大震災で、手帳を持っていた人が、コンピューターが復旧する前でも、これまでどおりの薬をもらえた例があると紹介しています[5]。そのうえで、手帳は同じ場所に保管し、外出するときは常に携帯するよう勧めています[5]。
広島県も、救急搬送が必要なときに手帳の情報が役に立つと書いています[2]。薬の記録をすぐ取り出せる場所に置いておくことが、備えになります。
とはいえ、手帳は紙のため、家に置き忘れることもあります。その問題に、電子版はどう答えたのでしょうか。
1995年の阪神・淡路大震災では、お薬手帳があれば処方箋なしで薬を受け取れる場合がある、という特例が適用され、詳しい薬歴を持つ人と持たない人で出せる薬に差が出たため、災害への備えとして知られるようになったとされる[4]。この資料は民間の解説サイトで、特例の根拠となる通知などの一次資料には当たっていない。また、いつでも処方箋なしで出せたわけではなく、「場合がある」ことに注意する必要がある。
2011年の東日本大震災については、名古屋市の防災ポータルが、手帳を持っていた人はコンピューターが復旧する前でも、これまでどおりの薬をもらえた事例があると紹介している[5]。電子的な記録が使えない間は、持ち主の手元にある手帳が薬歴の代わりになったと読める。
名古屋市はそのうえで、手帳を同じ場所に保管し、外出時は常に携帯するよう勧める[5]。広島県も、救急搬送が必要なときに手帳の情報が役に立つとする[2]。どちらも「必要なときに、記録をすぐ取り出せる」ことが前提である。置き場所を決めておくことが、備えの基本になる。
ただし、紙の手帳には持ち忘れという弱点がある。この弱点に、電子版はどう答えようとしたのか。
4. スマホの お薬てちょうは、なにが べんりなの?
4. 持ち忘れを減らす、電子版のお薬手帳
4. 電子版お薬手帳 ── 持ち忘れへの対策と、残る「1か所にまとめる」課題
お薬てちょうは、スマホの アプリにも なって います。これを でんしばんの お薬てちょうと よびます[6]。
厚生労働省は、アプリなら、かみの てちょうを もち歩くのを わすれにくくなると せつめいして います[6]。スマホは いつも もち歩く 人が おおいからです。
からだの ようすを きろくできる ものや、くにの サービスと つなげられる ものも あります[6]。
かみの てちょうと アプリを べつべつに つかうと、また「ばらばら」に なりそうです。1つに まとめる という かんがえかたは、アプリでも おなじ だと 思います。
厚生労働省は、電子版お薬手帳を、紙で記録していた手帳をスマートフォンのアプリで管理できるようにしたものと説明しています[6]。アプリなら、紙の手帳を持ち歩くのを忘れにくくなる、という利点が挙げられています[6]。スマホを持ち歩く人も多いからです。
血圧や血糖値などを記録できるアプリもあり、マイナポータルと連携できるものもあるとされます[6]。
ここで気になるのは、紙の手帳とアプリを別々に使ったらどうなるか、という点です。薬の記録が2か所に分かれると、「地図が破れる」問題がまた起こりそうです。資料はこの組み合わせを直接扱っていませんが、「1か所にまとめる」という考え方は、アプリにも同じように当てはまると考えられます。
では、自分の家の手帳は、いまどうなっているでしょうか。
厚生労働省は、電子版お薬手帳を、紙で記録していた手帳をスマートフォンのアプリで管理できるようにしたものとし、アプリなら紙の手帳を持ち歩くのを忘れにくくなる、と利点を示している[6]。災害のときや救急のときに、手帳を取り出せるかどうかが問われるとすれば、常に持ち歩くスマホに入っていることは、紙の弱点を補う方向の工夫といえる。
アプリには、血圧や血糖値などの記録ができるもの、マイナポータルと連携できるものもある[6]。どの機能がどのアプリに付いているかは、アプリごとに違う可能性があり、この資料だけでは一律には言えない。
残る課題は、紙の手帳とアプリを別々に使い続けると、記録がまた2か所に分かれることである。資料はこの併用の場合を直接説明していないが、「記録を1か所にまとめる」という1冊化の理由は、そのままアプリにも当てはまると推測される。ここまでの理由が、自分の手帳に当てはまるかどうかは、実際に家の手帳を見れば確かめられる。
5. おうちの てちょうの おき場所を たしかめて みよう
5. 家にある手帳の置き場所と冊数を確かめる
5. 自分の手元の記録を確かめる ── 家族と一緒にできる小さな点検
おうちの 人が よければ、いっしょに お薬てちょうの おき場所と さつすうを たしかめて みましょう。ひきだしや かばんの 中に、なんさつ ありますか。
見つけたら、いちばん あたらしい ページの 日づけを 見て みます。そして、いつも どこに しまって いるかも 見て みましょう。
てちょうを まとめるときは、やっきょくの 人に そうだん すると あんしんです。まだ つかえる ページが あるかも しれません。
てちょうを 見た やっきょくの 人は、のみあわせを どうやって たしかめて いるのでしょうか。つぎは そこが 気になります。やっきょくで はたらく 人の しごとを、しらべて みても おもしろそうです。
お薬手帳を使っている家族がよければ、一緒に置き場所や冊数を確かめてみましょう。引き出しやかばんの中に、何冊ありますか。
見つけたら、それぞれの最新のページの日付を見ます。そして、いつもどこにしまっているかも確かめます。名古屋市が勧める「同じ場所に保管」が、自分の家でできているかどうかが分かります[5]。
手帳を1冊にまとめる方法は、薬局の人に聞くのが確実です。電子版を使っている場合も、紙とアプリの記録が分かれていないか、見てみてください。
もう一歩進むなら、薬局では飲み合わせをどう確かめているのかを調べるのもおもしろそうです。薬局で働く人の仕事を調べると、手がかりが見つかるかもしれません。
ここまで読んで、「1冊にまとめる」理由が、日常の診察と災害時の両方に関わると分かった。一方で、1冊化によってどれだけ副作用が減るのか、紙とアプリの併用ではどう扱うのが良いのかは、資料に書かれていない。併用のまとめ方は、家族や薬局の人に尋ねてみるとよい。ここが、これから自分で調べる余地である。
家族がよければ、一緒に手帳の置き場所や冊数を確かめられる。何冊あるか、最新ページの日付はいつか、置き場所は決まっているか。名古屋市の勧める「同じ場所に保管」と「外出時に携帯」ができているかも確認する[5]。電子版を使っている場合は、紙の手帳とアプリの記録が分かれていないかを見る。
まとめ方は、薬局に相談するのが確実である。記録の基準や制度の原文を知りたければ、厚生労働省の電子版のページ[6]や、各自治体の案内から入るとよい。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
自治体・厚生労働省の公開資料を比べました。震災の事例と制度化の年は民間の解説サイトにも頼っているので、原文を読みたいときは、厚生労働省や日本薬剤師会の資料を見てください。
- 江戸川区「お薬手帳」 https://www.city.edogawa.tokyo.jp/e053/kurashi/iryohoken/kokuho/setuyaku/techo.html (手帳が何冊もあると困ること)
- 広島県「お薬手帳について」 https://www.pref.hiroshima.lg.jp/soshiki/59/okusuritetyo-ni-thuite.html (1人1冊・救急搬送のとき)
- 港区「お薬と上手につきあうために」 https://www.city.minato.tokyo.jp/kyufu/20201105/20201105okusuri.html (手帳の役目・1冊にまとめる勧め)
- くすりの窓口「お薬手帳とは」 https://www.kusurinomadoguchi.com/okusuritecho/whats (阪神・淡路大震災の特例・制度化の経緯。民間の解説)
- 名古屋市 防災ポータル https://www.city.nagoya.jp/bousaiportal/taisaku/1036441/1013545.html (東日本大震災の事例・保管と携帯の勧め)
- 厚生労働省「電子版お薬手帳」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/e-okusuritecho.html (電子版の説明)
なおした ところ
更新履歴
更新履歴(改版の記録)
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