このサイトは、ほんの入り口です

ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

おぼえた ことを、どうして わすれちゃうの?

覚えたことを忘れるのはなぜ? 忘れ方の形と、残りやすくするコツ

覚えたことは、どんなふうに忘れていく? ── 忘却曲線と、睡眠・思い出す練習

分野:からだ

いみの ない もじを ならべた ひょうを おぼえて、20ぷんあとに おぼえなおすと、さいしょと おなじくらいの てまが、4わりほど かかる、という けんきゅうが あります。たった 20ぷんで、そんなに わすれるのです。

わすれるのは、脳のうが こわれて いるからでしょうか。わすれにくく する やりかたは あるのでしょうか。この ページを よむと、そのことが わかります。

意味のない文字の表を覚えて、20分後に覚え直すと、最初に覚えたときの手間の約4割がもどってくる。これは、忘れ方を最初に数字で測った実験にもとづく値で、約140年前に行われました[1][2]。

では、忘れるのは脳の欠点なのでしょうか。眠ることや、思い出す練習は、忘れ方を変えられるのでしょうか。この記事を読むと、忘れ方の形と、残りやすくする条件の研究が分かります。

意味のない音節の表を覚え、20分後に覚え直すと、最初の学習にかかった時間のうち約4割が再び必要になる。エビングハウスの節約法による値で、節約率は約58%とされる(41.8%の計算は本記事による)[2]。

140年後の再現実験では、曲線が24時間のところで少し上向く可能性も示された。では、この「忘れ」は脳の不具合なのか。睡眠や想起の練習は、忘れ方を変えるのか。このメモを読むと、忘れ方の形の測り方、残りやすくする条件の研究、脳に忘れる仕組みがあるとする総説の位置づけが分かる。

読み方を切り替えられます。画面の上にある「よみかた」のボタンで、小学校低学年むけ・小学校高学年むけ・中学生むけの3つの書き方に切り替わります。むずかしいと思ったら、いつでもやさしい方に戻ってください。選んだ読み方はブラウザが覚えているので、次に別の記事を開いたときも同じ読み方で始まります。

1. 70じかんも かけて、いみの ない もじを おぼえた

1. 意味のない文字の表を、70時間かけて覚え直した

1. 無意味綴りの表を、20分後から31日後まで覚え直す

むかし、ドイツの エビングハウスという 人は、「どれくらいで わすれるのか」を、はかろうと しました。1880ねんまでに、そのための 実験じっけんを おえて いたと いわれます[1]。

つかったのは、いみの ない もじの ならびです。たとえば、ことばに ならない、みっつの もじで できた おと、のような ものです。ことばだと、いろいろ おもいうかんで、はかりにくく なるからだ、と せつめい されます[2]。

ひとりの 人が、ぜんぶで 70じかんも かけて、20ぷん、1じかん、9じかん、1にち、2にち、31にち あとに、おぼえなおしました[1]。

おぼえなおすのに かかった じかんが みじかく なれば、それだけ おぼえていた、と かんがえるのです。

ことばにならない文字を使った理由

ドイツの心理学者エビングハウスは、1880年までに、忘れ方を測る実験を終えていたとされます[1]。使ったのは、意味のない音節(無意味綴り)の表です。単語や詩だと、意味から連想が働いて、測り方がぶれてしまうと考えたためと説明されています[2]。

覚え直す時間で測る

測り方は「節約法」といいます。1回目に覚えるのにかかった時間と、あとで覚え直すのにかかった時間を比べ、短くなった分を「節約できた割合」とします。100%なら全部覚えたまま、0%なら何も残っていないことになります[1]。

この方法で、1人の被験者が合計70時間をかけ、20分・1時間・9時間・1日・2日・31日後に覚え直しました[1]。では、節約できた割合は、時間とともにどう変わったのでしょうか。

エビングハウスは1880年までに、無意味綴り(意味を持たない音節の並び)の表を覚え、一定時間後に覚え直す実験を終えていた。単語や詩では意味による連想が入り、記憶の測定がぶれると考えたためと説明される[1][2]。ただし、これは「意味のあるものは覚えやすく忘れにくい」ことを測った実験ではない。意味のある材料の忘れ方は、この曲線にそのまま当てはまらない。

測定には節約法が使われた。1回目の学習にかかった時間と、あとの再学習にかかった時間の差を、1回目の時間で割ったものが節約率である[1]。「58%答えられた」という意味ではなく、「覚え直しに、最初の約42%の時間で済んだ」という意味だ。

1人の被験者が合計70時間をかけて、20分・1時間・9時間・1日・2日・31日後に再学習した[1]。では、節約率は時間とともにどう下がったのか。

2. わすれかたの グラフは、どんな かたち?

2. 忘れ方は、最初に急に下がってから、ゆっくりになる

2. 節約率の変化と、再現実験が示した「24時間での上向き」

けっかを グラフに すると、さいしょの うちに ぐっと さがり、あとは ゆっくり さがる かたちに なりました[2]。

20ぷんあとで、おぼえなおしの てまの 6わりほどが、らくに なりました。1にちあとは 3わりちょっと、31にちあとでも 2わりほどです[2]。

ここで だいじなのは、31にちあとでも、ゼロには ならなかった ことです。わすれたようで、すこしは のこっています。

のちに、おなじ やりかたで やりなおした 研究者が います。けっかは、むかしの データに にて いました。ただし、これは ひとりの 人の データです[1]。

数字で見る形

よく紹介される値では、節約率は20分後に約58%、1時間後に約44%、9時間後に約36%、1日後に約34%、2日後に約28%、31日後に約21%です[2]。この数字は、原典の表をまとめた解説記事(二次資料)に載っていた値です。

20分後には、覚え直しの手間のうち約4割(100−58で約42%)が、もう戻っています。そのあと下がり方はゆるやかになり、31日後でも約2割は楽に覚え直せます。忘れても、ゼロにはならないのです。

140年後の再現

2015年、マーとドロスは同じ方法で実験をやり直し、結果が元のデータに似ていることを報告しました。曲線は完全になめらかではなく、24時間のところで少し上向く形になるかもしれない、ともしています[1]。この実験は、著者の1人のデータで、多くの人で確かめたものではありません。

では、この形は、何をしても変わらないのでしょうか。

よく引かれる節約率は、20分後58.2%、1時間後44.2%、9時間後35.8%、1日後33.7%、2日後27.8%、31日後21.1%である[2]。これは原典の表をまとめた解説記事(二次資料)の数値で、1885年の原典の本と直接照合した値ではない。大づかみには、最初の数時間で急に下がり、その後はゆるやかになる。20分後で約42%の手間が戻る計算だが、31日後でも約2割は節約できており、忘れても痕跡は残る。

2015年のマーとドロスは、同じ方法で再現実験を行い、結果が元のデータに似ていると報告した。さらに、曲線は完全になめらかでなく、24時間の測定点から上向く跳びがありそうだとした[1]。ただしこれは被験者1人(著者の1人)の結果なので、「多くの人で確認された」とは言えない。

この形は材料と条件に依存する。では、条件を変えると、忘れ方はどう変わるのか。

3. ねている あいだに、おぼえた ことは どうなる?

3. 眠って過ごすと、起きているより忘れにくかった

3. 睡眠と忘却:干渉説と、マウスの新生ニューロンの再活動

1924ねんに、ふたりの 人に、いみの ない もじを おぼえて もらう 実験じっけんが ありました。そして、さいだい 8じかんあとに おもいだして もらいました[3]。

すると、ねて すごした ときの ほうが、おきて すごした ときより、わすれにくかったのです[3]。

おきていると、あたらしい ことが つぎつぎ はいって きます。それが じゃまを して、おぼえた ことが おもいだしにくく なる、と かんがえられました。

マウスの 研究でも、ねむりの ときに、おぼえた ことに かかわる 細ぼうが また はたらき、それを とめると、きおくが のこりにくく なりました[4]。人で、おなじことが おきるとは、まだ いえません。

1924年の古典的な実験

1924年、ジェンキンスとダレンバックは、2人の被験者に無意味綴りを覚えてもらい、最大8時間後に思い出してもらいました。眠って過ごしたときのほうが、起きて過ごしたときより忘れにくい結果でした[3]。

この結果は「古い記憶が時間で消える」というより、「あとから入る新しいことに邪魔される(干渉)」ためだと解釈されました[3]。ただし、被験者は2人です。「眠れば忘れない」とまでは言えません。

マウスで見えた眠りの中の活動

2025年に筑波大学が発表した研究では、マウスの海馬にある「新生ニューロン」のうち、平均2.4個が、学習のときと同じように眠り(レム睡眠)の間にもう一度活動していました。この活動を止めると、記憶が定着しにくくなりました[4]。人で同じことが起きるとは、この研究からは言えません。

では、起きている間は、どう覚えれば残りやすいのでしょうか。

1924年のジェンキンスとダレンバックの古典実験では、2人の被験者が無意味綴りを覚え、最大8時間後に再生した。眠って過ごした条件のほうが、起きて過ごした条件より忘れにくかった。この結果は、古い記憶が時間で消えるのではなく、あとから入る新しい経験に妨げられる「干渉」によるものと解釈された[3]。被験者2人の結果であり、一般化には限界がある。原論文は参照できておらず、序文・辞典による紹介の範囲である。

2025年、筑波大学は、マウスの海馬の新生ニューロンが、学習時と同様のパターンで、レム睡眠中に再び活動すると発表した。その数は平均2.4個で、この活動を人為的に止めると記憶の定着が弱まった。シータ波という脳波のタイミングに合わせることも重要だった[4]。ただし、対象はマウスで、人の睡眠にそのまま当てはめることはできない。

起きている間にできる工夫はあるのか。次は、勉強のしかたの比較実験を見る。

4. よみかえすのと、おもいだすのと、どっちが のこる?

4. 読み返すより、思い出すテストのほうが1週間後に残った

4. 想起テスト効果:読み返し群とテスト群の1週間後の再生率

大がくせいに、ある ぶんしょうを おぼえて もらいました。1つめの グループは、なんども よみかえしました。2つめの グループは、よまずに、おもいだす テストを 3かい うけました[5]。

1しゅうかんあとに、どれだけ おぼえて いたかを しらべると、おもいだした グループは 61%、よみかえした グループは 40%でした[5]。

おもいだした グループが ぶんしょうを よんだ かいすうは、3.4かい。よみかえした グループは、14.2かいです。4ばいほど よんだ のに、のこらなかったのです。

よみかえすと「もう わかった」という きもちに なりやすい、ことも わかりました[5]。ただし、5ふんあとに しらべると、よみかえしの ほうが よく おぼえて いました。

読んだ回数が多いのに、残らなかった

2006年のロディガーとカーピッケの実験では、大学生が文章を学び、1週間後に思い出した量を比べました。思い出すテストを3回受けたグループは61%、読み返しを重ねたグループは40%でした[5]。

文章を読んだ回数は、テストのグループが平均3.4回、読み返しのグループが平均14.2回です。14.2÷3.4を計算すると約4.2倍で、読み返しのほうが4倍以上も読んでいました。それでも1週間後に残った量は、約1.5倍(61÷40)の差で、テストのグループが上でした。

「覚えた気」と成績は別だった

読み返したグループのほうが「覚えられそう」という自信は高かったと報告されています[5]。また、5分後に調べたときは、読み返しのほうが成績は良く、差が出たのは時間がたってからでした。対象は大学生の文章で、小学生や無意味綴りの結果ではありません。

では、時間をあけて練習すると、どうなるのでしょうか。

2006年のロディガーとカーピッケは、大学生が文章を学んだ1週間後の再生率を、テスト群と読み返し群で比べた。テストを3回行った群は61%、4回読み返した群は40%だった。群の読んだ回数は、テスト群が3.4回、読み返し群が14.2回で、14.2÷3.4から約4.2倍の差がある[5]。読む回数が約4倍でも、1週間後の再生はテスト群が約1.5倍(61÷40)高かった。

この研究が示したのは、「読み返すと覚えた気になる」ことと、「長く残る」ことは別だという点である。読み返した学生は、自信は高かったが、1週間後の成績は低かった[5]。ただし5分後のテストでは読み返しのほうが良く、「テストが効く」のは遅れて測った場合に限られる。

対象は大学生の散文であり、無意味綴りや小学生の結果ではない。では、練習の間に休みをはさむと、何が変わるのか。

5. れんしゅうの あいだに、やすみを いれると?

5. 休みをはさむと、24時間後の成績が約2倍になったマウス

5. 分散効果:記憶痕跡のシナプス間移動という説明

マウスで、目の うごきを おぼえさせる 実験じっけんが ありました。ひと休みを いれて れんしゅうした マウスは、24じかんあとも、ほぼ ぜんぶ おぼえて いました[6]。

つづけて いっきに れんしゅうした マウスは、24じかんあとに、およそ はんぶんまで おちて いました[6]。

りかがくけんきゅうじょの 研究者は、おぼえた ことの あとが、脳のうの なかで うつる ことが、りゆうだと かんがえて います。ただし、これは マウスの 目の うごきの 実験じっけんです。人の べんきょうに、そのまま あてはめる ことは できません。

休みをはさんだマウスは、ほぼ全部を保った

2011年に理化学研究所が発表した研究では、マウスの眼球反応の学習で、休みを入れて学習した場合、24時間後にほぼ100%保たれました。続けて集中して学習した場合は、約50%に下がりました[6]。

理由として、短期の記憶が長期の記憶に変わるときに、記憶の痕跡が脳の中の別の接点(シナプス)へ移ることが挙げられています[6]。対象はマウスの運動学習です。人の勉強にそのまま当てはめることはできません。

ここまでは「どうすれば残るか」でした。では、そもそも、なぜ忘れる仕組みがあるのでしょうか。

2011年、理化学研究所はマウスの眼球反応の学習で、休みを入れた学習は24時間後にほぼ100%保持され、集中した学習は約50%に下がったと発表した(Journal of Neuroscience)。短期記憶が長期記憶として固定化されるときに、記憶痕跡がシナプス間を移動する現象が、分散効果の理由とされる[6]。

これは運動学習の結果であり、人の勉強の時間割にそのまま当てはめられない。前の章の想起テストと合わせると、「間をあけて、思い出す」ことが残りやすい条件の候補になる。ただし、両者は別の研究で、対象も材料も違う。

残す条件がある一方で、脳には忘れる仕組みそのものがある。それは故障なのか。

6. わすれるのは、脳のうの こしょうなの?

6. 忘れる仕組みは、脳が自分で持っているらしい

6. 能動的な忘却:ハエの研究と、記憶の目的についての総説

ショウジョウバエという 小さな ハエの 研究では、「わすれる さいぼう」が ドーパミンという ものを だして、おぼえた ことを よわめる ことが わかって います[7]。

ショウジョウバエには、きおくを すこしずつ よわめる しくみが あると、かんがえられて います[7]。

けんきゅうしゃは、あたらしい ことを おぼえる ゆとりを つくる ためだと、せつめい しました[10]。

ある 研究者たちは、きおくの 目てきは、ぜんぶを そのまま のこす ことでは なく、やくに たつ ことを のこす ことだ、と かんがえて います[8]。ただし、これは かんがえ方で、まだ 決まった ことでは ありません。

ハエが教えてくれた「忘れる細胞」

2017年にデイビスとジョンは、脳には記憶の痕跡をすり減らす生物学的な仕組みがある、とまとめました。ショウジョウバエの研究では、「忘れる細胞」がドーパミンを出し、Rac1という分子を通じて、記憶をつくる細胞の構造を変えることが分かっています[7]。忘れ方には、新しい神経細胞が生まれることによるもの、新しい情報の干渉によるもの、脳が常に少しずつすり減らすものの3つが知られています[7]。ハエの嗅覚の記憶の研究なので、人で同じ経路が働くとは言えません。

何を残すかを選ぶため?

スクリップス研究所の発表では、この仕組みは、新しい情報を覚える余地をつくるためと説明されました[10]。リチャーズとフランクランドは、記憶の目的は昔の情報を正確に伝え続けることではなく、役に立つ情報だけを残して判断を助けることだと論じました[8]。細部を捨てることで、新しい場面にも使いやすくなる、という考えです。これは総説の中の仮説であり、「忘れるほど賢い」とは言えません。

ここまで、忘れ方の形と、残りやすくする条件を見てきました。自分で試すには、どうすればよいのでしょうか。

デイビスとジョンは2017年、脳には記憶の痕跡を弱める生物学的な仕組みがあるとまとめた。ショウジョウバエの嗅覚記憶の研究では、「忘れる細胞」がドーパミンを出し、Rac1(ラックワン)という分子を介して、記憶を担う細胞の構造を変える[7]。能動的な忘却には、新生ニューロンによる忘却、干渉による忘却、脳が常に記憶痕跡を少しずつすり減らす本来の忘却(intrinsic forgetting)の3種類が知られる[7]。ハエの嗅覚記憶の研究であり、人で同じ経路が働くとは言えない。

スクリップス研究所は、この仕組みを、新しい情報を覚える余地をつくるためと説明した[10]。リチャーズとフランクランドの総説(Neuron, 2017)は、記憶の目的を、過去を正確に伝え続けることではなく、役に立つ情報だけを残して意思決定を助けることだと論じ、AIの「正則化」に似て、細部を捨てると新しい場面に使えるようになる、とした[9][8]。弱まるシナプスや、海馬の新しい神経細胞が古い記憶を上書きすることが、仕組みの候補とされる。ただし、これは仮説をまとめた総説であり、「忘れるほど賢くなる」とは言えない。

こうして、忘れ方の形(第2章)、残りやすくする条件(第3〜5章)、忘れる仕組み(第6章)を並べて見てきた。各章の研究は、対象も方法も違い、別々の角度から同じ問いを見ている。そこから、忘れることは残すことと表裏の関係にあるのではないか、と考えられる。これを、自分の手で小さく確かめられるか。

7. こんやの うちに、5つの ことばで ためして みよう

7. 5つの言葉で、自分の忘れ方を試す

7. 簡易な再現:5語の再生と、原典に当たる手順

かみに、すきな たべものを 5つ 書きます。1ぷん だけ ながめて、かみを とじます。

すぐに、なにも 見ないで、おぼえて いる ものを べつの かみに 書きます。1じかんあとにも、もう1かい。ねる まえに、また1かい。つぎの 日の あさにも、書いて みましょう。

いくつ 書けたか、かずを ならべて みると、この 5つの ことばが どんなふうに へるかを 見られます。

紙と時計で試す

家にある言葉を5つ、紙に書いて1分だけ眺めます。紙を閉じ、すぐ何も見ずに別の紙へ書き出します。1時間後、寝る前、次の日の朝にも書き出して、思い出せた数を並べてみてください。エビングハウスの曲線とは材料が違いますが、「最初に急に減り、ゼロにはならない」形になるかどうかを自分で見られます。

2つのやり方を比べる手もあります。同じ5語を使い、1つは10回読み返す日、もう1つは見ないで3回思い出す練習をする日に分け、順番を入れ替えて試します。1週間後にどちらが多く書けるかを数えると、ロディガーらの研究と同じ問いを小さく試せます。ただ、1回では方法の差と決められません。その日の体調や、先に覚えた記憶の影響でも変わるからです。

原典にあたるなら

エビングハウスの再現はマーとドロス(2015年、PLOS ONE)、想起テストはロディガーとカーピッケ(2006年、Psychological Science)の論文が出典欄にあります。英語の論文なので、図や表を眺めるところから入ると読みやすいでしょう。

家にある言葉を5つ紙に書き、1分眺めてから、すぐ・1時間後・就寝前・翌朝に、見ないで書き出して数を並べると、エビングハウスの曲線に近い形が見えるかを調べられる。材料が意味のある言葉なので、第1章で述べたとおり、曲線の数値とは一致しない。形(最初に急に減る)を見る簡易な確認である。

2つの方法の比較も可能である。同じ5語を使い、10回読み返す日と、見ないで3回思い出す日に分け、順番を入れ替えて1週間後の再生数を比べると、ロディガーらと同じ問いを小さく試せる。ただし、1回では方法の差と決められない。1人・数回では結果が偶然や体調、先の学習の影響に左右される。

原典は、Murre & Dros 2015(PLOS ONE)、Roediger & Karpicke 2006(Psychological Science)、Davis & Zhong 2017(Neuron)である。節約率の個別の数値(20分後58.2%など)は二次資料の値で、1885年の原典と照らす余地が残る。ジェンキンスとダレンバックの原論文も未参照で、序文による紹介に基づく。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

本文は、ここにある資料の内容を、自分の言葉で言いかえたものです。年・数値は、資料によって細部が異なることがあります。

  1. Murre & Dros, Replication and Analysis of Ebbinghaus' Forgetting Curve, PLOS ONE 2015 https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0120644 (実験の方法・節約率・再現)
  2. イッソー 忘却曲線の解説コラム https://www.issoh.co.jp/column/details/8925/ (節約率の数値表、無意味綴りを使った理由。二次資料)
  3. Kihlstrom 編 Sleep and Cognition 序文 https://www.ocf.berkeley.edu/%7Ejfkihlstrom/PDFs/1990s/1990/SleepCogPreface.pdf (1924年の睡眠と忘却の古典実験の紹介)
  4. 筑波大学 プレスリリース(2025年8月19日) https://www.tsukuba.ac.jp/journal/pdf/p20250819143000.pdf (マウスの睡眠中の新生ニューロン)
  5. Roediger & Karpicke, Test-Enhanced Learning, Psychological Science 2006 https://www.gwern.net/docs/spaced-repetition/2006-roediger.pdf (想起テストと読み返しの比較)
  6. 理化学研究所 プレスリリース(2011年6月15日) https://www.riken.jp/press/2011/20110615/index.html (マウスの分散学習の効果)
  7. Davis & Zhong, The Biology of Forgetting, Neuron 2017 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5657245 (ハエの忘れる細胞、忘却の3種類)
  8. Neuroscience News, Richards & Frankland 2017 の解説 https://neurosciencenews.com/forgetting-smarter-6947/ (記憶の目的についての総説の解説。二次資料)
  9. Richards & Frankland, The Persistence and Transience of Memory, Neuron 2017 https://doi.org/10.1016/j.neuron.2017.04.037 (記憶の目的についての総説。解説記事[8]と合わせて参照)
  10. Scripps Research 2017 プレスリリース https://www.scripps.edu/news-and-events/press-room/2017/20170703Davis.html (忘れる仕組みの説明)

なおした ところ

更新履歴

更新履歴(改版の記録)

  •  初版を公開。
  •  中学生向けの題名を、日常の疑問が先に来る形に見直した。

このサイトでは、公開した記事の本文は原則として書き直しません。誤りが見つかったときや、内容が古くなったときだけ手を入れ、その理由をこの欄に残します。